成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン(大場 カオル)…灰 | |
スタッフの子…黄 | |
大滝 九太…黄緑 | |
カントク(宇在 拓也)…橙 | |
姫神 サクラ…紫 |
英都撮影所・正門前 | |
オ: |
ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ ‥‥ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ハア ‥‥ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ハア ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ |
成: | ど、どうしたんですか? |
オ: |
ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ハア‥‥ ‥‥ハア‥‥ハア‥‥コシャクな! |
成: |
(どうやら、今まであの子を 追い回していたらしいな‥‥) |
オ: |
‥‥ハア‥‥ハア‥‥今度会ったら ハア‥‥‥‥か、かならず‥‥ハア |
成: |
(どうやら、つかまえられなかった らしいな‥‥) |
オ: |
ハア‥‥ハア‥‥こっちは‥‥ ハア‥‥ひ、人質をとったからネ! |
成: | (ヒ、ヒトジチって‥‥なんだ?) |
成: |
あの。 ‥‥あの子、どうなりました? |
オ: |
今度見かけたら、ハア、ハア‥‥、 ヒネりつぶす! ハア、ハア‥‥。 |
千: |
‥‥まあ。 ワイルドなマダムね。 |
成: |
さっき、カントクたちに 会ったんですけど‥‥。 |
オ: |
‥‥うう、シンゾウが イタい‥‥ハア、ハア。 |
成: | (だ、だいじょうぶかな‥‥) |
オ: |
‥‥死ぬ前に一度‥‥ イブクロちゃんに、お参りを‥‥。 |
成: |
(そういえば、殺人現場に お参りしたいとか言ってたな) |
成: |
あの、”ヒトジチ”って なんです? |
オ: |
ハア、ハア‥‥、 あの子、逃げているときに、 ‥‥‥‥を、落として 行きやがったから、ハア、ハア、 きっとコイツを、ハア、ハア、 ‥‥とりもどしに、くるはずョ! |
成: | (ううん。聞きとりにくい‥‥) |
千: |
なるほどくん! その”ヒトジチ”‥‥ 九太くんから話を聞くのに、 役に立つかもしれないわ。 |
成: |
(なるほど‥‥) オバチャン! その‥‥ |
オ: |
ダメだョ。 オバチャン、あの子を つかまえてやるんだから‥‥! |
千: |
なるほどくん。何か取り引き できる材料はない? |
成: |
(取り引き‥‥ねえ‥‥ 何かあるかな‥‥?) |
オ: |
あ、それ‥‥ハア、ハア。 第1スタジオに入る‥‥? |
成: | ええ。カードキーです。 |
オ: |
ハア、ハア。オバチャン、 イブクロちゃんにお参りを‥‥ お参りしたいんだよネ‥‥。 ‥‥ファン、だったから。 |
成: |
オバチャン、カード、持って ないんですか? |
オ; |
あのへんは、担当じゃないから ‥‥ハア、ハア。 カード、貸しとくれよぉ‥‥。 |
成: |
(どうしよう。あのスタジオ、 入れなくなるぞ‥‥?) |
千: |
なるほどくん。 ‥‥貸してあげたら? |
成: |
そうですね。 ‥‥はい、じゃあこれ。 |
オバチャンに貸した。 | |
オ: |
‥‥‥‥。 アンタ。 オバチャン、人に借りは 作らないタチでね。 これ、持ってお行き。 |
成: |
‥‥なんですか、コレ。 トノサマンのカード‥‥ですか。 |
オ: |
あの子が落としていったんだョ。 アイツにとっちゃあ、 大事なモノなんじゃないかネ。 |
成: |
ありがとうございます。 ‥‥もらっておきます。 (さっき言ってた”ヒトジチ” って、これのことか‥‥) |
