成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
堀田(自称)…黄 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン…灰 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
王都楼 真悟…紫 | |
華宮 霧緒…藤 | |
虎狼死家 左々右エ門…桃 |
藤見野 イサオの控え室 | |
春: | なるほどくん。ここは‥‥ |
成: | 藤見野 イサオの控え室だよ。 |
春: | ふじみのさん‥‥ |
成: |
被害者だ。 ‥‥つまり、殺人現場だね。 |
糸: |
おッ! アンタ! どッスか! 連絡あったッスか? ‥‥ユーカイ犯。 |
成: |
‥‥いえ。たぶん、 無罪判決を勝ちとるまでは‥‥ |
糸: |
ふうううん‥‥ ツラいッスな、アンタも。 |
成: |
(真宵ちゃん‥‥ ブジでいてくれよ‥‥) |
春: | ‥‥‥‥ |
糸: |
時間がないッスが、できるかぎり 協力、するッス。 |
成: |
いいんですか? 現場を調べても‥‥。 |
糸: |
トクベツッス。 情報もタレ流すッス。 ‥‥ゼッタイ、ヒミツッスよ。 自分のイノチにかかわるッス。 |
成: | ありがとうございます。 |
糸: |
あ。それからコレ。 ‥‥ホテルの見取り図ッス。 ハイ。おじょうちゃんに あげるッス。 |
春: |
わあ。ホントですか! うれしいです‥‥。 |
糸: |
ハッハッ。‥‥バカみたいに 広いホテルッスからねー。 |
春: |
なるほどくん。 もらっちゃいました! |
成: | よかったね、春美ちゃん。 |
春: |
‥‥‥‥‥‥ ‥‥でもわたくし、 漢字が読めないのでした‥‥。 |
法廷記録に挟んだ。 | |
成: |
被害者の‥‥イサオさんの死因は、 わかったんですか? |
糸: |
正式な解剖記録はまだッス。 でも‥‥ 現場をひとめ見れば、 アキラカだと思うッス。 |
成: | 現場を‥‥? |
糸: | これが、その写真ッス。 |
成: |
ムネに‥‥ナイフが 刺さってますね。 |
糸: | おそらくそれが、凶器ッス。 |
成: | (刺殺されたわけ‥‥か) |
糸: |
今、鑑識で、ナイフの指紋を 調べているッス。 |
成: |
‥‥ナイフに指紋が 残っていたんですか? |
糸: |
そッス。 ほぼまちがいなく、指紋は 王都楼のものッスよ。 |
成: | (‥‥まさか‥‥) |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
どうしてオートロさんが 逮捕されたんですか? |
糸: | モチロン、証拠があったッス。 |
春: | しょうこ‥‥ |
糸: |
被害者の藤見野 イサオは、 かなり抵抗したみたいッス。 |
成: |
‥‥現場を見れば、 アキラカですね。 争ったあとが、なまなましく 残っていますから。 |
糸: |
ま、そッスね。 そのとき、ボタンがちぎれて‥‥ |
成: |
(オートロさんが 言ってたっけ‥‥ 衣装のハカマに、忍者ナンジャの ボタンが挟まっていた、って) |
糸: | ‥‥それだけじゃないッス。 |
成: | なんですって! |
糸: | 目撃者がいたッス。 |
成: |
‥‥目撃者! いったい、ダレですか! |
糸: | ‥‥あのオバチャンッス。 |
成: | (‥‥ううう‥‥) |
糸: |
証拠、証言ともバッチリッス。 ただ‥‥。 現場にちょっと、フシギな点が あるのも、たしかッス。 |
成: |
フシギな点‥‥って、 なんですか? |
糸: | 自分で調べるッス! |
春: |
調べてみましょう! なるほどくん! |
成: |
キレイなグラスだな。 中身は‥‥トマトジュースか。 |
春: |
わたくし、ニガテです ‥‥トマトジュース。 |
成: |
テーブルにボトルがあるね。 きっとあれだよ。 |
春: |
でも‥‥ ちょっとヘンですね。 |
成: | ‥‥何が? |
春: |
だって、他のものはみんな、 ちらかっています。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥ (たしかに‥‥花ビンは割れてるし 化粧品のビンも床に落ちている) |
春: |
なぜこのグラスだけ、 何ごともなかったのでしょう‥‥? |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
これは‥‥ギターケース、だな。 カラッポだけど。 |
春: |
ヘンですね。どこにも ありませんよ‥‥ギター。 |
成: |
持ってくるのを 忘れたのかな。 |
春: |
たしか、真宵さまが おっしゃっていましたよね。 忍者ナンジャは、まっかなギターが トレード・マークだ、と‥‥。 |
成: |
