成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン(大場 カオル)…灰 | |
スタッフの子…黄 | |
大滝 九太…黄緑 | |
カントク(宇在 拓也)…橙 | |
姫神 サクラ…紫 |
成歩堂法律事務所 | |
成: |
‥‥ふう。今日は 危なかったですね、千尋さん‥‥。 |
真: |
ふーん、そうなんだ。 ‥‥あたしも見たかったな。 |
成: |
? ま、真宵ちゃん! |
真: |
ね。ね。 ‥‥ケッキョク、どうなったの? |
成: |
なんとなく、犯人の目星は ついてきたよ。 あとは、証拠と‥‥動機、かな。 |
真: | へえ! すごいなあ! |
成: |
”序審法廷”のシステムでは、 明日が最終日だからね。 |
真: | ”序審法廷”? |
成: |
聞いたことない? 2、3年前から 始まった法廷のシステム。 要するに、犯罪の件数が多いから、 サッサと片づけようっていう制度。 |
真: |
その制度だと、裁判って、3日で 終わっちゃうの? |
成: |
まあ、とりあえずはね。 ‥‥そういうことだから、 さっそく、行こうか。 |
成: |
なんでイブクロさん、 トノサマンの着ぐるみなんて 盗んだのかなあ。 |
真: |
え! あれって、 イブクロさんが入ってたの! |
成: | そうなんだよ。 |
真: |
で、でも、イブクロさんて、 被害者でしょ! なんで、わざわざそんなことを? |
成: |
その答えを、これから 見つけるんだよ。 |
真: |
カントクたちの証言は どうなったの? |
成: |
カントクやプロデューサーたちが コテージにいたことは間違いない。 |
真: | そうなんだ‥‥。 |
成: |
でも、だからこそ、犯人は 彼らしかいないんだ。 |
真: | えっ! どうして! |
成: |
殺人現場は、実はコテージのある、 第2スタジオだったんだよ。 |
真: | うええええっ! |
成: |
(ここまでおどろかれると、 なんかやりにくいなあ‥‥) |
成: | なんか気づいたこと、ない? |
真: |
あたし、お姉ちゃんを呼び出して いるときは意識がないの。 気づきたくても、気づきようが ないんだ‥‥ごめんね。 |
成: | ううん‥‥。 |
真: |
ちょっと、ニボサブさんの話でも 聞きに行ってみようか。 |
成: | (ニボサブさんか‥‥) |
留置所 面会室 | |
荷: |
成歩堂さん。 今日もイカしてましたね。 |
成: |
あ、ありがとうございます。 ‥‥その、うるんだヒトミは やめてください。 |
真: |
へえ。なるほどくん、 イカしてたんだぁ。 |
成: |
‥‥その、失礼なニヤケヅラも やめてほしいな。 |
真: |
ニボサブさん! とにかく、 残すは明日、1日だけです。 がんばりましょうね! |
荷: |
はあ。 ‥‥といって、ボクに何ができる というワケでもないんですけど。 |
真: |
あはは。ま、あたしも そうなんですけどねー。 |
成: | ”あはは”じゃないだろ。 |
成: |
姫神さんのこと、 何か話してもらえますか。 |
荷: |
ああ‥‥、 あのプロデューサーの方ですか。 あの人は、業界で”天才”と 言われている人です。 |
真: | ”テンサイ”‥‥。 |
荷: |
英都に来てから、もう 5年ぐらいたちますけど‥‥。 今じゃあ、あの人には 誰もアタマが上がりません。 |
成: | どうしてですか? |
荷: |
あの人は、ここへ来てから たてつづけにヒット作を作って、 当時つぶれかけていた英都を、 ミゴトよみがえらせたんです。 それに‥‥。 |
真: | それに‥‥なんですか? |
荷: |
いいえ。なんでもないです。 ‥‥ボクも、ウワサしか 知らないんで‥‥。 |
成: |
宇在カントクって、どんな 人ですか? |
荷: |
あの人は、これまでマイナーな ビデオ作品ばかり作ってたんです。 それを、あの姫神プロデューサーが 目にとめて、 トノサマンの話を 持っていったんです。 おかげで、宇在カントクは 今じゃ有名人です。 カントク、プロデューサーには アタマが上がらないみたいですよ。 彼女の言うことなら、なんでも ハイハイ聞いてます。 |
成: | (うーん、目に浮かぶなあ‥‥) |
真: |
あの、イブクロさんのこと なんですけど。 ムカシはあの人、大スターだった じゃないですか。 急に名前を聞かなくなっちゃった んですけど‥‥。 |
荷: |
ああ‥‥。 ボクも、あの人にアコガレて この世界に。 あの人、急に大きなシゴトを しなくなったんですよ。 そして、この英都で 小さな作品に出るように‥‥。 |
真: |
ええ! どうしてなんですか? あたし、”武者ぶるいの夏”の 続編、たのしみにしてたんですよ! |
荷: |
イブクロさん、スターの座を下りた のが、5年ぐらい前なんですよ。 ‥‥考えてみると。 ちょうどそのころなんですよね。 ‥‥姫神さんが英都に来たの‥‥。 |
