成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン(大場 カオル)…灰 | |
スタッフの子…黄 | |
大滝 九太…黄緑 | |
カントク(宇在 拓也)…橙 | |
姫神 サクラ…紫 |
地方裁判所 第4法廷 | |
裁: |
これより、荷星 三郎の 法廷を開廷します。 |
御: |
検察側、 準備完了しております。 |
成: |
弁護側も、 準備完了しています。 |
裁: |
今日は、審理の最終日になります。 検察側、弁護側とも、決定的な 証拠の提出をするように。 では、御剣検事。 ‥‥冒頭弁論をおねがいします。 |
御: |
昨日の法廷で、弁護人によって 新しい説が提示された。 殺人現場は、実は 第2スタジオだった、という。 本日は、実際にコテージにいた 人間を証人として呼び、 その事実関係をハッキリさせたい。 |
裁: | ふむう‥‥わかりました。 |
成: |
(御剣のヤツ‥‥今日はちょっと ひかえめだな‥‥) |
裁: |
では、 証人を呼んでいただきましょう。 |
御: |
事件当日、第2スタジオの コテージで会議をしていた、 姫神 サクラプロデューサーを。
|
御: |
証人。 ‥‥名前と、職業を。 |
姫: |
‥‥‥‥。 姫神 サクラ。 英都撮影所のプロデューサー。 |
御: |
証人は、事件当日、 第2スタジオのコテージで‥‥ |
姫: |
‥‥そんなことは、みんな 知ってるでしょ。 |
御: | ‥‥‥‥? |
姫: |
よけいなことはキライ。 どうしてもやりたいなら、 アタクシぬきでやりなさい。 |
御: | むぐぐ。 |
裁: |
で、では、証人。 事件当日のことを、 <<証言>>してください。 |
真: |
なるほどくん! コイツがハンニンなんだよね! |
成: |
ああ。‥‥そうさ! (ゼッタイ、シッポを つかんでやるぞ‥‥) |
姫: |
『‥‥正午の少し前、第2スタジオの コテージに入ったわ。』(証言1) 『会議が始まったのは、正午。 終わったのは4時。』(証言2) 『それから、リハーサルがあるから 第1スタジオへ。』(証言3) 『‥‥‥‥そう、つかれてたから、 宇在に運ばせたわ。』(証言4) 『会議の休憩は、 2時30分から15分間だった。』(証言5) 『宇在といっしょに、コテージの前で ホネつきステーキを食べていたわ。』(証言6) 第1スタジオに行って、そこで イブクロの死体を見つけたわけ。 ‥‥そんなところね。 |
裁: |
ふむう‥‥。 証言で、1つだけ 気になったことがあります。 ”つかれていたから、宇在に 運ばせた”‥‥というのは? |
姫: | 車。 |
裁: | ‥‥は? |
姫: |
ライトバンがあったでしょ? 第2スタジオ。 あれ、宇在に運転させたの。 ‥‥サルマゲどんのクビも あって、あぶなかったし。 |
法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
な、なるほど‥‥。 では、弁護人。 <<尋問>>‥‥を。 |
真: |
最後の勝負だよ。 ‥‥がんばって! |
成: | 思ったとおり、そう来ましたね! |
姫: | ‥‥‥‥。 |
成: |
”ホネつきステーキを 食べていた”‥‥。 しかし、それはおかしいんです! |
裁: | ど‥‥どういうことですか? |
成: | これを見てください。 |
裁: | 皿‥‥ですか。 |
成: |
これは、スタッフエリアの テーブルにあった皿です。 ごらんのように、 大きなホネが残っている。 |
御: |
当然だろう。 ‥‥ホネつきステーキなんだから。 |
成: |
そう。‥‥当然です。 しかし。 ‥‥思い出していただきたい。 コテージの外にあった、 テーブルの上を‥‥。 このテーブルの皿の上には‥‥、 ホネは残っていない! |
姫: |
! ‥‥‥‥。 |
成: |
姫神さん。 もしホネつきステーキを 食べたのなら、 当然ですが、ホネが残ります。 つまり、あなたは‥‥ |
成: |
あなたは休憩時間中、 ステーキは食べなかったのです! きっとステーキは、焼却炉にでも 捨ててしまったのでしょう! |
姫: |
! ‥‥‥‥‥‥。 |
裁: |
で、では‥‥、 姫神さんは休憩中、 何をしていたと‥‥? |
成: | 決まっているじゃないですか! |
成: |
もちろん、トノサマンに 会っていたんですよ! |
裁: |
静粛に! ま、まさか‥‥! |
成: |
そのとおりです! ステーキを食べるため、 コテージを出た姫神さんは、 トノサマンに出くわしたのです! そしてあなたは、彼を‥‥ 殺害したんです! ‥‥その手で! |
