成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
マックス…赤 | |
ミリカ…黄 | |
トミー…紺 | |
ベン…灰 | ← |
リロ…橙 | → |
アクロ…紫 |
テント内 食堂 | |
真: |
‥‥うわ、いいニオイ! なるほどくん! みそラーメンのニオイだよ! |
ト: | おッ! ようこそわが食堂へ! |
真: |
お、おいしそうですね ‥‥みそラーメン。 |
成: |
(ココロなしか、 声がうわずってるぞ‥‥) |
ト: |
うまいよー、ラーメン。 ちぢれたメンが、コクのある スープと連れそって、 ノドをするりと通りすぎてゆく、 この瞬間。 生きてて一番の シアワセだねえ。 |
真: | ホント、そうですよねー。 |
成: |
(すっかり仲よくなってしまった。 スゴいな‥‥ラーメンのパワー) |
真: |
団長さんがいなくなって‥‥ これから、どうするんですか? |
ト: |
それ! オレっちも、 ずっと考えてたんだ‥‥。 みんな、団長が大好きだった。 ‥‥アクロの話、聞いたかい? |
成: |
小さいころ、引き取られた ‥‥とか。 |
ト: |
今はなんとか落ちついたけど、 事件があったときはスゴかった。 あとを追って自殺しかねない イキオイだったんだぜ。 |
成: | そ‥‥そうだったんですか‥‥ |
ト: |
とにかくさ。考えたんだよ。 オレっち、ウケないピエロ なんてやめて‥‥その。 団長になろうかな‥‥なんてさ。 |
真: | えっ! そうなんですか! |
ト: |
ああ。今なら‥‥アイツ。 マックスもいる。 |
真: | マックス‥‥? |
ト: |
口がワルすぎるけど‥‥ヤッパリ、 言ってるコトは、その‥‥なんだ。 タダシイ‥‥気がするからサ。 |
真: | トミーさん‥‥。 |
ト: |
あとは、みんなが 乗りこえられるかどうかだな。 ”あのコト”を‥‥。 |
成: |
(‥‥なんだ? ”あのコト”‥‥って) |
成: |
”あのコト”を乗りこえる‥‥ どういうことですか? |
ト: |
‥‥え! あいやいやいやいや。 ベベ、ベツに気にしないで! |
真: |
きっと、団長さんの死を 乗りこえる、ってコトですよね? |
ト: |
お! おぢょーさん、それ! ビンボ! ビンボ! |
成: |
(”びんご”だろ‥‥) ‥‥トミーさん。 ウソをついてませんか? |
ト: |
えげェッ! どして! どーしてなのだ! |
成: |
「”あのコト”を乗りこえる」 という表現は‥‥ ‥‥もっと、ムカシのことを 言ってるように聞こえるからです。 |
ト: | ‥‥グギギギギギギギギ。 |
成: |
トミーさん! そうなんですかっ! |
成: | (やっぱり‥‥そう来たか‥‥) |
ト: |
は‥‥半年前‥‥。 ちょっとした事故が、ね。 それ以上は カンベンしてチョンマゲ! |
成: | (‥‥”半年前”‥‥?) |
成: |
‥‥トミーさん、 教えてもらいますよ。 半年前‥‥、このサーカスで いったい、何があったのか? |
ト: |
ま。まあまあ。 そんなコワいカオしないで。 ホラ。ホラ。 食う? みそラーメン。 |
成: |
あいにくぼくは とんこつ派なんです。 |
ト: | うう‥‥。 |
成: |
じつは‥‥少し、 ココロあたりがあるんですよ。 |
ト: | ! |
成: |
トミーさん、”事故”‥‥と おっしゃいましたね。 その事故の原因‥‥、 もしかして、これでは‥‥? |
成: |
‥‥ミリカちゃんから 聞きました。 レオンが芸にシッパイした、って。 |
ト: | なんとおおおッ! |
ト: |
‥‥‥‥‥‥ オレっちは、前から言ってたんだ。 あんなキケンな芸は やめるべきだ、って。 |
成: |
‥‥レオンの口に アタマを入れる芸ですね? |
ト: |
ああ。ミリカは、レオンを 信じきってたんだ。 団長も、それに負けてさ。 ‥‥あの人、親バカだったから。 |
成: |
いったい、かみつかれたのは だれだったんですか? |
ト: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
