成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
堀田(自称)…黄 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン…灰 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
王都楼 真悟…紫 | |
華宮 霧緒…藤 | |
虎狼死家 左々右エ門…桃 |
地方裁判所 被告人第3控え室 | |
王: |
まさか‥‥キリオが! あの、華宮 霧緒が‥‥? |
成: |
彼女はあなたのマネージャーです。 ワナを張るのはカンタンでしょう。 食事で使ったナイフを手に入れる ことができるのも‥‥彼女。 |
王: |
‥‥授賞式のあとの、休憩時間‥‥ ボク、そのあいだはずっと、 ヒルネしてましたからね‥‥。 |
成: |
血のついたボタンを、あなたの ハカマに挟むこともできた。 |
王: |
ボクを起こしてくれたの‥‥ 彼女だったからな。 ‥‥‥‥‥‥ じゃあ、やっぱり‥‥彼女が? |
成: |
真犯人です。 ‥‥藤見野 イサオを殺害した。 |
王: |
でも‥‥どうして! アイツが藤見野を‥‥! |
成: | 彼女には、動機があるんですよ。 |
王: |
ど、動機だって! いったい‥‥どんな? |
成: |
‥‥このあとの審理で アキラカになるでしょう。 だいじょうぶ。‥‥今日中に 無罪判決を勝ちとります。 |
王: |
春風のようにサワヤカな 判決をおねがいしますよ! |
千: |
なるほどくん‥‥ 動機‥‥天野 由利恵さんの ”消えた遺書”のことよね‥‥? |
成: |
‥‥ええ。 霧緒さんは、天野 由利恵さんに 依存するようにして、生きていた。 でも、その由利恵さんが突然、 自殺してしまった。 彼女は遺書を残していたらしい。 それを、かくしてしまったのが‥‥ |
千: |
藤見野 イサオ。 ‥‥被害者というわけね‥‥。 |
成: |
だから、霧緒さんは 藤見野 イサオに近づいて‥‥ その遺書を、なんとしてでも 取りもどそうと考えたんです! |
千: |
そうね‥‥ ただ‥‥ひとつ、 気になることがあるわ。 |
成: | え‥‥ |
千: |
そもそも、霧緒さんと由利恵さんの ”依存”の関係‥‥ それを私たちに 教えてくれたのは‥‥だれ? |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 御剣だ‥‥ |
千: |
‥‥まだまだ、審理のゆくえは わからないわ。 油断しないで。 |
地方裁判所 第3法廷 | |
裁: |
では、審理を再開します。 御剣検事、おねがいします。 |
御: |
法廷より要請のあった 証人を入廷させていただく。 藤見野 イサオ氏の控え室で 事件を発見した、華宮 霧緒を! |
御: | 証人の職業は。 |
霧: |
この事件の被告、王都楼 真悟の マネージャーをしています。 |
裁: | わかりました。では‥‥ |
霧: |
その前に。 1つ、よろしいでしょうか。 |
裁: |
は、はあ。 なな、なんでしょうか。 |
霧: |
この場にいるみなさんが 考えていることは、わかります。 被害者と私の関係について、 興味があるのでしょう。 ‥‥最近は、週刊誌にも 書かれているようですから。 |
裁: |
い、いや知りませんぞ。 <<ゴシップランド>>なんて‥‥ |
成: |
(裁判長が証人になったら、 やりやすそうだな‥‥尋問) |
御: |
‥‥聞かせていただこう。 被害者との関係を。 |
霧: |
私、亡くなった藤見野さんと おつきあいしていました。 王都楼のライバルであることは 知っていましたけど‥‥、 これは‥‥プライベートな ことですから。 |
裁: |
ふむふむ。そうでしょう。 プライでベートですからな。 |
霧: | でも、私‥‥殺してません。 |
御: | だれも、そんなことは言ってない。 |
霧: | 言いだしそうな人がいますから。 |
成: | ‥‥! |
裁: |
あなたと被害者の関係は よくわかりました。 |
御: |
