成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
成: |
この絵は、アキラカに ムジュンしていますッ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そんなコトは わかっていますッ! |
成: |
いやいやいや! そういう イミではありません! 天流斎 マシスは、 何度も証言しています。 ‥‥このスケッチは、 <<見たまま>>を描いた、と。 ‥‥しかし! その証言を信じると、 この絵の中には‥‥ 現実とムジュンしている ポイントがあるのです。 |
あ: | ムジュン‥‥‥ |
ゴ: |
クッ‥‥! ‥‥おもしれえ。 ‥‥どうやら、そのコリない 人差し指の登場らしいな。 いったい、このスケッチ‥‥ 現実とムジュンする点は、どこか? |
成: |
それは‥‥この、 橋から伸びたワイヤーです! |
裁: | ‥‥ワイヤー、ですか‥‥ |
ゴ: |
クッ‥‥! ソイツが、”現実”と ムジュンしてる、ってワケかい‥‥ |
成: | ‥‥そのとおり。 |
ゴ: |
それなら‥‥その”現実”って ヤツを、示してもらおうか。 ‥‥このスケッチのワイヤーと ムジュンする<<証拠>>を‥‥! |
裁: |
それは‥‥ おぼろ橋の写真、ですか。 |
成: |
<<スケッチ>>と<<写真>>‥‥ よく見くらべてみてください。 スケッチでは、ワイヤーは <<手すりの上>>から伸びています。 ‥‥しかし。 現実のおぼろ橋では‥‥‥ |
裁: | あああああああッ! |
成: |
ワイヤーは‥‥‥<<手すりの下>> から伸びているのです! |
ゴ: | ‥‥なにひィィィッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! たしかに、スケッチは”現実”と 食いちがっているようです! ‥‥しかし‥‥ これは単なる、 ”見まちがい”‥‥なのでは? |
あ: |
”描きまちがい”かも しれませんわ! |
ゴ: |
いっそ、アンタが ”場ちがい”だぜ、まるほどう! |
成: |
‥‥このオトコのことですから、 ”見まちがい”はあり得ます。 ‥‥しかし。 そこで問題になるのは‥‥ 彼が<<なぜ、見まちがえたか>>? ‥‥その”理由”です。 |
ゴ: |
‥‥アンタに、それが わかる、って言うのかい‥‥ |
成: |
みなさん! 思い出していただけますか。 天流斎 マシスが、あの瞬間を 目撃したときの<<状況>>を‥‥ ‥‥あの晩、彼は極楽庵で、来る はずのないコイビトを待っていた。 やがて、待ちくたびれた彼は うたた寝を始めます。 ‥‥そのとき! 運命の落雷で 橋は燃え上がり‥‥ 彼は、その瞬間を目撃した。 ‥‥こんな状態でッ! あおむけに見た一瞬の光景が、 彼の目に焼きついてしまった‥‥ |
裁: | ‥‥‥”あおむけ”‥‥‥ |
成: |
‥‥そう。 それが<<コタエ>>だったのです。 なぜ、スケッチのワイヤーが ”上下、逆に”伸びていたか‥‥? |
裁: | あああああああああッ! |
ゴ: | ま‥‥まさか‥‥‥ッ! |
成: |
天流斎 マシスは、あおむけに 寝た状態で、事件を目撃した。 ‥‥つまり! 彼の目撃した光景は‥‥ 上下が<<逆転>>していたのです! |
裁: |
そ、それでは! ‥‥このスケッチは‥‥ |
成: |
どうやら‥‥お気づきになった ようですね。 天流斎 マシスの描いた <<スケッチ>>の、正しい見かたが! ‥‥これこそが、この絵の <<正しい姿>>だったのです! |
成: |
被害者の死体は、橋の”上空”を 飛んだのではなかった! 橋の”下”を、くぐったのです! ‥‥そう! まるで、 <<振り子>>のように! |
ゴ: | ぐぶるほほほおおおおおォォォッ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! 静粛に‥‥ |
