成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 真宵…青 | |
須々木 マコ…橙 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
亜内検事…茶 | |
諸平野 貴雅…紫 |
諸: |
うふ‥‥ふふ‥‥ わはハはワはははわはハはわははは はわはははわはハはわはわはワはハ はわははははわハははわははハはわ わハわはハははワはワハははわはは ふふふふふ‥‥ふふ、やるねえ‥‥ 三流大学にしちゃ‥‥上デキだぁ。 |
成: | な、何がおかしいんだ! |
諸: | 証拠だよ‥‥証拠ぉ! |
真: |
ううう‥‥あのヒト、なんだか コワい‥‥っていうか、オモシロ |
諸: |
キミがさっきからふり回してる、 そのアヤシイ携帯電話さあ。 詐欺グループの電話番号が 登録されていたって? それが、ボクのものだって証拠、 どこにあるってんだよぉォ! |
成: |
‥‥この携帯電話が‥‥ きみのものである証拠‥‥? |
諸: |
うへへ‥‥へ‥‥うへ。 さっきも言ったけどさあ。 ボクがなくした携帯電話はさあ、 もう見つかったんだよねぇ。 キミの持ってる電話が誰のものかは 知らないけどお。 ボクのじゃないことは たしかだぞコラァ! |
成: | な‥‥なんだって! |
諸: |
へへへ‥‥へ‥‥へへへへへ‥‥ ユカイだねえ、そのあわてたカオ。 |
裁: |
ふむう‥‥たしかに、問題は その、アヤシイ携帯電話ですねえ。 いったい誰のものか? 証明できなければ、意味がない。 |
成: |
ま‥‥待ってください! (冗談じゃない! ここで逆転されてたまるか! この‥‥携帯電話! 何か‥‥! 何か見落としを してるはずだ!) |
成: |
そうだ! この電話に残っている 指紋を調べればいいんだ! |
裁: | ‥‥指紋、ですか‥‥。 |
成: |
きっと、モロヘイヤの指紋が 残っているはずです! |
真: |
な、ナニ言ってるの、 なるほどくん! マコちゃんからもらうとき、 なるほどくん、ふいたじゃない。 |
成: | え。 |
真: | 砂でヨゴれているからって。 |
成: |
ふ‥‥ふいちゃったの? ‥‥ぼくが? |
真: | それはもう、念入りに。 |
諸: |
ひゃあーっはっはっはっはぁ! ユカイだねえ。三流のゴミたちが ドタバタするサマをながめるのは! |
成: |
(くそッ! カンゼンに 立ち直っちまったぞ‥‥) |
諸: |
何度も言うけど、ボクの携帯電話は ここにあるからねえ! ちなみに、この電話に登録されてる 番号は、見ることができないよ。 急に故障したみたいでね。 ‥‥ゼンブ消えちゃったんだよ! |
成: |
(‥‥! 証拠になる番号を 消去しやがったな‥‥!) ‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥モロヘイヤさん。 |
諸: |
オヤオヤ‥‥。 ボクに向かって口をきく勇気が まだ、残っていたとはねえ。 |
成: |
ケッキョク、あなたの携帯電話は どこで見つかったんですか? |
諸: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥クックックッ‥‥ あーっはっはっはっはっはっはっ! ‥‥コイツはケッサクだ! モチロン、キミはそれを 知らないワケだねえ! |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥? ‥‥思い出したぞ‥‥! |
電: |
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥ピッ‥‥』 |
成: |
『あれ。 ‥‥切れちまった‥‥か。』 |
?: |
『‥‥やれやれ‥‥ やっと見つけたよ‥‥。』 |
成: | (‥‥あのときだったのか‥‥) |
諸: |
‥‥どうかしたかな? センセイ。 そんな目でニラんじゃって‥‥。 |
真: |
なるほどくん! ‥‥このままじゃあ‥‥ 逃げられちゃうよ! ここまできたのに! |
成: |
わかってる。 (‥‥でも、この携帯電話が あいつのものだなんて‥‥ どうやって 証明すればいい‥‥!) |
裁: |
‥‥弁護人。 その携帯電話の持ち主が 特定できない以上、 あなたの告発には なんのチカラもありません。 ‥‥どうやら、あと1歩、 およばなかったようですね‥‥。 |
成: |
(どこかで‥‥ どこかでまちがったのか‥‥?) |
諸: |
ま。三流弁護士にしては よくやったほうだと思うよ。 キミのシッパイは、ただ1つ。 自分がナニモノなのか? それをわきまえなかったコトさ。 |
