第1話『失われた逆転』第1回法廷(その3)

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成歩堂 龍一…黒
綾里 真宵…青
須々木 マコ…橙
糸鋸 圭介…黄土
裁判長…緑
亜内検事…茶
諸平野 貴雅…紫
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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9月 8日 午前11時43分
地方裁判所 被告人第1控え室

マ: き‥‥記憶喪失!
そ、そんな状態で
アタシの弁護を‥‥。
成: ‥‥まあね。
マ: どーして
言ってくれなかったッスかッ!
成: ‥‥ごめん。
なんか、言い出せなくて‥‥。
マ: ‥‥あッ、そうだ!
スゴいショックを与えると
なおるコトがあるらしいッス!
さ。さ。アタマ出してください!
マコ・キックを食らわすッス!
成: い、いやいやいや!
エンリョしておくよ。
マ: あ‥‥スミマセン。
スズキ、困ってるヒトを見ると
ほっとけないッス‥‥。
つい、おせっかい焼いて、
すべてをブチ壊すッス。
成: (‥‥このトシでアタマを
ブチ壊されちゃたまらないな)
とにかく今は、きみのピンチを
切り抜けるほうが先だよ。
ぼくが知らないことは、
なんでも教えてくれないか?
マ: カンゲキです!
じゃあ、ええと‥‥。
まず、自己紹介からいきますねッ!
成: ‥‥いやいやいや。
さすがにそれは、わかってるよ。
‥‥どっちかと言うと、
ぼく自身のほうがナゾなんだけど。
”ナルホドー”だっけ?
‥‥ヘンな名前。
マ: ううう。重症ッス‥‥。
しかたありませんね‥‥。
これ、お貸しするッス。
成: ‥‥‥‥?
これは‥‥名刺?
マ: 成歩堂さんからもらった、
スズキの宝物ッス。
あとで返してくださいねッ!
成: う、うん。
(ウラに数字が書いてある‥‥)
マ: あ、それは携帯電話の番号ッス。
‥‥成歩堂さんの。

証拠品<<成歩堂の名刺>>を
法廷記録に挟んだ。
成: ま。これでいちおう、
ナルホド気分にはなれるから、
今度は事件のことだ。
マ: 事件のこと‥‥ですか?
成: そう。‥‥手がかりに
なりそうな話、ない?
マ: 手がかり‥‥
うーん‥‥そうですねー‥‥
あの携帯電話のことぐらいしか、
思い当たりませんケド‥‥
成: ‥‥携帯電話?
マ: はッ。面会のときお話ししたら、
成歩堂さん、目の色変えてたッス!
成: ‥‥!
聞かせてくれ! 大急ぎで。
ホラ早く!
マ: はッ! 了解ッス!

マ: ‥‥事件のあった日、
午後6時前のことでした。
町尾さんと歩いていたら、
携帯電話を拾ったんです。
電: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
マ: ‥‥急にその電話が
鳴り出しちゃって‥‥。
電: ‥‥ピッ‥‥
マ: 『あ、あの、もしもし。
スズキと申しますが‥‥』
?: 『あ。すみません。その携帯電話を
落とした者なんですけど‥‥』
マ: 『よかった! じゃァさっそく
お会いして、お返ししますッ!』
?: 『すぐ、そちらにうかがいます。
もう一度、お名前を‥‥』
マ: 『はッ! スズキ マコッス!』

