成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
須々木 マコ…橙 | |
芝九蔵 虎之介…紫 | |
鹿羽 うらみ…灰 | |
本土坊 薫…桃 | |
五十嵐 将兵…紺 | |
小池 けいこ…黄 |
裁: |
‥‥そこまで! 本法廷は、これ以上の審議の 必要性を認めません。 これは、きわめて明白な事件です。 疑問の余地はない! |
そ‥‥そんな‥‥ アタシじゃない! | |
裁: |
毒入りのコーヒーを飲んだとき、 テーブルにいたのは被害者だけ‥‥ ‥‥すべての証言・証拠が、 それを物語っています! |
ちがう! アタシ‥‥見たのに! 本当に‥‥見たのに‥‥ そうよ! ‥‥もうひとり、いた! アイツが‥‥アイツが、犯人! ‥‥どうして‥‥ だれも信じてくれないの! | |
亜: |
どうやら‥‥ 勝負あったようですな。 ‥‥成歩堂くん! |
裁: |
それでは‥‥被告人に、 判決を言い渡します。 |
裁: | 本日は、これにて閉廷! |
成歩堂法律事務所 | |
真: |
いやあ。正月気分がぬけないねえ なるほどくん。 |
成: | そうだなあ。 |
真: |
そうだ。今年の成歩堂法律事務所の 抱負はズヴァリ! ”正月気分”。 ‥‥コレで行こうよ! |
成: |
どうでもいいけど、 食いすぎじゃないか? おもち。 |
真: |
いいのいいの。お正月といえば、 おもち食べながらみかん食べて、 おせちをつつきながらテレビ見て、 さらにトランプでババ抜きだから。 |
?: | コラアッ! |
成: | い、イトノコ刑事‥‥ |
真: |
あけまして おめでとうございます! |
糸: |
う‥‥お、おめでとうございます。 コラ、アンタ! |
真: | 今年もよろしくおねがいします! |
糸: |
う‥‥よ、よろしく‥‥。 いいッスか! アンタは‥‥ |
真: |
あ。イトノコさんイトノコさん。 お年玉ちょうだい! |
糸: |
う‥‥じゃ、じゃあこれ。 ケンソン抜きで少ないッスけど。 |
真: | やったあ! |
糸: |
今日はハナシがあるッス! そこに座るッス! |
真: | はみちゃんのぶんも。 |
糸: |
う‥‥は、はい‥‥って、 ワザとやってないッス? |
真: |
バレちゃいました? 初わらい、ってヤツですね! |
糸: |
ハッ! コレを見ても 笑っていられるッスかッ! |
成: | ‥‥雑誌‥‥ですか? |
真: |
えー、なになに。 <<毒殺事件に有罪判決。 成歩堂弁護士、惨敗>> |
成: |
ざ、ザンパイ‥‥? ちょ、ちょっと貸して! ”昨日の裁判での弁護士は、 まさにシロウト以下で‥‥” ‥‥なんだコレ? |
糸: | アンタのコトッス! |
真: |
”有罪判決のセキニンのすべては、 成歩堂弁護士にある”だって。 |
糸: |
どッス! おぼえがないとは 言わせねッス! |
成: |
お、おぼえがありませんよ! だいたい、いつの雑誌ですか? それ。 |
糸: | えーと。‥‥去年の12月ッスね。 |
真: | 古雑誌じゃないですか。 |
成: |
去年の12月に、 毒殺事件なんて扱ってませんよ! |
真: | ‥‥どういうことなのかな? |
糸: |
これがアンタじゃないとすると ‥‥考えられるのは、1つッス。 |
真: |
ま。まさか‥‥‥ に‥‥‥ ニセなるほどくん。 |
成: | (‥‥初わらいだな、たしかに) |
法廷記録にファイルした。 | |
糸: | さー、どうしてくれるッス! |
成: | どうする、って言われましても‥‥ |
真: |
でも。でも。なるほどくんのせいで 有罪になっちゃったんだよ! |
成: | ぼ、ぼくのせい‥‥? |
真: |
なるほどくん、最近ちょっと 有名になってきたからねー。 |
糸: |
チョーシに乗るから、 こういうコトになるッス! |
成: |
(ううう‥‥ ぼくがワルいのか‥‥) |