(‥‥そういえば‥‥) ん? このギターケース、ぬれてるぞ。 フタのところだけ‥‥。 |
春: |
お水‥‥ですね、これ。 ケースの中はぬれていません。 |
法廷記録にファイルした。 | |
成: | このグラスですけど‥‥ |
糸: |
おッ。さすが。気づいたッスか。 現場はヒドく乱れているのに、 そのグラスだけ、なんともない。 |
成: | あ。やっぱりイトノコさんも‥‥? |
糸: |
いや、その。狩魔検事が先に 気づいちゃったッス。 |
成: |
ぼくも、春美ちゃんが先に ‥‥って、 狩魔検事、来てるんですか? ‥‥ここに。 |
糸: |
来てるッス。‥‥もう、 タイヘンなコトになってるッス。 アンタは、ゼッタイ 会わないほうがいいと思うッスよ。 |
成: | ‥‥見かけたら、走って逃げます。 |
‥ピピッ‥‥ピピッ‥‥ピピッ‥ | |
春: |
な、なんですか? なるほどくん。 ‥‥この妙な音は‥‥ |
成: |
(なんか‥‥どこかで 聞いたおぼえがあるぞ‥‥) |
糸: | 狩魔検事ッス‥‥ |
春: | え‥‥? |
糸: |
この音が聞こえると、なぜか 狩魔検事がやって来るッス! |
成: |
(あ‥‥。そういえば、 前にもそんなことがあったっけ) |
糸: |
じじじ、自分はこれで シツレイするッス! ぎゃはァ! |
冥: |
ついに本性を見せたな ‥‥成歩堂 龍一ッ‥‥! |
成: |
(ううう‥‥コワくて コトバが出てこないぞ‥‥) |
冥: |
キサマというヤツは‥‥ 刑事から情報を盗むとは! なんという、ヒキョウなッ! |
成: | (‥‥いててて‥‥) |
冥: |
コラッ! 逃げるな ヒゲコートッ! |
糸: | はッ! |
冥: |
この国の刑事のモラルが ここまで低いとは思わなかった‥‥ |
糸: | むはあァァッ! |
冥: |
刑事! ちょっと こっちへ来なさいッ! |
糸: |
ぎゃああああああああああああああ あああああああああああああッス! |
冥: |
‥‥ほほお。 このスキに 逃げなかったとは、感心ね‥‥ |
成: |
(あ‥‥足がすくんで 動けない‥‥) |
冥: |
成歩堂 龍一! 私の‥‥検事としての経歴は、 ドロにまみれてしまった‥‥ キサマのせいで! ‥‥ユルせない‥‥ 今度こそ‥‥キサマに勝つ! |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ぼくに‥‥”勝つ”。 そればっかりだな、きみは‥‥ |
冥: | な、なんですって‥‥? |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
冥: |
‥‥‥‥フ、フン! 来なさい、ヒゲ! ‥‥捜査会議が始まるわ! |
糸: | はは‥‥ハッ! |
冥: |
狩魔家のホコリにかけて‥‥ 決着をつけてやるわ! |
成: |
(‥‥いてて。狩魔検事のヤツ、 何か投げつけていったぞ‥‥ なんだ? これ‥‥) |
糸: |
‥‥というコトで、自分は 署のほうへもどるッス。 自分に用ができたら、 警察署に来るッス。 くれぐれも、狩魔検事に 見つからないように‥‥ |
春: |
なるほどくん。このラクガキは どういう‥‥? |
成: | それ、サインだよ。 |
春: | さいん‥‥ですか? |
成: |
イサオさんの名前が 書いてあるんだ。 |
春: |
ゼンゼン読めませんね。 正直に言って、こんなヘタな字、 見たことがありません。 |
成: |
いやいや。それはワザとなの。 ホラ、”カオルちゃんへ”って 書いてあるでしょ? |
春: |
こ、こんな読めない字をヒトサマに あげるなんて‥‥非常識です! |
成: | (‥‥ちょっと待てよ‥‥) |
春: |
‥‥? どうかしましたか、なるほどくん? |
成: |
‥‥カオル‥‥って、どこかで 聞いたような名前だな、って‥‥。 |
法廷記録に挟んだ。 | |
ホテル・バンドー すみれの間 | |
荷: | 成歩堂さん! どうも。 |
成: |
あ。荷星さん。 まだ帰れないんですか? |
荷: |
ええ。関係者は、ホテルから 出してもらえないんですよ。 |
成: |
<<トノサマン・丙!>>のこと、 教えてもらえますか? |
荷: |
いいですよ。 <<トノサマン・丙!>>は、 お子さま向けのヒーロー番組で‥‥ <<大江戸戦士トノサマン>>の 続編にあたります。 |
成: | なるほど‥‥。 |
荷: |
今度のトノサマンは3兄弟。 甲・乙・丙となっておりまして、 江戸の町を舞台に、 恋のさやあてをします。 |
成: |
なるほど‥‥。 ‥‥って、なんですって? ナニのナニあて‥‥? |
荷: |
恋のさやあて。 茶屋のサヨちゃんに、 3兄弟は同時に恋を。 |
成: | は、はあ‥‥ |
荷: |
しかしサヨちゃんは、悪の組織 エチゴグループのムスメだった! |
成: | ‥‥とんでもない設定ですね。 |
