成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
綾里 春美…黄緑 | |
綾里 キミ子…灰 | |
霧崎 哲郎…紺 | |
葉中 のどか…紫 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
堀田(自称)…黄 |
あれは‥‥事故じゃなかったわ あたしは‥‥殺されたのよ ‥‥アイツに‥‥ ‥‥だから‥‥復讐してやった‥‥ 当然でしょ? のどか‥‥ | |
真: |
‥‥せっかくまた、 なるほどくんに会えたのに‥‥。 |
成: | きみのせいじゃないよ。 |
真: |
あたし‥‥殺しちゃったんだ。 ‥‥あの人を。 |
成: | あれは、きみじゃなかったんだ。 |
真: |
ううん。 おんなじことだよ‥‥。 |
成: |
(まさか、こんなことに なるなんて‥‥ ‥‥すべての始まりが、 アタマの中によみがった。 ‥‥あの、うっとうしい 雨の午後の情景が‥‥) |
成歩堂法律事務所 | |
?: |
‥‥うっとうしい雨です。 わかりますか? うっとうしいんですよ、私は! |
成: | は、はあ‥‥。 |
?: |
それ以上にハラが立つのが、 天気予報のお姉さんです。 <<梅雨の合間、つかのまの お日さまがのぞくでしょう>>‥‥ お姉さんはこう、ハッキリ言った! 断言してもいい! |
成: | それはそれは‥‥。 |
?: |
だから私は今日、 カサを持ってこなかった。 ‥‥それが、このザマです! 15万円のスーツが台無しだ! |
成: |
あの‥‥。 それで、ご用件は? その天気予報のお姉さんを 訴えるんですか? |
?: |
‥‥‥‥‥ これは、シツレイ。 本題に入る前の、軽い 世間話のツモリだったのですが。 私、外科医をやっております。 霧崎 哲郎(きりさきてつろう)。 |
成: |
(この先生に手術されるのは カンベンしてほしいな‥‥) |
霧: |
今日は、この件で やってまいりました。 |
成: |
<<霧崎外科医院で医療ミス。 14人の入院患者が死亡>> ‥‥ああ。 あなたが、あの‥‥? |
霧: |
まったく、ハラ立たしい話です。 いいですか? これは保証します。 私は、ハラを立てているんです! |
成: |
はいはいはい。 そうなんでしょうね、霧崎先生。 |
霧: |
ミスをしたのは、看護婦なんだ! 14人を殺したのは、 看護婦の投薬ミスだったのですぞ! しかも! いいですか、しかもですぞ! この看護婦は、自分の罪を認める 前に、死んじまったんです! あろうことか、この私に なんのことわりもなく! 勝手に交通事故を起こして、 勝手に車ごとぺちゃんこです! ぺちゃんこですぞ! わかりますか? それも、車ごと! |
成: |
(‥‥そう。今から1年前、 ワイドショーは大さわぎだった。 14人も亡くなった医療ミスと、 看護婦のナゾの事故死‥‥ 事故は霧崎先生が仕組んだ、 なんてウワサもあった。 医療ミスの真相をかくすため、 永久にダマらせたのだ、と‥‥) |
霧: |
なんで私が‥‥ いいですか、もう一度言いますよ! なんでこの私が、あの看護婦を 殺さなければならないんですか? 14人殺したのは、彼女なんだ! 私じゃない! |
成: |
おキノドクだと思いますけどね。 でも、もう1年も前の話ですよ。 なんで、今さら‥‥? |
霧: |
今だからこそ! なんとかせねばならんのです! いいですか! 私の病院には、 患者が寄りつかない。 どういうことかわかりますか? 来ないんですよ、患者が! |
成: |
(‥‥そりゃそうか。 ぼくだって行きたくないもん) それで‥‥ぼくに、どうしろと? |
霧: |
私の無実を証明する お手伝いをしていただきたい。 |
成: |
‥‥あの。ぼくは弁護士で、 探偵じゃありませんよ。 |
霧: |
いや。これは、あなたにしか おねがいできないのです。 |
成: | ‥‥‥? |
霧: |
綾里 真宵。 ‥‥もちろん、ごぞんじですね? |
成: |
‥‥‥‥! (アヤサトマヨイ‥‥ どうして、その名前が‥‥!) |
