成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
矢張 政志…紺 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
ボート小屋のオジさん…灰 | |
サユリさん…黄緑 | |
狩魔 豪…紫 |
ナ: |
『たしかに、あの晩は寒くて、 ぎょうさんキリが出ててん。』(証言1) 『せやからウチ、カメラをセットして クルマの中に戻ったワケや。』(証言2) 『でもな。ウチ、ちゃんと 双眼鏡を持ってきてたからな。』(証言3) 『湖で音がしたときは、双眼鏡を 使ォて見たわけや。』(証言4) どや。これなら問題ないやろ? |
裁: |
ふむう‥‥。双眼鏡を使った‥‥。 わかりました。 では、弁護人。‥‥尋問を。 |
成: |
(なんとしても、ムジュンを 見つけなければ‥‥) |
成: | ”双眼鏡”ですか? |
ナ: | せや。双眼鏡や。 |
成: |
昨日のお話では、たしか、あなたは 流星を撮影していたんですよね? |
ナ: | そ‥‥そうやけど。 |
成: |
星を見るなら、双眼鏡ではなく、 望遠鏡じゃないんですか‥‥? |
ナ: | ‥‥! |
成: |
そもそも、 あなたがセットしたカメラは、 ほんとうに、流星を撮影する ためのものだったのですか? |
狩: |
カメラのことなど、事件には なんのカンケイもない! |
成: | そんなことは言い切れない! |
裁: |
ふむう‥‥成歩堂くん。 カメラのことは、それほど 重要なことなのですか? もし重要なことならば、 つづけて尋問をゆるしましょう。 |
狩: |
だが! 何も出なかった場合は、 カクゴしてもらうぞ! |
裁: |
弁護人、どうしますか? カメラの問題を、さらに 追求しますか? |
成: |
(ここは、勝負どころだ! 強気にいこう!) カメラの問題は、とんでもなく 重要です。 この事件のすべてと言っても いいでしょう。 ‥‥だから、証言をして いただきたい! (‥‥なんて、出まかせを 言ってしまった‥‥) |
裁: |
わかりました! 証人! カメラについて、 キチンと証言してください。 |
ナ: |
はいはい。 『そのカメラは、流星を撮影する ためにセットしたものや。』(証言・補足) |
成: |
”流星を撮影していた” ‥‥その証言は、ウソですね! |
ナ: | な、なんやてェ! |
成: |
ぼくは昨日、実際に セットされたカメラを見ました。 あきらかにカメラは、湖面に向けて セットしてありました! 流星を撮影するなら、カメラは 空を向いているはずです! |
ナ: | ううッ! |
裁: |
成歩堂くん! どういうことですか? |
成: |
証人は、流星を撮影して いたのではなかった! |
ナ: | ‥‥‥‥! |
裁: |
じゃ、じゃあ‥‥ 何を撮影していたんですか? |
成: |
裁判長! ‥‥これを見てください。 ナツミさんが何を撮影 しようとしていたか‥‥! |
成: |
ナツミさん。 あなたが撮影しようと していたのは、これです! |
裁: |
なんですか? ‥‥雑誌の記事‥‥? ”ひょっしー”‥‥? ああ‥‥最近、ひょうたん湖で 目撃された‥‥。 |
成: |
ナツミさん! ‥‥どうなんですか? |
ナ: |
‥‥し、知らんで! なんや、証拠でもあるん? ウチが、その”ひょっしー”の 写真を撮ろうとしてた証拠や! |
成: | 証拠! もちろんありますよ! |
裁: |
ふむう。 ‥‥それはおもしろい。 では、見せていただきましょう。 ‥‥慎重におねがいしますよ。 証人が、ヒョッシーの写真を撮ろう としていたことを示す、証拠品を! |
成: |
証拠は、ナツミさん! あなたのカメラですよ! |
ナ: | ‥‥! |
成: |
あなたのカメラは、”破裂音”に 反応するようセットされていた。 この写真が撮られたのも、銃声に カメラが反応したからです。 |
ナ: | ‥‥‥‥。 |
成: |
