成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
神乃木 荘龍…薄橙 | |
御剣 怜侍…茶 | |
裁判官…黄 | |
無久井 里子…紫 | |
尾並田 美散…緑 |
地方裁判所 被告人第4控え室 | |
千: | 尾並田さ |
尾: | うがーーーー! |
千: |
きゃああ! ゴメンなさいゴメンなさい! |
尾: |
オレ、モーレツにカンドー。 アンタ、恩人。 |
千: |
あと、1歩です! 彼女の犯行を立証できれば‥‥ |
神: |
‥‥そこに、もう1つのカベが 立ちふさがるだろうぜ。 |
千: | か、”カベ”‥‥ですか? |
神: |
無久井 里子が‥‥なぜ。 あの婦人警官を殺害したのか‥‥? |
千: | (”動機”‥‥) |
神: |
とにかく‥‥オレたちには、 致命的に情報が足りねえ。 |
千: | 情報‥‥‥ |
神: |
まず、足りねえのは 無久井 里子に関する情報だ。 ”文学部の学生” オレたちは、それしか知らねえ。 そして‥‥もう1つ。 |
千: | ‥‥なんですか! |
神: |
もちろん‥‥5年前の事件だ。 このシマシマが死刑判決を 受けた、例の誘拐殺人事件さ。 |
尾: |
オレ! なんにもしてない! オレ! ウソ、つかない! |
千: |
尾並田さん! それならば‥‥ 私たちに、話してくれますか? ‥‥5年前の事件のこと。 |
尾: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ わかった。‥‥オレ。 アンタ、信じる。 5年間‥‥毎日。ユメ、見る。 ‥‥あの日のコト‥‥ この写真‥‥ナツカシイ。 おぼろ橋、変わってない。 5年前も、こんな感じ‥‥ ‥‥ボロボロに壊れて、 今にもくずれそうだった。 |
千: |
(5年前から壊れていたんだ‥‥ この吊り橋‥‥) |
神: |
クッ‥‥! ボロボロでくずれそう なのは、おたがいサマだがな。 |
尾: |
‥‥オレ。オレ‥‥ たしかにユーカイ、した。 ‥‥5年前。オレのコイビト‥‥ 美柳 ちなみを。 |
千: | こここ、コイビト‥‥? |
神: |
‥‥おい! ちょっと待てよ。 ”みやなぎ”だと‥‥? |
千: | (被害者と‥‥同じ名字!) |
尾: |
美柳 ちなみ‥‥イモウト。 ‥‥美柳 勇希の。 |
千: | な‥‥なんですって! |
その子を‥‥人質をはなしなさい! | |
ダマれ! ち、近寄ると‥‥ ヒトジチ、殺すッ! | |
‥‥ザンネンだったわね。 あなたは、ここまでよ‥‥。 | |
千: |
(あのときの刑事が‥‥ 美柳 勇希だった) 人質をとった犯人に発砲なんて、 やりすぎだと思ってたけど‥‥ 妹さんを助けるため だったんですね‥‥ |
尾: |
ちがう! あのオンナ‥‥勇希! 裏切った! オレたちを! |
千: |
”裏切った”って‥‥ どういうことですか! |
尾: |
ゼンブ。‥‥ゼンブ‥‥ 狂言だった。‥‥ユーカイ。 |
千: | ‥‥”狂言”‥‥? |
尾: |
彼女‥‥ちなみ。 オレの、天使。宝物だった。 |
千: |
(いまどき”テンシ”と 来たか‥‥) |
尾: |
アイツの言うコト、なんでもやる。 ちなみに言われたコトだったら‥‥ |
千: |
(”ちなみに言われた”‥‥?) ちょ、ちょっと待ってください! じゃあ‥‥5年前の 誘拐を計画したのは‥‥? |
尾: |
オレと、ちなみ。 ‥‥勇希も、仲間だった。 |
千: | (勇希さんも‥‥!) |
尾: |
