第3話『逆転のトノサマン』探偵パート1日目(前編)

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成歩堂 龍一…黒
綾里 千尋…赤
綾里 真宵…青
御剣 怜侍…茶
糸鋸 圭介…黄土
裁判長…緑
荷星 三郎…紺
オバチャン(大場 カオル)…灰
スタッフの子…黄
大滝 九太…黄緑
カントク(宇在 拓也)…橙
姫神 サクラ…紫
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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ええい‥‥
コシャクなり、トノサマン‥‥!
天空の月が、キサマの血を欲して
泣いておるわ‥‥!
今宵の月‥‥よく
目に焼きつけておくがいい。
おヌシの見る、
最後の満月となろう‥‥!
カクゴせいィッ!
アクダイカーン!
ぬおおおおおおおおおおおおおッ!
ぐわあああああああああああッ!
満月だけが知っている、
今宵の勝負の行方!
大地にたおれた戦士は
果たして、どっちだぁッ!
次週『闇の使者、復活!』
‥‥お楽しみに!


10月14日 午後5時31分
成歩堂法律事務所

真: あー、おもしろかった。
‥‥カクゴせい!
アクダイカーン!
成: うわ!
ホウキをふり回すな!
真: ‥‥あ、いたんだ
なるほどくん。
成: ”いたんだ”じゃない!
なんなんだ、あのシュールな
ビジュアルは!
真: えーっ!
なるほどくん、知らないのー!
ヤングに絶大な人気のヒーロー、
トノサマンだよ!
成: ヤング?
何才ぐらいのヤングだよ?
真: ‥‥10才ぐらい?
成: ヤングすぎだよ!
いっしょになってハシャグな!
真: でも、でも、あたしだってまだ
17才だよ。
”てぃーん”だよ。なるほどくん
とは違うんだよ、根本的に。
成: 人をジジイみたいに言うな。
ぼくだってまだ24才だ。
真: じゃあ、じゃあ、なるほどくんも
いっしょに見ようよ!
ホント、カッコイイんだから。
とにかく、すごい人気なんだよ!
今、小学生の”なりたい職業”の
第1位は<<とのさま>>だしね。
成: バカな。
真: ‥‥ま、それはそれ。
さて。トノサマンも見たし、
そろそろ閉めようか、事務所。
成: ‥‥いいのかなあ。
客、ゼンゼン来ないぞ。
‥‥あれから、1ヶ月の
時間がながれた。
千尋さんの事件は、
かなり世間の話題になったが、
<<成歩堂法律事務所>>はなぜか、
話題にならなかった。
‥‥どうしよう。
今月の家賃‥‥。
真: だいじょうぶだよ。
そろそろ何か、デカい
依頼が来るって!
成: ‥‥ふう。


10月16日 午前8時14分
成歩堂 龍一の寝室


プルルル‥‥プルルル‥‥
ピッ
成: ‥‥はい、成歩堂です。
真: たっ、たっ、たっ‥‥、
大変だよっ!
成: なんだよ朝っぱらから‥‥。
真: トッ、トッ、トッ‥‥、
トノサマンがっ!
トノサマンが、
逮捕されちゃったんだよ!
成: ‥‥は、はあ?
トノサマンが?
真: そうなの!
トノサマン、怪人を
やっつけちゃったんだって!
成: ‥‥‥‥‥‥。
それがどうした。
怪人を倒すのが、
彼の仕事だろ?
真: それはテレビの話でしょ!
成: そりゃあ、テレビの話だよ。
真: 違うの!
ホントにやっちゃったんだよぉ!
トノサマン・スピアーで、怪人を
串刺しにしちゃったんだよぉぉ!
成: ‥‥さっぱりわからん。
真: とにかく、すぐに事務所に
来てぇ! おねがい!


10月16日 午前9時22分
成歩堂法律事務所

成: (真宵ちゃんは‥‥いた。
テレビを見ている)

では、次のニュースです。
子供向け人気番組
<<大江戸戦士トノサマン>>の
トノサマン役、荷星 三郎
(にぼしさぶろう)が、
殺人容疑で逮捕されていたことが
さきほど、あきらかになりました。
被害者は、怪人アクダイカーン役
衣袋 武志(いぶくろたけし)氏。
アクダイカーンの着ぐるみの中から
死体で発見されました。
死体には”トノサマン・スピアー”
が突き刺さっており、
警察では、これを凶器と考えて
捜査を進めているようです。
成: ‥‥‥‥。
なんか、
冗談みたいな事件だな。
真: ううう、悪夢だ。
この世の終わりだぁ‥‥。

プルルル‥‥プルルル‥‥
ピッ
真: はい‥‥。
成歩堂法律事務所です。
‥‥‥‥
えっ!
なるほどくん!
ト‥‥トノサマンから電話が!
成: な、なにぃ!
真: はい‥‥はい‥‥
‥‥すぐ、うかがいます!