法廷記録に挟んだ。 | |
オ: |
じゃ。 オバチャン、行くから。 |
成: |
(オバチャン、スタジオの方へ よろよろと走っていったぞ) |
撮影所・スタッフエリア | |
成: |
‥‥あっ! きみ! ‥‥ちょ、ちょっと待てよ! |
千: |
‥‥‥‥ なるほどくん。 ‥‥今の子‥‥? |
成: |
ええ。 ‥‥あれが大滝 九太です。 |
千: | 楽屋に逃げ込んだみたいね。 |
撮影所・楽屋 | |
成: |
たしか、ここに逃げ込んだ はずだけど‥‥。 あっ! いた! |
九: | ‥‥‥‥! |
成: | まずい、逃げられる! |
千: |
お待ちなさい。 ‥‥‥‥ ‥‥よかった。もどってきたわ。 |
成: | (ウソだろ!) |
九: | ‥‥‥‥。 |
千: |
ねえ。私たちに 協力してもらえないかな。 ね? |
九: |
‥‥‥‥。 オ、オレ、九太。 |
千: |
あら。 ‥‥綾里 千尋よ。 よろしくね。 |
九: | よっ、よろしくっ! |
成: | ぼくは、成歩堂 龍一だよ。 |
九: | 聞いてねえよ。 |
千: |
じゃあ、なるほどくん。 あとは、おねがいします。 |
成: | (自信ないなあ‥‥) |
成: |
トノサマン、かっこいいよな。 ぼくも好きだな、トノサマン。 |
九: |
あんたにトノサマンの 何がわかるって言うんだよ! |
成: | な、なんだよその言い方は! |
千: |
な、なるほどくん。 少年を相手にドナっちゃダメよ。 |
九: |
そうだよ! 少年相手にドナるなよな! |
成: |
なあ、きみは事件について 何を知っているんだ? おニイさんに、教えてくれよ。 |
九: | ‥‥なんにも知らねぇよ! |
成: |
(‥‥ダメだ。 何か、エサがいるな‥‥) |
成: | 九太くん。‥‥これ。 |
九: | あっ! オレのトレカ! |
成: | と‥‥”とれか”? |
九: |
”トレーディングカード” のことだよ! オトナのクセに、 なんにも知らねえのな! |
成: |
これ、あげるからさ。 話、聞かせてよ。 |
九: |
それ、もともとオレの じゃねえか! シホン主義社会のキホンは 等価交換だぜ! オトナのクセに、 なんにも知らねえのな! |
成: |
(うぐ。‥‥こムズカシイこと 言いやがって‥‥) |
九: |
だいいちさぁ、 ‥‥いらねえよ、そんなカード。 |
成: | え。 |
九: |
そのカードさ、 ダブって持ってるんだ。 あんたにくれてやるよ。 |
成: | (おいおい、話が違うぜ‥‥) |
九: |
オレと取り引きしたけりゃ、 もっとレアなヤツを持って来な! |
成: |
れあ? ‥‥焼きカゲンのコトか‥‥? |
九: |
オトナのクセに、なんにも 知らねえのな! レアカード。めずらしいカードの コトだよ! |
成: | レアカード、ねえ‥‥。 |
第2スタジオ・コテージ内 | |
ス: | あら、こんにちは。 |
成: |
あ、どうも。 こんなところで、何を‥‥? |
ス: |
あ、ええ。 ちょっと、資料の整理を‥‥。 ‥‥あのお‥‥。 |
成: | はい? |
ス: |
そちらのカノジョ‥‥なんか、 フンイキ、変わりましたねー。 まるで別人みたい。 |
成: | 気のせいですよ。 |
千: | そうですよ。 |
ス: | ‥‥違うと思うけど‥‥。 |
成: | あれから、あの子は見かけた‥‥? |
ス: |
いいえ。 さっきまで、 タイヘンだったんですよ。 警備員のオバチャン、あの子を 追いかけ回してたんですけど、 結局、逃がしちゃって。 ‥‥すごく怒ってました。 |
成: | うん。ぼくたちも見たよ。 |
ス: |
さっき、詰所で ようかんをニギりつぶしてました。 |
成: |
(オバチャンも、そこまで ムキになるなよ‥‥) |
成: |
