成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
葉桜院 本堂 | |
毘: | ‥‥ふう‥‥。 |
糸: |
あ、どうも。 ‥‥どッスか、具合は。 |
毘: |
まあまあ、おかげさまで。 ‥‥あら。こちらは? |
御: | ム‥‥‥。御剣 怜侍と申します。 |
毘: |
あらあらあらあら。 カワイイ男のコは大カンゲイよぉ。 ‥‥ふう‥‥。こんな状況じゃ なかったら、オバサンも‥‥ |
御: |
(お、”男のコ”‥‥) つかぬことを尋ねますが‥‥ ”ビキニのおばさん” ‥‥を探しているのですが‥‥? |
毘: |
ああ。それなら オバサンのコトね。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 見たところ‥‥ ビキニではないようだが。 |
毘: |
あらあら。オバサンだってねぇ、 スゴいんだから。特に夏は。 わはは。わは。わははははわは |
糸: |
あの‥‥御剣検事。 このカタ、住職の毘忌尼さん。 ‥‥例の、目撃者ッス。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そういうコトは、早く言いたまえ! だからキミの給料は、 いつまでたっても下り坂なのだ! |
糸: | ‥‥ううう。ハラへったッス。 |
毘: |
それで、あの‥‥どうなんですか? ウチのあやめは‥‥ |
御: |
とにかく‥‥ お話を聞かせていただきましょう。 |
御: |
まずは‥‥ゆうべのことを お話しいただきたい。 |
毘: |
ゆうべはねぇ‥‥ホラ。 修験者さまがいたでしょ。 晩ごはんのあと、奥の院にある 修験堂へ行ったわけよ、ふたりで。 |
御: |
(真宵くんのことだな‥‥) ‥‥それは、何時ごろの コトだろうか‥‥? |
毘: |
ここを出たのは、9時ごろ‥‥ だったかしらねえ。 修行はね。一晩中つづくから。 それはもう、タイヘンなのよお。 霊行道場の住職は、ずっと つきそっているキマリなの。 |
糸: |
いやあ。 それはタイヘンッスねえ! |
御: |
‥‥刑事。 感心してる場合じゃない。 |
糸: | へ。 |
御: |
あなたは午後11時ごろ、 境内で、事件を目撃している。 奥の院にいるべきあなたが、 なぜこちらに戻っていたのか‥‥? |
毘: |
ううん‥‥そんなに見つめられたら オバサン、ゾクゾクしちゃうわぁ。 |
御: |
(ううう‥‥こっちも 少し、ゾクゾクした) |
糸: |
ハッハッ。サムがりッスねー、 御剣検事は。 |
御: |
それでは‥‥あなたが、境内で 目撃したことを聞かせてください。 |
毘: |
あれは、11時をすぎていたわね。 もう! もうね! モロよモロ! あれは‥‥ |
糸: |
ままま。落ちつくッス! ネクタイ、引っぱっちゃダメッス! |
毘: |
‥‥ふたつの人影が見えたわ。 ひとりは、もうグッタリしてて‥‥ もうひとりが、うしろから、 か、カタナを‥‥ぷっつりと! |
御: |
その”ハンニン”‥‥ あなたは、目撃されたのですか? |
毘: |
信じたくなかったわ。 あれは‥‥あやめでした! |
御: |
それは‥‥タイヘンな ショックだったでしょう。 |
糸: |
そりゃそッス! 自分に置きかえて考えてみれば‥‥ 御剣検事、なんと法廷にて 成歩堂弁護士を串刺しィッ! イトノコ刑事、なんとそれを 証言台にて目撃ィッ! ‥‥みたいなものッスから。 |
毘: |
あり得ない‥‥でも、 それが現実だったわ。 気がついたら、悲鳴を上げていて。 気がついたら‥‥キゼツしていた。 |
御: |
(‥‥どうやら‥‥目撃したことに マチガイはないようだな‥‥) |
毘: |
‥‥ただ‥‥ なんとなく、あのときのあやめは、 不自然だった気がするの。 |
御: | 不自然‥‥? |
毘: |