成: |
(自分が‥‥ ナニモノなのか‥‥?) |
裁: |
それでは、この証人に対する 尋問を終了します! |
諸: |
フッフッフッ‥‥。 じゃ、ボクはそろそろ シツレイさせてもらいますよ。 一流のレストランに 予約を入れてるものでね‥‥。 |
亜: |
おつかれさまでした。 ‥‥どうぞ、よいお食事を。 |
成: |
(‥‥どうする! このままでいいのか‥‥?) |
成: | お待ちください、裁判長! |
真: | な‥‥なるほどくん! |
成: |
もしかしたら‥‥、 証明できるかもしれません! |
裁: |
”証明”‥‥? 何を、ですかな? |
成: | ‥‥すべてを! |
亜: |
さ、裁判長! すでに尋問は終了しております! これ以上、わずらわしい 質問で、証人を‥‥ |
裁: |
苦しめるわけには いきませんね、弁護人。 |
諸: | いかないんだよ、センセイ。 |
成: | おねがいします! 裁判長! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥ ‥‥わかりました。 では、1つだけ。 |
成: | ‥‥! |
裁: |
証拠品を提示することを 許可しましょう。 |
成: | (1つだけ‥‥!) |
裁: |
それで、すべてを”証明” できなければ‥‥ おしまいです。 依頼人も、あなた自身も。 それでよろしいかな? |
成: | ‥‥‥わかりまし |
亜: |
裁判長! おわかりですか! 尋問はすでに終了しているんだ! |
裁: |
あなたこそ、おわかりかな? ‥‥私は、証拠品の提示を 許可すると言っているのです。 |
亜: | ううう‥‥ |
裁: |
では、成歩堂くん。 ‥‥最後のチャンスです。 |
成: |
(これで‥‥キメなければ! ナニがナンでも‥‥!) |
裁: |
あなたの考えをすべて証明する 証拠品を1つ。‥‥お見せなさい! |
裁: |
‥‥これはどうも、 ごていねいに。 ワタクシは、こういうモノです。 |
法廷記録に挟んだ。 | |
裁: |
‥‥って、名刺交換 してる場合じゃありません! |
成: |
裁判長。 その名刺のどこが重要なのか? それは‥‥ |
成: |
ダイジなのは、その名刺の ウラ面なのです! |
真: |
ウラ面って、なるほどくんの 携帯電話の番号が書いてあるけど。 |
成: |
そのとおり。 この番号、かけてみてくれないか? ‥‥きみの電話から。 |
真: |
え? ‥‥今? でも、審理中だよ。 |
成: | かまわないから。 |
真: | いいのかなあ。 |
裁: |
成歩堂くん。 どういうことですか? |
成: |
これから、ぼくの携帯電話に かけてみます。 ‥‥それで、 この事件はすべて解決です。 |
諸: | そ、そんなバカなコトが‥‥ |
電: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
諸: |
‥‥‥‥ッ! なな、なんだ。 なんでボクの電話が‥‥? ‥‥しかもなんだ! この、 バカみたいな着信メロディーは! |
電: | ‥‥ピッ‥‥ |
成: | モロヘイヤさん‥‥ |
諸: | ‥‥ッッ!! |
成: |
おかしいですねえ。 それ‥‥。 ぼくの携帯電話じゃないですか! |
諸: |
な‥‥なんだと‥‥ あああああああッ! ま、ま、ま、まさか‥‥! |
成: |
‥‥今朝は、後頭部に一発、 どうもありがとう。 |
諸: | う‥‥うううう‥‥ |
成: |
‥‥もう、説明するまでも ないだろう? きみはあのとき、持っていく 携帯電話をまちがえたんだよ! |
諸: |
‥‥‥‥‥‥‥う‥‥‥‥‥‥‥ わああああああああああああああ あああああああああああああああ あああああああああああああああ あああああああああああああああ あああああアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアァァァァ ァァァァァァァァァァァァァァッ! |
裁: |
‥‥そうだったんですか。 モロヘイヤに殴られて‥‥。 |
成: |
彼は、プライドとメンツだけで 生きていた男でした。 詐欺グループのメンバーで あることをかくすために、 正常な判断力を なくしてしまったんでしょう。 |
裁: | ふむう‥‥。 |
亜: |
じゃ、じゃあ、成歩堂くん。 キミが持ってる、その電話は‥‥ |
成: |
モチロン、これがモロヘイヤの ものだったんですよ。 |
裁: |
亜内検事。 モロヘイヤ氏は‥‥? |
亜: |
はい‥‥。 緊急逮捕いたしました。 |
裁: |
よろしい。 では、被告人・須々木 マコに 判決を言いわたしましょう。 |
