成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
矢張 政志…紺 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
ボート小屋のオジさん…灰 | |
サユリさん…黄緑 | |
狩魔 豪…紫 |
地方裁判所 第3法廷 | |
裁: |
これより、御剣 怜侍の 法廷を開廷します。 |
成: |
弁護側、 準備完了しています。 |
狩: |
‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥。 |
裁: |
はい。では、検察側も 準備ができている、ということで。 |
成: |
(まったく、どっちがエラいんだか わからないな‥‥) |
裁: |
では、狩魔検事。 ‥‥冒頭弁論を。 |
狩: |
‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥。 |
裁: |
はい。では、冒頭弁論は 特になし、ということで‥‥ |
狩: |
カッテに進めるな、裁判長! ワガハイは今、意味シンな ”間”をとっておったのだ! |
裁: |
は、はあ。 ‥‥それはどうも。 |
狩: |
予告しよう。 本日の法廷は、これより 3分以内で終わるだろう! |
裁: |
せ‥‥、静粛に! 狩魔検事! 今の発言は、 いったいどういう‥‥ |
狩: |
キサマもいちいちうるさい男だ! 3分と言った以上、 ムダな時間はない。 さっさと証人を呼ばせて もらうぞ。 |
裁: | は、はあ。 |
狩: |
では、決定的な目撃者を 入廷させていただこう! |
成: |
(‥‥あの、ボート小屋の ナゾのオジさんか‥‥) |
狩: | 証人。‥‥職業を。 |
オ: |
もが‥‥はあ。 ‥‥‥‥‥‥ ひょうたん湖公園で、 ソバ屋”長寿庵”を‥‥ |
狩: | ‥‥‥‥‥‥‥‥。 |
オ: |
あ、その。ボート、 貸したりしとりますハイ。 |
狩: |
証人は、事件の夜は、 ボート管理小屋に‥‥? |
オ: |
え‥‥はあ。 おりましたですハイ。 |
狩: | では、<<証言>>を。 |
成: |
(ちょっと待てよ。 あのオジさん、ケッキョク 誰なんだよ‥‥) |
成: |
ちょっと待ってください! 証人はまだ、 名前を言っていません! |
狩: |
聞いていなかったのか、弁護士! ワガハイは”3分で法廷を 終わらせる”と予告したのだ! くだらぬ質問をせずに、 協力したまえ! |
成: | (‥‥するワケないだろ!) |
裁: |
証人。 名前を言ってください。 |
オ: |
‥‥‥‥もが。 ‥‥‥‥‥‥ それが、そのう‥‥。 ハッキリしないもんでハイ。 |
裁: | どういうことですか? |
オ: | キオクが‥‥そのお‥‥。 |
狩: |
裁判長。 この証人には、数年前より 記憶がないのだ。 したがって、 名前もわからない。 |
裁: | ‥‥ふむう‥‥キオクが‥‥。 |
狩: |
しかし、事件を目撃したのは 3日前。 証言するのに、問題はない。 |
裁: |
‥‥わかりました。 では、<<証言>>をして いただきましょう。 |
オ: |
『あれは24日の夜、12時 ちょっとすぎのことでしたハイ。』(証言1) 『いつもどおり、ソバ屋‥‥ ボート管理小屋にいたです。』(証言2) 『そしたら、パアンという音が 聞こえたですハイ。』(証言3) 『窓から外を見ると、ボートが1つ、 浮かんでおりまして。』(証言4) 『そのとき、もう1発、パアンと。』(証言5) 『そのうち、ボートが帰ってきて、 男が1人、窓の外をとおりました。』(証言6) |
裁: |
ふむう‥‥。では、 <<尋問>>を‥‥ |
狩: |
この証言に、モンクを つけられるところなど、ない! したがって、<<尋問>>など 必要なし! ‥‥というか、もう予告した 3分まで、あと10秒しかない。 裁判長。‥‥判決を! |
裁: |
は、はあ‥‥。 な、成歩堂くん。 ‥‥どうしますか? |
成: |
何を言ってるんですか! 当然、するに決まってるでしょう! |
裁: |
ふむう‥‥。 そうですね、わかりました。 |
狩: | うおおおおおおおおおおおおおッ! |