ピッ
真: 行こう! なるほどくん。
成: ど、どこへ?
真: トノサマン、留置所に
つかまってるんだって!
成: ええっ!
真: この事件、あたしたちの初仕事に
決めたからね!

(「相談する」を聞く)
成: どうしようか‥‥これから。
真: とにかく、留置所に行って
トノサマンに会おうよー!
うー、じっとしてられないよ!
‥‥早く行こう!
成: (事件を調べたいのか、
スタジオ見物したいのか?
おそらく、後者だな‥‥)

(「気づいたこと」を聞く)
真: うーん、まだ何かを推理するには
データが足りないな。
成: すなおに”何も思いつきません”
て言えよ。
真: データが足りないの!

(「留置所」に移動する)


10月16日 某時刻
留置所 面会室

真: ‥‥‥‥。
成: ホラ、真宵ちゃん。
アコガレのスターさんだぞ。
真: ね。
‥‥ホントにアレがそうなの?
成: アレって言うな。
荷星 三郎(にぼしさぶろう)。
今回の依頼人、その人だよ。
真: こう言っちゃなんだけど、
なるほどくん。
こりゃ、やってるよ、
サツジンの1つや2つ。
成: お、おいおい!
何、言ってるんだよ!
荷: あのぉ‥‥。
真: は、はいッ。
荷: ‥‥何か?
真: い、いえッ。
成: (やれやれ‥‥)
荷: わかっています。ゲンメツして
いらっしゃるんでしょ、ボクに。
真: め、めっそうもないッ。
荷: ‥‥ボク、ごらんのとおりの
ツラがまえですから‥‥、
トノサマンの役をいただいたとき、
決めたんです。
この役が終わるまで、ゼッタイに
素顔を出すまい、って。
子供たちのユメを
コワしちゃイケナイと思って‥‥。
真: え‥‥‥‥。
荷: それなのに。
こんなことに‥‥なってしまって。
子供たちは、トノサマンのこと、
なんて思うんだろう‥‥。
うっ、うう‥‥。
真: ‥‥なるほどくん!
成: なんだよ。
真: イイ人だよ!
成: そうだな。
真: こりゃ、やってないよ。
成: ‥‥‥‥。

(「事件について」を聞く)
成: とりあえず、何があったか
聞かせてもらえますか?
荷: は。きょ、恐縮です。
ええ‥‥。
あれは、昨日のことでした。
打ち合わせのため、ボクたち、
英都撮影所に集まりました。
朝の10時から、トノサマンの
アクションを打ち合わせして、
夕方の5時から、
そのリハーサルがあったんです。
そこで、夕方の5時に、スタッフが
スタジオに集まると‥‥、
怪人アクダイカーンが、
セット付近で倒れていたそうです。
着ぐるみのマスクを
とってみると‥‥、
アクダイカーンの中には、
衣袋さんの死体が‥‥!
胸を、トノサマン・スピアーで
ミゴトに刺されていました。
成: ”とのさまん・すぴあー”?
荷: はあ。トノサマンの武器で、
長いヤリです。

(「トノサマン」を聞く)
成: あの、そもそも
トノサマンって、何ですか?
真: うわっ! なんて失礼なコトを!
‥‥すみません、荷星さん!
ジョーシキをわきまえない、
青二才でして‥‥。
成: 誰が青二才だよ‥‥。
荷: いえ、いいんですいいんです。
トノサマンは、お子様向け
ヒーロー番組の主人公です。
ネオ・エドシティを舞台に、
宿敵・怪人アクダイカーンと
死闘をくり広げるんです。
まあ、毎回決着は
つかないんですけど。
それが‥‥。
こんな形で、け、決着が
ついてしまうなんて。
うっ、うう‥‥。
成: わわ、わかりました。
(ネオ・エドシティ‥‥
いったい、どんな町なんだ?)

