成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
マックス…赤 | |
ミリカ…黄 | |
トミー…紺 | |
ベン…灰 | ← |
リロ…橙 | → |
アクロ…紫 |
成歩堂法律事務所 | |
真: | あのさ、なるほどくん。 |
成: | ん? |
真: |
コクハクしちゃうけど、あたし ニガテなんだよねー、手品。 |
成: | てじな? |
真: |
うん。ホラ、手品って タネがあるんでしょ、かならず。 でもね。あたし、見てて わかったためしがないもん。 |
成: |
そりゃ、プロだから。タネが バレないようにやってるんだよ。 |
真: |
でも、でも、この前はみちゃんに 見せてもらったのもスゴかったよ! |
成: |
春美ちゃんが? ‥‥へえ。どんなの? |
真: |
あのね。親ユビが‥‥ なんと、取れちゃうんだよ! |
成: | ‥‥え。 |
真: |
まずね。左手の親ユビを 右手でニギるんだよ。 そのまま、えいっ、て モギ取っちゃうの。 |
成: |
こんなふうに? ‥‥えいっ。 |
真: |
うおッ! すごい! なるほどくん、魔術師だッ! ‥‥と、まあこんなワケだから、 空飛ぶ殺人犯の使った魔術なんて、 あたしムキじゃないな。 |
成: |
魔術なんて、タネを考えて 見るモノじゃないんだけどな‥‥。 |
成: | それにしても‥‥困ったね。 |
真: |
明日までに、犯人が空を飛んだ ナゾを解く、なんてねえ‥‥。 あたし思うんだけど。犯人て、 ホントに空なんか飛んだのかなあ。 トミーさんだけでしょ? ”見た”って言ってるの。 |
成: |
そうなんだけど‥‥。 あのときのトミーさん、ものすごく 真剣だったしなあ‥‥。 |
真: |
マックスに罪を 着せたかった、とか‥‥? |
成: |
それなら、”彼を見た” って言うだけでじゅうぶんだよ。 ”飛びました”なんて、 信用されるワケないだろ? |
真: |
でも‥‥犯人がもし、ホントに 飛んだとしたら‥‥ そんなコトできるの、マックスしか いないよ‥‥? |
成: | (そ、そうなっちゃうのかな‥‥) |
真: |
ベンさんもリロくんもトミーさんも マックスのコト、キライみたい。 |
成: |
うーん‥‥。あの魔術師、 あからさまにエラそうだもんな。 ”オレがいるから客が入るんだ” ‥‥って、ハナにかけてるし。 |
真: |
ベンさんなんて、ビンで アタマなぐられたしね。 ‥‥でも。 |
成: | ? |
真: |
そんなことぐらいで、 サツジンの罪なんて着せないよ! |
成: |
そうは言っても、2人とも ウソはついていないぞ。 |
真: |
ベンさんが見たのは、マックスの 衣装を着た団長さんだった‥‥。 でも、トミーさんはハッキリ 見てるんだよね‥‥マックス。 |
留置所・面会室 | |
マ: |
おお。ハニイたち! ‥‥さあ、早くボクを ここから出しておくれよ! |
成: |
ええ。 今、がんばってますから。 |
マ: |
‥‥さっき、 テレビ局の連中が来てさあ。 ”セッカクですから、特別番組を 作りましょう”なんて言うんだよ。 |
真: | へええ。どんな番組ですか? |
マ: |
”マックス・ギャラクティカ、 刑務所から奇跡の大脱出!”。 |
真: |
わ! ちょっと オモシロそうですねー。 |
マ: |
‥‥でも、そんなコトしたら、 逆に出られなくなっちゃうだろ? |
成: |
よけいな罪をしょいこむのは まちがいないでしょうね。 |
マ: |
なんか連中、イロイロ 企画してるらしくてさ。 早いトコ出してくれないと、 ダツゴクするハメになっちまう。 |
成: | ‥‥はあ。ノンキなもんですね‥‥ |
マ: |
それがショー・ビジネスの 世界というものさ! |
成: |
あの。事件の夜は、ホントに 飛ばなかったんですね? 空。 |
マ: |
カンベンしてくれよハニイ。 ボクはあの時間、 団長の部屋にいたんだ。 それに‥‥ 空を飛ぶのは、けっこう メンドウなんだよ。 観客がしなびたピエロ1人じゃあ、 ワリに合わないね。 |
真: |
あの。あの。その魔術のトリック、 教えてもらえませんか? |
マ: |
‥‥う。そ、それはカンベン してほしいなハニイ。 ボクは最近のヤワな手品師どもと ちがって、口がカタいからね。 でも、これだけは言えるよ。 カンタンにできることじゃない。 |