姫: | !! |
裁: |
べ‥‥弁護人! そ、その発言は、問題が‥‥ |
御: |
どういうことだ! 成歩堂、キミは‥‥ |
姫: |
かまわないわ。 ‥‥‥‥。 アタクシがやった、と? |
成: | ‥‥はい。 |
姫: |
‥‥おもしろいわ。 ひさしぶりに、タイクツを わすれられそうね‥‥。 ‥‥‥‥。 いいわ。 これから、アナタとアタクシの チエくらべと行きましょう。 |
成: | (受けて立つぞ‥‥!) |
真: |
なるほどくん! ‥‥しっかりね! |
姫: |
そうね‥‥。 たしか、凶器は トノサマン・スピアーだったわね。 |
成: | ‥‥はい。 |
姫: |
アタクシ、見たとおり、 かよわい女よ。 こんなアタクシが、重いスピアーを 自由にあつかえると思って? |
成: |
‥‥まあ、あなたでなくても、 あれを武器にして戦うのは、 フツーなら、ムリでしょうね。 |
姫: |
‥‥フッ。 わかってるじゃない。 |
成: |
でも。 そんなことは、このさい 関係ないんですよ‥‥。 |
姫: |
‥‥‥‥。 どういうこと? |
成: |
凶器は、トノサマン・スピアーでは なかったんですからね。 |
姫: | なッ! |
裁: |
な、何を言い出すんですか! スピアーは、死体のそばに ころがっていたんですよ! |
成: |
証拠をお見せしましょう。 トノサマン・スピアーが 凶器ではないという証拠を‥‥! |
成: |
証拠は、言うまでもなく、 こいつですよ。 |
御: | 凶器‥‥そのものかッ! |
成: |
いいですか。 午前中の打ち合わせで、 このスピアーは一度、折れている! 折れたスピアーを修理したのは ‥‥オバチャンです。 ガムテープでね。 そんなもので、 ぶあつい着ぐるみをつけた被害者の 胸を、刺せるわけがない! |
裁: | せ、静粛に‥‥! |
御: |
弁護人! どういうことだ! 自分が何を言ってるか‥‥ |
姫: |
おだまり! アタクシをムシしないこと。 |
御: | うむむ‥‥。 |
姫: |
どういうことかしら? 自分が何を言ってるか、 わかってるの? トノサマン・スピアーが 凶器じゃないというなら、 いったい、衣袋は どうやって殺されたと言うの? |
裁: |
どうですか? イブクロさんを 殺害した凶器を、提示できますか? |
成: |
できなければ、こんなことは 言いませんよ。 |
裁: |
いつもながら、ウサンくさいほどの 自信ですね‥‥。 では、示していただきましょう。 イブクロさんを殺害した凶器を。 |
成: | ‥‥この写真を見てください。 |
裁: |
な‥‥なんですか、これは‥‥。 ‥‥階段の上にいるのは‥‥ い、衣袋 武志ですか‥‥! |
裁: |
せ、静粛に! 静粛に! さわぎがおさまらなければ、 審理を中止しますぞ! 弁護人! どういうことですか これは! |
成: |
‥‥今から5年前。 英都撮影所で、 不幸な事故がありました。 見てのとおりの事故が、ね。 このことは、いっさい 外部には知らされなかった。 英都だけのヒミツだったのです。 |
御: |
それが、今回の事件と なんの関係があるというのだ! |
成: |
御剣検事‥‥。 ‥‥まだわかりませんか? 階段から転落して、鉄柵で 胸を刺された、この男を見て‥‥。 |
御: |
‥‥あ、ああッ! な‥‥なんということだ‥‥。 |
成: |
この事故があったのは、今から 5年前でした。 それと同じコトが、 ふたたび、起こったのです! |
姫: | !! |
裁: |
成歩堂くん! ‥‥つづけなさい! |
成: |
事件のあった日の、 午後2時30分! 姫神 サクラは、コテージのそとで イブクロさんと会ったのです! そして彼女は、 故意か事故かはわかりませんが、 イブクロさんを‥‥ つきおとしたのです! ‥‥鉄柵の上に。 5年前、イブクロさん自身が そうしたように‥‥。 |
姫: | ‥‥‥‥! |
御: |
つまり、被害者は‥‥ 衣袋 武志は‥‥、 自分が人を死なせてしまった、 そのやり方で、 今度は‥‥自分が‥‥ 死んでしまったわけか! |
成: |
そうなりますね。 なんとも、ヒニクな話ですが。 |
姫: |
‥‥‥‥‥‥ フ‥‥フッ。 よくできた話。 その、出まかせの才能‥‥。 ウチの脚本家としてほしいわね。 |
成: | 何か、反論がありますか? |
姫: |
