成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
須々木 マコ…橙 | |
芝九蔵 虎之介…紫 | |
鹿羽 うらみ…灰 | |
本土坊 薫…桃 | |
五十嵐 将兵…紺 | |
小池 けいこ…黄 |
地方裁判所 被告人第1控え室 | |
マ: |
おはよーございますッ! 成歩堂さん! |
真: | おはよう、マコちゃん! |
マ: |
あの‥‥今日は、どうッスか? きのうの法廷、ナゾだらけで 終わっちゃったッスけど‥‥ |
成: |
(そういえば‥‥ その”ナゾ”に関しては、 なんにもわかってないな‥‥) |
真: |
だいじょうぶだよね、 なるほどくん? |
成: |
え? ‥‥あー、うん。 もちろんだよ。 |
マ: |
あ! 今ちょっとだけ、 アサッテの方を見たッス! |
成: |
ちち、ちがうよ! ‥‥明るい明日を見すえただけだ。 |
マ: | うううう‥‥ |
真: |
そろそろ時間だよ、マコちゃん。 被告席に行かないと。 |
マ: |
じゃあ、よろしくおねがい しますね。成歩堂さん! |
コラァッ! アンタ! | |
成: | あ‥‥イトノコさん‥‥ |
糸: |
ダメじゃないッスか! マコクンを不安にさせちゃあ! |
成: |
なな、なんで 知ってるんですか? |
糸: |
ドアのカゲから、 そっと見ていたッス。 |
成: | ‥‥‥はあ。 |
糸: |
そんな、なさけないカオしちゃ ダメッス! そんなアンタには、これッス! |
真: |
イトノコさんも始めたんですか? ‥‥アロマテラピー。 |
糸: |
いやいや! そうじゃないッス! ‥‥おぼえてないッスか? コレ。 |
成: |
(そういえば‥‥アロマテラピーの ボトルじゃないな‥‥) |
糸: |
2日前、アンタが吐麗美庵の キッチンで見つけた小ビンッス! |
真: |
『うわ、すごい! 小さなビンがギッシリ。』 |
成: |
『アロマテラピーのオイルか。 床の上にまで、あふれてるぞ‥‥』 |
真: |
『‥‥あれ? ‥‥このビンだけ、 なんかちがうよ。』 |
成: |
『そうだね‥‥。 ラベルもないし。』 |
真: | 『それに‥‥ニオイもしないよ。』 |
糸: |
このビンの中身の分析結果が やっと出たッス! |
真: |
あ! もしかして、あれですか! モードク‥‥! |
糸: |
ザンネンながら、 ゼンゼンちがうッス。 コレは‥‥クスリだったッス。 |
真: | くすり‥‥? |
糸: | 耳にたらして使う、外用薬ッス。 |
成: |
”耳に”‥‥ってコトは、 もしかして‥‥? |
糸: |
コマクが破れた被害者・岡 高夫に 処方されたクスリッス! |
成: |
(岡 高夫のクスリが‥‥ キッチンで発見された‥‥?) |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
‥‥あの。イトノコ刑事? <<正体不明の指紋>>というのは‥‥ |
糸: |
鑑識の手ちがいで、ビンの中身の ブンセキしかしてなかったッス。 あと1時間もあれば、 指紋の検査もできたッスが‥‥ |
成: |
(ううん‥‥証拠としては、 ヨワい気もするな‥‥) |
糸: |
さ。さ。時間ッス! 今日こそ、キメるッスよ! |
成: |
(‥‥今日の法廷‥‥ かならず、あのオトコを 引きずり出すんだ‥‥) |
地方裁判所 第4法廷 | |
裁: |
これより、須々木 マコの 法廷を開廷します。 |
成: | 弁護側、準備完了しております。 |
ゴ: |
こっちは‥‥ 閉廷の準備ができてるぜ。 |
裁: |
毎度、たのもしいかぎりです。 きのうの証人、五十嵐 将兵さんは こう証言しています。 被告人・須々木 マコが、被害者の コーヒーに粉末を入れた‥‥と。 ただ‥‥五十嵐さんの証言には、 いくつかモンダイがありました。 |
ゴ: |
カップの跡は、被害者が右手で コーヒーを飲んだことを示してる。 しかし‥‥証言では、被害者は 左手でコーヒーを飲んでいる‥‥ |
裁: |
さらに、五十嵐さんの 目撃証言によれば‥‥、 被害者は、聞こえるはずのない ラジオを聞いていました。 コマクが破れた左耳に、 イヤホンをつけて‥‥。 |
