成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
倉院の里に伝わる秘宝 ‥‥<<七支刀>>‥‥。 その刀は、ぼくたちの人生を あらわしているのだそうだ。 無数に枝わかれして、無限に広がる かに見える、ぼくたちの運命‥‥ しかし‥‥その切っ先は、 いつだって、ただ1つ。 ヨウシャなく運命の糸を切り裂き ‥‥最後に、刺しつらぬく。 そして‥‥避けることのできない、 ”決着”をつける‥‥ | |
成歩堂法律事務所 | |
真: | あのさ、なるほどくん。 |
成: | ん? なに。 |
真: |
あたしって、霊力があるでしょ? なるほどくんとちがって。 |
成: | まあ‥‥霊媒師、だもんね。 |
真: |
でも、キタえないとナマるワケ。 なるほどくんといっしょで。 |
成: | へえ‥‥そんなモンなんだ。 |
真: |
そこで‥‥ ホラ、はみちゃん! おいで。 |
成: | (春美ちゃん‥‥?) |
春: |
そこで! この<<霊場破りツアー>> なのです、なるほどくん! |
成: | ‥‥な、なに? その雑誌。 |
春: |
<<お!カルト>>新年号。 真冬の霊場・大特集ですっ! |
成: |
‥‥はあ。 (春美ちゃん、うれしそうだな) |
真: |
”一晩のキッツーい修行で、 霊力がグッグーンとアップ!” ‥‥どうよ、ユメみたいでしょ! |
成: |
たしかに、ユメみたいだね。 ‥‥とてもイヤな。 |
真: |
<<葉桜院(はざくらいん)>>って いう霊場なんだけどさ。 すごい山奥にあるの。きっと 今なら、いいぐあいにサムいよ。 |
成: | (ゼッタイ行きたくない) |
真: |
葉桜院って、そのスジじゃ ちょっと有名な霊行道場なんだ。 あたしたち霊媒師でも、 なかなか予約、とれないんだから! |
成: | 予約‥‥して行くモノなんだ。 |
春: |
ええ! このたび、 わたくしが、トクベツにご予約を。 |
真: |
あたし<<スペシャル・コース>> 申しこんじゃった! |
成: |
ま、いいんじゃないかな。 行ってくれば。 ‥‥今、依頼もないし。 |
真: |
よーし、ハナシは決まったね! じゃ、ホラホラ。ぼやぼやしないで さっさとしたくする。 |
春: | ダメですよ、ぼやぼやしては。 |
成: |
え‥‥‥。 な、なんでぼくが行くんだよ! |
真: |
20才以上のヒトがいっしょ じゃないと、ダメなんだって。 |
成: |
でも! ぼく、霊力なんて カンケイないぞ。 その<<葉桜院>>って‥‥ 温泉でもあるの? |
春: | 冷たい滝で身を清めましょうよ! |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ワルいけど、やめとくよ。 サムいの、ニガテだし。 |
真: |
ええええ! そんなあ! ワガママ言わないでよー! |
春: |
ほ、ホラ。見てくださいっ! とてもステキなところですよ! |
成: |
いやいやいや。とにかく‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
春: |
ど、どうしたのですか? なるほどくん‥‥ |
成: |
ちょっと、その雑誌‥‥ 見せて! こ、この尼さん‥‥ |
真: |
なに、トモダチなの? なるほどくん。 |
成: | (‥‥この子は‥‥この子は!) |
ち: |
『‥‥お名前は、美柳 ちなみと 申しますわ。 ふつつか者ですが‥‥なにとぞ、 よろしくおねがいいたしますね。』 『ほんッと、宇宙のはてまで たよりにならないオトコ。 ‥‥クズがッ!』 |
成: |
‥‥そ‥‥ そんなハズはない! (彼女は有罪判決を受けて、 今も‥‥刑務所に‥‥) |
春: |
‥‥どうされたのですか? なるほどくん。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 行くよ。 |
真: | え‥‥? |
成: |
<<葉桜院>>だっけ。 ‥‥ぼくも行く。 |
真: | やったぜ、はみちゃん! |
春: |
ええ、ええ。それはもう。 さすがなるほどくん! 真宵さまのためならば、 いつも火の中、水の中ですから! |
春美ちゃんからもらった。 | |
成: |