霧: |
あなた、彼女の下で しばらく働いていたそうですね。 |
成: |
まあ、たしかに‥‥。って、 ちょっと待ってください! ぼくが”彼女の下で” 働いていたんですか? |
霧: |
ええ。ちがうんですか? 彼女はそう言っていましたが‥‥。 |
成: |
‥‥以前、いっしょに 法廷に立っていたんです。 ‥‥今はもう、”修行”に もどってしまいましたけど。 |
霧: |
ええ、聞いてますよ。 おさびしいでしょう。 |
成: |
な、そんな! べ、べつにぼくは‥‥ |
霧: |
彼女の”修行”、リッパに 実をむすんだようですよ。 |
成: | えっ。 |
霧: |
私の知り合いに、オカルトに くわしい人がいまして。 紹介してくれたのです。 綾里 真宵さんをね。 |
成: |
(‥‥真宵ちゃん‥‥ そんな有名人だったのか?) |
霧: |
で、私。 このたび、依頼したんですよ。 |
成: | ナニをですか? |
霧: |
霊媒ですよ。 決まってるでしょう! 勝手に死んだ、あの看護婦を 呼びだしてもらうんです! |
成: |
な、なるほど‥‥。 (真宵ちゃん、か。 ‥‥どうしてるかな) |
真: |
『あたしたち綾里家の女は代々、 霊媒師として生きてきたの。 綾里の血は、強い霊力を 宿しているから‥‥。』 |
成: |
(‥‥そんなこと言ってたっけ。 どうやら、一人前に なれたみたいだな‥‥) |
霧: |
彼女、修行以外で、だれかの霊を 呼び出すのは初めてなので、 1つ、条件を出してきましてね。 それで引き受けてくれることに。 |
成: | ‥‥条件? |
霧: |
それが、あなたなんですよ、 成歩堂さん。 あなたが立ち会うなら、 霊媒を引き受ける、と言うんです。 |
成: | ‥‥ぼくが‥‥ |
霧: |
ということで、 つきあっていただけますね! あなたも、会いたいでしょう? ‥‥彼女に。 |
成: |
(‥‥というわけで‥‥ ぼくは、彼女のふるさとへ 同行することになった‥‥) |
倉院の里 | |
成: |
(倉院(くらいん)の里。 真宵ちゃんの‥‥ふるさとか) |
?: | ‥‥‥‥ |
成: | ‥‥や、やあ。こんにちは。 |
?: | ‥‥‥‥ |
成: |
‥‥なんだ。 ブアイソウな子だな‥‥。 |
?: |
おーい、はみちゃーん! 待ってよー。 |
成: |
(ん? また だれか来るぞ‥‥) |
?: | ああああっ! なるほどくん! |
成: |
ま、真宵ちゃん。 ‥‥ひさしぶり。 |
真: |
うわあ。ホントに来てくれるとは 思わなかったよ! |
成: |
大ゲサだなあ。うちの事務所から 電車で2時間じゃないか。 |
真: | まあね。 |
成: |
こんな近いんなら、たまには 遊びにくればよかったのに。 |
真: |
ダメだよ。 あたし、決めたんだもん。 一人前になるまで、ひとりで がんばる、って‥‥ |
成: |
まあ、いいや。 とにかく、おめでとう。 修行がうまくいって。 |
真: | へへ‥‥。 |
成: |
ついに、霊媒師として 仕事をするんだね。 |
真: |
そうだねー。こんなに早いとは 思わなかったな。 |
成: |
でも、ちょっとメンドウな話だな。 ‥‥ちゃんとわかってる? |
真: |
ふっふっふっ。真宵ちゃんの 情報網をナメちゃダメだよ。 アレでしょ。霧崎先生、医療ミスで 14人殺しちゃったんでしょ。 で、看護婦さんにその罪を ゼーンブかぶせるために、 交通事故に見せかけて 殺しちゃったんだよね! |
成: |
え‥‥。 あのさ。 ”真宵ちゃんの情報網”って‥‥? |
真: | ワイドショー。 |
成: | ‥‥だと思った。 |
真: |
‥‥‥‥あはは。 ジョウダンだよ! ホントは逆なんでしょ。 事情は先生から聞いてるって! |
成: | ‥‥‥‥ |
真: |
アッタリマエでしょ! サツジンハンの依頼なんて、 引き受けないよ! コワいもん。 |
成: | (ま、そりゃそうだな) |
成: |
ここ、真宵ちゃんの ふるさとなんだ。 |
真: |
そうだよ。 倉院の里。‥‥霊媒師の谷 とも呼ばれてるみたい。 |