(「荷星のアリバイ」を聞く)
成: あの‥‥。
事件があった日、あなたは?
荷: あの日は、朝の9時に
スタジオに入りました。
お昼まで、アクションの内容を
決めていまして。
午後は5時からリハーサル
でしたので、
昼食後は、楽屋で
ヒルネしていました。
目が覚めたら、集合時間の5時を
過ぎていたんです!
あわててスタジオに行ったら、
みなさん怖い顔をしていて、
そのまま逮捕されて、
こうして留置所へ‥‥。
成: (事件があった午後は、
ずっと寝ていたわけか。
なんか、マヌケな
ヒーローだなあ‥‥)
荷: きょ、恐縮です。
成: あの‥‥。現場にも
行ってみたいんですけど‥‥。
荷: ああ‥‥英都撮影所。
地図、描きます‥‥。
真: うわあ。なるほどくん。
早く行ってみようよ!
成: (完全に見物に行く気だぞ‥‥)

(「撮影所・正門前」に移動する)


10月16日 某時刻
英都撮影所・正門前

真: うわあ。‥‥ここで
トノサマンが作られてるんだ!
すごいなあ!
カンゲキだよねー!
オ: こらッ! アンタたちッ!
勝手に入っちゃダメでしょ!
真: い、いえあの。
あたしたち、その、
べ、弁護士でして‥‥。
オ: ああそお。
オバチャンは警備員なの。
アンタらみたいなヤジ馬を
入れさせないのが仕事なのョ。
真: ヤジ馬?
オ: アンタたちもあれでしょ?
昨日の事件を聞いて、
おもしろ半分、やって来たんだろ。
まったく最近の若いモンときたら、
何かあると、すぐにこうだね。
昼間っから、
こんなところで油売っちゃって。
シゴトはどうしたの
弁護士なんてそんなヒマなモンなの
かいそんならオバチャンも弁護士に
なればよかったよオバチャンが若い
ころはこんなことなかったねえ
若いムスメがこんなヘンなカッコウ
してああなげかわしいねえ日本の将
来はどうなるんだろうねえまったく
ムスコはムスコでもう3年も電話を
真: ‥‥なるほどくん。
あたしもいつか、こんなふうに
なるのかなあ‥‥。
成: やっぱり、そうなんじゃないか。
オ: ‥‥ちょっと!
アンタたち、
人の話を聞きなさいよッ!

(「撮影所について」を聞く)
成: この撮影所は
どんなところなんですか。
オ: この英都撮影所は、子供たちの
ユメを作るところサ。
オバチャンも昔はねェ‥‥。
真: ま、まさか!
スターだったんですか?
オ: 大道具仲間のあいだじゃァ、
ちょっとしたスターだったョ。
真: は、はあ。
オ: ここもねェ。‥‥今はすっかり
さびれちゃったけどさ。
でも、10年ぐらい前は、
まさにユメのスタジオだったョ。
そのころは、イブクロちゃんも
大スターでねェ。
成: イブクロちゃん‥‥?
オ: 被害者だョ、被害者。
怪人アクダイカーンのこと!
今じゃ、怪人なんてシケた役
やってるけどねェ‥‥。

(「荷星について」を聞く)
成: 荷星 三郎さん、
どんな人なんですか?
オ: 悪い子じゃないんだケド、
ぶら下げてるツラがアレじゃねェ。
とても、お茶の間に出せる
シロモノじゃないよ。
メシがまずくなる。
それだけに、今回は”チャンスだ”
って燃えていたみたいだけど、
まさか‥‥
イブクロちゃんをねェ‥‥。
真: でも、でも、まだ荷星さんだと
決まったわけじゃあ‥‥!
オ: 決まってるの。
オバチャンは
なんでも知ってんだから。

(「イブクロちゃん」を聞く)
成: イブクロちゃん‥‥て、
どんな方なんですか?
オ: ”どんな方”だって?
‥‥泣かせるわねェ。
衣袋 武志(いぶくろたけし)。
永遠の大アクション・スターだよ。
今でも忘れられないねえ、
”ダイナマイト侍”シリーズ。
成: (聞いたことないぞ‥‥)
オ: でもさ。5年前にね。
撮影中に事故が起こっちゃって。
それで、ケチがついちゃった。
今じゃ、子供相手の番組の、
悪の使者だよ。
ギャラも格安でね。
‥‥セツない話よねェ。