そして、ここに”ヒョッシー”の 記事があります。 この記事によると、 ヒョッシーがあらわれるときには、 ”破裂音”がするらしいですね。 どうですか! あなたはヒョッシーを撮影しようと していた! だから、カメラの自動シャッターを ”破裂音”にセットしていたんだ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! ‥‥なるほど‥‥。 私もじつは、オカシイと 思っていたんですよ‥‥。 |
成: |
(ホントかいな‥‥) ‥‥どうです? ナツミさん。 あなたは、ヒョッシーを撮ろうと、 キャンプをしていたんですね? |
ナ: |
‥‥‥‥。 そうや。 ‥‥オミゴトやね。 さすがは弁護士さんや。 でも。 だから、何なん? |
成: | ‥‥え? |
ナ: |
ウチの見たものに、 変わりはないで。 |
狩: |
‥‥そのとおりだ。 長い時間をかけて、キサマが 証明したことは、 この証人が、カイジュウの撮影を ユメ見る、バカな女ということだ。 |
ナ: | な、なんやて! |
狩: |
しかし、 だからどうだというのだ? 何も変わらないではないか? |
成: |
(そんなことはない。 お前たちは、ヒョッシーのことを かくそうとしていた。 かくさなければならない ワケがあったからだ! 今度は、 それを暴いてやるぞ‥‥) |
裁: |
証人。 なぜ、ヒョッシーのことを かくそうとしたのですか? 最後に、すべてを <<証言>>してください。 |
ナ: |
‥‥‥‥。 わかったワ。‥‥証言、する。 ‥‥なんも変わらんと思うけど。 |
成: |
(ゼッタイ、何かが 変わっているはずだ。 それを‥‥見抜く!) |
狩: | ‥‥‥‥。 |
ナ: |
『実はウチ、大学の研究員 ちゃうんや。』(証言1) 『ホンマはな‥‥、 フリーカメラマンやってんねん。』(証言2) 『今、話題のヒョッシーの ハッキリした写真を撮れば、』(証言3) 『スクープになる思うて、 キャンプ張っとったんや。』(証言4) 『でも、かくしてたんは、 それだけやで。』(証言5) 『”パアン”て音がして、見たら 湖にボートが浮かんでたんや。』(証言6) 『他に見るモンもないねんから、 ずっとボート見てるしかないやん。』(証言7) 『で、男の手もとが光って、 もう1回、音が聞こえたんや。』(証言8) ウチはホンマ、ボートをジッと 見てたんや。‥‥ホンマやで。 |
裁: |
ふむう‥‥。 では成歩堂くん、<<尋問>>を‥‥。 |
狩: |
証人の証言は、 さっきと変わっておらぬ。 証人が研究員だろうと カメラマンだろうと、同じこと! <<尋問>>など、いらぬ! |
裁: | は‥‥はあ。 |
成: |
ぼくはあくまで、 弁護側の権利を主張します! (狩魔のコトバには、 かならず意味がある‥‥ 尋問をさせたくないのは、 今の証言にムジュンが‥‥) |
裁: |
‥‥わかりました。 <<尋問>>を認めます。 そこまで言うなら、何か 考えがあるのでしょう。 |
狩: | あるか、そんなもの! |
成: | (ははは‥‥) |
裁: |
わかっていると思いますが、 これは最後の尋問です。 問題がなかったら、証人は 退廷してもらいます。 その時点で、判決を 言い渡したいと思います。 ‥‥よろしいですね。 |
成: | ‥‥‥‥はい。 |
成: |
ナツミさん! あなたは、本当にボートを 見ていたんですか? |
ナ: |
な‥‥何を言うんや! アタリマエやん! 湖には、ボートしかなかったんや! ‥‥フツー、それを見るやん! |
成: |
フツーはそうかもしれません。 しかし、あなたはフツーでは なかった! |
ナ: | な‥‥、なんやて! |
成: |
あなたは、ヒョッシーの写真を 撮るためにキャンプをしていた! それならば! 破裂音を聞いたあなたは、 何はともあれ、 湖の上に、ヒョッシーのすがたを 探したはずです! だから、ボートなんかに 注意をはらうハズがない! |
ナ: | あッ! |
裁: |
静粛に! つづけてください! 成歩堂くん! |
成: |
あなたは、双眼鏡でボートを 見ていたと証言した! しかし、ただボートを見るのに、 双眼鏡はいらない! あなたは、必死にヒョッシーを 探していたんです! |
ナ: |