ゴ: |
よりによって‥‥ なんで<<振り子>>なんだッ! |
成: |
‥‥橋はすでに燃え上がって、 とてもわたれる状況ではなかった。 しかし‥‥被害者の死体は、 奥の院で発見されてはならない‥‥ そこで犯人は、イチかバチかの <<賭け>>をしたのです。 燃える橋を使って、死体を対岸に わたすためには‥‥ <<振り子>>を使うしかなかった! |
ゴ: |
‥‥とりあえず、地に足をつけて 考えるとするぜ‥‥。 おぼろ橋の全長は、 約20メートルもある。 つまり、<<奥の院>>から対岸まで、 それだけ離れている、ってワケだ。 |
成: | ‥‥そうなりますね。 |
ゴ: |
そのキョリを<<振り子>>で クリアするためには‥‥ 少なくとも、10メートルの 長いロープが必要になる。 そんな長いロープなんぞ、 カンタンに用意できるワケがねえ! |
成: |
(あの晩、橋に落雷があったのは、 あくまでもグーゼンだった。 だから、犯人が前もってロープを 用意しておいたハズはない。 ‥‥つまり、犯人は‥‥) ‥‥わざわざ 用意するまでもなかった‥‥ 犯人の目の前に、 <<ロープ>>はあったのです! |
ゴ: | な、なんだと‥‥! |
成: |
だから、それを使った。 ‥‥それだけのことです。 |
裁: |
では、弁護人に 提示していただきましょう! 犯人が、死体の<<振り子>>に 使用した、<<ロープ>>のありかを! |
裁: | こ、これは‥‥? |
成: |
犯人が使った<<ロープ>>なら‥‥ 目の前にブラ下がって いるじゃないですか! |
裁: |
ああああああああッ! これは‥‥ おぼろ橋のワイヤー‥‥ですか! |
成: |
落雷によって、橋は炎上した! そして、その際‥‥ ワイヤーのうちの1本が、 留め具からハズれかかっていた! ‥‥犯人に、迷っている 時間は、ありませんでした。 そのワイヤーに、死体を 結びつけて‥‥ これ以外に、死体を運ぶ 方法はありません! |
ゴ: |
‥‥‥‥クッ‥‥‥‥! うごふごふごふごふごふごふごふ ごふごふごふごふごふごふごふご |
裁: | いかがですか、ゴドー検事! |
裁: |
どうやら‥‥ あまりのコトに、検察側は コトバもないようです。 たしかに、現場に<<ロープ>>は ありました。 <<不可能ではない>> ‥‥そう考えていいでしょう! |
ゴ: |
<<可能>>か<<不可能>>か‥‥? そんなコト、問題じゃねえぜ。 ‥‥ダイジなのは、1つだけ。 ジッサイに、やったかどうか‥‥? それならば、まるほどう! ‥‥見せてもらおうじゃねえか。 ジッサイに、死体が<<振り子>>で 飛ばされたという証拠を! |
成: |
<<証拠>>を提示する前に、 少し、整理して考えてみましょう。 この写真によると、 切れたワイヤーは、1本。 上面図で見ると、コイツです。 <<奥の院>>の前につながっていた。 |
裁: |
では‥‥犯人は、 その場所から死体を‥‥! |
成: |
もちろん、そうでしょう。 ‥‥そのときの死体の動きを、 上面図で考えてみましょう。 ‥‥このポイントから 投げ出された死体は‥‥ ‥‥対岸の、このあたりに 落下することになります。 |
裁: | ら‥‥”落下”‥‥ですか? |
成: |
おそらく、対岸で死体を受けとめる のに、シッパイしたのでしょう。 |
あ: |
なぜ‥‥そんなことが わかるのですか! |
成: |
死体が対岸に”落下”したことを 説明する証拠があるからです。 |
あ: |
そ‥‥ そんな証拠が‥‥! |
成: |
‥‥この、<<解剖記録>>を 見ていただきましょう。 こう書かれています。 『死後、3mの高さを落下』 |
裁: | さ‥‥3メートル‥‥ |
成: |
おそらく、対岸との高さの差が あったためでしょう。 死体はワイヤーからはずれて、 3メートルの高さから落ちた。 そして、そのときのショックで‥‥ ‥‥この水晶が ハズれてしまったのです! |