(「犯人だと思う理由」を聞く)
成: なんで荷星さんを犯人だと
思うんですか?
オ: オバチャンねェ、
昨日もここに立っていたのよ。
午後1時から、死体が見つかる
5時まで、ずーっとよォ?
殺人現場のスタジオ、この道を
左に行けばいいんだけどォ、
スタジオへ行こうと思ったら、
かならずここを通ることになるの。
1時から、殺人があった2時30分
まで、ここを通ったのは、1人!
成: それが、荷星さんだった
というわけですか。
オ: そう。
オバチャン、見てたから。
成: でも、荷星さんは、楽屋で
寝てたって言ってましたよ。
オ: そりゃ、そう言うでしょ。
あの子も、バカじゃないから。
でもね。ここを通ったのは
あの子しかいないんだ。
間違いなく、ハンニンだよ。
じゃ。そろそろアンタたち、
おウチへ帰るんだねェ。
ここにいたって、何も出ないよ。
成: あの、ぼくたちは、荷星さんの
依頼で、調査に来たんですよ。
オ: ふん! あんたら、
見た目からアヤシイもんねェ!
あの子の書いた依頼状を
見せてみな。
それならオバチャン、入場を
許可してやらんでもないわョ。
真: このオバチャン、なんで
こんなにエラそうなの?

(「留置所」に移動する)
荷: あ。
どうでした撮影所。
やっぱりボク、
ハンニンあつかいですよね‥‥。
真: そ、そんなことないですよー。
ね。なるほどくん。
成: え、ええ。せいぜい
”容疑者”どまりだと思いますよ。
荷: きょ、恐縮です‥‥。

(「アリバイについて」を聞く)
成: 荷星さん、何かぼくに
かくしていること、ありませんか?
荷: え、えッ!
い、いえそんな、めっそうもない。
成: さっきあなた、昼からは楽屋で
ヒルネしていたって言いましたね。
荷: はい。
グッスリ寝てました。
成: でも、警備員のオバチャンは、
目撃してるんですよ。
あなたが殺人現場へ向かう
ところを!
荷: な、なんですって!
そ‥‥そんな、バカな。
ボクは、ヒ、ヒルネを‥‥。
成: 荷星さん。ホントのことを
言ってくれないと。
ぼくは新米弁護士ですから、
すぐ負けちゃいますよ?
荷: ‥‥恐縮ですが。
ボク、間違いなく
寝ていたんです。誓います。
オバチャンの見間違いだと
思いますけど‥‥。
成: (どうなってるんだ‥‥。
ウソをついてるようすは、ない)

(「オバチャン」を聞く)
成: あの‥‥。撮影所の正門にいる
警備員なんですけど‥‥。
荷: ああ‥‥。
あのオバチャン。
真: ヒドいんですよ! あたしのこと、
”見た目からアヤシイ”って!
荷: は、はあ。実は、前に
ボクも言われました。
”そのお面をとれ!”って。
あの人、エラい人には
ものすごく弱いんですけど、
一度ナメられちゃったら、一生
アタマが上がらないんですよ。
真: うう、サイアク‥‥。
成: すみませんが、依頼状、
書いてもらえますか?
荷: は、はあ。
‥‥恐縮です。

証拠品<<荷星 三郎の依頼状>>を
法廷記録に挟んだ。
成: (これで、あのオバチャンを
突破できればいいんだけど‥‥)

(「撮影所・正門前」に移動する)

(「荷星 三郎の依頼状」をつきつける)
成: オバチャン、これ。
荷星さんからの依頼状。
オ: ん‥‥?
この頭のワルそうな字は、
たしかに、あの子だね。

証拠品<<荷星 三郎の依頼状>>を
オバチャンにわたした。
オ: あの子も、こんなたよりなさそうな
弁護士をたのむなんて。
ねえ?
成: ”ねえ”と言われましても‥‥。
オ: まあいいや。
通行を許可してあげるわヨ。
ただし、ここから左の
スタジオ方面だけだよ。
右方面はダメ。
スタッフの作業所があるんだけど、
”誰も通しちゃダメッス”って
刑事が言ってたからね。
真: ‥‥ねえねえ、なるほどくん。
成: ん?
真: 詰所のところに、地図があったよ。
この撮影所の。
成: おお! いいね、これ。
オ: コラ! 1枚50円だョ!
真: よし。じゃ、行こうか
なるほどくん。
オ: 50円!

英都撮影所の<<上面図>>を
法廷記録に挟んだ。


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