真: |
今日の法廷を聞いてて 思ったんですけど。 |
マ: | なんだい、ハニイ。 |
真: |
もっと仲よくしましょうよ! サーカスのヒトたちと。 |
マ: |
ゴージャス! どうしてボクが、 あんな二流芸人どもと! |
真: | でも‥‥! |
マ: |
ボクはね。世界のステージで グランプリを取ってるんだよ! |
成: | グランプリ‥‥ですか。 |
マ: |
芸人はね、”世界”に 目を向けるべきなんだ! 特に、ここのサーカスの連中、 向上心がなさすぎる! ボクには、それが どうしてもユルせないんだ! |
成: | (‥‥向上心、か‥‥) |
真: |
マックスの言うことも、 なんか正しい気がしてきた‥‥。 |
マ: |
おやおや。グランプリの話、 ハニイたちも聞きたいのかい? ‥‥もう100回も話したから、 ウンザリなんだけどね。 |
成: | はあ、スミマセン。 |
マ: |
やれやれ、ホントにマッタク、 この話、もうタクサンなんだけど。 しかたないな。 ハニイのたのみとあってはね。 ‥‥ホラ! ホラ! 見てくれたまえ、コイツを! グーゼンにも今、そのときの 写真を持ってるんだよ! 見てくれたまえ。 このゴージャスなステージ! ここでね。初めて飛んだんだよ。 客席の上を、スイーッとね! みんな、もう大カッサイだぁ。 オラもう、死んでもイイと 思っただ。あの瞬間、ホンキで! ‥‥あのカンドーとコーフン、 オラ一生忘れね。忘れるもんかぁ! |
真: | へえええ。 |
マ: |
コホン。 ‥‥と、とにかく。 芸人になった以上、ワレワレは あのカンドーを味わうべきなんだ! このサーカスの連中に、ボクは それを教えてやりたいね! |
真: |
‥‥すごいなあ。 あたしもほしいな、トロフィー。 ね。なるほどくん。買って。 |
成: |
‥‥そういうもんじゃないだろ、 トロフィーって。 |
マ: |
ハニイたち、 その写真はあげるからさあ‥‥、 サーカスの連中に、よおおく 見せてやっておくれよ! ”ボクを見ならいたまえ!” ってコトで。 |
成: | (やれやれ‥‥) |
法廷記録に挟んだ。 | |
タチミ・サーカス 正門前 | |
真: |
? ‥‥なんか、ボソボソ 声が聞こえるよ‥‥? |
リ: |
‥‥よし、行くぜ。 ジュンビはいいか? |
ベ: |
う、うん‥‥。 あ、お‥‥で。でも‥‥ |
リ: |
つべこべ言うなよ! とにかく、やるしかねえんだよ。 ‥‥さん、はい! |
ベ: | かーえーるーのーうーたーが。 |
リ: | かーえーるーのーうーたーが。 |
ベ: | ‥‥‥‥‥‥ |
リ: |
ナニやってんだよ! ”きーこーえーてー くーるーよ”だろうが! |
ベ: |
そ、それはわ。わかってるケド。 や。やっぱりムリだよリロくん‥‥ |
リ: |
バカ言ってんじゃねえよ。 これからは”個性”の時代だぜ! これぐらいできなくて、 どうすんだよ! |
真: |
あのー。 こんにちは。ベンさん、リロくん。 |
リ: |
コラァッ! ヒミツ特訓中だぞ! 聞いてんじゃねえよ! |
真: | ご、ごめんなさい‥‥。 |
成: | トックン‥‥って、まさか。 |
ベ: |
え。ええ‥‥。リロくんが、 どうしてもやりたいって‥‥ その。り。輪唱を‥‥ |
真: |
りんしょう‥‥って。 できるんですか! そんなコト。 |
リ: |
見ろよ! ベン! コイツら、ビックリしてるぜ! |
ベ: |
‥‥そりゃ、ボクだって ビックリするよ‥‥ |
リ: |
ネタのツカミはオッケーだ! あとは、練習あるのみだな! |
ベ: | そ、そそ。そそそ、そんな‥‥ |
真: |
あ。そうだ。 ‥‥返すね、これ。 |
リ: |
おッ、それ! ‥‥よーし。これでまた、 ミリカにアタックできるぜ! |
真: |
あの‥‥。今日の法廷で 証言したことなんですけど。 |
リ: |
ああ。オレたちが 見たヤツのコトだろ? |
真: | うん。 |
リ: |
たしかにさあ。最初は オヤジだと思ったワケよ。 歩き方とか、フンイキとか。 ‥‥なあ、ベン! |
ベ: |
う! お。お。そ、そうだね。 たしかに‥‥ |
リ: |
でもさ。オヤジならアイサツしたら ムシなんてことはないし。 例のイヤミな3点セットも ぶら下げていたし‥‥。 |