糸: |
キチンとオワビに行くッス! 今からッス! すぐにッス! そして、裁判をやりなおすッス! |
真: |
”正月気分”で引き受ける、 今年最初の事件になりそうだね! |
成: |
でも‥‥この事件、一度は 有罪判決を受けてるんだぞ。 カンタンにひっくり返せるワケ、 ないじゃないか。 |
真: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ザンネンだけど、”正月気分”は 来年の抱負にしようか。 |
糸: |
じゃッ! 自分はこれから、 裁判所のほうに行くッスから! なんかあったら、ケーサツの 自分のところへ来るッス! |
成: |
(たしかに”成歩堂 龍一”の名前 も、少しは知られてきたようだ。 依頼人が、その名前を信頼して ぼくに弁護を頼んだのなら‥‥ ぼくにも、セキニンが あるのかもしれない。 ‥‥それにしても‥‥ ぼくの”ニセモノ”なんて‥‥ いったい、どんなヤツなんだ?) |
真: | さて。どうしようか、これから。 |
成: |
どうする、って。 留置所に行って、話を聞いたり‥‥ |
真: |
でもさ。相手は、なるほどくんの せいで有罪になったヒトだよ。 どんなカオして会えばいいの? |
成: |
いやいや! でも、それは ニセモノだったワケだろ? |
真: |
やっぱり、カオもソックリなのかな ‥‥なるほどくんのニセモノ。 |
成: | (ブキミな話だな‥‥) |
真: | あ。もしかして、なるほどくん! |
成: | 双子の兄弟なら、いないぞ。 |
真: | ‥‥つまんないの。 |
真: |
今日のイトノコさん、 なんかヘンだったよねー。 |
成: | ‥‥なにが? |
真: |
ものスゴく あたふたしてたじゃない。 初めてムスコさんが生まれた パパさながらに。 |
成: | そういえば‥‥たしかに。 |
真: |
強い思い入れがあるのかな。 なるほどくんに。 |
成: |
‥‥きもちわるいコト 言うなよ。 |
真: |
なるほどくんのせいで コーフンしてたんじゃなければ‥‥ |
成: |
その原因は、 有罪になった依頼人‥‥かな。 |
留置所 面会室 | |
真: |
うう。ドキドキするねー。 どんなヒトだったんだろ? なるほどくんにダマされて 有罪にされちゃったの。 |
成: |
ひ、ヒト聞きの悪いこと 言わないでほしいな。 |
?: |
ああああああッ! 成歩堂さん、ヒドいです! このアタシを見捨てるなんて! 今も独房でひとり、 すすり泣いていたッス! |
成: | き、きみは‥‥たしか‥‥ |
?: |
もースズキ、 人間不信になりそうッス! |
真: |
あっ! も、もしかして、 あなた‥‥ |
?: |
”もしかして”じゃないッスよ! マコです。須々木 マコ! |
成: |
須々木 マコって‥‥ああ! (須々木 マコ‥‥。以前、 弁護した婦人警官だ‥‥ たしか、コイビトの警察官を 殺害した容疑だった) ど、どうしてこんなところに! 無罪になったはずじゃあ‥‥ |
マ: |
うわあ! よくそんな コトが言えますね! あれだけザツな弁護で ヒトに有罪、カッ食らわしといて! |
真: |
ダメだよなるほどくん。 ちゃんと事情を説明しないと! |
マ: | そ、そうだったんですか‥‥ |
成: | そ、そうだったのか‥‥ |
真: |
‥‥また、事件に 巻きこまれちゃったんだ‥‥ |
マ: |
スズキの人生は、まさに不運と 敗北と大番狂わせの見本市ッス。 |
成: |
(この前も、たしか そんなコト言ってたな‥‥) |
マ: |
ヘーキッス! また1つ、デッカイ 不幸をしょいこんだだけッス。 こうして、ホンモノの成歩堂さんも 来てくれたことだし‥‥ スズキ、ヘコたれません! |
真: |
マコちゃん。どうしたの? そのカッコウ‥‥ 去年は、婦人警官の 制服でパリッとキメてたのに。 |
マ: |