カベのポスター、 みんなイブクロさんの‥‥? |
ス: |
そうですよ。‥‥ホント、 こんなことになってザンネンです。 |
成: |
でも、最近は 人気が落ちていた、とか‥‥。 |
ス: |
そうですね‥‥。 ‥‥あのことがあってから、 ですね‥‥。 |
成: | ”あのこと”‥‥? |
ス: |
弁護士さん、知らないんですか? イブクロさんのこと‥‥。 |
成: | ‥‥知らないけど。 |
ス: |
ゴ、ゴメンなさい。 私、よけいなこと、 言っちゃったみたい‥‥。 |
成: |
気になるなあ。 ‥‥何? ”あのこと”って。 |
ス: |
す、すみません。 わ、私の口からは‥‥。 |
成: |
(やれやれ。また”口どめ” ってヤツか‥‥) |
成: | あの、これ、どう思う? |
ス: |
あ。トノサマンの トレーディングカード。 実は、私も集めてるんですよ。 あと1枚で コンプリートするんですよねー。 |
成: | こんぷりーと? |
ス: |
カードを全種類、 そろえることです。 |
成: | ‥‥へえ。 |
ス: |
‥‥‥‥‥‥ あ、ああああああああああああッ! これ! これ! このカード! ずっと探していた、最後の1枚! |
成: | あ、あの‥‥。 |
ス: |
は、はしたない女だと 思われるかもしれません。でも! おねがいします! できましたら、 私と、その、トレードを‥‥。 |
成: | ト、トレード? |
ス: |
交換です! あの、私、レアカードが あまっているんです。 |
成: | レ、レアカード? |
ス: |
珍しいカードのことです。 なにとぞ、おねがいします! なにとぞォッ! |
千: |
なるほどくん! オトメに ハジをかかせてはダメよ! |
成: |
(‥‥なんなんだ、この 意味不明なモリアガリは!) |
成: | いいですよ。 |
ス: |
ホントですかッ! うれしいッ! じゃ、これ。はい。 |
法廷記録にはさんだ。 | |
ス: | きゃっほう! |
成: | (行っちまった‥‥) |
千: |
‥‥いいことをすると、 すがすがしい気持ちになりますね。 |
成: | ほんとにそうですね。 |
成: | なあ、このカード‥‥。 |
九: |
あ、ああッ! そのカード! オレの持ってない、最後の レアカードだ! な、なあ、おい。クレ! クレよぉぉ! |
成: |
(な、なんだ? このクイツキのよさは‥‥) よ、よおし。おニイさんと トリヒキをしないか? |
九: |
いいぜ! ”トノサマン・スピアー”に ”アクダイカーン”もつけるよ! |
成: |
い、いやいやいやいや。 ‥‥カードはいいんだ。 質問に答えてくれ。 |
九: |
なーんだ、そんなことか。 いいよ。何でも聞いてよ。 |
九太くんにあげた。 | |
千: |
さあ。なるほどくん。 お話を聞きましょう。 こちらに有利なことがあったら、 明日の法廷に来てもらうんです。 |
成: | トノサマン、好きなんだ。 |
九: | だって、カッコイイもん! |
成: | ‥‥そ、そうかなあ。 |
九: |
ニイちゃん。外見じゃないんだよ。 生きザマがカッコイイんだよ! |
成: |
(小学生が生きザマを 語るなよ‥‥) |
九: |
ニイちゃんも好きだろ? トノサマン。 |
成: | あ、ああ‥‥大好きだよ。 |
九: |
なあ、どこがイイ? トノサマン。 |
成: |
(‥‥テキトーに答える しか、ないな‥‥) テキをやっつける瞬間かな。 ‥‥スカッとするし。 |
九: |
やっぱ、そうだよな! トノサマンは、ゼッタイに 負けないもんな! 見てくれよ! このアルバム。 |
成: |
な、なんだこれ。 ‥‥トノサマンの写真ばっかり。 |
九: |
オレ、トノサマンのショーには、 かならず行くんだよ! |
成: |
(ああ‥‥。デパートの屋上や 遊園地でやってるやつか‥‥) |
九: |