成: | (5年前‥‥) |
英都撮影所・正門前 | |
オ: |
‥‥。 ‥‥‥‥。 ‥‥‥‥‥‥。 |
真: |
オバチャン、今日は しずかだね。 |
オ: | ‥‥‥‥。 |
真: |
いつもこうだと、 この撮影所も平和なのに。 |
オ: | ‥‥‥‥。 |
真: |
なるほどくん。 ちょっと、ハリアイがないね。 |
成: | ま、まあね。 |
真: |
今なら、詰所のようかん、 食べてもだいじょうぶかも。 |
オ: |
‥‥‥‥。 ‥‥食べたら、ハッたおす。 |
真: | あ。よかった、生きてたよ。 |
成: |
あの‥‥姫神プロデューサーの ことですけど‥‥。 |
オ: |
英都のおエラ方は、あの女を 気に入ってるからね。 あの女の思いどおりにならない ことは、ないョ。 |
成: | (ニガニガしい口調だ‥‥) |
真: |
キライなんですか? プロデューサーのこと? |
オ: |
あの女のことは話せないョ。 ‥‥撮影所の人から言われたから。 |
成: | 宇在カントクですけど‥‥。 |
オ: |
アイツは、姫神の言いなりに動く、 フヌケた男だよ。 どうも、姫神にイジメられるのが、 ウレシイみたいだネ。 |
真: |
えー? なんでイジメられるのが ウレシイんですか? ね、なるほどくん。なんで? |
成: | ‥‥さ、さあねえ。 |
成: | イブクロさんのことですけど‥‥。 |
オ: |
アンタ! 今日はよくも、イイカゲンなことを 言ってくれたね! あの、あの大スターのイブクロ ちゃんを、こともあろうに‥‥ ハンザイシャ呼ばわり するなんて‥‥ オ、オバ、オバチャン、 許さないよぉ! |
成: | (ホ、ホンキで怒ってるぞ‥‥) |
オ: |
いいかい! イブクロちゃんはねェ! オバチャンの目をごまかすために、 荷星の着ぐるみを盗むような、 そんなヒキョウなことは ゼッタイ、しないんだ! |
撮影所・スタッフエリア | |
真: |
撮影は今日も中止、か。 1回ぐらい、見てみたかったな。 |
成: |
明日の法廷で決着をつけるから、 それから見に来ればいいよ。 |
真: |
そうだね‥‥。 なるほどくん、スイミンヤクのビン て、ここで見つけたんだよね? |
成: | そうだよ。 |
真: | 他にも、何かないのかな‥‥。 |
糸: |
うおおおおおおおおおおおっ! ダメッス! さわっちゃダメッス! |
真: | きゃあああっ! |
糸: |
いや、スマンッス。 もしかしたら、おどろかせて しまったかもしれないッスな。 |
真: |
も、もしかしなくても、 おどろきましたよッ! |
糸: |
いやいや。 たまには自分も、ドラマティックに キメてみたいッス。 |
成: | (”ティック”って‥‥) |
糸: |
コホン。 とにかく、ちょっとそのテーブルの 皿を調べるッス。 |
成: | もしかして、睡眠薬の? |
糸: |
そッス。 コンセキを調べるッス。 |
真: |
睡眠薬のコンセキを調べる‥‥ って、どうするんですか? |
糸: |
くわしいことは 持ち帰って調べるッスけど、 今ここで、かるく調べることが できるようにと、 鑑識のセンセイが、試薬を くれたッス。 反応があれば、クスリの色が 変わるッス。 |
真: |
わぁ、オモシロそう! イトノコさん、早く! 早く! |
糸: |
まま、そうアワテちゃダメッス。 ‥‥ ‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥。 お皿にたらしたクスリの色、 ハッキリと変わったッスね‥‥。 |
成: |
どうやらこの皿には、 睡眠薬が‥‥。 |
糸: | そういうことッスね。 |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
捜査の方は、 どうなっているんですか? |
糸: |
ジッサイのところ、 大さわぎッス。 このまま荷星を追求するべきだ という意見と、 容疑者を切りかえるべきだという 意見で、まっぷたつッス。 |
真: |
イトノコさんの意見は どうなんですか? |
糸: |
くやしいッスが‥‥。 自分は、荷星犯人説は 違うと思っているッス。 ‥‥御剣検事には、また モウシワケないことを‥‥。 |
成: |
そういえば、御剣検事は どうしてます? |
糸: |
それがもう、大荒れッス! 控え室で、アツいコーヒーの入った 紙コップをひねりつぶしたッス。 |
成: | ‥‥はあ。 |
糸: | もう、大ヤケドッス! |
真: | わあい。いいキミだぁ! |
成: |
”紙コップ”‥‥ねえ。 (‥‥コップ‥‥ビン‥‥) そういえば、あの小ビン、 どうなりました? |
糸: |
ああ。睡眠薬のビン、ッスか。 アンタには、いいニュースッス。 ビンから、被害者・衣袋 武志の 指紋が発見されたッス。 |