‥‥では。そろそろ 証言をしていただこう。 あなたが事件を発見したときの ことを、おねがいする。 |
霧: |
『ショーの時間になったので、控え室 の王都楼を呼びに行きました。』(証言1) 『そのついでに、藤見野の控え室にも 行ってみたんです。』(証言2) 『藤見野は、死んでいました。 私、もうショックで‥‥』(証言3) 『そのとき私が見たのはモチロン、 現場写真とまったく同じ光景です。』(証言4) 『気絶しそうになったので、 グラスにジュースをそそぎました。』(証言5) |
裁: | グラスに、ジュースを‥‥? |
霧: |
はい。殺人現場にあるものに、 さわってはいけない‥‥ そんなコトも忘れるほど ‥‥動揺していたんです。 |
御: |
グラスの指紋は、そのとき ついたということだな。 |
裁: |
わかりました。 では、弁護人。 ‥‥尋問をおねがいします。 |
千: |
なるほどくん。 彼女は、とても冷静で‥‥ アタマのいい女性よ。 |
成: | それは‥‥わかってます。 |
千: |
そんな証人を追いつめるには、 まともにぶつかってはダメ。 ‥‥ペースを乱すの。 |
成: | ペースを‥‥? |
千: |
彼女のようなタイプは、思い通りに コトが進まないと、イラ立つはず。 彼女の予想していないところに 攻撃しなさい。 あなたが攻撃を休んだ瞬間‥‥ 審理は終了するわ。 |
成: | ”ショックを受けた”‥‥? |
霧: | いけませんか? |
成: |
(霧緒さん、すごく冷静なヒト だからな。‥‥それに イサオさんに近づいたのも、 恋愛感情があったからではない) |
御: |
‥‥いきなり死体を目にすれば、 どんな人間でもショックを受ける。 まして、証人は若くてウツクシイ。 ‥‥ムリもないだろう。 |
成: |
(若さとウツクシサはこの際、 関係ないと思うけど‥‥) |
裁: | ふむう‥‥そうですねえ‥‥。 |
成: | この写真‥‥ですよね? |
霧: |
‥‥ええ。ムネにナイフが 刺さっていて‥‥ |
成: | この、ギターケースも? |
霧: |
はい。もちろん、 開いていて‥‥カラッポでした。 |
御: |
‥‥それで‥‥ 証人はどうされたか? |
成: | ‥‥ジュース‥‥? |
霧: |
ええ。テーブルの上にあった トマトジュースのボトルから。 |
成: | でも‥‥飲まなかったんですね。 |
霧: | え‥‥? |
成: |
このグラスに、口べにのアトが ありません。 |
霧: |
私‥‥気が動転してました。 飲まずに置いたんです‥‥グラス。 |
成: |
‥‥証人。もう一度、 カクニンさせてください。 あなたは‥‥死体を発見して、 大きなショックを受けた。 それで‥‥グラスにジュースを そそいだんですね? |
霧: |
それが何か‥‥? あのときの私は、本当に アタマの中が真っ白だったんです。 |
成: |
あなたでも、そんなことが あるんですか。 ‥‥とても、取り乱すようには 見えません。 |
霧: |
シツレイですね。 私だって、あわてれば ミスもします。その証拠に‥‥ |
成: | ”その証拠に”‥‥なんですか? |
霧: |
あ。いえ‥‥その。 なんでもありません。 |
成: | (何を言いかけたんだ‥‥?) |
成: |
‥‥証人! どうやらあなたは、現場で あわてて、何か”ミス”をした。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
いったい、その”ミス”とは なんだったんですか? |
御: |
それは‥‥私も 聞いていないな‥‥ |
霧: |
す、すみません‥‥ 言いにくくて‥‥。 私‥‥ドレッサーに グラスを置くとき‥‥ 割ってしまったんです ‥‥その、花ビンを‥‥ |
裁: |
か‥‥花ビンというと、 現場写真の床に写っている‥‥ この破片‥‥ですか! |
霧: |
ドレッサーの上に 置いてあったんですけど‥‥ ヒジに引っかけてしまって‥‥ ギターケースの上に。 |
御: |
な‥‥ なぜ、そんな重要なことを! |
霧: |
すみません‥‥ 現場はもう、荒らされていたから、 花ビンのひとつぐらい‥‥ いいか、と思ってしまって‥‥ |
裁: |