マ: ‥‥で、6時に会う
ヤクソクをしたんです。
だから、町尾さんといっしょに
待ってたんですけど‥‥
ケッキョクその人、
来なかったんです。
成: ふーん‥‥。
それで、拾った携帯電話は?
今、どこに‥‥。
マ: きのう、成歩堂さんに
おわたししました!
成: え‥‥? ぼくに?
(ポケット、かな‥‥)
あ、ああ‥‥これか。
マ: 事件に関係あるんですか? それ。
成: さあ。‥‥でも、きのうの
ぼくが目の色を変えたんなら‥‥
?: あー。こんなところにいたよー!
もう、ひどいなあ!
携帯電話にかけても
出てくれないし!
法廷に行ってみたら、
だれもいないし‥‥
成: (うわ‥‥。
またヘンなのが出てきたぞ‥‥
まさか、この子もぼくの
知り合いなのか‥‥?)
?: あ、マコちゃん!
おはよう!
マ: マヨイさん、
おはようございますッ!
真: どう? どう?
調子のほうは!
マ: 下の下、といったところッス。
真: ふーん‥‥。
でも、もうだいじょうぶ!
この真宵ちゃんが、シッカリ証拠
持ってきてあげたからね!
はい、なるほどくん!
お待ちかねのモノ!
成: え? あ? ああ。ありがと‥‥。
(なんだこりゃ‥‥リスト?
ヒトの名前と電話番号が、
20人ぶんぐらい並んでいる)
真: ホント、調べるの
タイヘンだったんだからね!
なんか、そのヒトたち、
かなりのワルみたいだよ。
成: ”ワル”‥‥?
真: 警察が今、捜査している、
詐欺グループがあってさ。
そのメンバーじゃないか、
って思われてる人たちみたい。

証拠品<<リスト>>のデータを
法廷記録にファイルした。
成: ‥‥なんでこんなところに
詐欺グループが出てくるんだろ?
真: あ、あたしに聞かないでよ!
成: ううん‥‥。だいいち、
このリストは、どこで‥‥?
真: うええええッ!
ナニ言ってんの!
きのう、それをわたしてくれたの、
なるほどくんじゃない!
成: あ‥‥そうなの?
真: マコちゃんが拾った携帯電話に
登録されていた電話番号だよ。
成: ふうん‥‥そうだったんだ‥‥。
真: なるほどくんさあ、
最近忘れっぽいよねー。
やっぱり、トシはとりたくないよ!
マ: あの‥‥真宵さん。
じつは、成歩堂さんは‥‥
係: 弁護人!
そろそろ休憩時間が終わります。
被告人とともに、至急
法廷にもどってください!
真: あ、ほら。
話はあとあと。行こ!
マ: は‥‥はッ‥‥!
成: (‥‥これで、どうやら材料は
そろったみたいだな‥‥
あとは‥‥ぼくしだい。
負けられない‥‥ゼッタイに!)
真: ほらほら、なるほどくん。
早くする!
成: う、うん。


同日 午前11時54分
地方裁判所 第2法廷

裁: では、審理を再開しましょう。
証人を入廷させてください。
亜: はっ。
裁判長、その前にちょっと‥‥。
裁: なんでしょう?
亜: そのう‥‥。
これから呼ぶ証人なんですけども。
妙に人の神経をさかなでする
ところがありまして、その。
どうか、あたたかい目で‥‥
裁: ‥‥前置きはいりません。
早く呼んでください。
亜: ははッ。‥‥それでは。
事件当日、現場の公園をさんぽして
いた浪人生を入廷させてください!

亜: 証人。まず、名前を‥‥。
?: その前に、ヒトコトいいですか?
亜: は? ‥‥ど、どうぞ。
?: 先ほどアナタは、このボクを
こう紹介されましたね?
”さんぽ中の浪人生”と!
亜: ‥‥え?
そ、そうでしたっけ‥‥?
?: コマりますね。人をそういう
色メガネで判断されては。
たしかにボクは、大学生と呼ばれる
身分ではないかもしれない。
百歩ゆずって、
それは認めてあげましょう。
しかしボクは、すべてが一流で
なければならない宿命なのです。
そんなボクにとってふさわしい
大学とは、どこなのか‥‥?
慎重に検討している最中なのです。
それをアナタは”さんぽ中”‥‥
亜: わわ、わかりました。
申しわけない。気をつけます。
真: なな、なんか
スゴい人が出てきたね。
成: やれやれ。
アレに尋問するのかよ‥‥。
?: 一流のファッション! 車! 女!
メガネ! そしてモチロン、大学!
成: (メガネなんか
かけてないじゃないか‥‥)
裁: もうけっこうです!
証人は、さっさと名前を‥‥
?: ははあ。そう来るワケですか。
権力をふりかざして、若い芽を
つみとろうという寸法だ。
老人たち特有のキタナイやりかた。
イカガなものかと思いますがね。
裁: すす、すみません。
以後、気をつけます。
成: (やれやれ‥‥)
?: ‥‥まあいいでしょう。
つきあってあげますよ。
ボクの名前は、諸平野 貴雅
(もろへいやたかまさ)です。
”ほぼ大学生”と呼んでもらっても
ベツにボクはかまいませんよ。
亜: モロヘイヤさん。
事件当日、現場のわんぱく公園を
さんぽ‥‥散策していましたね?
諸: まあ、アナタがどうしても
そう言いたいのならば、どうぞ。
それを認めないほど、ボクも
コドモじゃありませんからね。
だいたいボクは‥‥
亜: とにかく、あなたがさんぽ中に
見たことを証言してください!
諸: あ、ホラ。また言った!
”さんぽ中”‥‥
裁: とにかく、目撃したことを
証言してくださいッ!