裁: | ‥‥では、本日はこれにて閉廷! |
地方裁判所 被告人第1控え室 | |
マ: |
やっぱり、成歩堂さんは 成歩堂さんだったッス! スズキ、モーレツにカンドーッス! 本当に どーもありがとうございましたッ! |
真: |
町尾巡査、カワイソウだったね。 なんにも悪くないのに‥‥。 |
マ: |
‥‥‥‥それ、 アタシのせいかもしれません‥‥。 |
成: | え? |
マ: |
スズキの人生は、まさに不運と 敗北と大番狂わせの見本市でした。 |
真: | み、見本市。 |
マ: |
生後6ヶ月のとき、マンションの 9階から落っこちたのを皮切りに、 ひととおりの乗り物にはひかれ、 ひととおりの食べ物にはあたり、 だいたいの試験には落第して、 ほとんどの災害をも経験して、 ジャンケンも勝ったことはおろか、 アイコになったことすらないッス。 ‥‥まさに、 負けつづけの人生ッス。 |
成: |
て‥‥テッテーしてるね それは‥‥。 |
マ: |
小・中・高校と、一貫した あだ名が<<不幸の女神>>。 警察学校では<<堕天使>>と 呼ばれていたッス。 |
真: | ”だてんし”‥‥ |
マ: |
しかも、自分の不幸は 他人まで巻きこむみたいで‥‥ |
真: | ‥‥どういうコト? |
マ: |
アタシ、ヒトが困ってるのを 見ると、ついおセッカイを‥‥ |
成: |
ああ、さっきもそんなコト 言ってたね。 |
マ: |
こないだもそうッス。 横断歩道でおばあちゃんが オロオロしてたッス。 手を引いてあげて‥‥ 気がついたら、アタシの家で 晩ゴハンごちそうしてたッス。 |
真: | ‥‥はあ。 |
マ: |
きっと町尾さんも アタシと関わったせいで‥‥ |
真: | そ、そんなコトないよ! |
マ: |
あのグローブも たいした意味はなかったッス。 1回、夜勤をかわってもらった お礼だったのに‥‥。 |
真: | そうだったんだ‥‥。 |
マ: |
みんな、アタシのせいッス! 町尾さんのことも、 成歩堂さんのアタマが ダメになったのも! |
成: |
あの。ぼくのアタマはまだ、 ダメになったワケじゃあ‥‥ |
マ: |
‥‥スズキ、これから 第2の人生を探してみるッス。 次に会うときまでには、 きっと‥‥ スズキ、デッカイ運を つかんでみせるッス! |
成: |
ああ。<<不幸の女神>>なんて 冗談じゃないもんな! |
マ: |
そッス! ヤクソクッス! 次に会うときは<<不幸なヒト>> レベルに登りつめておくッス! |
成: | そ、そうとも! |
マ: |
‥‥じゃ、成歩堂さん。 真宵さん。アタシはこれで。 |
真: | うん! ‥‥がんばろうね! |
マ: | お2人とも、お元気でッ! |
成: |
‥‥やれやれ。 ヒドい1日だったな‥‥。 記憶がもどったと言っても、 まだ、少しボンヤリしてるし。 |
真: |
でも、ブジでよかったよね。 ホント、心配しちゃった! ‥‥じゃ、 あたしたちも事務所に帰ろ。 |
成: |
(うーん‥‥これを尋ねると、 エラいコトになりそうだけど) あの‥‥悪いんだけどさ‥‥。 どなたでしたっけ? きみ。 |
真: |
なによ! キオク、もどってないじゃないっ! |
成: |
(その瞬間‥‥ ぼくはほんとうに、 すべてを思い出した‥‥) イトノコ刑事‥‥。 いろんな事件で戦った、 敵ながらあっぱれな男。 味方になってくれた 事件もあったっけ‥‥ 裁判長‥‥。 すぐに人の意見に左右される、 愛すべきじいさん。 最終的には、いつも正しい 判断をしてくれるんだよな‥‥ ‥‥この人(亜内検事)は‥‥ 知らないな。 ぼくを知ってるみたい だったけど、 きっと人ちがいだろう‥‥ (そして、この子‥‥) ‥‥真宵ちゃん‥‥ |
真: |
あっ! ‥‥やっと思い出してくれたよ! |
成: |
(綾里 真宵(あやさとまよい) ‥‥ぼくの助手だ。 彼女については‥‥そう。 忘れられない思い出だらけだ。 たとえば‥‥) |
真: |
なーるーほーどーくん! どうしたの? あたしのカオばっかり見て! やっぱり、なつかしい? |
成: |
‥‥そうだね。 ずいぶん、ひさしぶりに 会ったような気がするよ。 |
真: |
そうなんだ。 ‥‥じゃあ、 これからもよろしくね! |
成: |
うん‥‥。 こちらこそ、よろしく。 (携帯電話のメモリーも モロヘイヤに消されちまったし。 ぼくもまた、 最初から出直しだな‥‥) |
真: |
ほらほら、なるほどくん。 いつものラーメン屋、行くよ! |
成: |
ハイハイ。 (ジッサイ、彼女に再会してから まだ2ヶ月しかたっていない。 あれは、そう‥‥ 2ヶ月前の、 ある雨の午後の話だ‥‥) |