どうやら‥‥ 新事実が発見されたようです。 ‥‥証言につけくわえて いただきましょう。 |
霧: |
すみません‥‥でも。 その他のものは‥‥私、 さわっていませんから。 |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
霧: |
『花ビンを割ったのは、私です。 ギターケースの上に落として‥‥』(証言・補足) |
成: |
花ビンを落とした‥‥ そう証言しましたね? |
霧: | ええ。 |
成: |
落としたのは、ギターケースの上 ‥‥まちがいありませんか? |
霧: | な、何か問題でも‥‥? |
成: |
”何か”どころじゃない。 重大な問題があります。 このケースは、フタの部分が 水でぬれていました。 ‥‥しかし、それはおかしい! 霧緒さん! あなたは”ギターケースの上に” 花ビンを落としたと証言した! ‥‥それならば! フタではなく、ケースの中が ぬれているはずです! |
裁: | た‥‥たしかに、そのとおりです! |
成: |
さらに‥‥このギターケースには もう1つ、奇妙な点があります。 |
裁: | ‥‥な、なんですか‥‥? |
成: |
‥‥現場写真を 見ていただきましょう。 床に、花ビンの破片が ちらばっています。 |
裁: | それが‥‥どうかしましたか? |
成: |
花ビンを落としたとき、 ケースが開いていたのならば‥‥ 花ビンの破片は、ギターケースの 中にあるはずです! |
霧: | あ‥‥ッ! |
御: |
それがいったい、 なんだと言うのだ! 証人が花ビンを落としたとき、 ギターケースは閉まっていた。 ‥‥それだけのことではないか! |
成: |
しかし、霧緒さんは こう証言している! 花ビン以外のものには、 手をふれなかった、と! |
御: | う‥‥ム‥‥ |
裁: |
たしかに‥‥ギターケースには ふれなかった‥‥そう言いました! |
御: |
し、しかし‥‥ ギターケースがなんだというのだ! まっかなギターは撮影所にあった! 事件とはなんのカンケイもない! |
成: |
‥‥‥‥‥‥ まあ、そうですけど‥‥ (カラッポのギターケース ‥‥たしかに、関係なさそうだ) |
裁: |
ふむう‥‥やはり、 たいしたイミはなさそうですね。 どうですか? ギターケースに ついて、詳しい証言は必要ですか? |
成: |
カラッポのギターケース‥‥ これは、この事件の 重要なポイントなのです! |
御: |
ハッ! よくそこまで ヌケヌケと言えるモノだな‥‥ |
成: | (‥‥自分でもそう思う) |
裁: |
わかりました。 ‥‥では、引きつづき、 ギターケースについて 証言をしてもらいましょう。 |
霧: | ‥‥はい。 |
霧: |
『私も、動揺していましたから。 キオクがハッキリしないんです。』(証言1) 『ケースは、私が開けたのでしょう。 ‥‥花ビンを割ったあとに。』(証言2) 『たいした問題ではないでしょう。 ケースはカラだったのですから。』(証言3) 『なぜ、ケースを開けたか‥‥ 自分でも、よくわかりません。』(証言4) |
裁: |
ふむう‥‥やはり、たいしたコト ではなかったようですな‥‥ |
御: |
とてもなつかしい気分だ。 ‥‥この、ムナしい感じ‥‥。 |
成: | ‥‥とりあえず尋問します。 |
御: |
フン。”とりあえず”か。 ‥‥私には縁のないコトバだな。 |
成: |
あなたがギターケースを 開けたはずはありません。 |
霧: | ど、どうしてそんなことが‥‥! |
成: |
カンタンなことです。 このギターケースには、被害者の 指紋しか付着していないからです! |
霧: | あ‥‥! |
裁: | どうなのですか? 証人。 |
霧: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ”ケースにさわれば指紋がつく” ‥‥発想がまずしいですね。 |
成: | どういうことですか? |
霧: |
私がそのとき、手袋をしてたら モンダイないでしょう? |
裁: |
てぶくろ‥‥ど、どうして そんなものを? |
霧: |