ちなみの家‥‥宝石商。金持ち。 宝石の1個ぐらい‥‥そう思った。 脅迫状、ちなみとオレが書いた。 ‥‥彼女の父親に。 要求は、2億円相当のダイヤ。 受け渡し場所はおぼろ橋の上。 ‥‥取引相手が、美柳 勇希。 刑事になったばかりだった。 |
神: |
刑事が仲間にいれば、たしかに 有利だっただろうぜ。 その3人で、2億を山わけする はずだった、ってワケか‥‥ |
尾: |
‥‥でも! あのオンナ‥‥! 美柳 勇希‥‥アイツ、 ホンキだった。 ホンキで‥‥オレを撃った! オレと、ちなみを‥‥ |
尾: |
オレ。腕を撃たれた。そして ちなみは‥‥川に身を投げた。 |
千: |
”身を投げた”‥‥って、 自分から飛びおりたんですか! |
尾: |
‥‥オレにはできない! ちなみ、つき落とすなんて‥‥ オレ。ボーゼンとして‥‥ 気がついたらタイホされてた。 |
神: |
それで‥‥死刑判決を 受けたワケか‥‥ |
尾: |
信じられなかった。あのオンナ‥‥ オレを裏切るなんて! |
勇: |
『あのオトコは‥‥尾並田は 突きおとしたんです! 私の妹を! 12メートルも下の、急流に! 私の目の前で、ちなみを‥‥!』 |
尾: |
‥‥この5年間。オレ。死ぬ前に、 どうしても聞きたかった。 なぜ‥‥どうして、あんなウソを! それだけ、ずっと考えていた。 |
神: |
だから、美柳 勇希を‥‥ 呼びだした。‥‥おぼろ橋に。 |
尾: |
‥‥アイツのカオ、忘れていた。 マフラー、つけさせた。 殺すつもり、なかった! ‥‥ただ、聞きたかった。 どうして、ウソの証言をした‥‥? どうして、オレを裏切った‥‥? ‥‥どうしても聞きたかった。 彼女自身のクチから。 |
千: |
(だから‥‥ 望みのない脱走を‥‥) |
神: |
すまねえが‥‥シマシマさんよぉ。 オレはビンボー症でな。 気になることがあるんだ。 |
千: | ‥‥なんですか? |
神: |
決まってるだろう。 身代金‥‥2億円のダイヤさ。 アレはどうなったんだ? オヤジさんに返したのかい? |
尾: | ‥‥知らない。 |
千: |
え。知らない‥‥? また、そんな‥‥ |
尾: |
オレ。ホントに知らない。 ちなみといっしょに、消えた。 |
千: | ‥‥ちなみさん‥‥? |
尾: |
あの日、橋の上‥‥ 身代金のダイヤ‥‥ちなみの リュックサックに入っていた。 ‥‥彼女といっしょに‥‥ 橋の上から、消えた。 吾童川の、急流にのまれて‥‥ |
千: |
(ダイヤが”消えた”‥‥? ちょっと、待ってよ‥‥) |
係: |
‥‥弁護人! 被告人! そろそろ審理が再開します。 |
千: |
尾並田さん! 最後に、1つだけ! ‥‥”彼女といっしょに” ダイヤが消えた、ということは‥‥ 美柳 ちなみさんの死体は? どうなったのかしら。 |
尾: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 見つかっていない‥‥。 今も、まだ。 |
千: | (見つかっていない‥‥!) |
尾: |
急流にのまれて‥‥消えたまま。 ‥‥ちなみ‥‥オレの、天使‥‥ |
神: |
あんたの”天使”‥‥ いったい、いくつだったんだい? |
尾: | まだ‥‥14才。 |
千: |
じゅ‥‥じゅうよんさい! (子どもじゃないの!) |
神: |
狂言誘拐を計画して、2億円の ダイヤを抱いて急流に消えた‥‥ まったく‥‥最近の天使は おマセさんだぜ。 |
千: |
(‥‥そして、尾並田さんは 死刑判決を受けた‥‥ ”美柳 ちなみ”‥‥ 天使なのか、それとも‥‥) |
神: |
‥‥時間だ、コネコちゃん。 どうやら、武器を手に入れたな。 |
千: | ‥‥はい! |
法廷記録にファイルした。 | |
神: |
