第4話『始まりの逆転』第1回法廷(その1)

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成歩堂 龍一…黒
綾里 千尋…赤
神乃木 荘龍…薄橙
御剣 怜侍…茶
裁判官…黄
無久井 里子…紫
尾並田 美散…緑
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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その子を‥‥人質をはなしなさい!

ダマれ! ち、近寄ると‥‥
ヒトジチ、殺すッ!

‥‥ザンネンだったわね。
あなたは、ここまでよ‥‥。

パァァァン!


‥‥ぼくは今、ある裁判の記録を
目の前にしている。
ぼくの師匠、千尋さんが
初めて法廷に立ったときの記録だ。
‥‥千尋さんが初めて弁護したのは
脱走した死刑囚だった。
それは、ぼくが千尋さんに出会う
さらに1年前のことだ‥‥


〜6年前〜
綾里千尋・初めての法廷


2月16日 午前9時24分
地方裁判所 被告人第4控え室

千: (ううう‥‥もうダメ。
キンチョーで死んじゃいそう。
やっぱり、やめて
おけばよかったかな‥‥)
きゃああああああッ!
‥‥あ。お、おはようございます!
(ビビっちゃダメよ、千尋!)
?: う。オレ。やってない!
ダレも殺してない!
千: (尾並田 美散(おなみだみちる)
‥‥私の、初めての依頼人。
5年前、死刑を宣告されて
服役中だった‥‥脱獄囚)
尾: ‥‥‥‥‥‥‥‥
千: (とにかく、ここは軽い世間話ね。
リラックスさせてあげなくちゃ)
‥‥あ、あの。
どうしてダツゴクしたんですか?
尾: う。う。うがー!
千: きゃああ!
ゴメンなさいゴメンなさい!
尾: ‥‥うう。オレ、やってない!
なんにもやってない!
オレ。ウソ、つかない!
ダツゴクなんて、知らない!
千: え‥‥
でも‥‥。現におととい、
再逮捕されたじゃないですか。
尾: ‥‥‥‥う。
ゴメン。ちょっと、ウソついた。
千: (うううう‥‥)
尾: でも! オレ、やってない!
ダレも‥‥殺してない!
千: あの。シツレイですけど‥‥
死刑囚さん、なんですよね?
尾: う。う。うがー!
千: きゃああ!
ゴメンなさいゴメンなさい!
尾: ‥‥死刑判決、今から5年前。
オレ、ハメられた! ダマされた!
あのオンナ、ウソの証言、した。
‥‥だから、死刑判決を‥‥!
オレ‥‥殺してない!
そんなコト、できるワケない。
千: (‥‥おととい、囚人護送車が
事故を起こした際、逃走‥‥
そして、約8時間後‥‥
彼が再逮捕されるまでに、
1人の婦人警官が殺害された。
この死刑囚‥‥尾並田 美散に
殺害されたと考えられている)
あの‥‥。脱走して、この
婦人警官と会ったんですか?
尾: ‥‥‥‥‥‥‥‥
会った。‥‥オレ、そのために
護送車、逃げ出した。
千: (やっぱり‥‥被害者と会ったのは
まちがいないのね)
尾: でも! オレ、殺してない!
別れたとき‥‥あのオンナ、
生きてた! これ、ホント!
千: (信じていいんですね?
尾並田さん‥‥)
?: クッ‥‥!
被告人をニラんだって、
真相は見えやしねえさ‥‥。
千: あ‥‥せ、センパイ!
?: 裁きの庭に放りこまれた
迷子のコネコちゃんを見に来たぜ。
‥‥いっしょに
遊んでやろうかと思ってな。
千: ‥‥あの。星影先生は‥‥?
?: クッ‥‥! おジイちゃんは、
まだベッドの中だろうぜ。
カラのボトルを抱いて、
バッカスと語らってるはずさ。
ご不満かな? この神乃木 荘龍
(かみのぎそうりゅう)じゃあ。
千: そ、そんな‥‥!
星影法律事務所・ナンバーワンの
センパイが、私なんかのために‥‥
神: いやいや。
今朝のナンバーワンは、アンタさ。
まったく、大したクソ度胸だぜ。
初めての依頼人が‥‥
脱獄した死刑囚なんてなァ。
千: わ‥‥私も、そう思います。
(もう、逃げ出したい気分だわ)
神: クッ‥‥! 安心しな。
さっき、聞いたんだが‥‥
今日の検事さんも‥‥
どうやら、新人らしいぜ。
千: そ、そうなんですか!
神: ‥‥ただし。
どこかのだれかさんとちがって、
検事局始まって以来の
”天才”らしいけどな‥‥。
千: (”テンサイ”‥‥?)
神: さあ、そろそろ時間だな、
コネコちゃん。
イキにやろうぜ‥‥イキによォ!
千: (この世で最も孤独な場所。
それはきっと、死刑囚の独房。
‥‥私の依頼人は、
そこから必死に逃げてきた。
弁護士はみんな、彼を見捨てた。
でも‥‥私にはできなかった。
彼の目からあふれ出すナミダと、
そのまっすぐなコトバ‥‥
そこに、まぎれもない
<<真実>>を見た気がしたから)


