成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン(大場 カオル)…灰 | |
スタッフの子…黄 | |
大滝 九太…黄緑 | |
カントク(宇在 拓也)…橙 | |
姫神 サクラ…紫 |
地方裁判所 第4法廷 | |
裁: | では、審理を再開しましょう。 |
御: |
検察側としては、 まだおさなく、イタイケな小学生を 殺人事件の証人として呼んだうえ、 あの弁護人に、イジの悪い質問を させたくはない‥‥。 |
成: | (好きなコト言いやがって‥‥) |
御: |
しかし、こうなっては いたしかたない。 証人として、大滝 九太少年を 入廷させていただこう! |
御: |
裁判長。 ‥‥とりあえず証人に、何か台を。 |
裁: |
そ、そうですね。 係官。 ‥‥みかん箱を。 |
御: | では証人。名前と学年を。 |
九: | ‥‥‥‥‥‥ |
御: | 証人! |
九: |
なんだよ! オトナだからって、イバるなよな! |
御: | むぐぐ‥‥。 |
千: |
だめよ、九太くん。 ちゃんと、質問には答えるの。 |
九: |
あっ、お姉ちゃん! ボク、大滝 九太。 小学校2年生です! |
成: | (先が思いやられるな‥‥) |
裁: |
御剣検事。 相手は子供なんですから、 もっとこう、ヤサシクしなさい。 |
御: |
む、むむむ。 ‥‥証人。いや、‥‥九太くん。 |
成: | (なんか、イタイタしいな‥‥) |
御: |
キミは、その、事件のあった日、 英都撮影所に行ったね? |
九: | 行っちゃ悪ィかよ! |
御: |
‥‥そのとき見たことを、その、 ワレワレに聞かせてほしいなあ。 |
九: |
え? オジさんと、そこの エラそうなヒゲのおジイさんに? |
御: | ”おニイさん”だ。 |
裁: | ”ヒゲのおじさん”です。 |
成: | (やれやれ‥‥) |
裁: |
ところで。 法廷内は、カメラの持ち込みは キンシされているはずですが。 |
御: |
う、うむむ。 ”カメラがダメなら証言しない”と 言われてしまったもので‥‥ トクベツに許可していただきたい。 |
成: |
コドモとトリヒキして、 しかも負けるなよ! |
九: |
このカメラ、こないだ買って もらったばっかりなんだぜ! まだ、ちょっと使い方、 よくわかんないんだけどさ! 最近は、どこかへ行くときは、 ゼッタイ持っていくんだぜ! |
千: |
‥‥なるほどくん。 あのカメラ、ビミョーに 気になるわ‥‥。 ちょっと、法廷記録に ファイルを作った方がいいわね。 |
データを法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
では、九太くん。 事件のあった日、見たことを <<証言>>してもらいましょう。 |
九: |
『オレ、一度トノサマンのリハーサル が見たくてさあ。』(証言1) 『インターネットで地図を見て、 あの日、撮影所に行ったんだ。』(証言2) 『警備員のオバチャンに見つからない ように、道のそとの林を通って、』(証言3) 『オレ、とにかく スタジオに行こうとしたんだ。』(証言4) 『とちゅう、30分ぐらい道に まよっちゃったんだけど。』(証言5) 『スタジオのところに出たら、 トノサマンがいたんだ!』(証言6) 『オレ、うれしくて。 見てたら、悪人が出てきてさあ。』(証言7) 『トノサマンは‥‥モチロン、 その悪人をたおしたよ!』(証言8) 『もしカメラを持っていれば、 シャッターチャンスだったよ。』(証言9) ケッキョク、スタジオには 入れなくて、その日は帰ったんだ。 |
裁: |
ふむう‥‥。 では弁護人、<<尋問>>を おねがいしますが、 相手は少年です。 ‥‥ヤサシクするように。 |
九: | ‥‥‥‥。 |
成: |
(そんな必要、 ないような気がするけど‥‥) |
成: |
九太くん。‥‥今の話、 ちょっとおかしいな。 きみ、さっきは、いつでも デジカメは持ち歩く、って、 ハッキリ、そう言ってたじゃない。 |
九: | え! |
成: | ダメだよ。ウソついちゃあ! |
裁: |
弁護人! ‥‥ちょっといいですか? |
成: |
(しまった。 ‥‥キツく言いすぎたか?) |
裁: |
なんですか? ”でじかめ”って? |
成: |
えーと。‥‥”デジタル・カメラ” のことです。 最近はやっている、 カメラの一種です。 (セツメイのしようがない‥‥) |