あの晩は授賞式でしたから‥‥ 私もそれなりに ドレスアップしていました。 ‥‥たしか‥‥、うすでの 手袋をしていたと思います。 |
裁: |
‥‥ふむう‥‥なるほど‥‥ どうですか? 弁護人。証人は 現場で、手袋をしていたそうです。 |
成: |
あなたが手袋を‥‥? それはおかしいですね。 |
霧: |
‥‥なぜ! 私が現場で、手袋を していなかった証拠でも‥‥? |
成: |
証拠‥‥もちろん、ありますよ。 このグラスです。 |
霧: | ‥‥グラス‥‥ |
成: |
このグラスには、ハッキリ 残っています‥‥あなたの指紋が。 |
霧: | あ‥‥ |
成: |
手袋をとって、グラスに ジュースをそそぎ‥‥ ふたたび手袋をつけて、 ギターケースを開けた‥‥ なぜ、そんな不自然なことを したのですか! |
霧: | うぐッ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! 静粛に‥‥! |
千: |
どうやら‥‥あなたは 正しかったようね。 |
成: | ‥‥? なんのことですか? |
千: |
あのギターケース‥‥ 重要な意味を持っていたのかも。 |
成: | でも‥‥カラだったんですよ? |
千: | 本当にカラだったのかしらね‥‥ |
成: |
だ、だって‥‥まっかなギターは スタジオにありました! |
千: |
なるほどくん‥‥先入観は捨てて。 ギターケースに入るのは、 まっかなギターだけじゃないわ。 |
成: |
(まさか‥‥まっ白なギター‥‥ とか、そういう話じゃないよな) |
裁: |
‥‥たしかに、フシギな話です。 証人は、手袋をしていなかった。 にもかかわらず、ケースには‥‥ |
御: |
‥‥裁判長。弁護人の使う、 いつもの手だ。 関係ない方向へ目をそらし、 ウヤムヤにしてしまう‥‥ |
成: |
証言を思い出してください! 霧緒さんは、こう言いました。 ”花ビンを、ギターケースの上に 落とした”‥‥と! つまり、犯行があったとき、 あのケースは閉まっていたのです! それが‥‥この写真では、 ぱっくり開いている! ‥‥ギターケースは 事件に関係しているのです! |
御: |
そこまで言うなら‥‥弁護人! キサマにはモチロン、その理由が 立証できるんだろうな! ”いったいなぜ、その ギターケースは開かれたのか!” |
成: | え‥‥ |
裁: | できるのですか! 成歩堂くん! |
成: |
そ、そうですね‥‥ ‥‥こういう たとえ話があります。 ”ギターケースに入るのは、 まっかなギターだけではない” |
裁: |
”まっかなギターだけでは”‥‥? ま、まさか‥‥ まっ黒なギターが入っ |
御: |
このケースはカラではなかった‥‥ そう主張するつもりかッ! |
成: |
行きがかり上、言わないワケには いかなくなったんでね! |
御: |
イバるな! ‥‥それなら、聞かせてもらおう。 事件のあったとき、このケースには いったい、何が入っていたか! |
裁: |
こ、これは‥‥ 写真ではないですか‥‥! |
成: |
もちろん重要なのは、そこに 写っているシロモノです。 |
裁: |
う、写っているもの‥‥ ま、まさか‥‥? |
成: |
‥‥考えるまでもありません! あのギターケースの中には‥‥ トノサマン・丙! ‥‥その着ぐるみが入っていた! |
御: | な、なにィッ‥‥! |
裁: |
こ、これはいったい‥‥ どういうことなんですか! |
御: |
証人はギターケースを開けて、 着ぐるみを取り出した‥‥? いったい、なんのために そんなことを! |
成: |
‥‥それはもちろん、 着るためでしょう。 その中にかくれて、 現場から逃げるためですよ。 カオを見られるワケには いかなかったでしょうからね。 |
霧: | ‥‥‥! |
御: |
ば‥‥バカな! そんな‥‥そんな証拠は あるのかッ! |
成: |
控え室のそとでは、スクープを ねらうカメラマンがいた。 そして実際に、写真を 撮られているじゃないですか。 |
裁: |
それが‥‥それが、 この写真だと言うのですか! |
裁: |
静粛に! 静粛にィィィッ! ま、また、ややこしいコトに なってきましたね‥‥。 |