真: | ‥‥ということは‥‥。 |
糸: |
どうやら、荷星を眠らせたのは、 被害者だったみたいッス。 |
成: | (やっぱり‥‥) |
を法廷記録にファイルした。 | |
ス: | あ。‥‥こんにちは。 |
真: |
どうしたの? こんなところで。 |
ス: |
ええ。‥‥楽屋のかたづけを、 ちょっとね。 もう、ニボサブさんが 使うこともないし。 |
真: |
え? え? ‥‥どうして! ニボサブさん、明日、 ムザイになるんだよ! |
ス: |
それは、本当にありがとう ございます。 でも‥‥。 トノサマン、今週で 最終回なんですよ‥‥。 |
真: | ええええええええええええええっ! |
成: |
イブクロさんのこと なんですけど‥‥。 |
ス: | はい。 |
成: |
事件当日、あの人、第2スタジオに 行っているんですよ。 |
ス: |
え? 第1スタジオじゃなかった んですか? |
真: |
しかも、しかも、トノサマンの 着ぐるみを盗んでいるんだよ! |
ス: |
ええっ! イブクロさん、なんで そんなことを‥‥。 ‥‥‥‥。 やっぱり。 あのウワサ、本当だったのかな。 |
真: | ”ウワサ?” |
ス: |
イブクロさん、姫神プロデューサー に、何か弱みをにぎられていて、 なんでも言いなりになって いたみたいなんですよ‥‥。 |
真: |
”弱み”‥‥って? 教えて! |
ス: |
‥‥‥‥。 弱みというのは、その人の うしろぐらい部分、弱点です。 |
真: |
‥‥‥‥。 知ってるよ、そんなこと。 |
ス: |
5年前、ここでイブクロさん主演の 映画を撮っていたんですよ。 当時、できたばっかりだった 第2スタジオで。 その撮影中に、何か事故が あったらしいんです。 それ以来、第2スタジオは 使われなくなっちゃって。 そのときのセットが、今も あるんです。 |
成: |
(セット‥‥? あのコテージ、か‥‥) |
真: | ト、トノサマン、終わっちゃうの! |
ス: |
‥‥はい。 でも、しょうがないですよ。 人を死なせてしまったんですから。 ‥‥現実の世界で。 |
真: | ううう‥‥。 |
ス: |
それに、この英都撮影所では、 これからは、もういっさい、 子供向けの番組は作りません。 |
真: |
え、ええっ! ‥‥ど、どうして! |
ス: |
私もさびしいんですけど。 でも、それが英都撮影所の 方針なんです‥‥。 |
成: |
どうして子供番組を 作らないのかな? |
ス: |
英都のエラい人たちは、 トノサマンを‥‥ この事件のことを、 わすれたいんです。 誰にも触れられたく ないんですよ。 |
真: |
そ、そんなの、勝手な 話だよ‥‥。 トノサマンが好きな子供たちは どうすればいいの! |
ス: |
だいじょうぶですよ。 きっと子供たちだって、 すぐに新しいヒーローを 見つけますから。 |
真: |
そんなことないよ! 今、いきなり番組が終わったら、 みんな悲しむよ。 ね、なるほどくん! なんか言ってよ! |
成: |
え。 そ、そうだなあ‥‥。 (ここは、コトバで言うより、 証拠品のチカラを借りようか) ちょっといいかな。 ‥‥これを見てほしいんだけど。 |
ス: | ‥‥これは‥‥。 |
成: |
ファンの子が、たった1人で 集めた写真だよ。 子供たちは、トノサマンが 大好きなんだよ。 オトナたちのつごうで、 いきなり打ち切りなんて、 スタッフなら、そんなことを しちゃあダメだよ。 |
ス: |
‥‥‥‥。 ‥‥‥‥‥‥。 そうなんですよね‥‥。 ‥‥わかりました! 私にできること、ありますか? |
成: |
あるよ。 聞かせてほしいんだ。 そこまでしてかくしたがる、 英都撮影所のヒミツを。 ”5年前の事故”のことを 教えてくれないか。 |
ス: |
‥‥‥‥。 ‥‥はい! |
成: |
聞かせてくれないか。 5年前、何があったか‥‥。 |
ス: |
‥‥はい。私の聞いていることを お話しします。 5年前の撮影で、イブクロさん、 人を‥‥死なせたみたいなんです。 |
真: | え、ひ‥‥人を‥‥? |
ス: |
あ! モチロン 事故だったんですよ! それで‥‥。 うまく立ち回って、もみ消したのが 姫神プロデューサーだったんです。 |
成: |
‥‥それが、イブクロさんの ”弱み”ですか‥‥。 |
真: |
だからイブクロさん、姫神 プロデューサーの言いなりに‥‥。 ‥‥‥‥。 でも、事故だったんなら、 公表しちゃえばよかったのに。 |
ス: |
当時、イブクロさんは 大スターでしたから、 なんとしても かくしておきたかったんです。 |
真: | そうだったんだ‥‥。 |
ス: |
警備員のオバチャンなら、 もっとくわしく知っています。 そのころから、この撮影所に いましたから‥‥。 |
成: |
ありがとう。 ‥‥聞いてみるよ。 (あのオバチャン、話して くれるかな‥‥) |