あの事件のおかげで、スズキ、 ケーサツをクビになっちゃって。 |
真: | そ、そうなんだ‥‥ |
マ: |
ゼーンゼン、かまいません! ケーサツのフンイキはまあ、 じゅうぶん楽しみましたから。 |
真: | それで‥‥今は? |
マ: |
スズキの人生の第2章は、 ウエイトレスさんだったッス! |
真: | うえいとれす‥‥ |
マ: |
フランス料理のレストランです! ちっちゃいけど、カワイイお店で。 この愛くるしいスマイルと、なやま しいボディラインのおかげで、 サッソク、採用されたッス! |
成: |
‥‥で、サッソク事件に 巻きこまれたわけだ。 |
マ: | う。まあ‥‥。 |
マ: |
あのオソロシイ事件は、 先月の3日‥‥ 吐麗美庵(とれびあん)で 発生したッス! |
真: | とれびあん‥‥? |
マ: |
このスズキが、エガオとメシを 運んでいたレストランです! |
真: | はあ‥‥ |
マ: |
テーブルで、2人の男が コーヒーを飲んでいたッス。 そして‥‥ 男は、相手のコーヒーに 毒を入れたんです! 被害者は、コーヒーをヒトクチ飲む なり『ぎゃあ』ってなモンでした! アタシ‥‥あまりのコトに、キゼツ して、ぶっ倒れちゃったッス。 |
真: | ‥‥ちょっと待って、マコちゃん。 |
マ: | なんですか? |
真: |
さっきから”被害者””被害者” って言ってるけど‥‥ 知ってるヒトじゃないの? コロされちゃったヒト。 |
マ: |
し、知らないッス! 初めて見るカオだったッス! |
真: | そうなんだ‥‥ |
成: |
(じゃあ、殺害する 動機もないワケだよな‥‥) 犯人はその、もう1人の男だ。 ‥‥見たんだよね? 現場を。 |
マ: |
そのとおりッス! ウエイトレスは見ていたッス! |
成: |
‥‥なのにどうして、 きみが有罪になってるの? |
マ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 成歩堂さんに言われたくないッス! |
成: |
ううう‥‥ (ぼくの”ニセモノ”か‥‥ 彼女は、そいつを見ている。 ‥‥できれば、情報がほしいな) |
真: |
ハンニンを目撃したのに‥‥ どうして、有罪に? |
マ: |
それが‥‥ ダレも見ていないッス。 |
真: | 見ていない‥‥? |
マ: |
毒を入れた、もう1人の男。 ‥‥店長も、レストランのお客も、 みーんな、こう証言したッス。 『被害者のテーブルには、 ずっと1人しかいなかった』‥‥ |
成: | な‥‥なんだって! |
マ: |
ダレも‥‥。ダレひとり、スズキの 言うことを信じてくれなくて。 最後の望みをたくした成歩堂さん にも、キレイにウラ切られて。 あの弁護はないッス! うちの おばあちゃんのほうがマシッス。 |
成: |
い、いや! だからそれは、 ぼくじゃなかったんだから‥‥ |
マ: |
‥‥それに。 スズキのエプロンのポッケから、 トンでもないモノが出てきたッス。 |
真: | な‥‥なに? |
マ: | 毒薬の小ビン‥‥ッス。 |
真: |
ええええええええええッ! ど、毒が‥‥ポケットから? |
マ: |
‥‥被害者が倒れたとき、 スズキもキゼツしちゃったッス。 きっと‥‥そのとき、ハンニンが ポッケに‥‥ |
成: |
だれも、見ていないのか‥‥ その”もう1人の男”を。 |
マ: |
そッス。『見てない』って。 そんなハズ、ないのに‥‥。 |
マ: |
モンダイのあの2人にコーヒーを 運んだの、アタシだったッス。 |
成: |
お、そうなんだ。‥‥その人たち、 どんな感じだった? |
マ: |
うーん。最初2人を見たときは、 音楽カンケイの人たちかな、って。 |
真: | おんがく‥‥? |
マ: |
1人はイヤホンをつけて ムズカシイ顔をしていたし、 テーブルの上には、見本のCDが 置いてあったッス。 |
真: |