真: |
いやー、ホント。ムジュン だらけだねえ、こりゃ。 |
ゴ: |
クッ‥‥! いいコトを 教えてやるぜ、裁判長‥‥。 ‥‥地球は回り、オレたちも 回ってるんだぜ‥‥。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 今日もいきなり、 よくわからないのですが‥‥ |
ゴ: |
”きのうのナゾは、 今日もナゾ”‥‥ そんな考えかたは、もう お呼びじゃねえ、ってコトさ。 時代は、変わるッ! ‥‥そいつが、オレのルールだぜ。 |
裁: |
じゃあ‥‥あなたは! 見つけたというのですか! このムジュンの‥‥コタエを! |
ゴ: |
マメを食う老人は、マメとともに <<真実>>を投げていたのさ。 ‥‥そいつを、証明するぜ。 |
裁: |
それでは、最初の 証人を入廷させてください! |
ゴ: | ‥‥なんだ? アンタ。 |
本: |
ボンジュウル、みなさあん。 本土坊 カ・オ・ル。 シェフ、やってまあす。 |
裁: |
‥‥あの、シツレイですが、 証人はその‥‥女性、なのですか? |
本: |
オー・ラ・ラ‥‥ ワタシ、花も恥じらうオ・ト・コ。 |
裁: | ぐ‥‥ふううう‥‥。 |
ゴ: |
アンタ‥‥事件当時、吐麗美庵の キッチンにいた。 ‥‥マチガイ、ねえな? |
本: | ‥‥あなたとなら‥‥ |
ゴ: | ‥‥? |
本: | マチガイを起こしちゃうかも‥‥ |
ゴ: | クッ‥‥! |
成: |
(すげェ! まったく動じないぞ‥‥) |
裁: |
それでは、さっそく 証言をしていただきましょう。 事件が起こったとき‥‥ 吐麗美庵で、何があったか? |
本: | ウイ、ヴォロンティエ! |
本: |
『事件があったとき、お客さんは 2人っきり、だったわねえ。』(証言1) 『あの日‥‥実はウチ、インテリアの 改装工事をしてたのよォ。』(証言2) 『テーブルのあいだに、大きな カガミが置かれたりしたわぁ。』(証言3) 『あのオジさん、それを 見ちゃったんじゃないかしらねェ。』(証言4) 『カップの手に、イヤホンにメガネ。 ゼンブ、左右が逆だったんだから。』(証言5) |
成: |
か‥‥‥‥‥‥‥‥か。 カガミですってェェェッ! |
本: |
ウイ。グラン・ミロワール。 それは大きなカガミが、ねえ。 |
ゴ: |
‥‥これで、 立証できたワケ、だぜ。 ‥‥地球は回り、オレたちも 回っている‥‥ってコトが、な。 |
裁: |
ふむう‥‥。 コーヒーカップに、イヤホン‥‥ たしかに、右と左が”逆”である ものばかりですなあ。 |
成: | (そんな‥‥バカな!) |
裁: |
それでは、弁護人! 尋問をおねがいします! |
成: |
カップに、イヤホン‥‥ そして、メガネ、と。 ‥‥イガラシさんの証言を 思い出していただきましょう。 |
五: |
『ヤツは、メガネをかけたほうの耳に ラジオのイヤホンをハメとった! まちがいないぞ! ブチこんで やがったのさ。左の耳にな!』 |
成: |
この証言をまとめると‥‥ モノクルとイヤホンは、両方とも 左耳につけていたことになります。 そして、それがカガミに 写ったのならば‥‥ モノクルとイヤホンは‥‥ 右耳に見えたはずです。 |
本: |
トレ・ビアン! やればできるじゃない! |
成: |
しかし‥‥ここに大きな ムジュンが生まれるのです。 もしイガラシさんが、カガミに 写った被害者を見たのならば‥‥ なぜ、このモノクルだけが 左右、逆になっていなかったのか! |
裁: |
静粛に! 静粛に! ‥‥そのとおりです! この証人が目撃したのが、 カガミに写った姿ならば‥‥ 被害者は、右の耳に メガネをつけているハズです! |
ゴ: |
‥‥苦ェ。 アンタも早く、この味がわかる オトナになることだ。まるほどう。 |
成: | ど‥‥どういうことですか? |
ゴ: |
アンタは、この証人の ”性格”がわかってねえのさ。 |
裁: | セイカク‥‥ですか? |
ゴ: | コイツ‥‥おぼえてるだろう? |
成: |
<<花ビンを割っちゃって ごめんなさい>>‥‥ですか。 |
ゴ: |
