成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
矢張 政志…紺 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
ボート小屋のオジさん…灰 | |
サユリさん…黄緑 | |
狩魔 豪…紫 |
成歩堂法律事務所 | |
真: |
御剣検事‥‥ なんで、あんなことを‥‥? |
御: |
『私が犯した罪の記憶‥‥。 殺人の‥‥記憶だ。』 |
真: |
御剣検事‥‥ まさか、誰かを‥‥? |
成: |
‥‥‥‥‥‥ そんなこと、あるわけがないよ。 たしかに、あいつは今、何かの 記憶に苦しんでいるけど‥‥。 誰かの命をうばうなんて‥‥ あり得ない! |
真: | なるほどくん‥‥。 |
矢: |
よお! 元気かねショクン! どうよ? どうよ? 今日のオレサマの証言ぶり! シビれたっしょ? 真宵ちゃん! |
真: |
え‥‥あ、あたし? そ‥‥そうですね。 ビリッと来ちゃいました。 |
矢: |
だろ? だろ? もう、ホレちゃっただろ? なあ、成歩堂! |
成: |
え‥‥ぼ、ぼく? そ‥‥そうだな。 キュン、と来たかな‥‥。 |
矢: |
‥‥‥‥‥‥ なんか、イマイチ ピンと来ねぇなあ。 御剣が助かったのは、 オレのおかげよ? もっとこう、カンゲイしてくれよ! このオレをよぉ! |
成: |
矢張。 今日の法廷‥‥助かったよ。 |
真: |
そうだよね。 ヤッパリさんがいなかったら、 ユーザイだったもんね、御剣検事。 |
矢: |
はっはっはっはっはっはっはっはっ はっはっはっはっはっはっはっはっ でもよ、成歩堂。 たしかに、ボート小屋の管理人も アヤシイけどさあ。 御剣のウタガイだって、まだ 晴れたワケじゃねえんだぜ。 |
真: |
うう‥‥ん。 ヤッパリさん、シビアだなあ。 |
矢: |
客席で聞いているとよお。 こう言っちゃナンだけど‥‥、 御剣だって、けっこう アヤシイ感じがするぜ‥‥。 おマエ、なんでそこまで アイツのこと、信じられるんだ? |
成: | ‥‥‥‥‥‥ |
真: | なるほどくん? |
成: |
ぼくは‥‥。 たとえ何があっても、 何が起こっても‥‥ お前たち2人のことだけは、 信じぬくつもりなんだよ。 |
矢: | 2人って? |
真: | 御剣検事と‥‥あたしでしょ? |
矢: |
ナニ言ってんだよ! オレだろ? 成歩堂! |
成: | ああ。‥‥お前だよ、矢張。 |
真: |
あたしじゃないんだ‥‥。 ‥‥‥‥‥‥‥‥ でも。でも。 どうしてなの! ヤッパリさん! |
矢: |
‥‥‥‥え。 さ‥‥さあ。 どうしてだ? 成歩堂‥‥? |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
真: | ‥‥いつもそこでダマる! |
真: |
なるほどくん。 どうしてそんなに、 御剣検事にこだわるの? たしかに、最近はちょっと 感じが変わったけど、 ただのイヤな男だったでしょ、 初めて会ったときは。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 真宵ちゃんは、知らないんだよ。 弁護士を目指していたころの 御剣 怜侍を‥‥。 |
真: |
それって‥‥ なるほどくんたちがクラスメート だったっていう‥‥? |
成: |
うん。ぼくらが小学生のころの 話だ。 ぼくは、助けられたんだ。 御剣 怜侍と‥‥ 矢張 政志にさ。 ‥‥一生わすれないよ。 そのおかげで、こうして 弁護士にもなったんだ。 |
真: |
ええええええええっ! ね。ね。矢張さん。 なんのこと‥‥? |
矢: |
え! ええと‥‥その。 ‥‥悪ィ。 ゼンゼンおぼえてねえや、オレ。 |
真: |
ううう。 こら、なるほどくん! 今日こそ聞くんだからね、その話! |
