成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
華宮 霧緒…藤 | |
矢張 政志…紺 | |
星威岳 哀牙…紫 | |
天杉 優作…灰 | |
天杉 希華…桃 | |
亜内検事…茶 | |
裁判官…黄 |
哀: |
『さよう、たしかに我はあの晩、 高菱屋にはいませんでしたな。』(証言1) 『さる重大な事件の依頼について、 どうしても行かねばならなかった。』(証言2) 『前もって、日取りがわかっていた ので、この写真を用意したのです。』(証言3) 『真犯人が天杉 優作であることは、 美しきスイリが我にささやく真実。』(証言4) 『サイフとキーカードより、彼が 事件当時、現場にいたのは明白。』(証言5) 『また、一度だけ鳴った非常ブザー。 ここからも、スイリは可能です。』(証言6) 『あのボタンには、指紋が 残っていなかった。‥‥なぜか?』(証言7) 『被害者が鳴らせば、指紋が残った。 つまり‥‥鳴らしたのは、犯人。』(証言8) 『彼は仮面マスクの衣装を着ていた。 だから指紋が残らなかったのです。』(証言9) 『そして、脅迫状。宝石の色など、 被害者の書きまちがいでしょう。』(証言10) 『ズヴァリ! すべての証拠は、 あわれなる青年を示しているッ!』(証言11) |
成: |
(この証言‥‥意外に スジが通っているな‥‥) |
裁: |
先ほどの証人の発言は、不用意な モノではなかったようです。 すべての点が説明され、ムジュン している部分は、ありません。 |
哀: | ‥‥当然、ですな。 |
裁: |
しかし‥‥なぜ、非常ブザーの コトを、ご存じなのですかな? |
哀: |
‥‥警察の捜査資料など、 我が名探偵にはツツヌケなのです。 調書には、すべて目を通す。 キホンですな、弁護士殿ッ! |
成: | ぐ‥‥ |
ゴ: |
この上、悪あがきをするつもりか? 弁護士センセイよお‥‥。 |
裁: |
それは、この私がユルしません。 ‥‥成歩堂くん。 |
成: | は、はい。 |
裁: |
星威岳 哀牙の裁判を、これ以上 中止させておくコトはできません。 ‥‥あなたに、一度だけ。 チャンスを与えましょう。 |
成: |
ちょ、ちょっと待ってください! ‥‥一度だけ、なんて‥‥! |
ゴ: |
クッ‥‥! どうやら、 パーティーはお開き、みたいだぜ。 |
千: | ‥‥どう? なるほどくん。 |
成: |
今の証言にムジュンしている 証拠品なんて、ありませんよ! |
千: | ‥‥そのようね。 |
成: | そ、”そのようね”‥‥って‥‥ |
千: |
いい? なるほどくん。 ムジュンを指摘する方法は‥‥ 何も、証拠品をつきつけるだけじゃ ないでしょう? いずれにせよ‥‥ これが最後のチャンスよ。 <<決定的なムジュン>>を 指摘できなければ‥‥ あなたの負け。 ‥‥それだけのことよ。 |
ゴ: |
‥‥17杯目。 これが、最後の1杯。 この裁判も、どうやら 終わらせるときが来たようだぜ。 |
成: |
(‥‥この証言の中に、致命的な ムジュンを見つけだすんだ‥‥ そして‥‥証拠品をつきつける 以外の方法で、暴き出す! ‥‥<<ゆさぶる>>しかない、か。 ムジュンしている発言を‥‥!) |
千: |
いいわね。 チャンスは‥‥たった一度よ! |
裁: |
それでは、弁護人。 最後の尋問をおねがいします! |
成: | 哀牙さん。今の発言ですが‥‥ |
ゴ: |
‥‥わかってねえな、まるほどう。 ちまちまゆさぶってる 場合じゃねえんだぜ。 |
成: |
‥‥わかってないのは あなたのほうですよ、ゴドー検事。 |
ゴ: | な‥‥なんだと‥‥? |
成: |