同日 午前10時
地方裁判所 第4法廷

裁: これより、尾並田 美散の法廷を
しめやかに開廷いたしましょう。
千: 弁護側、準備完了しています。
?: 検察側‥‥もとより。
裁: 本日の法廷は、検察側・弁護側とも
新人と聞いているのですが‥‥?
千: は、は、はい。綾里 千尋です。
御: 御剣 怜侍(みつるぎれいじ)
‥‥と申す。
裁: あなたが‥‥
ウワサの御剣検事くんですか。
最年少で検事になった、という。
御: 20才‥‥だ。
神: どうやら‥‥コネコちゃんは
ウワサになってないようだな。
千: (負けちゃダメよ、千尋。
年下の男のコなんかに!)
御: ‥‥フッ。
裁: 若ければイイというものではない。
私はどうかと思いますがね。
‥‥さて。今回の被告人は、
現在服役中の死刑囚です。
2日前、護送車から脱走したとか。
御: そのとおり。
神: この法廷で裁かれるのは、
脱獄の罪じゃねえ。
被告人が逃走した日に
殺害された、婦人警官‥‥
千: その死の責任が、尾並田さんに
あるのか、どうか‥‥?
神: そういうコトだ‥‥コネコちゃん。
裁: それでは、御剣検事くん。
しめやかに冒頭弁論を‥‥。
御: ‥‥今から、5年前。
被告人・尾並田 美散は
この法廷で、死刑判決を受けた。
罪状は、営利誘拐および‥‥殺人。
被告人が橋の上から突きおとした
少女は、当時14才だった。
裁: たいへん、イタましい事件ですね。
私も、よくおぼえています。
裁判は、決定的な証拠がなかった
ため、ずいぶん長びいたとか。
御: ‥‥さよう。ケッキョク
決め手になったのは‥‥
ある”目撃証言”だった。
千: 目撃証言‥‥
御: たった1人で誘拐犯と対決した
婦人警官・美柳 勇希。
彼女は、その場で尾並田を逮捕。
のちに法廷でハッキリ証言した。
『尾並田は、ジャマになった人質の
少女を、川に投げ落とした』と。
吊り橋の下を流れる<<吾童川>>は、
その水量と急流で知られている。
のみこまれた死体は、ほとんど
発見されることがないという‥‥
千: (その証言が決め手になって、
死刑判決を受けたワケね‥‥)
裁: もしかして‥‥その
”婦人警官”というのが?
御: さよう。2日前、殺害された
今回の被害者‥‥
美柳 勇希(みやなぎゆうき)
巡査部長、というわけだ。
裁: ぬうう‥‥。
彼女の証言のおかげで死刑判決を
受けた囚人が、2日前に脱獄した。
その目的は1つ。自分を死刑にした
婦人警官への”復讐”‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥む。
今‥‥! 私の中で、完全に
<<真相>>が見えたようです。
千:え。
裁: ぬうう‥‥。
これはもう、キマリでしょう。
有罪、というコトで。