‥‥いつもとちがう、 っていうのかしらねェ‥‥ |
御: | (‥‥どういうことだ‥‥?) |
御: |
修験者の修行中‥‥住職は、 つきそうギムがあるそうですが? |
毘: |
ま、まあまあ、そうなんだけど。 オバサンねぇ。こう見えて、 コシが悪いのよぉ。 |
御: | コシ‥‥? |
毘: |
冬はね、特にもお、ダメ。 バケツも持てないぐらい。 ゆうべは特に冷えこんだでしょ? コシがバリバリ言いだして。 死ぬ前に、おフロでゆっくり あったまろうと思ったのよぉ。 だから、葉桜院に 戻ってきたワケ。 |
御: | ‥‥修験者を、ほったらかして? |
毘: |
やあねえ! オバサン、 そんなコトしないわ。 そのために、あやめを呼んだの。 ‥‥消灯の鐘を鳴らしたあとに。 |
御: |
(たしか彼女は‥‥奥の院には 行かなかったはずだが‥‥? この住職は、彼女を‥‥ あやめさんを、見ているのか? ‥‥もう少し、 詳しい情報がほしいな‥‥) |
御: |
その、”修験者さま”と いうのは‥‥ |
毘: |
ああ、綾里 真宵さんね。 悪いコトしたワ、あの子には。 せっかくのスペシャル・コース なのに、ほったらかしに‥‥。 |
糸: | すぺしゃる・こーす? |
毘: |
霊氷の上に座って、 呪詞を3万回となえる修行ね。 |
御: |
まさか‥‥ッ! 今もなお 奥の院で、そのスペシャルを‥‥? |
毘: |
いえいえいえいえ! さすがにそれは、大丈夫よぉ。 ゆうべはまだ、本格的な霊行に入る 前だったからねぇ。 |
御: | そ、それならばよいのですが。 |
毘: |
‥‥あ! そうそう。 もう1つ、気になることがあるの。 |
糸: |
‥‥聞きたいような、聞きたくない ような。揺れるオトコゴコロッス。 |
毘: |
小さな女の子がいたでしょ? 真宵さんの、妹さんみたいな。 |
御: | (真宵くんに、妹がいたのか‥‥) |
糸: |
きっと、春美ちゃんッスね。 綾里 真宵のイトコッス。 |
御: | はるみ‥‥ちゃん‥‥? |
毘: |
ゆうべ、エリス先生といっしょに いたはずなんだけど‥‥ 今朝から、見てないの! ‥‥どこにも、いなくて‥‥ |
御: |
な‥‥なんだとッ! 被害者と、いっしょにいた‥‥! |
毘: |
みィんな、オバサンの‥‥ オバサンのコシが悪いのよォォい! |
御: |
(被害者といっしょにいた 女の子が‥‥消えた!) |
糸: |
まさに‥‥ <<ナゾはミステリー>>ッス! |
御: |
ゆうべ‥‥あなたは、真宵くんと 奥の院・修験堂に行かれたという。 その際‥‥あやめさんには 会われたのですか? |
毘: |
もちろん、会ったわ。 10時に<<消灯の鐘>>を鳴らしたら すぐ来るように、言っといたから。 |
糸: |
それで、あやめさんは‥‥ 奥の院に来たと言うッスか? |
毘: |
アタリマエでしょお。 スナオな子なんだから、あやめは。 それでね。真宵さんの霊行を始めて もらったわけ。あの子に。 |
御: |
(しかし‥‥あやめさん本人の 供述は、まったくちがう。 彼女は”奥の院には行ってない” ‥‥と言っている!) |
糸: |
まさに‥‥ <<ナゾはミステリー>>ッスねえ‥‥ |
御: |
(部屋のすみに、ワラの 円座がつまれている) ‥‥下からのぞいている 白い紙は‥‥なんだろうか。 |
糸: | さあ。なんスかねえ。 |
御: |
‥‥調べてもらえるかな? イトノコギリ刑事。 |
糸: |
ははは、ハッ! 御剣検事ィィ! こんなものがッ。 |
御: | みすぼらしい茶封筒だな‥‥ |
糸: | んぎゃああああ‥‥ッス! |
御: | ‥‥どうした、刑事? |
糸: |
こ‥‥コイツは‥‥ 超・重要な手がかりッス! ある種、スペシャルッス! |
御: |
‥‥とりあえず、 さっさと読みたまえ。 |
糸: |
