成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
堀田(自称)…黄 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン…灰 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
王都楼 真悟…紫 | |
華宮 霧緒…藤 | |
虎狼死家 左々右エ門…桃 |
地方裁判所 被告人第3控え室 | |
王: |
‥‥ふっふっふっ‥‥ やっぱり、人質をとられると ちがうねぇ、弁護士さん‥‥。 まさか、あのキリオにオレの 罪を着せてくれるとは! |
成: |
‥‥‥‥‥‥ (くそっ! 悪人め‥‥) |
春: | なるほどくんっ! |
成: |
あ、あれ‥‥春美ちゃん。 千尋さんは? |
春: |
それが‥‥わからないのです。 急に、強いチカラで 呼びもどされてしまって‥‥ |
成: | (強いチカラ‥‥?) |
電: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
春: |
あ、なるほどくん! お電話が‥‥ |
成: | (‥‥イトノコさんからだ!) |
電: | ‥‥ピッ‥‥ |
糸: |
『どッスか! まだ、 持ちこたえているッスか!』 |
成: |
ま、まあ‥‥反則ギリギリで がんばってます。 |
糸: | 『ふう‥‥よかったッス‥‥』 |
成: |
それで‥‥! そっちはどうなんですか? 虎狼死家と‥‥ 真宵ちゃんの行方は! |
糸: |
『それが‥‥その。 さすがに手がかりゼロ、では‥‥』 |
成: |
そ、そんな! もう、時間がありませんよ! |
糸: |
『‥‥何か1つ! 1つでも手がかりがあれば‥‥』 |
成: |
(‥‥”真宵ちゃんを救出するまで 持ちこたえる”‥‥ それだけを考えて ここまで来たのに‥‥ もう‥‥今度こそ、 希望は断たれたのか‥‥?) |
テントよ! | |
成: | (”テント”‥‥?) |
サーカスのテントが見えるわ! | |
成: | ち‥‥千尋さん! |
千: |
あの子‥‥今まで 眠らされていたみたい。 目がさめてすぐ、 私を呼びだしたの。 |
成: | それで‥‥真宵ちゃんは! |
千: |
あの子は今、小さなホコリっぽい 部屋に閉じこめられている。 その窓からテントが見えたわ。 距離は‥‥約100メートル! |
成: |
‥‥イトノコさん! この街には今、いくつ サーカスのテントがありますか! |
糸: |
『‥‥1つきりッス。 タチミサーカスだけッス!』 |
成: |
テントの周囲100メートル付近! そこに真宵ちゃんたちはいる! |
糸: |
『な‥‥なんスとォ! ちょ、ちょっと待つッス! おい! 地図に円を描け! 急げ! 半径、100メートルだ!』 |
千: | それから‥‥ |
成: | それから? |
千: | 窓の下に、ポストが見えるわ。 |
成: | イトノコさん! ポストです! |
糸: | 『‥‥ムッ、了解! 他には!』 |
成: | 他には! 千尋さん! |
千: |
ごめんなさい。小さな窓だから 他には、何も‥‥。 窓は‥‥3階ほどの高さよ。 古いオフィスビルの一室ね‥‥ |
糸: |
『‥‥それでじゅうぶんッス! もう少しッス。がんばるッス! これで、希望がつながったッス!』 |
成: | わかりました! |
糸: |
『また連絡するッス! 電話の電源、切っちゃダメッスよ!』 |
電: | ‥‥ピッ‥‥ |
成: |
千尋さん! 真宵ちゃんは‥‥ ブジですよね! |
千: |
キケンな状況よ。かなり おなかをすかせているわ。 |
成: |
(‥‥早く見つけてあげてくれ! イトノコさん‥‥) |
千: |
‥‥そろそろ時間よ。 いいわね? なるほどくん。 |
成: |
(真宵ちゃんが救出されるのは もう、時間の問題だ‥‥ だいじょうぶ! 持ちこたえてみせる!) |
地方裁判所 第3法廷 | |
裁: | では、審理を再開しましょう。 |
御: |
被害者を殺害した虎狼死家は、 依頼人にコイツを手わたした。 そこで1つ、ギモンが生まれる。 ”なぜ、こんなものを‥‥?” その答えこそが、 真犯人の名前を語るだろう。 ‥‥被告人のマネージャー、 華宮 霧緒を入廷させてもらおう! |
御: |
証人は現在、死体損壊、 捜査妨害などの罪に問われている。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥ |
御: |
しかし今日は、殺人の罪を 負うべき人物を探すため‥‥ もう一度、証言台に 立っていただいた。 |
霧: | ‥‥わかっています。 |
御: |
では、さっそくうかがおう。 ‥‥このクマに見おぼえは? |