でさ。トノサマンが勝った瞬間を、 こうして写真に撮るのさ! 1つ残らず、ぜーんぶ写真に 撮ってるんだぜ。‥‥カンペキに! 見てくれよ! これ! 新しいデジカメだよ! |
千: |
あら。カッコイイわね。 最新のモデルじゃない。 |
九: |
だろ! だろ! 買ってもらったばっかりなんだぜ! このアルバムのタイトルは、 ”トノサマン・栄光の足跡”さ。 トノサマンは、どんなときでも、 ゼッタイに勝つんだよ! お姉ちゃん、よかったらコレ、 あげるよ! |
千: | え? いいの? |
九: |
うん。これ、デジタルカメラで 撮ったからさあ。 データ、残ってるし。 また作れるから。 |
千: |
ふふ。じゃ、 もらっちゃおうかな。 |
成: |
(千尋さん、はたらかなくても 生きていけそうだよな‥‥) |
千: | ? |
成: |
きみは、事件があった日も ここに来ていたよね。 |
九: | ‥‥う、うん。 |
成: | そのとき、何か見なかったかい? |
九: | ‥‥‥‥。 |
千: | 九太くん。 |
九: | ! |
千: |
これは、正義のための質問なの。 トノサマンは、いつでも 正義の味方でしょう? あなたも、そうでなければダメよ。 |
九: |
オ、オレ。 ‥‥オレ、見たんだ! ゼンブ、見てたんだよっ! |
成: |
(ううん‥‥コイツからは、まだ 聞き出せることがありそうだな) |
成: |
九太くん‥‥聞かせてくれ。 事件があった日、 きみは、何を見たのか‥‥? |
九: |
‥‥‥‥‥‥。 あの日、ここに着いたのは 2時ぐらいだった。 オバチャンに見られないように 道のそとの林の中を歩いていたら、 すっかり迷っちゃったんだ。 30分ぐらいかな‥‥? ‥‥で、やっとスタジオの前に 出たんだよ。 そうしたら‥‥、 |
千: | どうしたの、九太くん? |
九: |
トノサマンが、悪いヤツを やっつけたんだよ! トノサマン・スピアーでさ! いつものように、イチゲキだよ! すごい迫力だった‥‥。 オレ、コワくなっちゃって。 その日は、それで帰ったんだ。 |
成: |
‥‥そ、そうなんだ。 それはタイヘンだったねえ。 |
九: |
あんた、コトバに ココロがこもってないなあ。 |
成: | ‥‥千尋さん。 |
千: | はい。 |
成: |
これってつまり、トノサマンが 殺人犯ということですよね。 |
千: | そうね。 |
成: |
そして、カントクたちはアリバイが あるから、トノサマンじゃない。 |
千: | そのとおりよ。 |
成: |
‥‥すると、犯人は、 荷星さんしかいないことになる! |
千: |
‥‥‥‥ 予想外のことだけど、 この子を法廷で証言させたら、 依頼人はカクジツに有罪ね。 |
成: | ‥‥法廷に呼ぶの、やめましょう。 |
千: |
そうね。 そっとしておきましょう。 |
糸: |
そうは行かないッス! 今の話、聞かせてもらったッス! この少年は、重要な証人ッス。 ワレワレが、手あつく ホゴするッス! さあ少年! 刑事さんと、警察署まで ランデブーッス! |
九: |
や、やだよ! ‥‥うわっ! |
千: |
‥‥‥‥ こ、こまったわね。 手がかりは、これで ゼロになっちゃったわ。 ‥‥サイアクな形で。 |
成: |
ど、どうするんですか! 千尋さん! |
千: |
‥‥え、えーと。 私、そろそろ帰らないと。 だいじょうぶ。 なんとかなりますから。 |
成: |
いやいやいや! 明日、法廷、来てくださいよ! ‥‥自信、ないんで‥‥。 |
千: |
なるほどくん。 ‥‥1つ聞かせて。 あなたは、荷星さんの 無実を、信じているの? |
成: | あたりまえじゃないですか! |
千: |
‥‥‥‥ そのヒトコトが聞きたかったの。 いいわ。 ‥‥あした、法廷でね。 |
成: |
はい! ‥‥よろしくおねがいします。 |
千: | よろしくね。 |