成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 真宵…青 | |
須々木 マコ…橙 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
亜内検事…茶 | |
諸平野 貴雅…紫 |
地方裁判所 被告人第1控え室 | |
マ: |
き‥‥記憶喪失! そ、そんな状態で アタシの弁護を‥‥。 |
成: | ‥‥まあね。 |
マ: |
どーして 言ってくれなかったッスかッ! |
成: |
‥‥ごめん。 なんか、言い出せなくて‥‥。 |
マ: |
‥‥あッ、そうだ! スゴいショックを与えると なおるコトがあるらしいッス! さ。さ。アタマ出してください! マコ・キックを食らわすッス! |
成: |
い、いやいやいや! エンリョしておくよ。 |
マ: |
あ‥‥スミマセン。 スズキ、困ってるヒトを見ると ほっとけないッス‥‥。 つい、おせっかい焼いて、 すべてをブチ壊すッス。 |
成: |
(‥‥このトシでアタマを ブチ壊されちゃたまらないな) とにかく今は、きみのピンチを 切り抜けるほうが先だよ。 ぼくが知らないことは、 なんでも教えてくれないか? |
マ: |
カンゲキです! じゃあ、ええと‥‥。 まず、自己紹介からいきますねッ! |
成: |
‥‥いやいやいや。 さすがにそれは、わかってるよ。 ‥‥どっちかと言うと、 ぼく自身のほうがナゾなんだけど。 ”ナルホドー”だっけ? ‥‥ヘンな名前。 |
マ: |
ううう。重症ッス‥‥。 しかたありませんね‥‥。 これ、お貸しするッス。 |
成: |
‥‥‥‥? これは‥‥名刺? |
マ: |
成歩堂さんからもらった、 スズキの宝物ッス。 あとで返してくださいねッ! |
成: |
う、うん。 (ウラに数字が書いてある‥‥) |
マ: |
あ、それは携帯電話の番号ッス。 ‥‥成歩堂さんの。 |
法廷記録に挟んだ。 | |
成: |
ま。これでいちおう、 ナルホド気分にはなれるから、 今度は事件のことだ。 |
マ: | 事件のこと‥‥ですか? |
成: |
そう。‥‥手がかりに なりそうな話、ない? |
マ: |
手がかり‥‥ うーん‥‥そうですねー‥‥ あの携帯電話のことぐらいしか、 思い当たりませんケド‥‥ |
成: | ‥‥携帯電話? |
マ: |
はッ。面会のときお話ししたら、 成歩堂さん、目の色変えてたッス! |
成: |
‥‥! 聞かせてくれ! 大急ぎで。 ホラ早く! |
マ: | はッ! 了解ッス! |
マ: |
‥‥事件のあった日、 午後6時前のことでした。 町尾さんと歩いていたら、 携帯電話を拾ったんです。 |
電: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
マ: |
‥‥急にその電話が 鳴り出しちゃって‥‥。 |
電: | ‥‥ピッ‥‥ |
マ: |
『あ、あの、もしもし。 スズキと申しますが‥‥』 |
?: |
『あ。すみません。その携帯電話を 落とした者なんですけど‥‥』 |
マ: |
『よかった! じゃァさっそく お会いして、お返ししますッ!』 |
?: |
『すぐ、そちらにうかがいます。 もう一度、お名前を‥‥』 |
マ: | 『はッ! スズキ マコッス!』 |
マ: |
‥‥で、6時に会う ヤクソクをしたんです。 だから、町尾さんといっしょに 待ってたんですけど‥‥ ケッキョクその人、 来なかったんです。 |
成: |
ふーん‥‥。 それで、拾った携帯電話は? 今、どこに‥‥。 |
マ: |
きのう、成歩堂さんに おわたししました! |
成: |
え‥‥? ぼくに? (ポケット、かな‥‥) あ、ああ‥‥これか。 |
マ: | 事件に関係あるんですか? それ。 |
成: |
さあ。‥‥でも、きのうの ぼくが目の色を変えたんなら‥‥ |
?: |