‥‥! ‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥。 |
成: | どうですかッ! |
ナ: |
‥‥うう‥‥。 そういえば、ウチ‥‥。 たしかに‥‥双眼鏡を取って、 湖をスミズミまで、何度も‥‥ ヒョッシーがいないかと 思って‥‥。 |
裁: |
しょ‥‥証人! では、証人は、ボートは 見ていなかったと‥‥? |
ナ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ご‥‥ゴメンな。 ウソついてたワケじゃ ないねん‥‥。 ウチ‥‥殺人事件の目撃者に なれる思うて、その‥‥。 ちょっとウレシなってもうてな。 ボートを見た、て‥‥ 思い込んでもうてん‥‥。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥ひ、人騒がせな‥‥。 |
ナ: |
で、でも‥‥、でもな! この写真は、バッチリ証拠に なるやろ! |
裁: |
ふむう‥‥。 しかし、誰が撃ったかまでは、 見えませんよ。 |
ナ: |
そうやろ! そうやろ! ‥‥だからなァ、 ウチ、この写真を‥‥、 |
狩: |
‥‥証人。もうケッコウだ。 ごくろうだった。‥‥もう、 キサマは口を開く必要はない。 |
ナ: | キ‥‥”キサマ”? |
成: |
(ナツミさん、今、何を 言いかけたんだろう‥‥? ”だからなァ、ウチ、 この写真を‥‥”か。 そういえば、昨日‥‥) |
糸: |
『‥‥しかも彼女、 証拠写真まで撮っていたッス。』 |
成: |
『この写真じゃあ、誰が撃ったか 見えませんね‥‥。』 |
糸: |
『彼女、これからその写真を 拡大するって言ってたッス。 画像はアラくなるけど、もう少し ハッキリするはずや! ‥‥とか。』 |
成: |
(彼女は あの写真を拡大したはずだ。 なぜ狩魔は、その写真を 提出させないんだ‥‥? もしかして‥‥ もしかしたら、その拡大写真に、 何か狩魔に不利なことが‥‥? ‥‥ここは、勝負どころだ! ぼくのカン違いだったら、 御剣の有罪は決定的になる! さて‥‥どうする‥‥!) |
成: |
ナツミさん! この写真を見てください。 あなたは、この写真を 拡大したそうですね! |
ナ: | そ、そうや! そうなんや! |
成: |
その写真は、 なぜ提出されないんですか! |
狩: |
そ‥‥そんな写真は 存在しない! |
ナ: |
ナニ言ってるんや! ”それは提出してはならん” ってドナりつけたのは、 アンタやないか! |
裁: |
どういうことですか! 狩魔検事! |
狩: | ウ‥‥ウム‥‥ |
成: |
ナツミさん! 提出してください! ‥‥拡大写真を! |
狩: | 検察側は、提出に反対する! |
裁: |
異議は却下します。 証人。‥‥写真を見せてください。 |
ナ: | これが、そうや。 |
裁: |
‥‥やはり、誰が撃ったかは 見わけられませんね‥‥。 被告人であるような、 そうではないような‥‥。 とにかく、証拠として 受理しましょう。 |
拡大写真に差しかえた。 | |
狩: | ‥‥気がすんだか? 弁護士。 |
成: |
ううん‥‥。 (何かあるはずなんだが‥‥) |
狩: |
拡大写真‥‥? ハッ! ‥‥なんの証拠にもならん。 だからワガハイは、提出するなと 言ったのだ! |
裁: |
ふむう‥‥。 となると、この証人に対する 尋問は‥‥ |
狩: | 当然、終了だ! |
裁: |
では、これで大沢木 ナツミさんの 尋問を終了します。 |
狩: |
‥‥やれやれ。 ずいぶん回り道をしたものだ‥‥。 |
裁: |
狩魔検事。 ‥‥他に何か、ありますか? |
狩: |
最初に言ったはずだ。 決定的な証拠。 決定的な証人。 ‥‥他に何か、必要なものは? |
裁: |
そうですね。ありません。 では、ついに判決を くだすときが来たようですね。 |
成: |
(‥‥こんなハズはない! この写真には、何か手がかりが かくされているはずだ! くそっ! ‥‥どうする‥‥!) |
成: |
裁判長! この拡大写真には、決定的に おかしい点があります! |
裁: |