イヤホンに‥‥見本のCD、かあ。 どんなCDだったんですか? |
マ: |
サインペンで、ウラ面に バンドの名前が書いてあったッス。 <<クリ>>なんとか‥‥って。 きっと、デビュー前ッスね。 |
成: |
ふうん‥‥バンドねえ。 売りこみ、だったのかな。 |
真: | <<くりきんとん>>かあ‥‥。 |
成: | 勝手に名前つけるなよ。 |
マ: |
あのバンド名、なんだっけな。 ‥‥”クリ”‥‥ |
真: |
で? で? ケッキョク、どんな ヤツだったんですか! ハンニン。 |
マ: |
そ‥‥それが。 よくおぼえてないッス。 被害者と同じく、体格のいい おニイさんだった、ぐらいしか‥‥ |
成: |
そうだ! コイツのことを 聞いとかないと! |
マ: | あ! スズキ惨敗の記事ッスね! |
成: |
この、ぼくのニセモノの 話を聞かせてくれないかな。 |
マ: |
リョーカイッス! あれは、アタシがタイホされた 翌朝のことでした。 いつものスーツでビシッとキメて、 面会室に来てくれたッス。 |
成: | ‥‥ぼくが? |
マ: | ええ。成歩堂さんが。 |
成: | ううう‥‥ |
真: |
ね。ね。あたしのニセモノも いました? |
マ: |
そういえば、ニセ真宵さんは いなかったなあ‥‥。 |
真: |
‥‥ちぇ。 ちょっと、ザンネン。 |
マ: |
アットー的なハクリョクで このスズキを、かきクドいたッス。 『かならずアンタを ムザイにしたるわ!』‥‥って。 |
成: |
それはいいけど‥‥そもそも、 ぼくと初対面じゃないのに‥‥ どうして、ニセモノだって 気がつかなかったの? |
マ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ たしかに、今、思うと ちょっとヘンだったッス。 |
成: | ちょっと‥‥? |
マ: |
いつもよりちょっと背が高かったし ちょっと目つきがワルかったし、 ちょっと声も割れてたし、 ちょっと関西弁でしゃべってたし、 |
成: | ‥‥ゼンゼンちがうじゃないか! |
マ: |
でも。アタマはギザギザだったし、 ブルーのスーツだったし。 |
成: | (やれやれ‥‥) |
真: |
法廷のヒトたちも‥‥ 気がつかなかったの? ‥‥裁判長さんとか。 |
マ: |
みんな、カオに”?”マークが うかんでましたけど。 なーんか、言い出せない フンイキだったッス。 |
真: | ビミョーな話だなあ‥‥ |
マ: |
成歩堂さん‥‥。もう一度、 できるんですか? ‥‥裁判。 |
成: |
たぶんね。弁護士がいないまま 判決が下されたんだから。 再審理はできると思うよ。 |
マ: | あの‥‥成歩堂さん。 |
成: | ? |
マ: | 今度は‥‥勝てますか? |
成: | ‥‥! |
マ: |
たしかにスズキ、不幸のフルコース に敗北のデザートつきの人生ッス。 生後6ヶ月のとき、マンションの 9階から落っこちたのを皮切りに、 ひととおりの乗り物にはひかれ、 ひととおりの食べ物にはあたり、 だいたいの試験には落第して、 ほとんどの災害をも経験して、 殺人の罪を着せられれば、弁護士の ニセモノをつかまされる始末。 ‥‥でも! それでも、このスズキは 生きているッス! 今も! だから! いつか 見つけられるハズッス! ‥‥ヒトなみのシアワセをッ! |
真: |
くっそー、 ニセなるほどくんめぇ‥‥ |
成: |
な、なんでぼくを ニラむんだよ‥‥ (とはいえ‥‥ ぼくの名前を使って、 殺人の罪を着せるなんて‥‥ ‥‥ユルせるわけがない!) |
真: |
ゼッタイに見つけだそうね! なるほどくんのニセモノ‥‥ |
マ: |
じゃあ、吐麗美庵の場所を 教えますねッ! |
成: |
とれび‥‥ああ、事件が 起こったレストランか。 |
マ: |
はい! 店長によろしく 言っといてください! |
真: |
よし! なるほどくん。 さっそく行ってみようか! |