あー。こんなところにいたよー! もう、ひどいなあ! 携帯電話にかけても 出てくれないし! 法廷に行ってみたら、 だれもいないし‥‥ |
成: |
(うわ‥‥。 またヘンなのが出てきたぞ‥‥ まさか、この子もぼくの 知り合いなのか‥‥?) |
?: |
あ、マコちゃん! おはよう! |
マ: |
マヨイさん、 おはようございますッ! |
真: |
どう? どう? 調子のほうは! |
マ: | 下の下、といったところッス。 |
真: |
ふーん‥‥。 でも、もうだいじょうぶ! この真宵ちゃんが、シッカリ証拠 持ってきてあげたからね! はい、なるほどくん! お待ちかねのモノ! |
成: |
え? あ? ああ。ありがと‥‥。 (なんだこりゃ‥‥リスト? ヒトの名前と電話番号が、 20人ぶんぐらい並んでいる) |
真: |
ホント、調べるの タイヘンだったんだからね! なんか、そのヒトたち、 かなりのワルみたいだよ。 |
成: | ”ワル”‥‥? |
真: |
警察が今、捜査している、 詐欺グループがあってさ。 そのメンバーじゃないか、 って思われてる人たちみたい。 |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
‥‥なんでこんなところに 詐欺グループが出てくるんだろ? |
真: | あ、あたしに聞かないでよ! |
成: |
ううん‥‥。だいいち、 このリストは、どこで‥‥? |
真: |
うええええッ! ナニ言ってんの! きのう、それをわたしてくれたの、 なるほどくんじゃない! |
成: | あ‥‥そうなの? |
真: |
マコちゃんが拾った携帯電話に 登録されていた電話番号だよ。 |
成: | ふうん‥‥そうだったんだ‥‥。 |
真: |
なるほどくんさあ、 最近忘れっぽいよねー。 やっぱり、トシはとりたくないよ! |
マ: |
あの‥‥真宵さん。 じつは、成歩堂さんは‥‥ |
係: |
弁護人! そろそろ休憩時間が終わります。 被告人とともに、至急 法廷にもどってください! |
真: |
あ、ほら。 話はあとあと。行こ! |
マ: | は‥‥はッ‥‥! |
成: |
(‥‥これで、どうやら材料は そろったみたいだな‥‥ あとは‥‥ぼくしだい。 負けられない‥‥ゼッタイに!) |
真: |
ほらほら、なるほどくん。 早くする! |
成: | う、うん。 |
地方裁判所 第2法廷 | |
裁: |
では、審理を再開しましょう。 証人を入廷させてください。 |
亜: |
はっ。 裁判長、その前にちょっと‥‥。 |
裁: | なんでしょう? |
亜: |
そのう‥‥。 これから呼ぶ証人なんですけども。 妙に人の神経をさかなでする ところがありまして、その。 どうか、あたたかい目で‥‥ |
裁: |
‥‥前置きはいりません。 早く呼んでください。 |
亜: |
ははッ。‥‥それでは。 事件当日、現場の公園をさんぽして いた浪人生を入廷させてください! |
亜: | 証人。まず、名前を‥‥。 |
?: | その前に、ヒトコトいいですか? |
亜: | は? ‥‥ど、どうぞ。 |
?: |
先ほどアナタは、このボクを こう紹介されましたね? ”さんぽ中の浪人生”と! |
亜: |
‥‥え? そ、そうでしたっけ‥‥? |
?: |
コマりますね。人をそういう 色メガネで判断されては。 たしかにボクは、大学生と呼ばれる 身分ではないかもしれない。 百歩ゆずって、 それは認めてあげましょう。 しかしボクは、すべてが一流で なければならない宿命なのです。 そんなボクにとってふさわしい 大学とは、どこなのか‥‥? 慎重に検討している最中なのです。 それをアナタは”さんぽ中”‥‥ |
亜: |
わわ、わかりました。 申しわけない。気をつけます。 |
真: |
なな、なんか スゴい人が出てきたね。 |
成: |
やれやれ。 アレに尋問するのかよ‥‥。 |
?: |
一流のファッション! 車! 女! メガネ! そしてモチロン、大学! |
成: |
(メガネなんか かけてないじゃないか‥‥) |