裁: |
ど、どうしました? ‥‥狩魔検事。 |
狩: | ‥‥3分たってしまった。 |
裁: |
そうですか。 では、ゆっくり行きましょう。 弁護人。‥‥<<尋問>>を。 |
成: | ”窓の外”というのは? |
オ: |
いや。そのまんまだよ。 小屋の窓の外のことだよ。 |
成: |
じゃあ、その人物のカオを、 ハッキリ見たわけですか? |
オ: |
まあなあ。キリがいくら濃くても、 目と鼻の先だったからねえ。 |
裁: |
そ、それは重要なことです。 証言につけ加えてください。 |
オ: | ‥‥‥‥‥‥ |
狩: | ‥‥クックックッ‥‥。 |
成: | (‥‥イヤな予感‥‥) |
オ: |
『その男は被告人で”まさか人を撃つ ことになるとは”と言いました。』(証言・補足) |
成: | ま‥‥間違いありませんか? |
オ: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(‥‥おいおい‥‥) おとーさん! |
オ: |
間違いないぞお、ユキヒロ! ”まさか撃ってしまうとは” と言ったんだよあの男は! |
狩: |
証人! それは御剣 怜侍 に間違いないか! |
オ: |
そいつだあ! ‥‥その、ミツルくんだあ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥ これは、決定的な証言ですね。 ギモンの余地はありません! |
成: |
(狩魔のヤツ‥‥ ワザとぼくに尋問させて、 証言にインパクトを与えたな!) |
狩: | ‥‥クックックッ‥‥ |
真: |
な‥‥なるほどくん。 法廷の空気が、ヤな感じだよ‥‥。 みんな、あたしたちを ニラんでる‥‥! |
成: |
(ここで何か手を打たないと、 審理は終了してしまう!) |
成: |
裁判長! 御剣が発砲していないことは、 昨日の法廷で証明したはずです! |
狩: |
弁護人。 もしかしてそれは、 ピストルについているのは 被告の右手の指紋なのに、 写真で発砲しているのは 左手だから、という話か? |
成: | そうです! |
狩: |
そんなことは、なんとでも 説明がつく! 撃ったあと、一度指紋を ふいたのかもしれない。 そんなことより! 今の証言で、すべては あきらかではないか! |
裁: | ふむう‥‥。 |
成: |
(裁判長が考え込んでいる。 ‥‥どうすればいい!) |
成: |
裁判長! 御剣が”まさか撃つことに なるとは”と言ったかどうかは、 その証人の証言があるだけです! もしかしたら、 ウソをついているのかも‥‥ |
狩: |
弁護士。 ‥‥法廷では、証拠が すべてを語る。 そんなことすら、キサマはまだ 理解していないのか。 証言がウソだと言うなら、 その証拠を提示したまえ! |
成: | う‥‥。 |
真: |
なるほどくん! 証拠は‥‥? |
成: |
‥‥‥‥ダメだ! 今度こそ、何もない! |
真: | ど‥‥どうにもならないの? |
成: |
正直なところ‥‥ もう、どうしていいか わからないんだ‥‥。 |
真: |
‥‥‥‥おねがい‥‥‥‥ ‥‥お姉ちゃん‥‥たすけてよ‥‥ ‥‥負けちゃうよ‥‥なるほどくん |
狩: |
クックックッ‥‥。 3分はさすがにムリだったが‥‥ 開廷から15分。 これは新記録だろうな‥‥。 |
裁: |
そこまで! 証人は下がってください。 |
オ: |
|
裁: |
本法廷は、これ以上の審議の 必要性を認めません。 さらに、被告に対する判決を 決める時間も、必要としません。 これは、きわめて明白な事件です。 疑問の余地はない! |
成: | (そ‥‥そんな‥‥!) |
狩: | フン。 |
裁: |
被告、御剣 怜侍に 判決を言い渡します! |
裁: |
被告人はこれより身柄を 司直に預けるものとし、 1ヶ月以内に、高等裁判所において 通常裁判を受けることとします。 では、本日はこれにて閉廷! |
?: | ちょっと、待てぇぇぇぇぇぇぇい! |
裁: |
‥‥い‥‥ 今のは、いったい誰が‥‥? |
?: | オレだああッ! |
成: |
あ‥‥ ああああああああああああああっ! やは、矢張ィィ! |
裁: | なな‥‥なんですか、あなたは! |
矢: |