裁: | なるほど。 |
成: |
とにかく。九太くん。 きみが撮影所に行くとしたら、 カメラをわすれるはずがない! ‥‥持っていたんだろう? |
九: | うう‥‥。 |
御: |
弁護人! 少年をオドすとは、 見下げはてた男だな! |
成: |
少年だろうが検事だろうが、 ウソはよくない! |
御: |
なんでそこに”検事”が 出てくるんだ‥‥。 |
成: | どうなのかな、九太くん。 |
九: |
な、なんだよ! ああ。たしかにカメラは 持ってたよ! それがなんだってんだよぉ! |
裁: |
じゃあ、そのカメラは? 使わなかったのかな? |
九: |
つ、使うわけないよ。 ‥‥オレ、ムチュウで 見てたから‥‥。 |
裁: |
ふむう。 では、その”見ていたこと”を <<証言>>してもらいましょうか。 |
九: |
『た、たしかにカメラは 持ってたけど。』(証言1) 『もう、イッシュンも目が はなせなかったんだ。』(証言2) 『トノサマンに悪人が おそいかかってさあ!』(証言3) 『そして‥‥悪人は、 動かなくなったんだ!』(証言4) 『強いよなぁ! やっぱり、トノサマンは!』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥。 あれ。もう終わりですか。 ‥‥ずいぶんアッサリした 証言でしたね。 ‥‥では、<<尋問>>を。 |
成: | どうして? |
九: |
え? ‥‥何が”どうして” なんだよ? |
成: |
悪人は、どうして動かなく なったのかな? |
九: |
そ、そりゃあ、トノサマンが やっつけたからだよ。 |
成: |
だから、どうやって やっつけたのかな‥‥? |
九: |
ど、どうやって、って‥‥。 トノサマン・キックに トノサマン・パンチ、 トノサマン・チョップに トノサマン・ビンタ、 ‥‥そ、そんな感じかな。 |
成: |
(どうも、このあたりが スッキリしないんだよな‥‥) |
九: | なんだよォ! その目は! |
成: | (‥‥どうしよう?) |
成: | 九太くん。 |
九: | な、なんだよ! |
成: |
きみは最初に、こう言ったね。 トノサマンから”イッシュンも目を はなせなかった”って。 |
九: | そ‥‥それがなんだってんだよ。 |
成: |
なのになぜ、一番カンジンな部分 を見ていないんだい? |
御: | 少年は、キチンと証言を‥‥! |
成: |
キチンと証言していないことは、 あなたにもわかっているでしょう? 殺人犯は、ふつう ”トノサマン・ビンタ”はしない! |
御: | ぐぐぅ! |
成: |
つまり! 九太くんは、トノサマンの戦いの、 一番重要なところ、 テキにトドメを刺すところを 見ていないのです! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 弁護人! しかし、それはタイヘン おかしなことです! その理由を、あなたは 説明できますか? |
成: |
え‥‥、そ、それは‥‥ ちょっと‥‥。 |
千: |
なるほどくん! あなたは今、とても いいセンを行っているわ! ”なぜ、九太くんは戦いの クライマックスを見てないか?” その理由もわかるはずよ! あなたなら! |
裁: |
弁護人! ‥‥答えてもらいましょう。 トノサマンの 大ファンである少年が、 なぜ、戦いのクライマックスを 見ていなかったのですか! |
成: |
裁判長。 ‥‥証拠品があるんです。 |
裁: | ”証拠品”‥‥ですか? |
成: |
そうです。 ”なぜ九太くんは、戦いから 目をそらしたか”‥‥? |
成: | その証拠は、これです! |
裁: |
なんですか‥‥? そのカメラが、どういう‥‥? |
成: |
このカメラは、最近、 買ってもらったばかりです。 |
裁: | それは知っています。 |
成: |
まだ彼は、カメラのあつかいに 慣れていません。 |
裁: |
それもわかっています。 ‥‥あっ! |
成: |
九太くんは、トノサマンが トドメをさす瞬間、 カメラを見ていたんですよ! もちろん、写真を撮るためにね! |
九: | あッ! |
成: | どうやら、図星だったみたいだね。 |
九: |
なんなんだよ、オマエ‥‥。 オレをイジメて、たのしいかよ! |
成: |
(イジメているわけじゃ ないんだけど) |
千: |