(事件当日、目撃したこと)
諸: 『午後はずっと、公園で
思索にふけっていましたね。』(証言1)
『時間はよくおぼえてないけど‥‥
夕方の6時すぎのコトでしたか。』(証言2)
『いきなり目の前に
警官が転げ落ちてきたんですよ。』(証言3)
『思わず見上げると、真っ青なカオを
した女と目が合いましたね。』(証言4)
『もちろんおぼえています。
被告席の彼女でしたねあれは。』(証言5)
『他に現場で変わったことといえば、
バナナが落ちていましたね。』(証言6)
裁: ふむう‥‥。
これはかなり、決定的ですね‥‥。
真: けけ、決定的だって!
なるほどくん。
成: ‥‥ふうん。
真: ふうん、って!
なんでそんなに落ちついてるの!
成: (フシギだ‥‥。
ココロが妙におだやかだぞ‥‥)
たぶん‥‥信じてるんだよ。
依頼人のこと。
真: マコちゃん‥‥?
成: そう。‥‥彼女が無実ならば、
答えは1つしかない。
‥‥アイツは、ウソをついている!
裁: では、弁護人。
‥‥尋問をおねがいします。
成: (かならず見破ってやるさ。
‥‥どんなうまいウソでもな!)

(「証言6」に「グローブ」をつきつける)
成: ‥‥モロヘイヤさん。
じつは、ここにあるんですよ。
‥‥そのときのバナナが。
諸: なんだ。キミもバナナのコト、
知ってたんじゃないか。
そんなことでボクを引っかけた
なんて、思わないでほしいね。
成: (引っかかってるんだよな‥‥
思いっきり!)
裁: な‥‥成歩堂くん‥‥
そ、それは‥‥
亜: グローブじゃないですか!
諸: え‥‥! な、なんだって?
グローブ‥‥?
成: なんなら、食べてみますか?
諸: そ‥‥そんな‥‥。
そんなバナ‥‥バカなああぁァッ!
成: 裁判長! これで、
1つハッキリしたことがあります!
つまり、この証人は‥‥

(「目が悪い」を選択)
成: ‥‥ところで、モロヘイヤさん。
視力はいくつですか?
諸: な‥‥。なな、ななな、
ななななんだい急に!

(亜内検事「異議あり!」)
亜: バナナとグローブを見まちがえた
ぐらいで、視力が低いとは‥‥
裁: ふつう、まちがえません。
異議は却下します。
諸: ヤ‥‥ヤレヤレ。
あなたがたは、アレだ。
地動説を唱えたガリレオを
認めなかった連中といっしょだ。
くだらんジョーシキにしばられて
新しい可能性に気づきもしない!
たしかに、結果的にアレは
グローブだったのかもしれない。
しかし、ハナからそれを
疑ってかかるなんて‥‥
成: だから、いくつなんですか視力は!
諸: 両方とも0.1だよ! ワルいか!
裁: 今日はどうしてメガネを‥‥?
諸: ‥‥‥‥‥‥
‥‥さ、最近ちょっと。
その、なくしてしまって‥‥。
も、モチロン作りなおそうと
思ってますよ!
でも、なかなかボクの
おメガネにかなうメガネが‥‥
成: 事件を目撃したときは?
メガネをかけていましたか?
諸: ‥‥‥‥ッ!
成: どうなんですか!
諸: ‥‥あ、あなたがたはアレだ。
あのジャンヌダルクを処刑した
連中といっしょだ。
勇気を持って、正しいおこないを
した者をつかまえて、
なんにも悪くないのに
火あぶりに‥‥
成: ‥‥つまり
証人はメガネをかけていなかった!
それならば!
目撃したという”女”が
被告だったのかどうか‥‥、
この証人に断言できるはずがない!
諸: ‥‥‥‥ッ!