ライオンにアタマをかまれて、 ブジってことはあり得ません。 |
ト: |
‥‥それは、ちょっと‥‥。 口止めされててさ‥‥。 |
成: | くちどめ‥‥? |
ト: |
そいつも当事者みたいな モンだからなあ‥‥ |
成: |
(”当事者”か。 それって、もしかして‥‥) トミーさん。あなたに口止めを たのんだのは、この人では‥‥? |
成: |
‥‥もちろん、 アクロさんですね。 |
ト: |
どどど‥‥ どうしてそれを‥‥! |
成: |
いいですか、トミーさん。 この”事故”は、団長の事件を 解決するカギかもしれません。 |
ト: | ‥‥う‥‥ウソだ‥‥。 |
成: |
団長の死の真相を知るためです。 ‥‥聞かせてください。 |
ト: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ すまねえな、アクロ‥‥ |
ト: |
ニイちゃんの言うとおりだ。 あの事故で‥‥ |
真: |
‥‥どなたか、 亡くなったんですか? |
ト: |
いや。‥‥でも、ある意味、 そっちのほうがよかったかもな。 |
成: | ど‥‥どういうことですか! |
ト: |
生きてるよ‥‥今も。 ただ、かまれた際に エンズイをキズつけちまってサ。 もどらないんだよ ‥‥意識が。 |
真: | イシキが‥‥ |
ト: |
病院のベッドで 眠りつづけているんだ。 ‥‥おそらく、 これからもずっと‥‥。 |
真: | そんな‥‥ |
成: |
アクロさんと、どういう 関係があるんですか? |
ト: | 弟なんだ。 |
成: | え。 |
ト: | かまれたのは、アクロの弟だ。 |
真: | お‥‥弟さん‥‥ |
ト: |
アクロバットをやってた。 ‥‥アニキと組んでな。 すげェコンビだったよ。 それが‥‥いっぺんに、パアだ。 |
真: |
あの‥‥ 弟さん、って‥‥? |
ト: |
木下 一平(きのしたいっぺい)。 ‥‥バット、って呼ばれてるよ。 アイツ、ミリカにホレててさあ。 気を引こうと必死だったんだ。 |
成: | (また‥‥ミリカちゃん、か‥‥) |
ト: |
‥‥半年前だ。 練習中のことだった。 急にバットが言い出したんだ。 ”レオンの芸をさせろ”ってな。 |
真: | ど、どうしてそんな‥‥? |
ト: |
さあ‥‥わからん。 とにかく、事故は起こっちまった。 ‥‥あの瞬間のことは、 今でも忘れねえよ。 レオンのヤツ‥‥ フシギな表情をしやがったんだ。 ‥‥ヤツは‥‥笑ったんだよ。 |
真: |
ヤツって‥‥ レオン‥‥ですか? |
ト: |
そうだ。かみつく一瞬‥‥ あのライオンは、笑ったんだ。 ニヤッ‥‥、てな。 |
真: | うそ‥‥! そ、そんな‥‥。 |
成: |
(ライオンはニヤリと笑うは、 殺人犯は空に飛んでいくは‥‥ なんでこの人、トンでもない 場面ばかり出くわすんだ‥‥?) |
真: |
なるほどくん‥‥ ライオンって、笑うの? |
成: | さ、さあ‥‥。 |
ト: |
‥‥警察には知らせなかった。 営業できなくなるからな。 次の日、団長は‥‥ レオンをライフルで撃ったんだ。 |
真: |
‥‥そんなコトが あったなんて‥‥ |
ト: |
まあまあまあ! アンタたちが シンミリしてどうするんだよ! ホラ。オレっちも、 ラーメン食っちゃうからね! ‥‥ちょっと、コショウなんか ふったりして。パッパッパッと! |
成: |
(うわ‥‥また、 ハデにぶちまけたな‥‥) |
真: |
は‥‥ ハーックショ、ハックショ! |
ト: |
お。いいねいいね! そのクシャミ。 |
真: | え。そ、そうですか? |
ト: |
コショウでクシャミ。バナナで コケる。‥‥これ、キホンね。 おぢょーさん、 素質がアル・カポネ。なーんて。 |
真: |
なるほどくん! あたし、イイかも! ピエロ! |
ト: |
ここまでミゴトなクシャミは、 ミリカ以来だな。 |
真: |
へええ。 ミリカちゃんも、コショウで‥‥? |
ト: |
ああ。よく、イタズラされてたよ。 ‥‥バットのヤツにさ。 |