よくやったわ、なるほどくん! 九太くんは、ウソをついていた。 目の前でトノサマンが戦っていて、 彼が写真を撮らないなんて、 あり得ないものね。 |
成: |
はい! いいかい。 きみがトノサマンの戦いから 目をそらした理由は、ただ1つ。 それを写真に撮ろうと思って、 カメラをいじっていたからだ。 買ったばかりで、まだ操作に 慣れていなかったから、 決定的なシュンカンを 見のがしちゃったんだろう? |
九: |
‥‥ ‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥そうだよ‥‥。 |
千: |
さあ、なるほどくん。 この子は、まだ何かを かくしているわ! もう一度、<<証言>>させるの! |
成: |
は、はい。 (千尋さん、コワい‥‥) 裁判長。 九太くんに、もう一度 <<証言>>をおねがいします。 |
裁: |
わ、わかりました。 では、九太くん。 そのカメラと、写真を撮らなかった ことについて、 もう少し、くわしく話して もらえるかな? |
九: | ううう‥‥。 |
成: |
(オトナの世界は キビシイんだぞ‥‥!) |
九: |
『オマエの言うとおりだよ。』(証言1) 『トノサマンが、悪人の手を ふりほどいたから、』(証言2) 『オレ、写真を撮ろうと思って、 カメラをかまえたんだけど。』(証言3) 『レンズが開かなくって。 ちょっと間に合わなかったんだ。』(証言4) 『そ‥‥それで、オシマイかな。』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥。 この証言に、何か おかしなところはありますか? |
成: |
‥‥わかりません。 でも、<<尋問>>は させてもらいます。 |
成: | ”オシマイ”‥‥? |
九: |
そ‥‥そうだよ! 写真は、撮らなかったんだ! |
成: |
(ぼくだったら、写真、 撮ると思うけどなあ‥‥ この少年は、本当に写真を 撮らなかったのだろうか?) |
成: |
(九太くんだったら、シャッターを 押さないはずはない! きっと、ここに何か あるはずだ!) 九太くん! ぼくには、何もかも わかってるんだよ! きみは、写真を撮ったはずだ! |
九: | ‥‥あッ! |
成: | (思ったとおり、か‥‥) |
九: | ど、どうしてわかるんだよ‥‥? |
成: |
おニイさんには、九太くんの ウソが、みんなわかるんだよ。 |
九: | ‥‥す、すげェや! |
成: | (お。‥‥なんか、いいキモチ) |
九: |
オレ‥‥、 たしかに撮ったよ‥‥写真。 |
裁: |
では、そのように証言を 変えてもらいましょうか。 |
九: |
『少しおくれて何枚か撮ったけど、 データはもう、消しちゃったよ。』(証言・補足) |
成: | 九太くん! |
九: |
な、な、な、なんだよ! さっきからアンタに名前を呼ばれる と、ロクなことがないや! |
成: | 昨日は、これ、どうもありがとう。 |
九: | ‥‥え? あ、ああ‥‥。 |
成: |
きみ、昨日、こんなことを 言ってたよね? |
九: |
『オレ、トノサマンのショーには、 かならず行くんだよ! でさ。トノサマンが勝った瞬間を、 こうして写真に撮るのさ! 1つ残らず、ぜーんぶ写真に 撮ってるんだぜ。‥‥カンペキに!』 |
成: |
いいかい。 もし、トノサマンが戦いに勝った シーンをきみが撮ったのなら、 それを消すはずはない。 このアルバムに、かざらなければ ならないからね! |
九: | ああッ! |
裁: |
‥‥弁護人。 そのアルバム、なんですか? |
成: |
これは、”栄光の足跡”といって、 九太くんが、トノサマンの写真を 撮って、集めたものです。 これまでの、トノサマンの勝利の シーンが、すべて撮影されている! |
裁: | は‥‥はあ。 |
成: |
しかし! 事件当日のトノサマンの写真は、 このアルバムには、ない! |
裁: |
静粛に! 成歩堂くん。 ‥‥それは、なぜでしょう? トノサマンが誰かをやっつけた のならば‥‥、 そのアルバムに、その写真が なければおかしい‥‥。 |
成: |
そのとおりです! ‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥! (ま‥‥まさか‥‥‥‥まさか!) |
千: |
‥‥なるほどくん。 どうやら私たちは、 たどりついたみたいね。 ‥‥とんでもない”真相”に。 |