‥‥哀牙さん。 ついに、認めましたね‥‥。 あの晩‥‥殺人現場、KB警備の 社長室にいたことを‥‥ |
哀: | な‥‥なな、ナニをバカな! |
成: |
たった今‥‥あなたは こう発言しました。 ”非常ブザーのボタンに 指紋が残っていなかったのは‥‥ 天杉 優作が怪人☆仮面マスクの 衣装を着ていたからだ”‥‥と。 |
哀: |
い、いかにも! このスイリに、マチガイなど‥‥ |
成: |
哀牙さん。‥‥どうして、あなたが それを知っているのですか? |
哀: |
‥‥し、シツレイ。 どういうコトですかな? |
ゴ: |
‥‥なんか、ノドが かわいてきやがった‥‥ |
成: |
”優作くんが犯行現場に行ったとき 怪人の衣装を着ていた”‥‥ ぼくたちが、そのジジツを知った のは‥‥いつのことでしたか? |
裁: | そ、それは‥‥たしか‥‥ |
ゴ: |
つい、さっき‥‥ 数時間前のことだ。 6杯目のコーヒーが、さめた視線で オレを見つめた、あのときだぜ。 |
天: |
『‥‥あれ。そういえばコレ、 言ってませんでしたっけ。 スミマセン。今まで、言い出す チャンスがなくて‥‥』 |
成: |
‥‥そう。被告人は、その情報を だれにも話していなかった! それを知り得たのは‥‥今日、 この法廷にいた人間だけなのです。 |
哀: | お‥‥‥おおおおおお‥‥ |
成: |
おわかりになりましたか? ‥‥哀牙探偵。 あなたが、この情報を 知っているハズがないんです! |
哀: |
あ‥‥‥‥ あいやいやああああァァァァッ! |
成: |
あなたは今日、怪人☆仮面マスクと して、裁判を受けていた! ‥‥なのに、なぜ! この情報を知っていたのですか! |
哀: | う‥‥クッ! そ、それは‥‥ |
ゴ: |
と‥‥とにかく! この探偵は 知っていたんだ! おそらく‥‥もっと前に、 知るチャンスがあったんだろうぜ! |
成: |
その”チャンス”が問題なのです! <<あの晩、優作くんが 仮面マスクの衣装を着ていた>> 哀牙探偵が、それを知ることが できた可能性は‥‥ ‥‥たった1つしか、 あり得ないのです! |
裁: | たった1つの‥‥ |
ゴ: | 可能性‥‥だと‥‥! |
成: |
思い出してください。 天杉 優作の証言を‥‥もう一度! |
天: |
『社長室に入ったら、目の前に アヤシイ人影がヌッと出てきて‥‥』 |
成: |
‥‥優作くんは一瞬、 真犯人を目撃していたんです。 |
ゴ: |
し‥‥しかし、天杉は そいつを見てねえんだぜ! その”真犯人”が 哀牙だったかどうかは‥‥ |
成: |
その証言を‥‥ ”逆転”させるんですよ。 |
ゴ: | ぎゃ‥‥ぎゃくてん、だと‥‥? |
成: |
”優作くんが真犯人を目撃した” ‥‥それを逆転させれば‥‥ 真犯人もまた、優作くんを ”目撃”していることになる! |
ゴ: | ま‥‥‥‥まさか‥‥ッ! |
成: |
哀牙探偵! あなたは事件当夜、 殺人現場で怪人を目撃したのです! ブスジマ社長を殺害して 天杉 優作を殴った、そのときに! 優作くんの衣装のコトを知る チャンスは、それ以外にない! |
哀: |
あーっはっはっはっはっはっはっ はっはっはっはっはっはっはっ‥‥ ‥‥さあさあみなさん、 ごらんくださあい‥‥! 天才にふさわしき好敵手を求めて、 ついに自ら犯罪に手を染めた‥‥ あわれなピエロでござあい‥‥ |
裁: |
‥‥きのうと 同じコトを言ってます。 |
成: |
でも‥‥、そのイミあいは だいぶちがうようですけどね。 |
哀: |
あーっはっはっはっはっはっはっ はっはっはっはっはっはっはっ‥‥ |
裁: |
