成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
須々木 マコ…橙 | |
芝九蔵 虎之介…紫 | |
鹿羽 うらみ…灰 | |
本土坊 薫…桃 | |
五十嵐 将兵…紺 | |
小池 けいこ…黄 |
ビタミン広場 | |
真: |
出たッ! マメのオジさんだ! ハトにエサやってるよ! |
五: | 食らえッ! 食らって飛べッ! |
成: |
やっぱり、荒れてるな‥‥。 下を向いて、目を合わさないように コッソリ帰ろう。 |
真: |
え。どうして? おーい、オジさーん! |
成: | あ。ま、真宵ちゃん‥‥ |
五: | ムッ! ‥‥‥‥プイッ。 |
真: |
あれ。 そっぽ向いちゃった。 |
成: |
そりゃまあ。オジさんのプライド、 まるつぶれだからなあ。 |
真: | ね、オジさんオジさん。 |
五: |
ぽっぽっぽお! ハトぽっぽお ‥‥‥‥とぉ! |
真: | お話、聞かせてくださいよー。 |
五: |
オニはーそとォ! 福はーうちィ! |
真: |
いたたたたたたたたた。 ‥‥あたしもマメ投げられた。 |
成: | やれやれ。オニあつかいか‥‥。 |
成: |
あの。‥‥今日の法廷は、 すみませんでした。 |
五: |
フン! ケーベツするがいいさ! どうせワシは、アレさ! 女給さんのおシリに見とれて ロクにカオもおぼえていない、 すけべいなクソ野郎なのさ! フケツでおぞましい初老の怪物さ! |
成: | い、いや、そんな‥‥ |
五: |
いいか! アンタがなんと言おうと あの女給は入れたんだよ! ワカゾウのコーシーに、 なんぞ、白い粉をッ! |
真: | そうなんですか‥‥ |
五: |
それに! あのワカゾウは、 イヤホンをブチこんでたんだよ! イカれたメガネをかけた耳にッ! |
真: | うう‥‥ゴメンなさい‥‥。 |
五: |
たしかに、花ビンのコトはアレさ。 スットコチョイだったさ! でも‥‥ワシは‥‥ワシはぁぁ! |
成: | ま、まあまあ、落ちついて‥‥。 |
五: | うるさいワ! これでも食らえィ! |
真: |
あの‥‥。オジさんて、 職人さんなんですよね! |
五: |
フン! このセチがらい世の中、 ワシの居場所なんか、ないワ! |
真: | そ、そんなコトは‥‥ |
五: |
ワシの家は代々、職人だった! そりゃもう、江戸時代からだ! ワカるか! 生まれた瞬間から 紋章上絵師だった、ワシのキモチ。 |
真: |
‥‥あたしも似たようなモン なんだけどな。 |
五: |
ワシだって‥‥ワシだって‥‥ 冷や汗でグズグズになったジイサン のハナっツラに指をこすりつけて、 耳もとで”異議あり!”と 叫びたおしてみたかったワ! |
真: |
‥‥オジさん、弁護士に なりたかったんだね‥‥。 |
成: |
どうでもいいけど、 グチっぽくなってきたな。 |
五: |
ワシのグチは、ツナミのごとく 押しよせ、さかまき、飲みこむぞ! |
成: |
(‥‥どうしよう。 長くなりそうだな。‥‥グチ) |
成: |
(とりあえず、 聞いてみるか‥‥グチ) お仕事は、ないんですか? 職人さんの。 |
五: |
あたりまえだ! ワシなんぞ、 使いっ走りがお似あいなのさ! |
真: | ”使いっ走り”‥‥? |
五: |
ダレもカレも、 年寄りをコキ使いおって! ”ジイちゃん、とうふ買ってきて” ”イヌのさんぽ、おねがい” ”ハトにエサ、やってきて”‥‥ ワシは町の便利屋さんかいッ! |
真: | はああ‥‥。 |
五: |
”とうふ買ってきて”は リカイできる。しかし‥‥ ”ハトにエサやってきて” ‥‥これは、なんだ! アキラカに”どこか行ってきて” ってコトじゃないかッ! ああ、そうさ! ワシはジャマモノなのさ! ‥‥ウチでも、メシ屋でもな! |
成: |
そ、そんなことは‥‥ (ちょっと待てよ‥‥。 今、なんて言った‥‥? ウチでも‥‥ ”メシ屋でも”‥‥?) メシ屋‥‥‥吐麗美庵で、 たのまれたコトがあるんですか? その‥‥”使いっ走り”を。 |
五: |
ああ、そうともさ! あの ワカゾウが、ぶっ倒れた日にな! |
成: |
な‥‥ なんですってェェェッ! |
成: |
事件があった日‥‥吐麗美庵で 何をたのまれたんですか? |
五: |
おお! よくぞ 聞いてくれたワ! ‥‥ワカゾウがぶっ倒れて、 ‥‥女給さんもぶっ倒れて、 ワシは花ビンをぶっ倒した。 アタマん中、まっ白だよ。もう。 そこに、あの店長がワシに 叫んだのさ。 |