どうやら、あやめさんに 宛てられた手紙みたいッスね。 『今夜10時、極楽庵にて待つ。 ‥‥秘密を知られたくなければ』 |
御: | ま、まさか‥‥脅迫状‥‥? |
データを法廷記録にファイルした。 | |
糸: |
それにしても、 さすがは御剣検事ッス! どうしていつも、重要な手がかりを 発見できるッスかねえ‥‥ 超・検事ッス! ある種、スペシャルッス! |
御: |
‥‥これを見落とせるほうが ある種、スペシャルだと思うが。 |
葉桜院 境内 | |
糸: |
さあ、ここが殺人現場ッス! 死体以外は、ほぼそのままに 保存されているッス! |
御: |
‥‥ゴクロウ、刑事。 調べさせてもらうとしよう。 (まだ、警官たちが 捜査中のようだな‥‥) |
糸: |
あ‥‥ところで、御剣検事。 念のために、うかがうッスが‥‥ 検事は、ホントに弁護するッスか? あしたの裁判で‥‥あの尼僧を。 |
御: |
むう‥‥。引き受けた以上、 全力をつくすつもりだ。 |
糸: |
‥‥ううううむ。 そうなると、自分の立場上‥‥ ワレワレの捜査状況を、ウッカリ もらすワケには行かないッス。 |
御: |
‥‥よけいなことを シンパイするな、刑事。 キミはただ、 ダマって情報をタレ流せばよい。 |
糸: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ リョーカイッス! タレ流すッス! |
御: |
う、うム。‥‥その調子だ。 (たまに不安になるな、この刑事) |
糸: |
被害者は絵本作家の 天流斎 エリス。本名は不明ッス。 去年、絵本の賞をとるまでの 経歴も、まるで不明ッス。 |
御: |
‥‥いまどき、考えにくいな。 <<身元不明>>‥‥など。 |
糸: |
被害者の死亡推定時刻は、2月7日 午後10時から、11時ごろッス。 死因は、背中から刺された 凶器による失血死ッス。 |
御: | 凶器‥‥‥? |
糸: |
被害者の身体は、カタナでプッスリ 刺しつらぬかれていたッス。 |
御: | むうう‥‥。キノドクに‥‥ |
糸: |
それと、もう1点。 奇妙な点があるッス。 |
御: | ‥‥なんだ。 |
糸: |
被害者の全身には、”打ち身”の ようなアトが残っているッス。 どうやら被害者は、2階ぐらいの 高さから、落下しているッス。 |
御: |
2階ぐらいの高さ‥‥というと‥‥ ちょうど、あそこに見える 部屋の高さにあたるようだが‥‥? |
糸: |
さすが、御剣検事ッス! 天流斎 エリスはゆうべ、まさに あの部屋に泊まっていたッス。 |
御: |
(刀で刺しつらぬかれたのち、 突き落とされたのか‥‥?) |
法廷記録にファイルした。 | |
御: |
‥‥それでは、刑事。 ゆうべ、ここであったことを、 整理して聞かせてもらいたい。 |
糸: |
ハッ。‥‥では、見取り図を 見ていただくッス。 ‥‥事件の目撃者・住職の 毘忌尼の証言によると‥‥ 葉桜院で夕食が終わって、 彼女と綾里 真宵は、奥の院へ。 午後10時、あやめが<<消灯の鐘>> を鳴らした後、奥の院へ。 毘忌尼は、あやめに修行をまかせて 葉桜院に戻っているッス。 そして毘忌尼は、葉桜院で おフロに入ったあと‥‥ 境内で、殺人の現場を 目撃したッス! ま。詳しいコトは、本堂にいる オバサンから聞いてほしいッス。 |
御: |
(<<奥の院>>‥‥か。 もう少し、情報がほしいな‥‥) |
御: |
裁判は明日、だったな。 検事のほうは、どうなっている? |
糸: |
この事件の担当は、あの ゴドー検事のはずッスが‥‥ 今、連絡がとれないので 他の検事を探しているらしいッス。 |
御: | どういうことだ‥‥? |
糸: |
いっつもそうッス! スパッと 連絡がとれたコトがないッス。 あ。もしかして、あれッスかね! 成歩堂 龍一がカゼをひいたので、 ヤル気をなくしちまった、とか。 |
御: |