成: |
‥‥わかったよ。 少し長くなるかもしれないけど、 聞いてもらおうかな‥‥。 ‥‥‥‥‥‥ あれは、そう。 小学4年生の夏‥‥。 ぼくは、学級裁判に かけられたんだ。 |
真: | が‥‥、がっきゅうさいばん? |
成: |
矢張、おぼえてないか? 小学4年生の夏だ‥‥。 ぼくのクラスの1人の子が、 給食費を盗まれたんだ。 |
真: | 給食費? |
成: |
ぼくたちの小学校、 とても小さなところでさ。 毎月、親がお金を入れてくれた 封筒を、先生に提出するんだ。 |
真: | へええ‥‥。 |
成: |
その封筒が‥‥消えたんだよ。 3800円、入っていた。 |
矢: |
‥‥ああ。そんなことが あったっけなあ。 |
成: |
お前はよく知らないかも しれないな、矢張。 その日はお前、 学校を休んでいたから。 とにかく、封筒が盗まれたのは 体育の時間だった。 ぼくはその日、カゼぎみで、 体育の授業を休んでいたんだ。 授業を休んだのは、 ぼくだけだった。 |
真: | だから‥‥うたがわれたの? |
成: |
うん。クラス中のヤツが‥‥ ぼくをサイバンにかけろ、って。 |
真: | サイバン‥‥。 |
成: |
次の日、学級裁判が開かれた。 ‥‥もちろん、被告はぼくだ。 |
成: | 「ぼ‥‥ぼくはやってないよ‥‥」 |
「お前だろ!」「どろぼう!」 | |
信じらんない!」「ゼッコーだ!」 | |
すんじゃねえよ」「言いなさいよ」 | |
ケシゴム貸してあげないからね!」 | |
「図書委員もだ」「飼育係もよ!」 | |
町の銀行強盗、お前じゃねえのか」 | |
先: |
人のお金を盗んじゃあ‥‥」 |
成: | ‥‥最後に、先生がそう言った。 |
先: | |
成: |
‥‥その瞬間、ナニがなんだか わからなくなって‥‥ とても悲しくって‥‥ なみだが止まらなくって‥‥ クラス中の視線がぼくに集まった。 ”オマエガハンニンダ”って‥‥。 ぼくは、あやまろうとした。 ‥‥その子の席の前まで行って。 ‥‥‥‥‥‥ そのときだった。 |
「その必要はない! サイバンでモノを言うのは、 証拠品だけなのだ! その他のものはすべて、 沈黙すべし! そんなコトも知らないのか‥‥ シロウトどもめッ!」 | |
先: | 「ミ‥‥ミツルギくん?」 |
御: |
「キミじゃないのだろう? ボクの封筒を盗んだのは‥‥」 |
成: | 「う‥‥うん」 |
御: |
「それならば、堂々としたまえ。 これだけ話し合ったのに、 キミがやったという証拠はない。 ということは、裁判長! ‥‥この少年は、ムザイだ!」 |
先: |
「ナニを言ってるの、レイジくん! 盗まれたのは、あなたのお金よ!」 |
「そうだよ!」 「そいつがやったんだよ!」 「証拠なんて必要ないわ」 「あやまらせろよ!」 | |
矢: |
「‥‥イイカゲンにしろよ!‥‥ おマエたち、いつもそうやって グルになって1人を責めて‥‥ 言われるヤツの身にも、 なってみろってんだよ! コイツ、”やってない”って 言ってるじゃねえかよォ!」 |
先: |
「わかりました。 お金は、 先生が立て替えておきます。 ‥‥学級裁判は、これで おしまいにしましょう‥‥」 |
成: |
それからだよ。 3人がなんとなく、 仲よくなったのは‥‥。 |
真: |
‥‥そんなことが あったんだ‥‥。 |
矢: |
あ、あったような気も するなあ‥‥。 |
成: |
あのとき、ぼくは 思い知らされたんだよ。 味方がいない、究極のコドク。 ‥‥その、ツラさをね。 |
真: |
‥‥ヤッパリさん、 いいヒトだったんですね‥‥。 |
矢: |
い、いや、まあ‥‥。 たまたまその日、学校 休んでたからよかったケド、 そうじゃなかったらゼッタイ、 オレがうたがわれてたから。 ヒトゴトじゃなかったんだわ、 コレが‥‥。 |
成: |