本: |
”すみません! そこのヒト! ケーサツを呼んでくださいな!” |
五: |
自分で呼べよ、ケーサツぐらい! ‥‥と、今なら言える。 |
真: |
それで‥‥呼んだんですか? ケーサツ。 |
五: |
まあ‥‥とにかくワシ、 アタマん中、まっ白だったから。 |
成: |
警察への通報は‥‥ 携帯電話を使ったんですか? |
五: |
そんなハイカラなモノ、 持ってるワケがなかろうッ! 店のそとで、公衆電話を 探したワ、モチロン。 |
真: | ”探した”‥‥? |
五: |
なかなか見つからなくてな。 5分ぐらいムダにしちまった。 |
真: | ご、”5分”‥‥? |
成: |
じゃあ、その5分間、 吐麗美庵には‥‥? |
五: |
あの店長が、ひとりで 見張っとったんだろうな。 |
成: |
ど、どうして今日の法廷で 話してくれなかったんですか! |
五: |
話そうと思ったワイ! ‥‥だのに‥‥ アンタらがよってたかって、 ワシを放り出したではないかッ! |
裁: |
『‥‥はあ。 証人。ごくろうさまでした。』 |
五: |
『ままま、待っていただきたい! そ、そういうことであれば、その。 ‥‥あ、そうだ! なんなら、あの話を‥‥』 |
裁: |
『法廷係官! この証人をつまみ出しなさい。』 |
五: |
ワルいの、ワシじゃないモン! アンタらだモン! |
成: |
‥‥先にこっちを話してくれれば よかったのに‥‥ |
真: |
そんなにダイジなコトなの? オジさんが電話したこと。 |
成: |
(警察が到着するまでの、 空白の時間‥‥ 店内には、被害者と、 キゼツしたマコちゃんと‥‥ 彼女‥‥いや、彼だけが 残されていたコトになる!) オジさんは‥‥追い払われたの かもしれない。 |
真: | ”追い払われた”‥‥? |
成: |
警察が来るまで、 店にいてもらいたくなかった‥‥ |
真: | あ‥‥! |
五: |
ああ、そうさ! どうせワシは ジャマモノだともさ! ワシなんか、ハトにまみれて マメ食ってりゃいいのさ! |
成: |
(とにかく、ハナシを聞いた ほうがいいな‥‥ マコちゃんと‥‥ あの、店長に!) |
留置所 面会室 | |
マ: | あッ、成歩堂さん! |
成: |
マコちゃん‥‥。 取り調べ、終わったんだね。 |
マ: |
もおスズキ、 メチャカンドーッス! 今日の裁判のコト、テツヤで マコ日記に書きまくるッス! |
真: |
今日はアブなかったねー、 マコちゃん! |
マ: |
いやー。あのオジさん、イイ やられっぷりだったッス。 |
成: |
メチャクチャだったからね。 ‥‥あの証言は。 |
マ: |
でも‥‥、メチャクチャなのは このスズキもいっしょッス。 |
真: | え‥‥ |
マ: |
あまりにも、食いちがってる コトが多すぎるッス。 みんなが”見た”事件と、 アタシのキオク‥‥。 |
成: | (”キオク”‥‥か‥‥) |
真: |
マコちゃん‥‥ さっき言ってたよね。 みんなの見たコトと キオクが食いちがう‥‥って。 |
マ: |
はいッ! いろいろあるケド‥‥ ヤッパリ、いちばんデッカイのは、 ‥‥被害者のテーブルにいた、 <<もう1人の男>>ッス。 コーヒーに、何か入れたのは‥‥ あのオトコでした! |
成: |
(今日の法廷では、五十嵐さんが 証言していたな‥‥ ”白いコナを入れたのは ウエイトレスだった”‥‥って) |
真: |
消えた”もう1人のオトコ” ‥‥か。 |
マ: |
”消えた”といえば、もう1つ。 CDがあるッス。 サインペンでバンドの名前が 書いてあった‥‥ |
真: | ああ。<<クリキントン>>ね。 |
成: |
<<クリーニング・ボンバー>>だよ。 スポーツ新聞にも書いてあったろ。 |
マ: |
‥‥そのCDも、現場からは 見つからなかったッス。 |
成: |
(たしか、被害者の薬袋の中身も 行方不明だったっけな‥‥) |
真: |
うううう‥‥ ワケわかんないよ、もう。 |
成: |
岡 高夫が倒れたとき‥‥ たしか、キゼツしたんだよね? |
マ: |
お恥ずかしいハナシです。 元・婦人警官としては。 気がついたときには、 もう店には警察官があふれていて。 ‥‥さっさとタイホされたッス。 |
成: |
事件が起こってから、 警察が来るまでのあいだ‥‥ 吐麗美庵で何が起こっても、 きみにはわからなかったワケだね? |
マ: |
そ、そッスけど。 どうしたッスか? 成歩堂さん。 |
成: |