エンリョすることはねえ。 パンチは、打てるときに打て! ‥‥そいつが、オレのルールだぜ。
|
地方裁判所 第4法廷 | |
裁: |
それでは、尾並田 美散の審理を しめやかに再開いたしましょう。 ‥‥証人。もう大丈夫ですか? |
里: |
は、はい‥‥すみません。 わたし、がんばりますね。 |
裁: |
ぬうう‥‥。 ケナゲですな、まったく。 |
千: | (まだ言ってる‥‥) |
御: |
‥‥弁護人が、依頼人を助けたい 気持ちはリカイできる。 しかし! その罪を、なんの関係も ない証人に着せようとは‥‥ |
千: | ど‥‥どういうことですか! |
御: |
この証人は、あらゆるイミで、 この事件と接点がない。 たまたま吾童山中で事件を目撃した ‥‥それだけのコトだ。 そんな彼女が、なぜ! 婦人警官を 殺害しなければならないのか! |
裁: |
ぬううう‥‥ たしかに、動機がありません。 |
千: |
(”動機”‥‥やっぱり それが次の問題、よね‥‥) |
裁: |
いかがですか? 弁護人。 立証できるのでしょうな? |
千: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あ、モチロンです! ‥‥たぶん。 |
神: |
クッ‥‥! だから コネコちゃんなんだよ、アンタは。 |
千: | 神乃木さん‥‥ |
神: |
弁護士はなァ。ピンチのときほど、 ふてぶてしく笑うモンだぜ。 |
千: | ‥‥‥! |
神: |
この状況で、思わずニヤけちまう ヤツこそが、”プロ”なのさ‥‥。 |
千: |
‥‥その、うれしそうな ニヤニヤ笑い、やめてください。 |
里: |
あの‥‥ちょっと、 よろしいですか? オジサマ。 |
裁: |
ぬ! オジサマは、 いつでもよろしいですぞ! |
里: |
証言‥‥させて いただきたいんです。 わたし、疑われているのですよね? ですから、それが‥‥ ヒドいぬれぎぬだって、オジサマ だけには、わかってほしくて。 |
裁: |
ぬうううう! そうだったのですかっ! |
神: |
‥‥どうやら、あの証人のほうが ”プロ”らしいな。 |
千: | ど、どうしてですか! |
神: |
見ろよ、あのまぶしい笑顔をよォ。 ‥‥とびっきりピンチなのさ。 あのカワイコちゃんも、な‥‥。 |
裁: |
それでは! 証人の話を 聞くことにしましょう! |
里: |
『私‥‥おととしまで、ずっと この国にいなかったんです。』(証言1) 『大学に入るまで、吾童山にも 行ったことはありません。』(証言2) 『わたしに、お動機なんて あるハズがありませんのよ。』(証言3) 『5年前、自分を逮捕した刑事さまを 逆恨みして、殺害なさるなんて‥‥』(証言4) 『ユーカイまでなさっているのに。 被告人さま、ヒドいひとです!』(証言5) |
裁: |
ぬうううう‥‥ この国にいなかった‥‥ |
御: |
そのとおり。 ‥‥殺人の動機など、 持ちようがないではないか。 |
裁: | うぬううう‥‥ |
神: |
‥‥さてと。 ニッコリ行くぜ、コネコちゃん。 |
千: |
は‥‥はい! (とにかく‥‥彼女と事件を なんとかして結びつけるの‥‥) |
千: | ”さかうらみ”‥‥? |
里: |
あの。被害者のカタの証言が キメ手になったのですよね? 被告人さまの‥‥ 死刑判決の、キメ手に。 |
御: |
そのとおり。被告人は、 それをウラんでいたのだ。 ‥‥自分の罪を棚に上げて‥‥ |
千: |
尾並田さんは、5年前の罪を 認めていません! |
里: |
ずいぶん、忘れっぽいのですね。 ‥‥被告人さまは。 |
千: | ‥‥‥! |
里: |
刑事さまのコトはおろか、ご自分の なさったことまでお忘れなんて。 |