霧: | もちろん‥‥あります。 |
裁: | な、なんですと‥‥? |
御: |
そう。もちろん証人は 知っている。 われわれに教えていただこう。 ‥‥このクマについて。 |
霧: | はい。 |
成: | (き、霧緒さんが‥‥なぜ?) |
霧: |
『じつはそれ、精巧なパズルに なっているんです。』(証言1) 『正しい順序でパーツをいじると、 バラバラにすることができるの。』(証言2) 『中は空洞になっていて、小物を 入れることができるんです。』(証言3) 『かなり精巧だから‥‥やり方を 知らなければ、開けられません。』(証言4) 『見た目だけで”小物入れ”とは わかりませんしね。』(証言5) |
裁: |
こ‥‥小物入れ‥‥なのですか? このアクセサリーが‥‥ |
霧: |
気がつきませんよね? ‥‥見ただけでは。 |
裁: |
ええ。スバラシイ細工ですなあ。 ‥‥あ。では、弁護人。 尋問をおねがいします。 |
千: |
やはり、何かあったようね ‥‥あのクマさん‥‥。 |
成: | パズル‥‥ですか? |
霧: | そうです。 |
裁: |
ふむう‥‥見た目は、 ふつうのアクセサリーですねえ。 |
成: |
(たしかに。きっと、 何も知らない人間が見たら‥‥ パズルだとは わからないだろうな) ‥‥いったい、どういう パズルなんですか? |
成: |
”パーツをいじる”‥‥ どんなふうにやるんですか? |
霧: |
まず、シッポを右に回すと、 押しこめるようになるんです。 |
裁: | ‥‥お。ホントですね。 |
霧: |
すると、手や足やアタマの パーツが動くようになります。 |
裁: | ほほ。これはおもしろい。 |
成: |
(裁判長、ムチュウに なってるぞ‥‥) |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥あ。私にはかまわず、 進めておいてください。 |
成: | (いいのか‥‥?) |
御: |
そのパズルを解くと‥‥ どうなるのだろうか? |
成: |
どうして‥‥あなたが そんなことを知っているんですか? |
霧: |
カンタンなコトです。 ‥‥私が買ってきたから。 |
成: | なんですって! |
霧: |
友人とスイスへ旅行に行った おみやげにね。 |
裁: |
じゃあ、これは‥‥あなたからの プレゼントだったのですか! |
霧: |
そうです。 クマのカタチをしていて、 あの人にピッタリだと思って。 |
成: | (霧緒さんのプレゼント‥‥) |
御: |
‥‥証人。 証言をつづけてもらいたい。 |
成: |
そのパズルの解き方を 知っていたのは? |
霧: |
‥‥2人だけです。 藤見野 イサオと、私。 スイスのおみやげだから、 これと同じものを持ってる人は‥‥ この国にはあまり、 いないでしょうね。 |
裁: |
でも、これだったら すぐコワせそうですね。 ‥‥中のものを 取り出すだけでしたら。 |
霧: |
オモチャですからね。 ‥‥まあ、コワしてしまったら、 もとにはもどせませんけど。 |
成: |
それが”小物入れ”だと 知っていた人物は? |
霧: |
私はだれにも しゃべっていません。 藤見野も話していなければ、 知っているのは2人きり‥‥。 |
成: |
2人きり、ですか‥‥。 では当然、王都楼さんも 知らないわけですね? |
霧: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(とりあえず‥‥このへんで 情報をまとめておこう) |
データを書きなおした。 | |
御: |
‥‥さて。 そろそろ気がすんだかな? ‥‥弁護人。 |
成: | ‥‥? |
御: |
この尋問で、おさえるべき ポイントは、たった1つだ。 すなわち。 ”コイツは小物入れだった” |
裁: | ‥‥ふむう‥‥ |
御: |
われわれはすでに、 そのポイントをおさえた。 それならば‥‥次に 知るべきことも、たった1つ。 すなわち。 ”小物入れの中身は何か?” |
裁: | な‥‥何か入っているのですか! |
御: |
それを、これからたしかめる。 ‥‥証人。 |
霧: | はい。 |
御: |
これを開けられるのは あなただけだ。 ‥‥おねがいする。 |
成: |
(霧緒さんが パズルを解くあいだ‥‥ 法廷内は、いたいほどの 沈黙に支配された‥‥) |
霧: |
‥‥解けました。 これ‥‥で よろしいかしら? |
裁: |
な、なんですか? それ。 ‥‥メモ‥‥みたいですが‥‥ |
御: |
聞くまでもない。 ‥‥そうだな? 弁護人。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥ |
御: | 遺書だ。 |
裁: | いしょ‥‥ |