真: | ば、バットさん。 |
ト: |
オレっちから見ても、おニアイ だったのに‥‥あのふたり。 |
真: | そうだったんですか‥‥。 |
ア: |
あれ‥‥成歩堂さん。 また来たんですか? |
真: | また来ちゃいました。 |
成: |
(アクロさんは‥‥足のケガの 原因をかくしている! ケガは半年前の”事故”‥‥ 今なら‥‥わかるような 気がするな) |
ア: |
‥‥どうやら‥‥ 何か、お話があるようですね。 |
成: |
‥‥聞かせてもらいますよ。 なぜ、そんなケガをしたのか‥‥? |
ア: |
お話ししたでしょう? これは、練習中の事故です。 |
成: | ”練習中の事故”‥‥ですか? |
ア: |
ええ‥‥アクロバットには、 キケンがつきものですから。 |
成: |
(ちがう‥‥それならば、 ヒミツにする必要はない!) アクロさん。あなたのケガ、 本当はこれが原因なのでは‥‥? |
ア: | レオン‥‥。 |
成: |
‥‥半年前、 あなたは、ライオンにおそわれた。 ケガは、そのときのものです。 |
ア: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(どうやら‥‥ぼくの推理は、 まちがってないみたいだ) |
ア: |
オレが‥‥ ライオンにおそわれた? |
成: | そうです。 |
ア: |
いいですか、成歩堂さん。 オレ、アクロバットの芸人ですよ。 猛獣使いじゃあるまいし‥‥ 逃げますよ。おそわれる前に。 |
成: |
”おそわれた”という言い方は 正しくないかもしれません。 あなたは‥‥戦ったんです。 ライオンと。 |
ア: |
‥‥冗談が好きみたいですね。 どうしてオレがライオンと‥‥? |
成: |
あなたは、戦わなければ ならなかった。この人物のために。 |
ア: | バット‥‥。 |
成: |
半年前の”事故”‥‥ 弟さん、おキノドクでした。 |
ア: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
‥‥彼を助けようと したんじゃないですか? それで、その‥‥大ケガを。 |
ア: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
ア: | ‥‥トミーが‥‥話したんですか? |
成: |
バットのことは、 トミーさんから聞きました。 でも彼は、あなたのことは 言いませんでしたよ。 ‥‥ただちょっと、 口をすべらせたんです。 |
ア: | 口を‥‥? |
ト: |
『すげェコンビだったよ。 それが‥‥いっぺんに、パアだ。』 |
成: |
”いっぺんに、パア”‥‥ つまり、おふたりは同時に 事故にあわれたことになります。 |
ア: |
‥‥なるほど‥‥。 でも、事故は事故です。 ‥‥だれのせいでもない。 |
成: |
(アクロさんのロックは まだ、はずれていない‥‥ さらに深いヒミツが あるということか‥‥) ”だれのせいでもない”‥‥? そうだったのでしょうか? |
ア: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
‥‥証拠も何もありません。 ただ、感じるんです。 アクロさんの、この人物に 対する”悪意”のようなものを‥‥ |
ア: | ‥‥み、ミリカ‥‥ |
成: |
いつも冷静なあなたが、彼女のコト を話すとき、ヘンに感情的になる。 ”ザンコクなほど純粋”だ、とか。 |
ア: |
さすが弁護士さんだ。 ‥‥スルドイ目をしてるんですね。 |
成: |
‥‥じつは、ぼくも おそわれたんですよ‥‥トラに。 |
ア: | あなたが‥‥ラトーに? |
成: | しかも、2回。 |
ア: |
‥‥ハハッ。 ホンキなワケ、ないでしょう。 まさか、ミリカが弟にレオンを けしかけた、って言うんですか? |
成: | ‥‥‥‥。 |
ア: |
レオンは、ヒトをおそう 命令など教えられていません。 ミリカに、 そんなコトはできませんよ。 それに‥‥彼女が、弟を殺そうと するはずがない。 ‥‥あの当時、ミリカと弟は とても仲がよかったんです。 |