千: | どういうことですか? |
里: |
被告人さま‥‥刑事さまの おカオ、お忘れだったのでしょう? それなら、いっそ‥‥証言のことも 忘れてしまえばよろしかったのに。 |
千: |
(たしかに‥‥尾並田さん、 忘れっぽいみたいだけど‥‥) |
千: |
”被害者のカオを忘れていた” ‥‥というのは? |
里: |
だって、目印がなければ、ご本人と わからなかったのですよね? |
御: |
たしかに‥‥被害者は現場で、 目印のマフラーをしていた。 |
里: |
‥‥もし、あの日。 白いマフラーをしていたら‥‥ わたし、あのかたに狙われたかも しれないのですよね‥‥ |
裁: |
ぬうううう‥‥たしかに。 ユルしがたいことです! |
千: |
(マズいわ。尾並田さんの印象が どんどん悪くなっていく‥‥ 深追いはキケンだけど、 今の発言‥‥どうかしら?) |
千: |
裁判長! ただ今の証人の 発言‥‥非常に重要です! 証言に加えていただけますか! |
御: |
検察側にも、異議はない‥‥ 被告人が、見さかいなく殺意を バラまく、危険人物だったこと‥‥ それを立証する、貴重な証言 だからな‥‥ |
裁: | ぬうおおおお‥‥! |
千: |
い、いえ! そういうつもりでは‥‥ |
裁: |
わかりました。 ‥‥証人。おねがいします。 |
里: |
もちろん、よろこんで。 『白いマフラーを持っていなくて わたし、ラッキーでしたのね。』(証言6) |
千: |
証人。‥‥あなたが撮影した、 この写真を見てください。 この写真では、ハッキリしません。 被害者の目印である、マフラー‥‥ |
裁: |
マフラーというのは、モチロン。 これのコトでしょうな? |
里: |
そ、そう! それですわ! 刑事さまがしていた、マフラー‥‥ |
千: |
(どうやら‥‥つかまえたようね) ‥‥それは、ヘンですね。 あなたは、たった今、 こう証言したはずよ。 <<白いマフラーを持っていなくて よかった>>、と‥‥ |
裁: | し、”白い”‥‥? |
千: |
‥‥これが、あなたも認めた 被害者のマフラーです。 どこからどう見ても、 <<白>>ではありません! |
里: | あ‥‥ッ! |
御: |
事件当日、現場は小雨がふって キリも出ていた! 被告人(証人?)が見まちがえても、 ムリはない! |
千: |
そうは行きません。 証人はたった今、認めたのです。 これが被害者のマフラーだと! |
裁: |
しかし‥‥いったい なぜ、そんなカンちがいを‥‥? たしかに、このマフラーは どう見ても、白ではない‥‥ |
千: |
その理由は‥‥ 1つしか考えられません! 証人がマフラーの色を <<白>>だとカンちがいした理由は! |
千: |
‥‥証人。 このメモを見たことは? |
里: | ぞ‥‥存じ上げませんわ‥‥ |
裁: |
ゴクヒ資料ですからな。 知らなくて当然でしょう。 |
千: | ‥‥それはどうでしょうか‥‥ |
里: | な、なんですの‥‥? |
千: |
このメモの中に、尾並田さんの 指示が書かれているんです。 <<目印に、白のマフラー>>‥‥と。 |
御: |
白い‥‥マフラー‥‥‥? ああああああっ! |
千: |
証人! あなたは、このメモの 内容を知っていたのです! それ以外に、マフラーの色を カンちがいできる方法は、ない! |
里: | う‥‥く‥‥ッ! |
千: | どうなんですか、証人! |
里: | いやああああああああああああッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! 御剣くん! どういうことですか! |