裁: |
もうけっこうです! 証人は、さっさと名前を‥‥ |
?: |
ははあ。そう来るワケですか。 権力をふりかざして、若い芽を つみとろうという寸法だ。 老人たち特有のキタナイやりかた。 イカガなものかと思いますがね。 |
裁: |
すす、すみません。 以後、気をつけます。 |
成: | (やれやれ‥‥) |
?: |
‥‥まあいいでしょう。 つきあってあげますよ。 ボクの名前は、諸平野 貴雅 (もろへいやたかまさ)です。 ”ほぼ大学生”と呼んでもらっても ベツにボクはかまいませんよ。 |
亜: |
モロヘイヤさん。 事件当日、現場のわんぱく公園を さんぽ‥‥散策していましたね? |
諸: |
まあ、アナタがどうしても そう言いたいのならば、どうぞ。 それを認めないほど、ボクも コドモじゃありませんからね。 だいたいボクは‥‥ |
亜: |
とにかく、あなたがさんぽ中に 見たことを証言してください! |
諸: |
あ、ホラ。また言った! ”さんぽ中”‥‥ |
裁: |
とにかく、目撃したことを 証言してくださいッ! |
諸: |
『午後はずっと、公園で 思索にふけっていましたね。』(証言1) 『時間はよくおぼえてないけど‥‥ 夕方の6時すぎのコトでしたか。』(証言2) 『いきなり目の前に 警官が転げ落ちてきたんですよ。』(証言3) 『思わず見上げると、真っ青なカオを した女と目が合いましたね。』(証言4) 『もちろんおぼえています。 被告席の彼女でしたねあれは。』(証言5) 『他に現場で変わったことといえば、 バナナが落ちていましたね。』(証言6) |
裁: |
ふむう‥‥。 これはかなり、決定的ですね‥‥。 |
真: |
けけ、決定的だって! なるほどくん。 |
成: | ‥‥ふうん。 |
真: |
ふうん、って! なんでそんなに落ちついてるの! |
成: |
(フシギだ‥‥。 ココロが妙におだやかだぞ‥‥) たぶん‥‥信じてるんだよ。 依頼人のこと。 |
真: | マコちゃん‥‥? |
成: |
そう。‥‥彼女が無実ならば、 答えは1つしかない。 ‥‥アイツは、ウソをついている! |
裁: |
では、弁護人。 ‥‥尋問をおねがいします。 |
成: |
(かならず見破ってやるさ。 ‥‥どんなうまいウソでもな!) |
成: |
‥‥モロヘイヤさん。 じつは、ここにあるんですよ。 ‥‥そのときのバナナが。 |
諸: |
なんだ。キミもバナナのコト、 知ってたんじゃないか。 そんなことでボクを引っかけた なんて、思わないでほしいね。 |
成: |
(引っかかってるんだよな‥‥ 思いっきり!) |
裁: |
な‥‥成歩堂くん‥‥ そ、それは‥‥ |
亜: | グローブじゃないですか! |
諸: |
え‥‥! な、なんだって? グローブ‥‥? |
成: | なんなら、食べてみますか? |
諸: |
そ‥‥そんな‥‥。 そんなバナ‥‥バカなああぁァッ! |
成: |
裁判長! これで、 1つハッキリしたことがあります! つまり、この証人は‥‥ |
成: |
‥‥ところで、モロヘイヤさん。 視力はいくつですか? |
諸: |
な‥‥。なな、ななな、 ななななんだい急に! |
亜: |
バナナとグローブを見まちがえた ぐらいで、視力が低いとは‥‥ |
裁: |
ふつう、まちがえません。 異議は却下します。 |
諸: |
ヤ‥‥ヤレヤレ。 あなたがたは、アレだ。 地動説を唱えたガリレオを 認めなかった連中といっしょだ。 くだらんジョーシキにしばられて 新しい可能性に気づきもしない! たしかに、結果的にアレは グローブだったのかもしれない。 しかし、ハナからそれを 疑ってかかるなんて‥‥ |
成: | だから、いくつなんですか視力は! |
諸: | 両方とも0.1だよ! ワルいか! |
裁: | 今日はどうしてメガネを‥‥? |
諸: |
‥‥‥‥‥‥ ‥‥さ、最近ちょっと。 その、なくしてしまって‥‥。 も、モチロン作りなおそうと 思ってますよ! でも、なかなかボクの おメガネにかなうメガネが‥‥ |