‥‥フクザツな事件でした。 天杉 優作を脅迫した哀牙探偵が、 毒島 黒兵衛に脅迫されていた。 その脅迫者を殺害した哀牙探偵は、 罪を天杉 優作に着せようとした。 そして、殺人の罪を逃れるため、 怪人として有罪になろうとした‥‥ |
成: |
‥‥そのために 考え出されたのが‥‥ 裁判の<<一事不再審>>の原則を利用 した、アリバイ作りだったのです。 |
?: | あの‥‥ |
裁: |
とにかく。‥‥どうやら、 真相にたどりつけたようですな。 |
?: | スミマセン‥‥ |
裁: |
ワレワレはもう少しで、無実の 青年に汚名を着せるところでした。 おぞましき”殺人犯”の汚名を‥‥ |
天: |
‥‥ボクのコト、 ムシしないでくださーーーい! |
裁: | ‥‥あ。いたのですか。 |
成: | (そりゃ、いるだろ‥‥) |
天: |
‥‥あの。 判決のコトなんですけど‥‥ |
裁: |
わかっています。あなたは 殺人など、やっていません。 |
天: |
ええ! わかってもらえて うれしいです! ‥‥でも。 ええと、ボク‥‥やっぱり 怪人☆仮面マスクなんでーーーす! |
裁: | え‥‥ |
天: |
きのう、その件で‥‥ ムザイ、になっちゃいましたよね。 |
成: | あ‥‥ |
天: |
あの。<<一事不再審>>って 言うんでしたっけ、こういうの。 |
裁: | 言われてみれば‥‥ |
ゴ: | ウッカリしてたぜ、コイツは。 |
成: |
(ウッカリ、って‥‥) ‥‥あの。どうなんですか? 千尋さん。 |
千: |
被告人の言うとおり<<一事不再審>> の原則は、ゼッタイよ。 無罪判決を受けた件では、 二度と起訴することはできない。 |
成: |
じゃあ‥‥ムザイ、に なっちゃうんですか? 怪人。 |
千: |
とりあえず‥‥ そうなっちゃうんじゃないかしら。 |
成: | (と、とりあえず‥‥) |
裁: |
それでは! そういうことで、 被告人に判決を言いわたします! |
天: |
いいのかなあ。トクした、って コトで‥‥‥‥いや。 やっぱり、いくらなんでもそれは まずいよなあ。怪人だもんな、ボク |
地方裁判所 被告人第4控え室 | |
千: |
よくやってくれたわね、 なるほどくん! |
成: |
ありがとう、千尋さん! ずいぶん‥‥ひさしぶりですね。 |
千: |
‥‥そうね。最近、真宵が 呼んでくれないものだから。 |
成: | そ、そうなんですか。 |
千: |
それは冗談だけど。 あの子‥‥今、迷ってる みたいなの。 |
成: |
‥‥倉院流霊媒道の 家元になること、ですか? |
千: |
家元をつぐことは‥‥ 母との別れをイミするから。 |
成: | 綾里 舞子さん、ですか‥‥ |
千: |
‥‥そばにいてあげてね。 なるほどくん。 |
成: | は‥‥はい。 |
千: |
じゃあ‥‥ また会いましょう。 |
成: | (‥‥千尋さん‥‥) |
天: |
あ! な。成歩堂さん! あの‥‥ボク! その。 なんと言っていいのやら。 |
成: | おめでとう、優作くん。 |
天: |
あああ、ありがとうございます! ‥‥‥‥いや。どうなんだろ。 ナニもかも、もう。どうでもい |
真: |
もう! スナオに 喜べばいいじゃないですか! |
成: | 真宵ちゃん‥‥ |
真: |
サツジン容疑が晴れて、怪人の 無罪もオマケつきなんですよ! |
天: |
でも‥‥そのかわり‥‥ボク。 すべてを失っちゃいましたから。 |
真: |
‥‥え。 どういうことですか? |
天: |
KB警備をクビになったのも、 仮面マスクになったのも‥‥ 彼女のため、だったんです。 |
成: | まれかさん‥‥ですか? |
天: |
彼女、犯罪者が 何よりもキライなんです。 |
成: |
(強盗のヒトジチになったコトが ある、って言ってたっけ‥‥) |
