成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
矢張 政志…紺 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
ボート小屋のオジさん…灰 | |
サユリさん…黄緑 | |
狩魔 豪…紫 |
留置所 面会室 | |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
あいかわらず、シブいカオ してるなあ‥‥。 |
御: | ‥‥フン。 |
真: |
あの、御剣検事。聞きましたよ、 学級裁判の話。 |
御: | ‥‥学級裁判? なんのことだ? |
真: | え。おぼえてないんですか? |
御: | ああ、おぼえていない。 |
真: |
給食費を盗まれたんですよね? 小学校4年生のとき‥‥。 |
御: |
給食費‥‥? ‥‥‥‥‥‥ あ、ああ。 そんなこともあったな‥‥。 |
真: |
なるほどくん。 ‥‥誰もおぼえてないよ。 |
成: |
ま、まあ、ぼく以外の人間には どうでもいいことだろうからね。 |
真: |
御剣検事、知らないんですか? なるほどくん、あれがキッカケで 弁護士になったんですよ。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥ バカな。 |
成: |
(‥‥ミもフタもない コメントだな‥‥) |
御: |
‥‥しかし。 とてもキミらしい話だ。 ‥‥変わっていないな、成歩堂。 その、あきれるほどの単純さ‥‥。 |
成: |
まあな。だが‥‥、 お前は変わっちまったな、御剣。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥ そうだな。 |
成: |
なあ、御剣。どうしてお前、 検事になったんだ? あんなに父親を尊敬して、 弁護士にあこがれていたのに‥‥。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥ 私は、キミほどバカには なれなかったんだよ。 |
成: | ‥‥どういうことだ? |
御: |
オヤジをうばわれ、それでも 犯罪者の味方になれるほど‥‥、 私はそこまで、お人よしではない! |
真: |
お父さんが亡くなった事件‥‥ 容疑者が1人、逮捕されましたね。 |
御: |
‥‥そうだ。父とエレベータに 閉じ込められた男‥‥。 灰根 高太郎という名前だ。 どう考えたって、犯人は あいつしかいないんだ! なのに‥‥無罪になった。 あの弁護士のせいで! |
成: |
(被害者の、 生倉弁護士のことか‥‥) |
御: |
‥‥15年前の、あの日。 我々3人は、5時間、 エレベータに閉じ込められた。 助け出された時は 極度の酸欠状態になっていて、 私は、事件に関する記憶を なくしていたのだ。 |
成: | 記憶を‥‥? |
御: |
今も思い出せない。エレベータで、 何があったのか‥‥。 法廷で、灰根の弁護士も そう主張した。 酸欠で、灰根は 心神喪失状態にあった、と。 ‥‥結局、灰根は証拠不十分。 無罪になった。 それからだ。 私が、弁護士というものに 憎しみを抱きはじめたのは‥‥。 |
成: | 狩魔検事とは、どういう‥‥? |
御: |
彼は、私が最も尊敬する先輩だ。 私の法廷テクニックは、 彼にイチから仕込まれた。 |
真: |
なるほどくんで言えば、 お姉ちゃんみたいなもんだね。 |
御: |
彼はすべてにおいて、 カンペキ主義者だ。 法廷においても、 人生においても‥‥。 カンペキであることに、 異常なほどのこだわりがあるんだ。 |
真: | ”カンペキ”‥‥? |
御: |
彼があつかった事件で、未解決の まま時効になったものは、 ただの1つもない。 ‥‥もちろん、敗訴も。 |
真: | でも‥‥それって‥‥。 |
御: |
わかっている。 中には、無実の人間が いたかもしれない。 しかし、私たちに、それを正確に 見抜くことは、不可能なのだ。 狩魔検事は、彼のするべき仕事を カンペキに遂行しているだけだ。 とにかく。 彼の弱みを見つけるのは、 不可能に近い。 それをモミ消すためならば、彼は どんな手段でも使ってくるだろう。 |
成: |
‥‥あのなあ、御剣。 その話が本当なら、 お前も明日、有罪になっちゃうぞ。 |
真: |
そ、そうですよ! ホメてる場合じゃないでしょ! |
御: |
ムム‥‥。 それが‥‥ツラいところだ。 |
成: | (やれやれ‥‥) |
成: |
御剣。 ‥‥この手紙なんだけど‥‥。 |
御: | ? |
成: |
例の、ボート小屋の管理人の 金庫から出てきたんだ。 |
御: |
ほほう‥‥。 ‥‥‥‥‥‥! この私に‥‥復讐だと‥‥? |
真: |
いったい、誰なんですか! あのオジさん‥‥! |
御: | し‥‥知らん。 |
成: |