(綾里千尋「異議あり!」)
千: ちょちょ、
ちょっと待ってください!
ちゃんと、証言を聞いてから
決めてくださいっ!
裁: ぬうう‥‥。
若さにまかせた、悪あがき。
私はどうかと思いますがね。
御: ‥‥若さというのは、
ときに悲しいモノなのだ。
千: (‥‥あんた、
私より年下じゃないの!)
裁: それでは、御剣検事くん。
しめやかに証人を呼んでください。
御: ‥‥初動捜査を担当した
刑事を入廷させていただこう。

御: ‥‥証人。名前と職業を。
糸: 自分の名前は糸鋸 圭介。所轄署の
殺人事件捜査担当のけ、刑事ッス!
半年前より、ついに! やっと!
念願の刑事課に配属されたッス!
千: だれもそんなコト、聞いてません。
糸: なんスとォ! 刑事になるのが
どんなにタイヘンか‥‥‥‥‥‥‥
千: な、なんですか?
糸: き‥‥キレイッス‥‥
千:え。
糸: ムネのあたりが、
”キュン”となったッス。
御: ‥‥刑事。シゴトをしたまえ。
さもないと‥‥
胃のあたりが”キュン”となる
処分を下すコトになるが。
糸: むぐ。すす、すまねッス。
裁: ‥‥それでは、刑事くん。
事件の説明をおねがいします。
糸: はッ! リョーカイッス!
被害者は美柳 勇希巡査部長。
ベテランの女刑事ッス。
死因は、背中に刺された
ナイフによる、失血死ッス。
裁: それらの情報は、
解剖記録にも書かれていますね。
事件について、もっと詳しく
聞かせていただきたい。
糸: はッ! リョーカイッス!
では、上面図を見ていただくッス。
これは、現場となった吊り橋、
<<おぼろ橋>>の見取り図ッス。
橋の下を流れているのが、
かの急流<<吾童川>>ッス。
犯人と被害者は、
吊り橋の上で会ったッス。
被害者の背中をナイフで刺して殺害
した犯人は、死体を運び去り‥‥、
クルマで逃亡したところを
検問中の警察官に逮捕されたッス。
裁: ぬうう‥‥なるほど。
よくわかりました。

<<おぼろ橋の上面図>>のデータを
法廷記録にファイルした。
裁: ‥‥橋の上に、被害者の
血痕でも残っていたのですかな?
糸: 被害者の美柳巡査部長は、
厚手のコートを着ていたッス。
ザンネンながら、おぼろ橋には
なんの痕跡もなかったッス。
裁: ぬううう‥‥。
私は、”スイソク”という
コトバが大キライです。
橋に痕跡がない以上、
2人がそこで会った証拠はない!
御: ‥‥裁判長。
証言を聞いていただければ、
ナットクしていただけるだろう。
2人はあの日、あの橋の上で
たしかに会った、と‥‥。
裁: ぬううう‥‥。
この私に、指をつきつけるタイド。
どうかと思いますがね!
それでは、刑事くん。
証言を命じます!
糸: は‥‥ハッ!
千: (いよいよ始まるわ‥‥千尋!)
神: いいか‥‥よおく耳をすませ、
コネコちゃん。
油断すると‥‥のまれちゃうぜ。
法廷の神サマに‥‥!