(亜内検事「異議あり!」)
亜: ‥‥しかし、
現場の段差は、たった3mです!
上の遊歩道にいる被告のカオが
見えても、おかしくはない!
裁: ふむう‥‥証人。
証言は正確におねがいします。
人の命がかかっているのですよ。
諸: ‥‥‥わ、わかりましたよ!
裁: では、証言をつづけてください。
亜: では、事件を目撃してからのことを
証言してもらいましょう。

(事件を目撃してからのこと)
諸: 『遊歩道の女は、ボクに気づくと
サッと逃げていきましたね。』(証言1)
『そのあと、ボクはすぐに警察に
通報しました。』(証言2)
『警察に電話が入ったのは、
6時45分だったみたいですね。』(証言3)
『きっとヒマだったのでしょう。
10分もしないで駆けつけてきた。』(証言4)
裁: ‥‥ふむう。
遊歩道の人物は、あなたを見て
逃げだしたワケですね。
諸: そのとおり。
ボクほどアタマがよくなくても、
さすがにリカイできるでしょう。
‥‥この女こそが犯人だ、とね!
裁: では、弁護人。
尋問をおねがいします。

(「証言3」に「町尾 守の解剖記録」をつきつける)
成: ‥‥これを見てください。
裁: 被害者の解剖記録‥‥ですか?
成: 記録によると、事件があったのは、
6時28分です。
諸: それがどうかしたかい?
成: あなたは、その瞬間を目撃した。
それからすぐに警察に通報した。
しかし、警察に電話が入ったのは
6時45分です。
事件発生から15分も
たっているじゃないですか!
諸: ‥‥‥‥ッ!
成: この空白の15分間‥‥。
あなたは何をしていたのか!
諸: ぐぅぅぅぅッ!

(亜内検事「異議あり!」)
亜: 証人は、死体を見て
動転していたのです!
ちょっぴり、放心していた
のではないでしょうか‥‥。

(成歩堂「異議あり!」)
成: 15分を”ちょっぴり”とは
言わない!
亜: ぎゃうッ!
裁: 証人!
諸: うッ‥‥!
裁: ‥‥警察に通報するまで、
あなたは何をしていたのですか!
諸: ‥‥‥‥‥
成: 答えてください!
諸: ‥‥でんわ‥‥
成: なんですって?
諸: ‥‥公衆電話を探していたんだよ!
成: 公衆電話‥‥
裁: あの。証人は
携帯電話はお持ちでは‥‥?
諸: ‥‥‥‥ッ!
そ、その、重箱のスミをつつく
ような、キタナイやりかた‥‥
イカガなものかと思いますがね!
成: ‥‥証人ッ!
諸: 落としちゃったんだよ!
携帯電話を!
成: 落とした‥‥?
裁: ‥‥まったく、メガネはなくすは、
携帯電話は落とすは‥‥。
よくモノをなくすヒトですね。
諸: なんだ! 一流のニンゲンは
落とし物なんかしないってか!
いいか。天才と呼ばれる連中は、
みんなどこかがオカシイんだよ。
逆に言えば、オカシイところが
あるボクは天才なんだ。
まあ、キミたち凡人には
とうていリカイが‥‥
裁: ‥‥そこまでッ!
成: (やれやれ‥‥
‥‥って、待てよ。
携帯電話を‥‥落とした‥‥?)
真: なるほどくん!
その携帯電話って、もしかして!
成: この、マコちゃんが拾ったヤツ
だってのか? まさか‥‥!
(とんでもないことになってきた!
‥‥どうする?)

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