オレ‥‥オレの話を 聞いてくれよ! オレ、オレ‥‥ 事件があった日の夜、 あの公園にいたんだよ! 昨日まで、ハッキリ しなかったんだけど‥‥ 今日になってオレ、 思い出したんだよ! |
裁: | 何をですか? |
矢: |
銃声だよ! オレも聞いてたんだよ! |
裁: | せ‥‥静粛に! |
狩: |
これはなんのさわぎだッ! 判決はすでに下された! ワガハイは閉廷を求める! |
裁: |
待ってください。 狩魔検事。 あなたは、 銃声を聞いたのですか? |
矢: |
そうなんだよ! 聞いたんだよ! あの夜! オレ、さっきから客席で 証言を聞いてたんだけどよォ、 なんか、オレのキオクと 違う部分があるんだよ! それなのに、 御剣がユーザイなんて、 オレ、 ナットクできねェんだよ! オレ、証言するからさ! 聞いてくれよ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! ‥‥こんな事態は 初めてです‥‥。 どうすればいいのか‥‥。 |
狩: |
裁判長! すでに判決は下った! 審理は終了だ! |
真: |
なるほどくん! ヤッパリさんがくれた、 最後のチャンスだよ! |
成: |
(たしかに! ‥‥しかし、アイツが矢張だけに シンパイだ‥‥ 事態が、より悪化する可能性も あるからな‥‥) |
真: |
御剣検事、”有罪”判決 受けちゃったんだよ! 状況が今より悪くなるなんてコト、 あり得ないよ! |
成: |
そうだね‥‥わかった! 裁判長! 目撃証人がいる以上、ぼくたちは 話を聞くべきです! 今すぐ、この場で! |
狩: |
必要なし! 判決をくつがえすことなど できない! |
裁: |
‥‥‥‥ふむう。 ‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 私の考えを言います。 裁判では、いかなる場合でも、 あやまった判決はさけるべきです。 そのためには、目撃証人の話は すべて、聞かなければならない! |
狩: | な‥‥何を言う! |
裁: |
先ほどの有罪判決は、撤回します! 狩魔検事! この証人に、証言をもとめる ことを命令します。 今すぐに! |
狩: | なんだと‥‥! |
裁: |
これより、5分間の 休憩をとりたいと思います。 その後、この証人の話を 聞くのです! では、休憩に入ります! |
地方裁判所 被告人第2控え室 | |
成: |
あ‥‥ あぶなかった‥‥。 すまないな、御剣。 ハラハラさせて。 |
御: |
フッ。 これぐらいのシュラ場、 なんてことはないさ。 |
成: |
(‥‥アブラ汗びっしょりかいて、 何か言ってるよ‥‥) それにしても、矢張のヤツ‥‥ 何を言うつもりなんだろう。 |
真: |
ヤッパリさん、あの夜 公園にいたんだっけ? |
成: |
たしか‥‥、 湖に飛んでいったトノサマンの 人形を探していた、とか‥‥。 |
真: |
ああ‥‥そういえば、 あの夜、見つけたんだっけ。 トノサマンの人形とボンベ。 |
成: | そうだよ。 |
御: | ‥‥‥‥ |
成: | おい。御剣。 |
御: |
‥‥‥‥ ム? な、なんだ成歩堂? |
成: |
なんだじゃないよ。 どうしたんだ? ボケーッとして。 |
御: |
‥‥い、いや‥‥。 ちょっと、な‥‥。 |
成: | ? |
真: |
あの。あの。御剣検事? 前から聞きたかったんですけど。 |
御: | なんだろうか? |
真: |
どうして凶器に、あなたの 指紋がついているんですか? |
御: |
ああ。 相手が湖水に落ちたとき、 私はボーゼンとなった。 何が起こったか、 わからなかったのだ。 そのとき、目の前にピストルが 落ちていた。 ‥‥つい、考えなしに 拾ってしまったのだ‥‥。 特に理由はない。 |
真: | なるほどねえ。 |
御: | ‥‥‥‥成歩堂。 |
成: | ? |
御: | これは、チャンスかもしれない。 |
成: | チャンス? |
御: |
狩魔検事はこれまで、完全な裁判 しか経験したことがない。 |
成: | ”完全な裁判”‥‥? |
御: |
完全に手なずけた証人に、 完全にそろえた証拠品。 彼が決して負けないヒミツは そこにあるのだ。 しかし。‥‥今回、初めて それがくずされた。 狩魔検事は、一度も話したことの ない証人に証言をさせることになる。 しかも証人は、あの矢張だ。 |