明日の裁判‥‥私は、特別弁護人 として出廷するつもりだ。 しかし‥‥私が検事だと 知られると、非常にメンドウだ。 |
糸: |
そりゃそッスね。 とは言っても‥‥ あの裁判長を相手に、 それは、ムリなのでは‥‥? |
御: |
‥‥さすがに、私のカオぐらいは おぼえているだろうな。 だから‥‥ベツの裁判長の 法廷を手配しておいた。 彼とは、一度しか会っていない。 私を忘れている可能性は、高い。 |
糸: |
し、しかし‥‥ 検事のほうは、どうするッスか? 検事局で、御剣検事を 知らない者はいないッス! 事情を知らない検事が 騒ぎ立てたら、ヤッカイッスねー。 |
御: |
それならば、問題ない。 念のために、検事もすでに、 私のほうで手配しておいた。 |
糸: |
み‥‥御剣検事って‥‥ そんなにエラかったッスかッ! |
御: |
真宵くんが修行をしていた <<奥の院>>というのは‥‥? |
糸: |
オバサンの話では、修行をする ためのボロ小屋らしいッス。 おぼろ橋をわたった向こう側に あるッス。 |
御: |
(あの、焼け落ちた橋か‥‥) おぼろ橋の向こうは、奥の院の 他に、何があるのだろうか? |
糸: | 何もないッス。 |
御: | ”何も”‥‥? |
糸: |
橋の向こうは、切り立った ガケにかこまれていて‥‥、 ある種、”陸の孤島” らしいッス。 |
御: |
(おぼろ橋の向こうに存在するのは <<奥の院>>だけ‥‥) |
糸: |
ヒトの住めるようなトコロじゃ ないらしいッスよ。 |
御: | (ブジでいてくれ‥‥真宵くん) |
御: |
この黄金像が持っている カタナが‥‥凶器、か。 |
糸: |
そッス。<<七支刀>>って 呼ばれているらしいッスね。 |
御: |
凶器に残っている血は‥‥ 被害者のもの、なのだろうな。 |
糸: |
そッス。べったりッス。 ‥‥あ。べったりと言えば。 七支刀のニギリには、 これまたべったりッス。指紋が。 |
御: | しもん‥‥? |
糸: |
モチロン、被告人の尼僧‥‥ あやめのものッス。 |
御: | (彼女の指紋が、凶器に‥‥!) |
糸: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ どうかしたッスか? ‥‥しんみりして。 |
御: |
成歩堂のヤツ‥‥いつも、こんな 気分で弁護席に立っていたのか。 |
糸: | イヤな感じッスか? やっぱり。 |
御: |
‥‥ハッキリ言って、 カラダに悪い。 |
法廷記録にファイルした。 | |
御: |
なんだ‥‥? この、魔法使いのツエは。 |
糸: |
被害者の天流斎 エリスが 持っていたものらしいッス。 アヤシイところは、ないッスね。 ‥‥あ、そうだ! ここだけのハナシがあるッス。 |
御: | む。‥‥なんだ。 |
糸: |
これは、ゴクヒッスよ。 ダレにも言っちゃダメッス。 |
御: | ‥‥わかった。 |
糸: |
じつは‥‥自分はムカシ‥‥ 魔法使いになりたかったッス。 |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
糸: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
御: |
もしかして‥‥ それで終わりか? |
糸: | 終わりッス。 |
御: |
(このツエ‥‥がんじょうな 木でできているようだな‥‥) ‥‥指紋は? 残っていたのか? |
糸: |
‥‥付着していたのは 被害者のものだけ、ッス。 |
データを法廷記録にファイルした。 | |
葉桜院 山門 | |
御: |
‥‥おや。 矢張の姿が見えないな。 |
糸: |
きっと、ワレワレに 恐れをなしたッスね! |
御: |
(アイツは、ココロに <<さいころ錠>>を抱えていた。 いずれ、探し出さねば なるまいな。‥‥メンドウだが) |