(‥‥美柳 ちなみ‥‥ こんなところに、いるはずがない ‥‥それは、わかっている。 ただ‥‥なんとしても、 たしかめたかった。 ‥‥この、尼僧の正体を‥‥) |
葉桜院 山門 | |
真: |
ささささ、サムいよなるほどくん。 キョーレツに。 |
成: | そんなカッコで来るからだよ。 |
真: |
しゅしゅしゅしゅ、修行だからね、 ここここ、これも。 ‥‥ハックショ! |
成: | (声がうわずってるな‥‥) |
春: |
わあ、これがウワサの<<葉桜院>> なのですね、真宵さま! |
真: |
はははは‥‥はみちゃん。 はははは‥‥ハックショ! |
?: |
おやおやおやおや。 これはこれは‥‥いらっしゃい。 |
真: |
あ‥‥! どど、どどどどうも‥‥ ハックショ! |
?: |
あらあらあらあら。 とおいところをわざわざ。 さあさ、さあさあ。 サムかったでしょお? |
成: |
”サムかった”というか‥‥ 現在進行形でサムいです。今 |
?: |
まあまあ、こんな山の中でしょ。 そりゃサムいわよぉ。 こんなところで立ち話もなんだし。 ‥‥どぉぞどぉぞ、こちらへ。 |
真: |
あ、スミマセン。ホント、 あたしもう、イシキがモーロー |
?: |
あ。そうそうそう。 自己紹介、しないとねぇ。 オバサンね。葉桜院の住職よぉ。 名前は、ビキニ。 |
真: | ‥‥びび、”びきに”‥‥? |
毘: |
そぉぉなのよ! ”法名”っていうんだけど、 どう思う? 漢字で書くと、”毘忌尼”なんて、 もっともらしいんだけどねぇ。 いいトシしてビキニよビキニ。 ま、若くてもどうかと思うけど。 わはは。はは。わはははは。 |
真: |
あたし、スペシャル・コースを 申し込んだんですよ! |
毘: |
あらあらあらあら。 このサムいのにスペシャル? イノチしらずねぇ、ワカい子は。 死んでも知らないから。 わはは。はは。わはははは。 |
春: | い、”イノチ知らず”‥‥? |
真: | わ、”わはははは”‥‥? |
春: |
あの、真宵さま。やはり今夜は やめておいたほうが‥‥ |
真: |
え。でも‥‥せっかく はみちゃんが予約してくれたの |
毘: |
ま。ま。ま。ま。せっかくだから、 ゆっくりしていってね。 まだ、晩ゴハンまで時間あるし。 そのへん、見てきたらいいよ。 |
成: |
あの‥‥。 霊行道場、というのは‥‥? |
毘: |
あらあらあらあらあら。 そんなコトも知らないで来たの? |
真: |
すみません、住職さま。 このモノは、なにぶんシロウト |
毘: |
まあまあまあ。ビキニでいいから。 オバサンのコトは。 霊行道(れいぎょうどう)は、 霊力を引き出す修行のコトよぉ。 ここにはねぇ。そのための 宝具がまつられているワケ。 |
成: | ‥‥ほうぐ‥‥ |
毘: |
一晩かけて、その前でキチンと 修行すれば、あぁらフシギ。 霊力がモリモリムクムクワクワク。 いい感じでしょ? わははははは。 |
成: | (ホントかなあ‥‥) |
真: |
あの‥‥スペシャル・コース、 っていうのは‥‥ |
毘: |
まあホントにねぇ。ワカいのに、 マニアックなんだから、アナタ。 霊氷の上に座って、 呪詞を3万回となえる修行ね。 ‥‥キンキンに冷えきった 宝水をあびながら。 |
真: | え‥‥ |
毘: |
ホラ。2月でしょ、今。 この季節だとねぇ‥‥ ちょっと油断すると、 アッというまに凍っちゃうから。 気をつけなさいよ。 わは。はは。わははははは。わは。 |
真: |
‥‥どう気をつければ いいんだろ‥‥ |
春: |
ううう‥‥やはり、やめておけば よかったのでしょうか‥‥ |
成: |
あの‥‥住職さん。 この写真なんですけど。 |
毘: |
あらあらあら。オバサン、なかなか よく写ってるじゃなぁい。ねえ? |
成: | と、とてもステキだと思います。 |
毘: |
でしょお? でしょお? わは。わははははは。わはは。 おケショー、タイヘンだったのよ。 ‥‥あやめに手伝ってもらって。 |
真: | ”あやめ”さん‥‥? |
毘: |
そ。そ。写真に写ってる、 オバサン似のカワイイ子ね。 ここって、小さな霊場だから。 2人で切り盛りしてるのよぉ。 |
真: | へええ。なんか、楽しそうですね |
成: |