そう‥‥あのジイさんには、 1つのクセがあるのさ。 <<印象に残ったコトほど、 カンちがいしてキオクする>>‥‥ この被害者のツラ‥‥ イチバン、目立つのはどこだ? |
裁: |
それはやはり、‥‥その <<ものくる>>でしょうな。 |
ゴ: |
そう‥‥。ジイさん、また やっちまったのさ。 <<モノクル>>が、あまりに 強く、印象に残った。だから‥‥ 『ワシはイヤホンといっしょに、 イカれたメガネも見たんだ! そうだよ! いっしょくたに ブチこんでんだ! 左耳にッ!』 クッ‥‥! ‥‥どうだ? まるほどう。 |
成: |
ぐ‥‥。 (ジイさんのモノマネか? 今の) |
真: |
モノマネ、じょうずだね。 ゴドー検事。 |
裁: |
そこまで! たしかに、きのうの証人は 早とちりの多いヒトでしたね。 |
真: |
せっかくのムジュンが <<早とちり>>あつかいされてるよ! |
ゴ: |
‥‥カガミはマメを食わねえ。 そして、ウソもつかねえのさ。 じゃあ‥‥ジッサイ、ジイさんが 見たカラクリは、なんだったのか? アンタは、そいつを知っている。 そいつを、話してみな。 ‥‥聞いてやるぜ。 |
本: |
ウイ。お店の上面図を見ながら 聞いてちょうだいな。 |
本: |
じゃ、みなさん。 用意はいいかしらあ? 『カガミは、テーブルの列を2つに わけるように置いてあったの。』(証言1) 『カガミに写った被害者を見ることが できる席は、ひとつしかないわね。』(証言2) 『それは、被害者のトナリよお。 そこが、オジさんの席だったのね!』(証言3) 『事件が起こって、さすがにジャマ だったから、カガミをどかしたの。』(証言4) 『でも、他のモノにはいっさい、 手を触れていないわあ。』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥。たしかに、今の説明に モンダイはないようです。 被害者のトナリの席なら、カガミに 写った姿を見ることができますね。 |
本: |
ワタシ、ツミ作りなオンナね。 オトコたちを、まどわせちゃって。 |
ゴ: |
シンパイいらねえさ。 まどわされたのは、そこで冷や汗を 流してるダレかさんだけ、だぜ。 |
成: | (くそお‥‥) |
裁: |
”カガミ以外のものには いっさい、手を触れていない” ‥‥まちがいありませんな? |
本: |
ヴォロンティエ! ‥‥モチロンよお。 |
裁: |
それでは、弁護人! 尋問をおねがいします! |
成: |
裁判長! 今の証言は‥‥ この証拠品とムジュンしています! |
裁: | これは‥‥現場写真ですか‥‥? |
成: |
ここには‥‥本来、”あるべきで ないもの”が写っているのです。 |
裁: | な‥‥なんですって! |
ゴ: |
”あるべきでないもの”同士、 ピンと来るモノがあるんだろうぜ。 |
裁: |
それでは、弁護人。 示していただきましょうか。 この写真に”あるべきでない もの”‥‥とは! |
成: |
モチロン、これです! ”あるべきでないもの”‥‥ |
裁: |
か‥‥花ビン、ですか‥‥? し、しかし‥‥いったい、 なんのカンケイが‥‥ |
成: |
‥‥裁判長。 このテーブルに、花ビンが あってはならないのです。 ‥‥この証拠と、アキラカに ムジュンしますからね! |
成: |
きのうの証言で ハッキリしたコトは、ひとつ。 イガラシさんは、自分の席の 花ビンを割った、ということです。 しかし! 被害者のトナリの テーブルには‥‥ このとおり、ちゃんと 花ビンはある! ‥‥つまり‥‥ イガラシさんの席は、被害者の トナリではなかったのです! |
ゴ: |
‥‥バカな! あり得ねえ! それ以外の席で、カガミに写った 被害者を見ることは不可能だぜ! |
成: | ‥‥そのとおり! |
ゴ: | ‥‥‥! |
成: |
結論は‥‥ただひとつ。 あの日、吐麗美庵に カガミなど存在しなかった! 本土坊さん。あなたの証言は まったくの大ウソです! |
本: | きゃああああああああああああッ! |
ゴ: |
‥‥割れた花ビンなんざ、 かたづけちまったんだろうぜ。 警察の連中が、現場を探して モタモタしているあいだになァ! |
成: |