(事件のあらまし)
糸: 『美柳刑事は事件当日、ナニモノかに
電話で呼び出されたッス。』(証言1)
『彼女は指定された時間におぼろ橋へ
行き、そこで犯人に会ったッス。』(証言2)
『そして‥‥彼女は、ムザンにも
殺害されてしまったッス。』(証言3)
『犯人は、死体をクルマのトランクに
詰めこんで、逃げようとしたッス。』(証言4)
『山のふもとに展開された検問で、
尾並田は逮捕されたッス。』(証言5)
裁: ぬううう‥‥。
たしかに、おぼろ橋の重要性は
ハッキリしたようです。
御: ‥‥当然。
裁: それでは、弁護人。
しめやかに尋問をおねがいします。
千: は、はいッ!
じじ、じんもん‥‥ですよねっ!
神: おいおい‥‥大丈夫かい、
コネコちゃん。
あんまり震えると、カップに
さざ波が打ち寄せちゃうぜ。
千: ふふ、震えてなんか、いません!
むむむむ、武者ぶるいですッ!
神: 法廷はタフな戦場だぜ。
特に、初心者さんには‥‥なァ。
千: し、シンパイいりません!
だって‥‥
犯人だって証人だって、
みーんな初心者じゃないですか!
神: クッ‥‥!
ちげェねえぜ‥‥。
まずは、お手並み拝見、と行くぜ
‥‥コネコちゃん。
千: (だ、大丈夫よ、千尋!
法廷の作法なら、ゆうべビデオで
バッチリ、勉強したじゃない!)

(「証言1」をゆさぶる)
千: ”ナニモノか”‥‥ということは、
正体はわかってないんですよね!
糸: ザンネンでしたッス!
千:え‥‥。
糸: 美柳刑事を呼びだしたのは、
被告人・尾並田だったッス!
裁: な、なんとォォッ!
被告人が‥‥被害者に電話を!
糸: 美柳巡査部長は、ナニゴトも
キチンとするヒトだったッス。
尾並田からの電話について、
キチンとメモを残していたッス。
千: め、メモ‥‥?
糸: 被害者のデスクに残されていた、
ゴクヒのメモッス。

証拠品<<被害者のメモ>>のデータを
法廷記録にファイルした。
裁: ぬうううう‥‥。
このメモによると、たしかに
被害者を橋に呼びだしたのは‥‥
被告人にまちがいない
ようですな!
千: うう‥‥ッ!
(目を通したほうがよさそうね)
神: クッ‥‥! 裁判長のヤツ、
かなりココロが動いてるぜ。
アンタ‥‥! ヘタなツッコミは
イノチ取り、だぜ‥‥。
千: (あの刑事さんのせいよ!
”ナニモノか”なんて言うから)
糸: あ! あ!
そんなカオしちゃダメッス!
自分は、あの若手検事に言われて、
そう証言しただけッスから!
千: (ワナ‥‥というワケ‥‥
‥‥かわいいカオして、
ワリとやるわね‥‥)
御:フッ‥‥

(「証言4」をゆさぶる)
千: 尾並田さん‥‥クルマを
用意してたんですか?
糸: 現場の吊り橋は、
山奥にあるッスから‥‥
2人とも、現場まで
クルマを使っているッス。
裁: なんと! 被告人は、
自動車を持っていたのですか?
糸: ‥‥いやいや。
モチロン、盗難車ッス。
信号待ちをしていた若いカップルの
クルマを、取りあげたッス。
裁: ヒトのクルマを盗むとは‥‥
私はどうかと思いますね。
千: (他に”どうかと思う”
部分はないのかしら‥‥)
糸: これが、その盗難車の
後部トランクの写真ッス。
‥‥写っているのは、
モチロン美柳 勇希ッス。
裁: うわ! これは‥‥
死んでますねえ‥‥。

証拠品<<現場写真>>のデータを
法廷記録にファイルした。
千: 被害者は‥‥たしか、
背中を刺されたんですよね?
糸:そッス。
神: クッ‥‥!
‥‥オトコは常に、
背中を狙われているもんだぜ‥‥
千: (亡くなったの、
女性なんだけどな‥‥)
糸: この写真では見えないッスが‥‥
被害者の背中には、ちゃーんと
ナイフが刺さっていたッス。
裁: ‥‥死体が発見された状況は
とても重要です。
刑事くん。現場に、何か
おかしな点はなかったのですか?
糸: 『後部トランクの写真ッス。
ヘンなトコロは見あたらないッス!』(証言6)