あ、あの‥‥! この”あやめ”さんですけど‥‥ 今、どこに? |
毘: |
あらヤダね、この子ったら! こんな山奥まで、ガールフレンド 探しに来たのかしら? |
春: | ‥‥ジロリ! |
成: |
い、いやいや! そういうワケでは‥‥ |
毘: |
あやめなら、奥の院のほうで 今夜の準備をしてるわよ。 |
真: | おくのいん‥‥? |
毘: |
まあまあまあまあ。あやめなら、 夜になれば戻ってくるから。 オバサンの本堂でも 見に行ってよ。わは。わはははは。 |
成: | (<<奥の院>>、か‥‥) |
葉桜院 本堂 | |
真: |
ままま、ますますサムいね、 この本堂‥‥ハックショ! |
春: |
あ! なるほどくん! カレーのにおいがしますよっ! |
真: |
お、ホントだ! 今夜はカレーだね! |
成: |
‥‥あれ。こういうところって、 精進料理を食べるんじゃあ‥‥? |
真: |
ナニ言ってるの、なるほどくん。 こんな夜は、問答無用で カレーに決まってるでしょ! |
春: |
わたくし。カレーライス、 だいすきですっ! |
?: |
ふふふ‥‥愛らしい修験者さんね。 ごきげんよろしゅう、みなさま。 |
成: |
あ‥‥こ、こんにちは。 (真宵ちゃんとはちがったイミで、 これまたアヤシイ‥‥) |
真: |
その装束‥‥。スペシャル・コース と、お見受けしましたが‥‥? |
?: |
ふふふ‥‥ザンネンだけど、 ちがうの。わたくしは‥‥ |
春: |
きゃあああああああっ! こ‥‥このカタは‥‥ このカタは‥‥! 天流斎(てんりゅうさい)エリス 先生ではないですかっ! |
エ: |
まあ‥‥。わたくしを 知ってるのかしら? |
春: |
わ、わた、わたくし、あの。 綾里 春美と申します! その‥‥だ、大ファンですっ! |
真: | ダレ? なるほどくん。 |
成: |
さあ‥‥。ぼくのスイリでは、 ズヴァリ! ‥‥占い師かな? |
春: |
わたくし‥‥先生のご本、 みんな持っています! |
エ: |
ふふふ‥‥いい子ね、春美ちゃん。 どうも、ありがとう。 |
成: | ”ご本”‥‥? |
春: |
なるほどくん、ヒジョーシキです! 先生をご存じないなんて。 |
成: |
は、はあ‥‥。 あの。作家さん‥‥なんですか? |
エ: | ‥‥ええ。絵本を、少し。 |
真: |
えほん‥‥かあ。 なるほどねー‥‥ |
成: |
あの‥‥。 知らなくてすみません。 絵本、あまり見る機会が ないものですから‥‥ |
エ: |
ムリもありませんね。 子どもむけの、やさしいものを 描いておりますから。 |
春: |
エリス先生の絵は、 それはうつくしいのですよ。 わたくし、いつもココロを 洗われる気持ちになります。 |
エ: |
ふふふ‥‥うれしいわ。 そう言ってもらえると。 |
成: |
(見た目はともかく‥‥ たしかに、とても キレイな目をした先生だな) |
春: |
先生は去年、『まほうのびん』で 賞をおとりになったのですよね! |
エ: |
ええ。‥‥たまたま描いたものを、 知人がコッソリ出版社に。 それが、そのまま 本になってしまいましたの。 |
成: |
へえ‥‥。よっぽど スゴかったんですねえ。 |
真: |
‥‥あたしも、たまたま描いて みようかなあ、絵本。 なるほどくん、コッソリ 持ちこんでね。出版社に。 |
エ: |
最近は、弟子にしてほしい という殿方もいましてね。 |
成: | お弟子さん‥‥ですか? |
エ: |
天流斎 マシスを 名乗っております。 どこかで風景のスケッチを していると思いますから‥‥ マシスのほうも、 よろしくおねがいいたします。 |
春: | はいっ! エリス先生! |
エ: | ふふふ‥‥。 |
春: |
あの‥‥先生は、どうして <<葉桜院>>にいらしたのですか? やはり、修行‥‥なのでしょうか。 |
エ: |
ふふふ‥‥そうじゃないわ。 じつはね。ここで、新しい 絵本を描こうと思っているの。 |
春: | まあ! ‥‥ステキです、先生。 |
成: |
(春美ちゃん‥‥ うっとりしてるぞ) |
エ: |
わたくし‥‥今までは、西洋の おはなしを描いていましたから。 |
成: | ‥‥だから、そんなカッコウを? |
エ: |