天: |
”ヒキョウなマネをする犯罪者 なんて、ユルせない!”って。 わかってたのに。でも‥‥ KB警備をクビになって、 おカネがなくなっちゃったら‥‥ ボクなんか、なんの とりえもミリョクもないし‥‥ まれかちゃん、きっと いなくなっちゃう、って思って。 |
成: | だから‥‥怪人に‥‥? |
天: |
え、ええ‥‥。 でも、もう‥‥オシマイです。 割れたおちゃわんは‥‥ 元には戻りませーーーん! |
真: |
そ、そんなコトありませんよ! ね、なるほどくん! |
成: | え。 |
天: |
ほ‥‥ホントですか! ホントに戻るんですか! |
真: |
だいじょうぶ! なるほどくんが 証明してくれますから! |
成: |
(い、いきなりそんなコト 言われてもコマるけど‥‥) 優作くん。割れたおちゃわんも、 いつか元に戻るコトもあるよ。 |
天: |
<<倉院のツボ>>‥‥まれかちゃんが 見つけてきてくれた‥‥ |
成: |
まれかさんは‥‥いつでも 信じてるんだよ、優作くんのコト。 ‥‥だから、だいじょうぶ。 何もシンパイはいらないと思うよ。 |
希: | あ! いたいた! |
成: | ま‥‥まれかさん。 |
希: |
やったね、ユーサクくん! ムザイだよムザイ! |
天: |
あ、ああああ、ありがとう! ‥‥でも、その。 まれかちゃんはもう、 ボクなんて、あの。 |
希: |
ユーサクくん! どうしてキチンと 話してくれなかったかなー。 KB警備をやめたなんて アタシ、知らなかったんだもん。 まさか、ホントに 怪人やってたとはねー。 |
真: |
ま、まれかさん‥‥それを 知っちゃって、どうするんですか? ‥‥まさか‥‥ |
希: |
‥‥決まってるでしょ? そんなスリリングなこと、 見逃すハズがないじゃない! アタシのバイク、 シャレ抜きで飛ぶからさ。 ゼーッタイ、逃げおくれる なんて、あり得ないからね! |
成: |
あの‥‥たしか、犯罪者は ユルせなかったのでは‥‥? |
希: |
んー? アタシがユルせないのは、 ヒキョウなマネをするヤツだよ。 ‥‥あの探偵みたいに。 |
成: | ‥‥なるほどね‥‥ |
希: |
ユーサクくん、正々堂々と 予告状で宣戦布告しちゃって。 アタシ、大スキなんだよねー、 そういう、スポーツマンシップ。 |
真: | すぽーつまん‥‥ |
希: |
‥‥やっぱり、アタシの 予感は正しかったよ。 ユーサクくんといれば、 スリリングな毎日を送れる、って。 |
天: | ま、まれかちゃん‥‥ |
成: |
(まれかさん‥‥優作くんのこと、 ホントに好きなんだな‥‥) |
希: | ‥‥ねえ、リューイチくん。 |
成: | は、はい。 |
希: |
リューイチくんに弁護を おねがいして、本当によかったよ。 どうもありがとう! アタシ、ずっと忘れないから。 |
成: |
いや、まあ、その。 ‥‥お元気で。 |
希: |
リューイチくんもね。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: | (うう‥‥カオが赤くなってきた) |
春: |
なるほどくん! 真宵さま! おめでとうございます! ‥‥って、まあ! |
成: |
(ささ、サイアクの タイミングだ‥‥) |
春: |
なるほどくんッ! 真宵さまの前で! ヒトさまの奥方と! |
成: | ちちちち、ちが |
春: | ユルしませんっ! |
成: |
ぼくの意識はうすれて行き‥‥ そして、事件は終わった。 ”割れたおちゃわんは、元には 戻らない”‥‥優作くんは言う。 でも、そんなコトはないハズだ。 だって‥‥そうだよ。 割れたツボだって、こうして 元に戻ったわけだからね‥‥。 |