お前がムカシ有罪にした、 無実の被告人、とか‥‥? |
御: |
イヤなことを言うな。 あんなオジさん、おぼえがないぞ。 |
真: |
とにかく、オジさんは、この 手紙どおりに犯行を‥‥。 |
御: |
つまり、この事件には 黒幕がいた、ということか‥‥。 男に、今こそ復讐するのだ>> 生倉弁護士のこと‥‥か? |
真: |
<<これが最後のチャンスだ>> とも書いてありますよ。 |
成: |
最後のチャンス‥‥? もしかして、それって‥‥ ”時効”のことじゃないか? |
御: |
‥‥‥‥ まさか‥‥ まさか、あのオジさんが‥‥! |
真: |
ど、どうしたんですか! 何かわかったの‥‥? |
御: |
灰根‥‥だったのか‥‥ あのオジさんが‥‥! |
真: | はいね‥‥ |
御: |
DL6号事件の容疑者で 無罪になった、あの男だ‥‥。 |
御: |
灰根 高太郎は、 法廷の係官だった。 15年前。私たちは偶然、 エレベータに乗り合わせた。 永遠とも思える、長い長い時間。 うすれてゆく空気‥‥。せまい 箱の中で、闇が迫ってくる‥‥。 ‥‥しだいに我々は、落ちつきを うしなっていった。 |
「助けてくれッ! い、息が‥‥」 「うるさい! ダマるんだ! ‥‥こっちまでおかしくなる!」 「出せ! ここから 出してくれえッ!」 「大声を出すな! 酸素をよけいに 消費するぞ!」 「‥‥‥‥‥‥!」 | |
御: |
‥‥私の記憶は、そこまでだ‥‥。 気がついたら、私は病院の ベッドで、天井をながめていた。 裁判では、灰根の精神状態が 問題になった。 酸欠と緊張状態が原因で、 灰根は心神喪失状態にあったとか。 結局、その主張が認められて、 灰根は無罪になったのだ‥‥。 |
真: |
‥‥ふうん‥‥。 でも、ちょっとおかしいですね。 この手紙‥‥。御剣検事に 復讐しろ、って書いてありますよ。 なんで”復讐”なんですか? それも、あなたに‥‥? |
御: |
‥‥‥‥‥‥ 成歩堂。 |
成: | ん? |
御: |
この数日間、ずっと悩んでいた ことがある。 キミに話すべきかどうか‥‥。 |
成: |
もしかして、今日の 法廷で言っていた‥‥ |
御: |
『私の‥‥悪夢の話だ。 私が犯した罪の記憶‥‥。』 |
成: | 『お前の‥‥罪?』 |
御: | 『‥‥殺人‥‥の記憶だ。』 |
御: |
‥‥どうやら。 キミに聞いてもらうときが 来たようだな‥‥。 |
御: |
この15年間、毎日のように 同じ夢を見る。 そのたびに私は、 恐怖にハネ起きるのだ。 |
真: | ‥‥どんな夢なんですか‥‥? |
御: |
あの事件の夢だ。すべてが 闇に閉ざされた、あの事件。 |
「助けてくれッ! い、息が‥‥」 「うるさい! ダマるんだ! ‥‥こっちまでおかしくなる!」 「出せ! ここから 出してくれえッ!」 「大声を出すな! 酸素をよけいに 消費するぞ!」 「い‥‥息ができねえ‥‥! お前が空気をヨゴすからだ‥‥」 「な‥‥なんだと!」 「オレの空気を吸うな! い‥‥息の根を止めてやる!」 「う‥‥うわっ! 何をする‥‥やめろ‥‥!」 「オレの空気を吸うなァァァァ!」 おとうさんが、 おそわれている‥‥!) | |
御: |
‥‥ふと気がつくと、足元に ピストルがころがっている。 その日の裁判の証拠品だったのか、 係官の持ちものだったのか‥‥。 私は、夢中でそのピストルを 拾い上げる。 |
御: |
おとうさんから、 はなれろぉっ‥‥!) |
うぐおおおおおおおおおおおおお をををををををををををををッ! | |
御: |
‥‥その悲鳴で、目がさめるんだ。 ものすごい悲鳴だ。 この15年間、耳からはなれたこと がない、ものすごい悲鳴‥‥。 |
真: |
‥‥‥‥‥‥ で、でも。 ‥‥それって、ただの”夢” なんですよね‥‥? |
御: |
‥‥‥‥‥‥ そう思って、この15年間、 生きてきた。 しかし‥‥。 これが”現実”だった としたら‥‥? 人は、自分の精神を守るため、 記憶を閉ざすことがあるという。 父親の命をうばったのは、 他ならぬ、私かもしれない! |
真: | そ‥‥そんなことって‥‥! |
御: |
‥‥そう考えると、この手紙も なっとくできる。 <<御剣 怜侍に復讐しろ>> ‥‥そう。灰根は本当に無実 だったのだ‥‥。 だから、復讐しようとしたのだ ‥‥この、私に。 |
成: |
待てよ、御剣! ‥‥それって、つまり‥‥! |
御: |
オヤジを撃ったのは‥‥ DL6号事件の真犯人は‥‥ この‥‥私‥‥! |
成: | ‥‥なんてこった‥‥。 |
真: |
なるほどくん‥‥どうしよう。 とんでもないことに‥‥。 |
成: |
くやしいけど‥‥ ぼくたちじゃ、どうしようも ないよ‥‥。 DL6号事件の情報を、 詳しく知っている人がいれば‥‥。 |
真: |
‥‥‥‥! いるじゃない、なるほどくん! あの人に、助けてもらおうよ! |