御: |
藤見野 イサオのマネージャー、 天野 由利恵が残したものだ。 たった今まで行方不明だったが ‥‥やはり、かくされていたのだ。 死体の発見者、 藤見野 イサオによって。 ‥‥なかなかキレイな 字を書く女性だったようだな。 ”天野 由利恵”‥‥このとおり、 本人のサインも入っている。 これこそが、自殺の際に 彼女が残した遺書なのだ! |
裁: |
せ‥‥静粛に! 証人! あなたは、 このことを‥‥? |
霧: |
‥‥ええ。藤見野から聞いて 知ってました。 死体を発見したとき‥‥ 私、アクセサリーを探しました。 ‥‥公表される前に 始末してしまいたかったから。 でも‥‥見つからなかった。 |
御: |
すでに、持ち去られていたのだ。 ‥‥虎狼死家の手によって。 |
千: |
‥‥完全に、検事さんのペースね。 遺書が発見された。 ‥‥じゃあ、次に問題になるのは? |
成: | ”何が書いてあるか‥‥?” |
千: |
‥‥そう。 まあ、想像はつくけど‥‥ |
御: |
それではここで、遺書の内容を 公表したいと思う。 |
霧: |
‥‥もう、どうしようも ないんでしょうね‥‥。 それを手に入れるために ずいぶんムダなことをしたのに。 彼女のためにも‥‥ 燃やしてしまいたかった。 |
御: |
‥‥申しわけないが、 それはできない。 裁判長。遺書の内容を 読み上げていただきたい。 |
裁: | わかりました‥‥ |
成: |
静まりかえった法廷内に、 裁判長の声だけがひびく‥‥。 ‥‥由利恵さんは、 すべて書き記していた。 王都楼に、いいように 利用され、捨てられて‥‥ いざ結婚が決まると、 今度はそれをジャマされて‥‥ 絶望のうちに 死を決心したこと‥‥ |
裁: | ‥‥以上です。 |
御: |
‥‥1つだけ言っておきたい。 検察側は、王都楼 真悟の 人格を攻撃するつもりはない。 |
裁: | では、いったい‥‥? |
御: |
もちろん、その目的は、 殺人の動機を立証することにある。 ‥‥そうだな? 証人。 |
霧: |
ええ。 事件があった晩、藤見野は その遺書を公表するつもりでした。 授賞式のあと‥‥ 記者会見を開いて。 |
裁: | なんですって‥‥。 |
御: |
王都楼 真悟は、何よりその サワヤカなイメージが大切だった。 だから‥‥遺書の公表だけは、 阻止しなければならなかったのだ。 いかなる手段を使っても! |
法廷記録にファイルした。 | |
‥‥自分のせいで人を 自殺に追いこんでおいて‥‥ | |
‥‥今度は、それをバラそうとした 人間まで、ダマらせたんだよ! | |
‥‥ひどい‥‥! なんて、自分勝手な人なの‥‥ | |
‥‥そんなクズを、すずしいカオで 弁護してるヤツもいるケドな! | |
御: |
今度こそ、ギモンの余地はない。 虎狼死家に依頼した人物の目的は、 この遺書にあった。 そして、その遺書がどうしても 必要だったのは‥‥被告人だ。 そしてジッサイ、遺書は 被告の屋敷から見つかった! |
裁: |
‥‥どうやら、私たちは 真相にたどりついたようですね。 被告の犯行動機は自己中心的で、 同情の余地は、まったくない! |
成: |
ううう‥‥ (もう、逃げようがないぞ!) |
千: |
‥‥どうしたの? なるほどくん。 まだ、あなたの電話は 鳴っていないわ。 |
成: |
(これでもまだ‥‥食いさがって いかなければならない! 致命的な証拠は2つ。 アクセサリーと、あの遺書だ。 そのどちらかに‥‥逃げ道が あるのかもしれない!) |
千: |
裁判長が木槌を手に取ったわ。 ‥‥早く! |
成: |
(遺書か! アクセサリーか! ‥‥アヤシイのはどっちだ‥‥) |
成: | お待ちください、裁判長! |
‥‥見ろよ、あの弁護士‥‥ | |
‥‥まだ認めない気なの‥‥? | |
‥‥犯人を無罪にしようなんて、 とんでもない弁護士ね! | |
成: |
‥‥この遺書を取りもどすため、 王都楼 真悟は殺害を決意した。 |
裁: | そのとおりです。 |
成: |
しかし‥‥それはおかしい。 ムジュンしています! |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
この遺書は、藤見野 イサオが 事件当夜まで、かくしていた。 それならば! その遺書の内容を、 王都楼 真悟が知るはずがない! |
裁: |
あ‥‥! そ、それはたしかに‥‥ |
成: |
‥‥そう。最初から、 考え方がおかしかったのです。 内容も知らない遺書のために、 殺害を計画するはずがありません! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛にッ! た‥‥たしかにそのとおりです! い、いかがですか! 御剣検事‥‥ |