子どもたちは、わたくしどもに ユメを持っているのです。 それに、少しでも こたえたいと思って‥‥。 |
成: |
(はあ‥‥。やさしい ヒトなんだな‥‥) |
春: |
あ。でも先生、修験者の 装束を着ておられますね! |
エ: |
ええ。住職さまが用意して くださったものですから‥‥ ローブの下に、着させて いただいているのよ。 |
真: |
‥‥あたしも、そんなツエが ほしいなあ。 |
エ: |
ああ、この水晶‥‥? これはね。ホンモノなのよ。 |
真: |
‥‥あとで、山で1本 拾ってこようかな。 水晶のほうはよろしくね、 なるほどくん! |
エ: |
‥‥それでは、そろそろ シツレイしますね。 お夕食のしたくがありますから。 |
春: |
え! エリス先生が お作りなのですか? カレー‥‥ |
エ: |
そうよ。春美ちゃんも 手伝ってくれるかしら? |
春: |
わあ! わたくし、 なんでもやりますとも! |
成: |
(春美ちゃん‥‥すっかり、 なついてしまったみたいだ) |
真: | あ。じゃ、あたしも‥‥ |
エ: |
‥‥いいえ。 気にしないでいいのよ。 真宵さんたちは、ゆっくり 遊んでいらっしゃいな。 |
真: | え! でも‥‥ |
エ: |
‥‥ああ。よかったら、 これをお持ちなさい。 この付近の見取り図よ。 迷子にならないようにね。 |
成: |
(‥‥橋の向こうにあるな。 <<奥の院>>‥‥) じゃあ‥‥おコトバにあまえて。 その辺を見て来ます。 |
法廷記録にファイルした。 | |
春: |
それでは、 いってらっしゃいませ! おふたりとも、 ケンカしちゃダメですよ! |
真: |
よし! じゃあ行ってみようか、 なるほどくん! |
葉桜院 山門 | |
真: |
あれ。毘忌尼さん、 どこか行っちゃったね。 |
成: |
<<奥の院>>に行ったのかな。 あの‥‥、彼女を手伝いに。 |
真: |
ああ。たしか、 ”あやめさん”だったっけ。 |
成: |
‥‥あ、ああ。 そんな名前だったね。 (正体を知りたいような、 コワいような‥‥) |
真: | ‥‥‥? |
吊り橋前 | |
真: |
うわあ! ボロい吊り橋があるよ、 なるほどくん! |
成: |
そ、それより‥‥ものスゴい ガケになってるぞ。この下。 |
真: |
おお。川が流れてるよ! けっこう、流れがはやいねえ。 ‥‥‥どうしたの? コシが引けてるよ、なるほどくん。 |
成: |
ちょっと、ニガテなんだよ。 ‥‥高いところ。 |
真: |
ふううん。 ‥‥あ、そうだ! じゃあ、じゃあ。いっそ、 落っこちてみたらどうかな? ここから、えい! って。 意外と、いい修行に なるんじゃないかな! |
成: |
‥‥人生修行にはなるだろうね。 それにしても‥‥ボロい橋だなあ。 |
真: |
そりゃそうだよ。 なんと言っても、ホラ。 橋の名前、<<おんぼろ橋>>だもん。 |
成: |
いやいや、よく読めよ。 <<おぼろ橋>>だろ。 |
真: |
ま。似たようなもんだけど。 この先が<<奥の院>>だね。 はりきって行ってみようか! |
成: |
ううう‥‥できれば、 わたりたくないなあ。吊り橋は‥‥ |
奥の院・修験堂前 | |
真: |
いやあ、揺れまくったねえ。 あの吊り橋。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
真: |
しかも、ところどころ コワれかけてたし。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
真: |
橋のサイゴなんて、板キレが1枚 置いてあるだけだったもんねー。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
真: |
どうしたの? カオがミドリ色だよ。 |
成: |
‥‥ぼ、ぼくのコトは ほっといてもらえるかな。 あの橋をブジ、わたり終えた カンゲキにひたってるんだ。 |
真: |
ふうん。 ‥‥それにしても、すさんでるね。 今にもくずれそうだよ。 |
成: |
あんまりヒトが 来ないんだろうな。 こんなところで修行するの? ‥‥今夜。 |
真: |
そ、そうみたいだね。 コワいなあ。 オバケ、出ないかなあ‥‥ |
成: |
(霊媒師がオバケをこわがるのは どうかと思うな‥‥) |