成: | ‥‥ということは‥‥? |
御: |
スキだらけの証言になる 可能性が高い‥‥。 |
真: |
やったね! なるほどくん! これで、10分でやられちゃう なんてこともないね! |
成: |
‥‥うるさいよ。 (すべては矢張しだい、か‥‥) |
地方裁判所 第3法廷 | |
裁: |
では、審理を再開します。 証人。 事件のあった12月24日の夜、 あなたが見たことを、 すべて<<証言>>してください。 |
矢: | ま‥‥まかせてくれヨ! |
成: |
(たのむぞ‥‥矢張。 認めたくないが、お前が 最後のチャンスなんだ‥‥) |
狩: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(狩魔も、証人を手なずける ヒマはなかった。 御剣の言ったとおり、スキが 生まれればいいんだけど‥‥) |
矢: |
『オレ、あの夜、湖でボートに 乗っていたんだよ。』(証言1) 『探しモノがあって。 で、それが見つかってさあ。』(証言2) 『ボートを、こっそりボート屋に 返したワケよ。』(証言3) 『で、帰ろうかなと思ったときに、 パアンて音が聞こえたんだ。』(証言4) 『オレが湖を見たときは、 ボートには気がつかなかったぜ。』(証言5) 『その1発の音を聞いたあとは 何もなかったんで、帰ったんだ。』(証言6) |
裁: |
ふむう‥‥。 なんか、イロイロ問題が ありそうな証言でしたね。 とりあえず、弁護人。 <<尋問>>をおねがいします。 |
成: | はい‥‥。 |
真: | どうしたの? なるほどくん。 |
成: |
矢張だけに、何が出てくるか わからなくて。 ちょっと、コワい。 |
真: |
ううん‥‥。 でも、ここまできたら やってみるしかないって! |
成: | ちょっと待てよ矢張! |
矢: | な、なんだよ。 |
成: |
お前、”パアン”ていう音、 1発しか聞いていないのか? |
矢: | そう言ったろ? |
成: |
でも、昨日の証人の 大沢木 ナツミさんも、 さっき証言したオジさんも、 ”パアン”という音を 2回、聞いているんだぞ! |
矢: | え? |
成: |
お前、ほんとに ちゃんと聞いてたのかよ! 耳そうじ、ちゃんとしてるか? |
矢: | おい! 成歩堂! |
成: | ? |
矢: |
さっきから、ちょっと 気になってたんだけどよお。 オレ、証人だぜ証人。 お客さんよ、いわば。 その、カジュアルな口の きき方、やめろよな! |
成: | ‥‥‥‥‥‥。 |
裁: | 証人。 |
矢: | なんだよ。 |
裁: |
ホントに、1回しか 音を聞かなかったんですか? |
矢: |
‥‥‥‥ うーん‥‥‥‥。 実はさァ。 ‥‥ハッキリしないんだよね。 |
裁: | は‥‥? |
成: |
ハッキリしない? ど、どういうことだ? |
矢: |
いや、オレさ。 もしかしたら、1発、 聞き逃していたカモ。 ‥‥そういえばよォ、オレ、 アレ、聞いてたから。 |
成: | ”アレ”‥‥って? |
矢: |
ラジオだよラジオ。 ‥‥ヘッドフォンでさ。 |
成: | ナニィィィィィィィィィィィィッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! ‥‥ブーイングはやめてください! しょ、証人! あなた、ラジオを 聞いていたんですか? |
矢: |
な、なんだよ! その、 人をさげすんだような目は! 悪ィかよ! ラジオ聞いちゃよお! |
裁: |
‥‥ふう‥‥。 狩魔検事。何か意見は‥‥? |
狩: |
‥‥時間のムダだ。 ワガハイは、こんなウサンクサイ 証人は、認めぬ。 |
裁: |
‥‥ふむう。 どうしますか? 成歩堂くん。 <<証言>>をつづけてもらいますか? |
成: |
裁判長。 ‥‥おねがいします。 <<証言>>をつづけてください。 |
狩: |
ハッ! ‥‥引きギワを知らぬ弁護士ほど ミジメなものはないな‥‥。 |
裁: |
では、証人。 ラジオのこともふくめて、もっと くわしく<<証言>>を。 |
矢: | おう! まかせな! |
成: | (やれやれ‥‥) |