事件を目撃したオジさん‥‥ 彼は、店を追い出されてるんだ。 |
マ: | お、追い出された? |
真: |
店長さんに<<警察を呼んでくれ>> って、たのまれたんだって。 |
成: |
そう。‥‥そしてきみは、 キゼツしていた。 ‥‥吐麗美庵には、本土坊 薫しか いなかったことになる。 |
マ: |
え‥‥! ま、まさか‥‥店長が、 アタシに‥‥ツミを‥‥? |
成: |
状況を考えると‥‥ あの店長が事件に無関係だとは、 考えにくいんじゃないかな。 |
マ: |
うううう‥‥かい主に噛まれた イヌみたいなキモチッス‥‥。 ‥‥そのハナシ‥‥ ホントなんですか? 成歩堂さん。 |
成: |
さっき、オジさん本人に 聞いてきたばっかりだからね。 |
マ: |
‥‥どうも、しっくり来ないッス。 その、オジさんのハナシ‥‥。 |
成: |
(マコちゃん、 考えこんでるな‥‥) |
真: |
オジさんのコト‥‥詳しく 聞いてみたほうがいいのかなあ。 |
マ: |
いやー、今日の法廷は スッキリしたッス! ずいぶん長いコト、法廷マニアを やってるッスが‥‥、 あんなにズルズルになった証人、 ひさしぶりッス。 |
真: |
‥‥ベツに、マメのオジさんが 悪いワケじゃないんだけどね。 |
マ: |
ただ‥‥ミョーに スッキリしないッス。 |
真: |
え。‥‥でも、さっきは ”スッキリした”って‥‥ |
成: |
‥‥マコちゃん。 気になることがあったら、 なんでも言ってみてくれないかな。 五十嵐さんと‥‥ 彼の証言について。 |
マ: |
了解ッス! スズキ、 ゼンブ吐きだしてみるッス! |
成: |
何か、気になることでも あるの? 五十嵐さんのこと。 |
マ: |
じつは‥‥あるッス。 そもそも‥‥あのオジさんが 証言してるコト自体が、ちょっと。 |
真: | ‥‥? どういうコト? |
マ: |
スズキが、あのテーブルに コーヒーを運んだとき‥‥ 店内には、たしかに お客さんがもう1人、いたッス。 |
成: |
(それが、五十嵐さんだった、 ってワケだよな‥‥) |
マ: |
でも、それは‥‥ オジさんじゃなかったッス。 |
真: | おジイさんだった、とか! |
マ: |
‥‥そんなササイな ちがいじゃないッス。 たしか‥‥オンナのヒト、 だったような。 |
成: | お、オンナ‥‥‥? |
真: | ホントなの! マコちゃん! |
マ: |
ううん‥‥。ちょっと、 自信はないッスけど‥‥。 |
真: |
で! で! どんなヒトだったの? その、オンナのヒト! |
マ: |
うう‥‥たしか、ちょっと ジメッとしていて‥‥ イミありげに”ククッ‥‥”と 笑っていたような。 |
成: | ”ジメッと”‥‥? |
真: | ”ククッ”と‥‥? |
成: |
(最近どこかで、そんなオンナの ヒトを、見かけたような‥‥) |
成: | そうだ! いいものがあるよ。 |
マ: | えッ! なんスか、なんスか! |
成: |
さし入れの、おベントウ。 ‥‥ホラ。 |
マ: |
うわあ‥‥ソーゼツな ベントウッスねー。 でも、うれしいッス! ‥‥あの。 成歩堂さんが、わざわざ? |
真: |
ちがうよ。イトノコさんに 決まってるでしょ! |
マ: | イトノコセンパイ‥‥? |
真: |
マコちゃんのコトをシンパイして、 いっしょうけんめい作ったんだよ! |
マ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ザンネンッスけど‥‥ 留置所で、さし入れは禁止ッス! |
成: |
ま、まあ‥‥そんな、 カタいコト言わずに‥‥ |
マ: |
キソクはキソクッス。 守らなければ、タイホするッス。 |
成: |
(元・婦人警官のウエイトレスに 言われると、さすがにコワいな) |
マ: |
それに‥‥‥ スズキ、ウインナーは 大ッキライッス! |
真: | ‥‥そう、なんだ‥‥ |
マ: | 真宵さんにあげるッス! |
真: | で、でも‥‥ |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ そうだな。悪くなるまえに 食べちゃおうか。 |
真: |
え! ‥‥いいのかなあ。 |
真宵ちゃんと食べた。 | |
マ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あの。オイシイッスか? |
成: |
うん。 ウインナーは大好きだからね。 |
マ: | そ、それはよかったッス! |