ザンネンながら、 そうはいきません! 本土坊さんは、たしかに こう証言している! 『カガミ以外のものには 手を触れなかった』‥‥と! |
ゴ: |
う‥‥‥‥‥‥ クオオオオオオオオオオオオオッ! |
裁: | 証人! どうなのですかッ? |
本: | う‥‥ううううう‥‥ |
成: |
(やっぱり‥‥店内にカガミなんか なかったんだ!) |
裁: |
しかし‥‥そうなると、最初の ギモンに逆戻りです。 被害者はなぜ、聞こえないはずの 左の耳にイヤホンをつけていたか? |
ゴ: |
クッ‥‥! 人生は一度きり、真剣勝負だ。 <<逆戻り>>なんて、認めねえぜ。 カガミを否定するのなら‥‥ まるほどう。 ‥‥アンタに 答えてもらうとするぜ! あのジイさんが見たのは、 いったい、なんだったのか! |
成: |
(このナゾのコタエは‥‥ 真相に一歩、大きく近づく!) |
真: |
‥‥だいじょうぶなの? なるほどくん‥‥ |
成: |
この事件では‥‥ ”ムジュン”は、1つじゃない。 |
真: |
ど、どういうコト? ”1つじゃない”って‥‥ |
成: |
マコちゃんが見たことを、 思い出してみるんだ。 ”被害者のテーブルには、 もうひとりの客がいた” ”被害者のテーブルには、 サンプルのCDが置いてあった” ‥‥ことごとく、五十嵐さんの 証言と食いちがっている。 (なぜ、こんなことが起こったか? コタエは、1つしかあり得ない) |
裁: |
それでは、弁護人。 あなたのコタエを聞きましょう。 |
成: |
‥‥わかりました。 イガラシさんが見た、”被害者”の ムジュン。‥‥その原因は‥‥! |
成: |
この事件は‥‥フシギなほどに 食いちがいが多い。 それらのムジュンを 解決するコタエは、たった1つ。 |
裁: | そ、それは‥‥? |
成: |
五十嵐さんの目撃した”事件”と、 被告人が体験した”事件”‥‥ この2つは、まったく 別のモノだったのです! |
ゴ: | な‥‥なんだと‥‥ |
成: |
イガラシさんの見た”被害者”は、 ”岡 高夫”ではなかった! その”フリ”をした別人‥‥ ニセモノだったのです! 当然、<<ニセモノ>>のコマクは 破れていなかった! だから! 左耳にイヤホンを つけてしまったのです! |
ゴ: | ぶぐほほおおおおッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! 静まらなければ、退廷を命じます! |
ゴ: |
カンカンうるせえぜ、ジイさん。 アンタが退廷しな! |
裁: | ええええええッ! |
ゴ: |
ジイさんが見たのは‥‥ ニセの事件だった、ってのか? |
成: |
‥‥そうです。 だれかが岡 高夫になりすまして、 コーヒーで倒れるシバイをした。 もちろん、五十嵐 将兵に 見せるために! |
ゴ: |
バカげてるぜ! いったい‥‥なんのためだ! |
成: |
決まってるじゃないですか。 五十嵐さんの証言で、最も 重要なポイントは‥‥ |
五: |
『女給さんがコーヒーを運んできた のだが‥‥中に、何か入れたのだ! 女給さんの正体こそ、被告席の 婦女子。よぉく、おぼえておる!』 |
裁: | ま‥‥まさか‥‥ |
成: |
イガラシさんに、ニセモノの <<事件>>を見せた理由は、1つ! 被告人・須々木 マコの <<犯行の瞬間>>を見せるためです! |
ゴ: |
その<<須々木 マコ>>も ニセモノだった、ってワケかい‥‥ たしかに、店内に他の客は いなかった。‥‥しかし‥‥ シェフはいた! コイツが気づかないハズはねえ。 |
裁: |
そ‥‥そのとおりです! 証人! いかがですか! 店内で、そんなシバイが 行われていたのなら‥‥ あなたは、知っていたはずです! |
本: |
それは‥‥アレ。 ムズカシイ問題ね‥‥ |
成: |
いや、カンタンなコトです。 ‥‥証言してくれればいい。 あの日、吐麗美庵の店内に <<ニセモノ>>がいたかどうか‥‥? その証言で、すべてが ハッキリするでしょう。 |
裁: |
弁護人の要請を受けましょう。 証人に、証言を命じます! 事件当日の、店内の状況を ‥‥細かく、セイカクに! |
本: | ‥‥う‥‥‥‥ウイ。 |