(”事件のカゲに、ヤッパリ矢張” って言われつづけてたもんな) |
成: |
‥‥学級裁判が終わって、 御剣から聞いたんだ。 お父さんが弁護士だってこと。 父親のコトを話すときだけは、 ヤツの目は子供っぽく光ってた。 |
御: |
「ボクはかならず、父さんのような 弁護士になるのだよ。 リッパな弁護士に‥‥」 |
成: |
‥‥それから数ヶ月後。 あいつは突然、転校していった。 |
真: | DL6号事件‥‥。 |
成: |
そう。たぶん、お父さんが 亡くなったためだろう。 |
真: | かわいそう‥‥。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 御剣の名前をひさしぶりに 見たのは、数年たってからだ。 新聞に、彼の名前が大きく のっていた。 <<鬼検事に、黒い疑惑>> とかいう見出しでね。 証拠のでっち上げ、証言の操作、 もみ消し‥‥。 有罪のためならば、なんでも する男だ、と書いてあった。 |
矢: |
‥‥どうしてだ? ナニがあったんだよ! まるで別人じゃねえか! |
成: |
ぼくもそう思った。 ぼくは御剣に会おうと、 何度も連絡をとった。 しかし、彼は返事を してくれなかった。 |
真: |
ムカシの友だちに‥‥ 会いたくなかったんだ‥‥。 |
成: |
でもぼくは、 あきらめられなかった。 どうしても彼に会って、 ナゾを解くんだ、と‥‥ そう決心したんだ。 |
真: |
‥‥‥‥‥‥! ま‥‥まさか‥‥。 まさか、なるほどくん‥‥ そのために‥‥? 御剣検事に会うために、 弁護士になったの‥‥? |
成: |
弁護士になれば、あいつは イヤでもぼくに会わざるをえない。 法廷でね。 ‥‥‥‥‥‥‥‥ ぼくを信じてくれた御剣を、 ぼくは信じている。 あいつは苦しんでいる。 そして、味方がいない。 チカラになれるのは、本当の あいつを知っている、ぼくだけだ。 |
矢: |
な‥‥成歩堂‥‥。 じゃあ、おマエがオレを、 タダで助けてくれたのも‥‥? |
成: |
ああ。 お前を信じていたからだ。 (‥‥ただし、タダと言った おぼえは、ないんだけど‥‥) |
矢: | ‥‥‥‥なるほどうよお‥‥‥‥ |
真: |
なるほどくん! かならず助けようね! 御剣検事。 |
成: | ああ。 |
真: |
とにかく、あのボート小屋の オジさん? あの人のこと、調べようよ! |
成: |
そうだね。 (とりあえず、もう必要のない 証拠品を、少し整理するか‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥) よし、行こうか! |
ひょうたん湖公園 入口前 | |
糸: | おっ! ひさしぶりッス! |
真: | あ、イトノコ刑事さん。 |
糸: |
今日はアブなかったッス! ハラハラして、ネクタイを1本 食いちぎったッス。 |
成: |
そ、それはどうも スミマセンでした‥‥。 |
糸: |
いいッス! おかげで、 ハンニンがわかったッスからな! |
真: | ボート小屋のオジさんですか? |
糸: |
約束するッス。 自分は、明日の開廷時間までに、 必ずアイツをタイホするッス! ナニがあっても! ‥‥それが、アンタに対する 警察官としてのレイギッス! では、シツレイするッス! |
真: |
‥‥‥‥‥‥ イトノコ刑事、ハリきってたねー。 |
糸: | あ、それから1つ。 |
真: | きゃっ! |
糸: |
今日は、森の方へは 行けないッス。 |
真: | もり? |
成: |
(ナツミさんがキャンプしていた ところか‥‥) |
糸: |
あそこはキャンプ禁止だったッス。 公園の管理人にバレて、 しばらく、立入禁止になったッス。 |
真: | ナツミさん、怒られちゃったんだ。 |
糸: |
ま、そういうことッス。 ‥‥じゃ、また明日、会うッス! |
ひょうたん湖広場 | |