成: |
へえ‥‥。 住んでる人、 霊媒師ばっかりなの? |
真: |
そうだねえ。 ウチの親せきは、 たいていそうかな‥‥。 |
成: |
(綾里家の血は、霊力が 強いらしいからな‥‥) |
真: |
ま。でも、霊媒師は 女の人だけだけど。 |
成: | 男の人は、何をしてるの? |
真: |
ほとんど、 出かせぎに行ってるよ。 |
成: |
そういえば、さっきの女の子‥‥ 知り合い? |
真: | ああ。はみちゃん。 |
成: | はみちゃん? |
真: |
綾里 春美(あやさとはるみ)。 あたしのイトコなんだよ。 もお、カワイイでしょ? あたしに似てさ。 |
成: |
イトコ‥‥ってことは、 彼女も? |
真: |
うん。霊媒師。 はみちゃんはね、テンサイなんだ! |
成: |
ふうん‥‥。 さっき声をかけたら、 圧倒的にムシされたぞ。 |
真: |
ああ。おばさまにキビしく 教えられているから。 ”アヤシイ人に声をかけられたら 逃げなさい”って。 |
成: | あ、アヤシイ人‥‥。 |
真: |
だってなるほどくん、 修行者の装束を着てないでしょ。 |
成: | あたりまえだ。 |
真: |
はみちゃんはね、 おばさまの宝物だから。 あんまり、そとの世界のこと 知らないんだよ。 |
成: | ‥‥おばさま? |
真: |
はみちゃんのおかあさん。 あたしの、おばさま。 ‥‥じゃあ、あたし そろそろしたくするから。 |
成: | え? あ、ああ。 |
真: |
あたしのウチに行ってて。 あそこでやるから。 終わったら、 おいしいみそラーメン作るからね。 |
成: |
わかった。 ‥‥じゃ、がんばって。 |
真: | うん! |
成: |
(やれやれ‥‥。 元気そうでなによりだな) |
綾里家・修験者の間 | |
霧: |
あ、成歩堂さん。 よく来てくれました! |
成: |
今日はいい天気で よかったですね。 |
霧: |
いや、まったくです。 ま、天気予報のお姉さんは またハズしてましたがね。 <<今日はドシャぶりでしょう>> スズしいカオして言ってましたよ。 あんなガセ情報を、あろうことか 公共の電波でお茶の間に‥‥ |
成: |
(‥‥この先生に天気の話題は タブーだな‥‥) |
霧: |
‥‥いや、それにしても リッパな屋敷ですな。 |
成: |
(たしかに‥‥ここが 真宵ちゃんの家とは‥‥) |
霧: |
屋敷の見取り図を もらってきましたよ。 成歩堂さんもどうぞ。 |
法廷記録に挟んだ。 | |
成: |
看護婦さんの霊に会って、 どうするつもりなんですか? |
霧: |
決まってます。 念書を書かせるんですよ。 |
成: | ねんしょ? |
霧: |
そう、念書です。 いいですか、こう書かせるんです。 <<1年前の5月2日 私の不注意で、14人の患者を 死なせてしまいました。 そして、同月24日 これまた自分の不注意で、 居眠り運転による交通事故死。 不注意で どうもすみませんでした>> ‥‥いかがです! これで私の心は もう梅雨あけですぞ! |
成: | そ、そうですか‥‥。 |
成: |
あの。綾里 真宵のことは、 どなたから‥‥? |
霧: |
私の知り合いにね。大学でオカルト を研究してる女の子がいるんです。 その子に、この里を紹介して もらったワケですよ。 倉院流霊媒道の総本山 ということで。 |
成: | そうほんざん‥‥ |
霧: |
そして真宵さんは、 家元のムスメさんですからね。 |
成: | いえもと‥‥ |
霧: |
ほら、そこに見えるトビラ。 あそこが霊と対面する部屋です。 真宵さんのおばさんにあたる 人がいます。会ってきてみては? |
綾里家・対面の間 | |
成: |
(うわあ‥‥ なんてまあ、アヤシイ‥‥ このユラユラした明かりは‥‥ ローソク、みたいだな) |
?: |
ああた! ‥‥どちらさまで? |
成: |
うわ! は、はい。 ぼくは成歩堂 龍一といって‥‥ |
?: |
ああ。 ‥‥ああたが、あの。 |
成: |
(”ああた”って‥‥ ぼくのコトか?) |
?: |