な、なんですって! 成歩堂くん! そのおかしな点とは なんですか! |
成: |
(ええい! もう あとには引けないぞ‥‥! 裁判長に、この写真の おかしいところを示そう!) |
成: | それは、ここです! |
裁: |
‥‥発砲している人物、ですか。 ‥‥わかりません。この人物の どこがオカシイのでしょう? |
成: |
ピストルを持っている手に 注目していただきたい。 |
裁: | ”手”‥‥? |
成: |
その手は、ある証拠と 決定的にムジュンしているんです。 |
裁: | この男の左手が‥‥ですか? |
成: |
では、お見せしましょう。 写真の男の左手とムジュンする、 決定的な証拠を! |
成: |
ハッキリしています。 写真の男は、ピストルを 間違いなく左手で撃っています。 しかし! 凶器のピストルには、御剣検事の ”右手”の指紋がついていた! つまり! この写真でピストルを 撃っている人物は、 御剣検事では、あり得ないのです! |
裁: |
‥‥どうやら、みなさんも おちついたようですから、 審理を再開しましょう。 成歩堂くん。 |
成: | はい。 |
裁: |
あなたは、ミゴトに 証明しました。 御剣検事が、ピストルを 撃っていないことを。 ‥‥しかし。 そうなると、大きな問題が あります。 誰に撃たれたのか? |
狩: |
そのとおり。 湖には、ごらんのとおり、 彼ら以外に人影はない‥‥! 被告の他に誰が、被害者を 撃てたというのか! |
成: |
答えは1つしか残っていない! 被害者を撃ったのは、 被害者自身だったのです! |
裁: |
‥‥静粛に! つまり‥‥被害者は、 ”自殺”だったと‥‥? |
成: |
そうです。それ以外に 考えようがありません。 |
裁: |
‥‥ふむう‥‥ たしかに、それ以外は 考えられない‥‥ |
狩: |
ザンネンだが、弁護士‥‥。 自殺は、あり得ない。 |
成: | ‥‥な、なんですって! |
狩: |
被害者の傷あとを調べれば、 撃たれた距離がわかるのだ。 |
成: | 撃たれた‥‥距離‥‥? |
狩: |
被害者は、1m以上はなれた 場所から撃たれている。 |
成: | ‥‥1m以上‥‥! |
狩: | 自殺では、あり得ないのだよ。 |
裁: |
静粛に! 静粛に! 狩魔検事! そのデータは 間違いないんですか! |
狩: |
検察側も、自殺の可能性は 考えたからな‥‥。 |
書きなおした。 | |
裁: |
‥‥ふむう‥‥。 わかりました。 では、私の考えを述べましょう。 状況を考えれば、犯人は 被告・御剣氏しかあり得ません。 しかし。 ピストルの指紋は、撃った人間は 御剣氏でないことを示している。 そこで。 本日の審理は、ここで 中断したいと思います。 弁護側・検察側、それぞれに、 さらなる調査を命じます。 よろしいですか。 |
成: | はい。 |
狩: | ‥‥‥‥。 |
裁: |
では、 本日はこれにて閉廷! |
地方裁判所 被告人第2控え室 | |
成: | あー、あぶなかった。 |
御: | ‥‥‥‥。 |
成: |
おい。 何か、言うことはないのか? |
御: |
まだ、無罪判決を 受けたわけではないからな。 |
成: |
やれやれ。 しかし、いったい どうなってるんだ? 被害者が自殺じゃなかったら、 いったい誰が‥‥? しかも、撃たれた距離は、 約1mだぞ‥‥。 |
御: |
‥‥‥‥ な、なんだ! その目つきは! わた、私じゃないぞ! |
成: | 冗談だよ。 |
御: | ‥‥うむむ。 |
成: |
まあ、いいや。 じゃあ、ぼくはとりあえず、 真宵ちゃんのところに行くから。 |
御: |
ああ。 ‥‥成歩堂。 |
成: | ? |
御: | 彼女に、伝えてくれ。 |
成: | 何を? |
御: |
‥‥ ‥‥‥‥ は‥‥‥‥ 発言するときは、 もっと注意しろ、とな。 ‥‥それだけだ。 |
成: | (‥‥スナオじゃないヤツ‥‥) |
成: |
明日の法廷の武器にするため、 大沢木 ナツミさんの証言を まとめた書類をもらった。 けっきょく彼女、撃った人物は 見ていなかったので、 聞いた”音”だけが、証言として 認められたみたいだ。 |
法廷記録にファイルした。 |