成: |
事件を目撃したときは? メガネをかけていましたか? |
諸: | ‥‥‥‥ッ! |
成: | どうなんですか! |
諸: |
‥‥あ、あなたがたはアレだ。 あのジャンヌダルクを処刑した 連中といっしょだ。 勇気を持って、正しいおこないを した者をつかまえて、 なんにも悪くないのに 火あぶりに‥‥ |
成: |
‥‥つまり 証人はメガネをかけていなかった! それならば! 目撃したという”女”が 被告だったのかどうか‥‥、 この証人に断言できるはずがない! |
諸: | ‥‥‥‥ッ! |
亜: |
‥‥しかし、 現場の段差は、たった3mです! 上の遊歩道にいる被告のカオが 見えても、おかしくはない! |
裁: |
ふむう‥‥証人。 証言は正確におねがいします。 人の命がかかっているのですよ。 |
諸: | ‥‥‥わ、わかりましたよ! |
裁: | では、証言をつづけてください。 |
亜: |
では、事件を目撃してからのことを 証言してもらいましょう。 |
諸: |
『遊歩道の女は、ボクに気づくと サッと逃げていきましたね。』(証言1) 『そのあと、ボクはすぐに警察に 通報しました。』(証言2) 『警察に電話が入ったのは、 6時45分だったみたいですね。』(証言3) 『きっとヒマだったのでしょう。 10分もしないで駆けつけてきた。』(証言4) |
裁: |
‥‥ふむう。 遊歩道の人物は、あなたを見て 逃げだしたワケですね。 |
諸: |
そのとおり。 ボクほどアタマがよくなくても、 さすがにリカイできるでしょう。 ‥‥この女こそが犯人だ、とね! |
裁: |
では、弁護人。 尋問をおねがいします。 |
成: | ‥‥これを見てください。 |
裁: | 被害者の解剖記録‥‥ですか? |
成: |
記録によると、事件があったのは、 6時28分です。 |
諸: | それがどうかしたかい? |
成: |
あなたは、その瞬間を目撃した。 それからすぐに警察に通報した。 しかし、警察に電話が入ったのは 6時45分です。 事件発生から15分も たっているじゃないですか! |
諸: | ‥‥‥‥ッ! |
成: |
この空白の15分間‥‥。 あなたは何をしていたのか! |
諸: | ぐぅぅぅぅッ! |
亜: |
証人は、死体を見て 動転していたのです! ちょっぴり、放心していた のではないでしょうか‥‥。 |
成: |
15分を”ちょっぴり”とは 言わない! |
亜: | ぎゃうッ! |
裁: | 証人! |
諸: | うッ‥‥! |
裁: |
‥‥警察に通報するまで、 あなたは何をしていたのですか! |
諸: | ‥‥‥‥‥ |
成: | 答えてください! |
諸: | ‥‥でんわ‥‥ |
成: | なんですって? |
諸: | ‥‥公衆電話を探していたんだよ! |
成: | 公衆電話‥‥ |
裁: |
あの。証人は 携帯電話はお持ちでは‥‥? |
諸: |
‥‥‥‥ッ! そ、その、重箱のスミをつつく ような、キタナイやりかた‥‥ イカガなものかと思いますがね! |
成: | ‥‥証人ッ! |
諸: |
落としちゃったんだよ! 携帯電話を! |
成: | 落とした‥‥? |
裁: |
‥‥まったく、メガネはなくすは、 携帯電話は落とすは‥‥。 よくモノをなくすヒトですね。 |
諸: |
なんだ! 一流のニンゲンは 落とし物なんかしないってか! いいか。天才と呼ばれる連中は、 みんなどこかがオカシイんだよ。 逆に言えば、オカシイところが あるボクは天才なんだ。 まあ、キミたち凡人には とうていリカイが‥‥ |
裁: | ‥‥そこまでッ! |
成: |
(やれやれ‥‥ ‥‥って、待てよ。 携帯電話を‥‥落とした‥‥?) |
真: |
なるほどくん! その携帯電話って、もしかして! |
成: |
この、マコちゃんが拾ったヤツ だってのか? まさか‥‥! (とんでもないことになってきた! ‥‥どうする?) |