ああた、ベンゴシでござあましょ? 真宵さまから うかがっておりますわよ。 |
成: |
それはどうも。 (真宵”サマ”‥‥?) |
?: |
アタクシは真宵さまのおば、 綾里 キミ子でござあます。 |
成: | よ、よろしくおねがいします。 |
キ: |
ああた、アレでござあますわねえ。 殿方なんですから、あまり真宵さま に頼ってばかりでは、 みっとものうござあますよ。 |
成: | は? |
キ: |
アレでござあましょ? ああたが勝訴した事件のほとんどは 真宵さまのスイリとヒラメキで‥‥ |
成: |
(‥‥女の子には走って逃げられ、 おばさんにはマユをしかめられ どうも、ダメなオトコの 見本になってるな、ぼく‥‥) |
キ: |
ま。アレでござあますわね。 もっとシャンとなさるコト。 |
成: | ‥‥ココロがけます。 |
成: |
真宵ちゃん、”サマ”づけで 呼ばれるほどエラいんですか? |
キ: | ああたッ! |
成: | はいッ! |
キ: |
真宵さまに向かって、なんて なれなれしい! |
成: | す‥‥すみません。 |
キ: |
”真宵さま”と お呼びなさいまし! |
成: |
あ、あの。‥‥その、真宵さま ‥‥のコトですけど? |
キ: | 血‥‥でござあます。 |
成: | ”血”‥‥? |
キ: |
あの方は、家元の血を受けた 最後のひとりでござあます。 |
成: | (”最後の”‥‥?) |
キ: |
倉院流霊媒道の正当な後継者‥‥ それが、真宵さまでござあます。 |
成: |
じゃあ‥‥あの、 ああた‥‥いや、あなたは? |
キ: |
そうでござあますね。 アタクシども、姓は綾里ですが、 ”分家”なのでござあます。 |
成: | ‥‥ぶんけ? |
キ: |
分家の人間は、たとえどんなに 霊力が強くとも‥‥ 倉院流の家元になることは できないのでござあます。 |
成: |
あの‥‥あなたの霊力は どうなんですか? |
キ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ザンネンでござあますが‥‥ 家元の足もとにも およびませんわね。 |
成: | (そんなものなのか‥‥) |
成: |
今日の霊媒は、彼女の初仕事に なるとか? |
キ: |
そのとおりでござあます。 交通事故の死者は 思念が強うござあますから、 呼び出すのは、たやすい コトでござあましょう。 |
成: | (”交通事故”ねえ‥‥) |
キ: |
霊媒はこの<<対面の間>>にて おこなわれますので。 アタクシがこうして今、 準備をしているのでござあます。 |
成: |
あの‥‥この部屋は‥‥。 <<対面の間>>でしたっけ? |
キ: |
霊媒師が、霊と語らう 場所でござあますわ。 |
成: | じゃあ、ぼくたちもここで‥‥? |
キ: |
トンデモござあません。 ここに入れるのは、依頼者と 術者の2人だけでござあます。 |
成: | そ、そうなんですか? |
キ: |
倉院流の奥義を、そうそう人前で お見せするわけにはまいりません。 |
成: |
(真宵ちゃん、ぼくの前で 見せまくっていたけどな‥‥) |
キ: |
何かマチガイがあっては 困りますから、 交霊中は、そこのトビラに カギをかけることに‥‥。 |
成: | カギ‥‥ですか。 |
キ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ああ、そういえば。 ああた、春美ちゃんを 見かけませんでしたかしら? |
成: | ”はるみちゃん”‥‥? |
キ: |
天女のような、愛くるしい 女の子でござあます。 |
成: | ああ。あのブアイソウな‥‥ |
キ: |
アタクシのムスメでござあますが、 今、なんと‥‥? |
成: |
か‥‥ かわいいムスメさんですね。 |
キ: |
世間知らずで好奇心が 強いものでござあますから。 あまり相手にしない ようにしてくださいましね。 |
成: |
(あの子のほうが 相手にしてくれなかったけど) |
キ: |
くれぐれも、マチガイを 起こしませぬよう。 |
成: | 起こしませんよ! |