(「証言6」に「被害者のメモ」をつきつける)
千: ‥‥証人っ!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
糸: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
御: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
裁: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
な、なんですか! この、
いたたまれないキンチョー感は!
千: す、すみません! アタマの中、
まっ白になっちゃって。
‥‥ヒトさまに指をつきつけるの、
初めてなものですから‥‥
裁: ぬうううう‥‥。
ちゃんと、練習しておきなさいッ!
まったく‥‥
私はどうかと思いますね!
神: クッ‥‥! コネコちゃん。
コーヒーキャンデー、なめるかい?
千: キャンデー?
神: ‥‥ホンモノのコーヒーは、
アンタには早すぎるからな。
千: (くぅぅ‥‥このクヤシサを
たたきつけてやるの、千尋!)
‥‥こらっ、刑事さんっ!
糸: は、はいッスッ!
千: この写真‥‥
”ヘンなトコロはない”
‥‥そう言いましたね?
糸: い、言っちまったッスッ!
千: しかし‥‥被害者が残した、
このメモをよく読みなさいっ!
糸: め、めもめも‥‥
千: はっきり、こう書いてあります。
<<目印に、白のマフラー用意>>‥‥
おそらく、被害者の
カオを忘れていたのでしょう。
糸: あ‥‥ああッ‥‥!
千: そのマフラー‥‥
いったい、どこに消えたのかしら?
‥‥この写真には
写っていないようですけど‥‥
糸: そのぉ‥‥トランクからは
見つからなかったッス。
千: ダメじゃないの!
ちゃんと探さなきゃ!
糸: むぐわああああ‥‥ッス!

(ざわめきが起こる)
裁: 犯人から指定された以上‥‥
彼女はマフラーをつけていたはず!
‥‥そのあたり、いかがですかッ!
御剣検事くんッ!
御: ふぅ‥‥やれやれ。
弁護側には、よほど
材料がないと見える‥‥
千:‥‥!
御: お探しのマフラーというのは‥‥
これのこと、だろうか。
千: あ‥‥っ!
糸: ど、どこにあったッス!
御: ‥‥現場の吊り橋の上だ。
私が、まっ先に調べた。
糸: な‥‥なんで自分にも
教えてくれなかったッスか!
御: ‥‥証拠品は、自分のカバンに
しまうことにしている。
私の知るかぎり、
イチバン安全な場所だ。
神: クッ‥‥! あのボウヤ‥‥、
‥‥キチンと、わかってやがるぜ。
御: 被害者のメモとちがって、
<<白>>のマフラーではないが‥‥
おそらく、近い色で
代用したのだろう。
裁: ぬうううう‥‥。
かなりドロでヨゴれています。
御: ムリもない。‥‥事件当時、
吾童山中は小雨がふっていた。
千: (あの検事さん‥‥ワザと今まで
かくしていたのね‥‥!)
裁: そのマフラー、証拠として
しめやかに受理しましょう。

証拠品<<マフラー>>のデータを
法廷記録にファイルした。
御: それでは‥‥弁護人が
大きくスベったところで、
次の証言にうつりたい。
よろしいかな? 弁護士クン。
千: (このマフラー、ギュギュウと
巻きつけてやりたい‥‥)
御: その、ドロまみれのマフラーを
ふり回すまでもなく‥‥
尾並田 美散と美柳 勇希は、
おぼろ橋でジッサイに会っている。
‥‥そして、橋の上で
いったい、何があったのか‥‥?
それを、カンペキに
立証してごらんに入れたい。
裁: それはおもしろい。
やってもらいましょうか。
千: (‥‥完全に
アイツのペースね‥‥)
神: 忘れるな。あのボウヤが
なんと呼ばれているか。
千: (‥‥天才、か‥‥)


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