荷: |
きょ、恐縮です。 しかし、このせつない恋物語が OLに大ウケでして‥‥。 |
春: | ‥‥あの。 |
荷: | はい? |
春: |
その先はッ! その先は、どうなるのでしょうか? サヨさまは‥‥サヨさまは、 恋に生きるのですよね? |
荷: | ‥‥毎週日曜日、朝8時です。 |
春: |
今週は『世界こども名作劇場』は お休みしましょう。 |
成: | (ホンキだ‥‥!) |
成: |
<<忍者ナンジャ>>って、 どんな番組なんですか‥‥? |
荷: |
もともとは、映画のリメイクから 始まったんですけどね。 こちらも、お子さま向け ヒーロー番組です。 うだつの上がらない忍者が、 スターダムにのし上がる物語。 |
成: | ‥‥は? |
荷: |
忍者としてはダメなナンジャ。 でも彼には、すばらしい武器が。 それは、ウツクシイ声! 彼はまっかなギターを片手に、 室町時代の芸能界に殴りこみます。 |
成: |
まま、まっかなギター? 忍者が? |
荷: |
そして、イトしいミソラ姫の前で ついに最後の決戦が! ”室町フォーク5番勝負” ‥‥その第3戦、前夜! なんと! ‥‥ナンジャは カゼをひいてしまったのです! |
成: | ‥‥ヒドい話ですね。 |
荷: |
きょ、恐縮です。 しかし、このポップな恋物語が 女子高生に大ウケでして‥‥。 |
春: | ‥‥あの。 |
荷: | はい? |
春: |
その先はッ! その先は、どうなるのでしょうか? ナンジャは‥‥ナンジャは、 歌えるのですか! ミソラ姫はッ! |
荷: | ‥‥毎週日曜日、朝8時です。 |
春: |
うううう‥‥わたくしはいったい、 何を見れば‥‥ |
成: | (ホンキだ‥‥!) |
荷: |
霧緒さんですね! オートロくんのマネージャー。 ‥‥じつは、ちょっとだけ アコガレてたりするんですよ‥‥ |
成: |
(こういうタイプが スキなのか‥‥荷星さん) 何かご存じないですか? ‥‥霧緒さんのこと。 |
荷: |
そうですね。その。 ご存じないワケではないような‥‥ |
春: | ‥‥! |
荷: |
‥‥彼女、今ちょっと、 ウワサになってるんですよ。 |
春: | ウワサ‥‥ですか? |
荷: |
あ! なんでしたら、 詳しくお話ししましょうか! |
成: | (なんか、ウレシそうだな‥‥) |
成: |
聞かせてください。 ”ウワサ”って、なんですか? |
荷: |
いやぁ、お好きですねえ 成歩堂さんも、ヤッパリ。 |
成: | え。 |
荷: |
ボクも目がないんですよ。 芸能界のウワサ話。 |
成: | そ、そうなんですか。 |
荷: |
いやね、ホラ。 コレなんですけど。 |
成: |
(オバチャンが読みそうな ウサンくさい芸能雑誌だ) なになに。 ”忍者ナンジャ、深夜の密会!” |
荷: |
”お相手は、マネージャーの K.Kか?” ‥‥ね。おわかりでしょ? |
成: | 何がですか‥‥? |
荷: |
もお! トボけちゃ イケませんよ成歩堂さん! イサオくんには、自分の マネージャーはいないんですよ。 それなら、マネージャーの K.Kさんといえば! |
成: | ‥‥華宮 霧緒‥‥? |
荷: |
そ。そうなんですよ! コレはニュースです! |
成: |
(でも、なんかおかしいな。 あの霧緒さんが‥‥ よりによって、イチバンの ライバルと‥‥) |
荷: |
それはホラ。オトコとオンナの コトですから。 |
春: |
うれしそうですね。 ‥‥荷星さん。 |
成: |
(春美ちゃんも、ワケも わからず笑っている‥‥) |
荷: |
‥‥ま。たしかに、 なんの証拠もありませんけどね。 |
法廷記録にファイルした。 | |
オ: |
ショージキなところ、ベツに しゃべったってイイんだけどサ。 |
成: | じゃあ、教えてくださいよ! |
オ: |
もったいないじゃないのサ。 若い男のコをホンロウできる チャンスなのに。 だってホレ、オバチャン、 魔性の女だからサ。 |
成: |
(魔性というか悪性というか‥‥) しかたない。オバチャンが ほしがりそうなものは‥‥ |
オ: |
そ‥‥それ! イサオちゃんのサイン! |
成: | そうです。 |
オ: |
し、しかも! ”カオルちゃんへ”だって! それ、オバチャンのコトだョ! |
成: | ‥‥え。 |
オ: |
”大場 カオル”だからね! オバチャン。 |
成: |
(たしかに”カオル”なの かもしれない‥‥ でも、決して”カオルちゃん” ではないと思う) |
オ: |
ねえ、おくれよぉ! おくれったらあ! |
成: |
当然‥‥タダで、というワケには いきませんねえ。 |
オ: |
わかってるわョ! これでどーだいッ! |
成: |
(パリンパリンとまあ、 気前のいいコト‥‥) |
オ: |
‥‥まだダメかいッ! よおおおし‥‥ オバチャン、 もお‥‥見せちゃうゥッ! |
カオルちゃんにあげた。 |