成: |
でも! それでもあなたは、 ミリカさんをニクんでいる! ‥‥そう。証拠だってあります! |
ア: | な‥‥なんですって‥‥! |
成: |
(今はまだ ‥‥ハッタリにすぎない‥‥ でも、おそらく ”これ”は、アクロさんが‥‥) ‥‥あなたがミリカさんに 悪意を持っていた証拠は‥‥! |
ア: |
そ‥‥それは‥‥ しょ、食堂に張ってあった‥‥? |
成: |
食堂の伝言板に 張ったのは、ミリカさんです。 もともとは、彼女のポケット に入っていました。 |
ミ: |
『あれかな。気がついたのは、 朝ゴハン持って行ったとき。 アクロのゴハン、 いつもミリカが持って行くんだよ。』 |
成: |
このメモ、あなたが書いて、 彼女のポケットに入れた‥‥。 ちがいますか? |
ア: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そのとおりです。 ‥‥さすが、ですね。 |
ア: |
‥‥オレのこの足は、 レオンにやられました。 半年前。 弟は‥‥バットは、ミリカに 賭けを持ちかけたんですよ。 |
真: | 賭け‥‥? |
ア: |
バカげた賭けでした。 ”自分がミリカのかわりに レオンの芸をやったら‥‥ いっしょに映画へ行こう” って‥‥。 |
真: | そ‥‥そんな、あぶない‥‥! |
ア: |
オレたちもバカだった‥‥。 でも、あのライオンはもう、 年老いていた。 それに、もう何年も その芸をやっていた‥‥。 つい、油断してしまったんです。 |
成: | それで‥‥シッパイした。 |
ア: |
たかが映画のために、 弟は‥‥ |
真: | かわいそう‥‥バットさん‥‥ |
ア: |
オレもカッとなって‥‥ レオンに飛びかかった。 かなうワケないのに。 それで‥‥このザマです。 |
真: | ‥‥あの。バットさんは‥‥? |
ア: |
今も、眠りつづけています。 きのう、オレが行ったのは、 アイツがいる病院だったんですよ。 |
真: | そうだったんですか‥‥。 |
ア: |
アイツが目をさますのを待つ‥‥ ‥‥それが、オレの新しい 生きる意味‥‥ですかね。 |
成: | バットさんとミリカさんは‥‥ |
ア: |
ずいぶん仲が よかったものですよ。 ‥‥そうだ。 コイツ、見てください。 |
成: | これは‥‥? |
ア: |
弟がレオンにおそわれたとき、 巻いていたスカーフです。 |
真: | ひどい‥‥。血が‥‥ |
ア: |
そのスカーフ‥‥。 事故があった日、ミリカが 弟にプレゼントしたものなんです。 |
成: | そうなんですか‥‥。 |
ア: |
あの瞬間‥‥ヤツは‥‥ 笑っていました。 |
成: | ‥‥ヤツ? |
ア: | レオンですよ。もちろん。 |
真: | え! |
ア: |
バットのアタマに かみつく瞬間‥‥ ヤツは、カオをゆがめて‥‥ 笑ったんです。 |
真: | なるほどくん! |
成: |
ああ! ‥‥トミーさんも、 そんなことを言っていた‥‥。 |
真: |
いったい、どういう ことなの‥‥ |
?: |
そのスカーフ‥‥ こちらにわたしていただこう。 |
成: | か‥‥狩魔検事‥‥。 |
冥: |
話は聞かせてもらったわ。 ‥‥それをわたしなさい。 |
真: |
で、でもこんなスカーフ、 事件の証拠には‥‥ |
冥: |
それは、私が判断するわ。 ‥‥では、アクロ氏。 したくをおねがいしましょうか。 |
成: | ‥‥したく‥‥? |
冥: |
アクロ氏には、明日の法廷で 証言台についてもらうわ。 ‥‥検事局で話を うかがっておきたいの。 |
真: | アクロさんが‥‥証人! |
冥: |
さあ。アクロ氏。 検事局まで、ご足労ねがうわ。 |
ア: | ‥‥わかりました。 |
真: |
ど、どうするの‥‥? だいじょうぶ? あした‥‥ |
成: |
‥‥シンパイいらないよ。 なんとかするから。 |
真: |
おッ! その 自信マンマンのカオ! きっと、何か手がかりを つかんだんだね! |
成: |
(弁護士は、ピンチのときほど ふてぶてしく笑うもんだからな) |