‥‥‥‥。 ‥‥いい? アナタの言うとおり、衣袋が コテージで死んだとしましょう。 でも実際は、死体は 第1スタジオで見つかったのよ。 アクダイカーンの着ぐるみの 中からね。 死体を第1スタジオに運んで、 着ぐるみの中に入れる‥‥、 そんなの、休憩時間の15分じゃ ゼッタイに不可能よ。 いったい私は、どうやって 死体を始末できたと言うの? |
成: | ‥‥‥‥。 |
御: |
コテージでは、2時30分から 15分だけ、休憩をとった。 その間に、衣袋 武志を階段から つきおとして殺害して、 第1スタジオに運んで、 着ぐるみの中に入れる‥‥。 たしかに、時間的にムリが あるな‥‥。 |
裁: |
ふむう‥‥たしかに。 いかがですか? 弁護人。 ‥‥死体の問題については? |
成: |
死体を運び出す方法が、 他にもあったら、どうです? |
姫: | ‥‥どういうこと? |
成: |
何も、ムリにすべてを 15分におさめることはない。 あなたには、死体を運び出す 方法が、1つだけあったのです。 |
姫: |
!! い‥‥いいわ。 聞かせてもらいましょう? |
裁: |
では、弁護人。 示してもらいましょう。 ‥‥死体を運んだ方法を。 |
成: |
姫神さん。 あなたは、死体を第1スタジオに 運んだのです。 この、ライトバンに乗せて。 |
姫: | !! |
成: |
あなたはさっき、 こう証言しましたね‥‥。 |
姫: |
『会議のあと、リハーサルがあるから 第1スタジオへ。 つかれてたから、宇在に 運ばせたわ。 ライトバンがあったでしょ? ‥‥宇在に運転させたの。』 |
成: |
あなたは、ライトバンに死体を 乗せて第1スタジオへ行ったんだ! そして、みんなが集まる前に、 死体を着ぐるみに入れたんです! |
姫: | ‥‥ッ! |
御: |
ちょっと待て! ライトバンを運転したのは、 宇在カントクだったはずだ! 弁護人は、宇在カントクが 共犯だったと言うのか! |
成: |
トーゼン、宇在カントクは 共犯です! 死体をライトバンに積み込むのも、 着ぐるみに入れるのも、 姫神さん1人では、 ムリですからね! それに、トノサマンの着ぐるみも 始末させたんじゃないですか? イブクロさんの血が ついていますからね! おそらく、あの小さな焼却炉で 焼いたのでしょう‥‥。 どうですか! 姫神さん! ‥‥まだつづけますか? |
姫: |
‥‥‥‥‥‥‥‥。 もう、ケッコウ。 アナタ‥‥見かけ以上に やるわね。 フッ‥‥。 アタクシの負け。 ‥‥楽しかったわ。 |
成: |
(‥‥やった‥‥) ‥‥ |
御: | ‥‥‥‥ |
裁: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
‥‥あの。 それで? |
姫: | ? |
成: |
”?”じゃありませんよ。 何か言うことはないんですか? |
姫: | 何を言えばいいの? |
成: |
え? ”負けましたわ”とかなんとか。 |
姫: | それならさっき、言ったわ。 |
成: |
つ、つまり! 姫神 サクラさん! ‥‥あなたですね? 衣袋 武志を殺害したのは! ‥‥ |
御: | ‥‥‥‥ |
裁: | ‥‥‥‥‥‥ |
姫: | わからないわ。 |
成: | は? |
姫: |
なんでそうなるのかしら? いい? アタクシ、あなたとチエくらべを したのよ。 その結果、たしかにアタクシ、 犯行は可能だったみたい。 |
成: | そのとおりです! |
姫: |
‥‥でも、それはあくまで 可能性の話。 証拠となると、またベツよ。 決定的な証拠、ないじゃない。 |
成: |
‥‥な、な、な、な、な、な、な、 な、な、な、な、な、な、な‥‥ なんですってェェェェェェェェェ! |
裁: |
せ‥‥静粛に! 御剣検事‥‥ どう思われますか? |
御: |
う‥‥ううむ‥‥、むむむ。 も、もちろん、証人の 言うとおりである‥‥! ‥‥‥‥。 たしかに、きわめてアヤシイが、 証拠となると‥‥ない‥‥。 |
成: |
(‥‥! 御剣のヤツが‥‥迷っている!) |
姫: |
‥‥‥‥。 どうしたのかしら? アタクシは今日、 証人としてここに来たのよ。 質問がなければ、もう帰るわ。 |
成: |
(く‥‥くそっ! ‥‥どうする‥‥!) |
成: | ‥‥‥‥。 |
裁: | どうしましたか? 弁護人。 |
成: |
‥‥机を叩いているあいだに 質問を考えようと思いましたが、 何も浮かびませんでした。 |
裁: |
‥‥‥‥。 それは、ごくろうさまでした。 |
成: |
(‥‥く‥‥くそ! 今度こそ、これまでか‥‥) |
裁: |
では、質問もないようなので‥‥、 これで姫神さんに対する 質問を終了します! |