成: |
あれ。あの目ざわりな トノサマンがいないな‥‥。 |
真: | ”目ざわり”って言うな! |
成: | 屋台も休みみたいだ。 |
真: |
たしかに、アルバイト どころじゃないのかもね‥‥。 |
貸しボート小屋前 | |
真: |
あのオジさん、逃げちゃった んだよね。 |
成: | ああ。 |
真: |
まさか、あのオジさんが ハンニンだったなんて‥‥。 ‥‥‥‥‥‥ |
?: | ウォッホォン! |
成: |
‥‥‥‥! (このセキ払いは‥‥) |
星: |
やあやあチミたち。 ‥‥どうした? こんなところで。 チミたちもサンポかな? ん? ”青春の日々はぁ‥‥青いレモンの カオリぃ‥‥”とォ。 |
真: |
ほ‥‥星影センセイ! なにをノンキなコト 言ってるんですか! 御剣検事の裁判、明日が 最終日なんですよ! |
星: |
‥‥そ、それはそうぢゃが。 今日の法廷を見たかぎりでは、 もうあの子はアンシンぢゃろ? |
成: |
それが‥‥ そうでもないんです。 |
星: | ‥‥どういうことぢゃ? |
成: |
それが、まだ‥‥ ハッキリしないんですけど。 |
星: |
‥‥ううむ‥‥。 何かわかったら、ワシの 事務所に来なさい。 チカラになれることが あるかもしれん。 |
成: |
はい‥‥。 (センセイ、行っちまったぞ‥‥) |
真: |
星影センセイ、何してたのかな? ‥‥こんなところで‥‥。 |
成: | ‥‥さあ‥‥。 |
管理人の小屋 | |
成: | ‥‥‥‥‥‥ |
真: | ‥‥誰もいないね。 |
サ: | ”オハヨー、オハヨー” |
真: |
あっ! サユリさんだ! あなたのご主人、 どこへ行っちゃったのかな‥‥。 |
サ: | ”オハヨー、オハヨー” |
真: |
この子、置いていくなんて ヒドいよね! |
サ: | ”オハヨー、オハヨー” |
真: |
そういえばさ、なるほどくん。 この金庫の番号、サユリさんが 知ってるんだよね。 |
成: | ああ。そうだったね。 |
真: | サユリさん。金庫の番号は? |
サ: | ”‥‥‥‥1228” |
真: | ねえねえ、開けてみようよ。 |
成: | お金なんか入ってないと思うよ。 |
真: |
ううう‥‥。 でもさ。 カギをかけているぐらいだから、 それなりのものが入ってるんだよ。 |
成: | そうかなあ‥‥。 |
真: |
ほらほら、なるほどくん。 開ける開ける。 |
成: |
(‥‥何か手がかりが入ってるかも しれないからな‥‥) ‥‥‥‥‥‥‥‥ 手紙が1通、入ってるだけだ。 |
真: |
て、手紙? ‥‥‥‥ つまんない。 |
成: |
(あて名も、差し出し人の 名前もない。 手書きの、きちょうめんな文字が きれいに並んでいる‥‥) <<御剣 怜侍に復讐せよ‥‥>> |
真: |
なな、なるほどくん‥‥ なんで、御剣検事の名前が‥‥? |
成: |
し、知らないよ! ‥‥とにかく、読んでみるぞ。 これが、最後のチャンスだ。 お前の人生を破滅させた2人の 男に、今こそ復讐するのだ>> ‥‥‥‥‥‥‥‥ 計画が、びっしり書かれている。 生倉弁護士を殺害して、 その罪を御剣に着せる方法‥‥ 御剣を呼び出し、ボートに乗り、 ピストルを2度、撃つ‥‥ 今日の法廷で、ぼくが苦しまぎれ に説明したとおりのやり方が カンペキに書かれている‥‥) |
真: |
ど‥‥どういうこと? なるほどくん‥‥。 |
成: |
よくわからないけど、 どうやら、管理人のオジさん‥‥、 この手紙の指示どおりに動いて、 生倉弁護士を‥‥。 |
真: |
でも、その手紙‥‥。 いったい、誰が? それに、御剣 怜侍に復讐せよ、 って‥‥どういう意味なの? |
成: |
あのなあ。ぼくにわかるワケ ないだろ。 ‥‥でも。 どうやらこの手紙は スゴい手がかりになりそうだな。 |
法廷記録にそっと挟んだ。 | |