真: |
‥‥じゃあ、もし それがなかったら‥‥? |
リ: |
そうだなあ‥‥。 どう思うよ、ベン? |
ベ: |
う! ‥‥あ。あ、あれは、 そう、団長さんだったのでは‥‥ |
成: |
(ベンさんたちが見たのは、 やっぱり、団長だったんだ!) |
真: |
あの。ミリカちゃんの コトだけど‥‥ |
リ: |
オレはホンキだぜ! 今もこうして待ってるんだ。 |
真: |
へええ、そうなんだ。 でも、ミリカちゃんに会うのなら、 テントの中を探せば‥‥ |
リ: |
はああ。なーんもわかってねえな、 ネンネちゃんは。 |
真: | え。 |
リ: |
こうやって待つのも、 コイのうちなんだよ。 |
真: | は、はあ。 |
リ: |
いいか! ”コイ”という コトバは、”乞い”から来ている! 相手のアイをのぞんで身をコガす ‥‥これが、恋のゴクイなんだよ! |
真: |
へ、へええ‥‥ な、なるほどねえ。 |
成: |
(‥‥真宵ちゃん、 真っ赤になってるぞ) |
真: |
あの。あの。 新ネタなんですか? 今の? |
リ: |
いいかテメエら。 ゼーッタイ、ヒミツだからな! 腹話術界をゆるがす、 レボリューションを起こすんだ! |
真: | ‥‥わあ。楽しみだなあ! |
リ: |
‥‥あ。これだけは 言っとくケドなあ。 あのヤローにハッパかけられて やってるわけじゃねえぜ。 |
成: | あのヤロー? |
リ: |
マックス・ギャラクティカ。 ”芸人は世界を目ざせ!” なんて、エラそうに! |
真: | お。リロくん、ヤル気だね! |
リ: |
見てろ。世界を取るのは、 テメエだけじゃねえんだ。 |
真: | そうだそうだ! |
リ: |
このリロ様も、かならず つかむぜ! グランプリを! |
真: | つかむぞ! |
リ: | ”かえるのうた”でな! |
成: |
あの。‥‥もうちょっと ワールドワイドな選曲のほうが。 |
リ: |
まあまあ。これは大いなる ヤボウの第1歩だからな! |
ベ: | ‥‥‥‥‥ |
リ: |
しっかりしろよなー。 やるのはオマエなんだからさー。 |
宿舎前 広場 | |
糸: | おお。アンタたちッスか‥‥ |
成: |
‥‥なんか、ものすごく つかれてませんか? |
糸: |
はあ‥‥。 今、ちょっと休憩中ッス。 ヘンなピエロのオッサンの 身の上話を聞いていたッス。 狩魔検事の、たっての おねがい、というコトで。 |
成: | そ、それはそれは。 |
糸: |
あのオッサンのハナシ、 異常につかれるッス。 コトあるごとに、ナニかをキタイ するような目で見つめてくるッス。 |
成: |
‥‥たぶんそれ、 笑うところですよ。 |
糸: |
‥‥わかってるッス。 アイソ笑いのしすぎで、 ほっぺのキン肉がつりそうッス。 |
真: |
‥‥でも、 ヒドいなあ、かるま検事。 トミーさんのハナシなら、 自分で聞けばいいのに‥‥ |
糸: |
シッ! かか、カゲグチを言っちゃ ダメッスッ! |
真: | ‥‥どうしてですか? |
糸: |
かか、狩魔検事は、 いつでもワレワレを見てるッス。 イチバン見られたくないところで、 サッソウとあらわれるッス! おお‥‥コワいコワい‥‥ |
成: |
(かなりイタめつけられてる みたいだな‥‥) |
糸: |
それに、狩魔検事は今、 ワレワレの真上にいるッス。 |
真: |
え。 ‥‥どういうことですか? |
糸: |
あのピエロの証言によると、 犯人はここから空中へ消えたッス。 すると、この宿舎の窓の前を 通ることになるッス。 |
真: |
‥‥なるほど。 だれが住んでるんですか? 宿舎の上の階には。 |
糸: |
なんでも、3階にアクロバットの 芸人の部屋があるらしいッス。 これから、狩魔検事が 取り調べをはじめるッス。 だから、アクロバットの部屋は 来ちゃダメッスよ! |
真: | うううう‥‥かるま検事めッ! |
成: |
(‥‥取り調べが終わったころ、 行ってみるかな‥‥) |
タチミ・サーカス テント内 | |
真: | あれ。ミリカちゃんは? |
成: |
さあね。 また、トラでもけしかけられたら タマんないからね。 早くどこか行こう。 |
真: |
わあ。なるほどくん、 コシヌケだなあ。 |
成: |
いやいやいや。 相手はトラだぞ。ナマの! |