あ: | ‥‥! そ、それは‥‥‥ |
成: |
‥‥もちろん、 この血痕の残った水晶は‥‥ 被害者・天流斎 エリスさんの ツエに、はまっていたものです! そして! さらに重要なのは‥‥ 水晶が発見された場所です! |
裁: |
た、たしか‥‥‥上面図に 記されていたはずです! 水晶が落ちていたのは‥‥ ‥‥ああああああッ! |
成: |
‥‥そうなんです。 そこは、まさに‥‥ <<振り子>>の到達点なのです! |
裁: |
どうやら‥‥‥ これで、立証されたようです。 <<事件当夜‥‥いかにして、 死体が移動したのか‥‥>> 今回も、キワどいところ でしたな。‥‥成歩堂くん。 |
裁: | な‥‥‥成歩堂くんッ! |
ゴ: |
‥‥その、ぬるいコーヒーで ネツをさますことだ‥‥ |
裁: |
ど‥‥どういうコトですかッ! ゴドー検事ィ! |
ゴ: |
‥‥なかなか、苦味とコクのある スイリだったぜ、まるほどう‥‥ ‥‥しかし。まだ1つだけ‥‥ 足りねえものがある。 |
裁: |
そ、それは‥‥ なんですかっ! |
ゴ: | ‥‥‥<<香り>>さ。 |
成: | ‥‥かおり‥‥? |
ゴ: |
立ちのぼる深いアロマは コーヒーの最大の共犯者、だぜ‥‥ |
成: |
‥‥あの、すみません。 わかるようにおねがいします。 |
ゴ: |
<<犯人が、死体を対岸に飛ばした>> ‥‥それならば、当然! その死体を”受け取った”人物‥‥ <<共犯者>>がいる、ってコトだ。 |
裁: | 共犯者‥‥ッ! |
ゴ: |
‥‥犯人自身は、おぼろ橋を わたることはできなかった。 それならば‥‥いったい、 ダレに死体をたくしたのか‥‥? 聞かせてもらおうじゃねえか! ‥‥まるほどうッ! |
成: | ‥‥‥! |
裁: |
た‥‥たしかに、この犯行は ヒトリでは不可能です! 弁護人! よろしいですね? |
成: |
‥‥‥はい。 (協力者がいなければ、死体が 葉桜院に移動するハズがない!) |
裁: |
‥‥それでは、うかがいます。 <<奥の院>>の対岸で、死体を 受け取った人物とは、だれですか! |
成: |
‥‥あやめさん。 あなたですよ、もちろん。 |
あ: |
え‥‥‥ えええええええええッ! あ‥‥あの‥‥私‥‥ |
成: |
‥‥そんなに驚くことは ないと思いますけどね。 おぼろ橋から死体を運ぶには、 スノーモービルを使うしかない。 ビキニさんは、致命的にコシを 痛めていて、死体など運べない。 ‥‥あなたしか、いないんです。 |
ゴ: |
アンタ‥‥証人の話、 聞いていたかい‥‥? このカワイコちゃんは、 事件当夜‥‥ 奥の院の中庭で、親子ゲンカの 後始末をしていたんだぜ。 |
成: |
あなたこそ、お忘れですか? ‥‥ゴドー検事。 この証人は‥‥葉桜院でも 目撃されているんですよ。 被害者の死体に 細工しているところを‥‥ |
裁: |
ふ‥‥ふむう‥‥‥ ‥‥ジツに奇妙です。 まるで、事件当夜‥‥ 葉桜院と奥の院‥‥ふたりの 被告人が存在したかのようです! |
成: |
‥‥あやめさん。 1つだけ、聞かせてください。 なぜ‥‥最初から 証言してくれなかったのですか? |
あ: | あ、あの。何をでしょうか‥‥? |
成: |
‥‥モチロン、 <<振り子>>のことですよ。 事件当夜の現場の状況、 目撃証人のスケッチ‥‥ 炎上した橋を使って死体をわたした 方法は、立証されました。 ‥‥あなたは、それを 知っていたハズですからね。 |
あ: |
そ‥‥そんな! 私、知りません! <<振り子>>なんて‥‥ 思いつきもしませんでしたわ! |
成: |
死体の受けわたしには、あなたの 協力がゼッタイに必要でした。 ‥‥それならば、当然! あなたは<<振り子>>のことを 知っていなければオカシイのです。 ‥‥もし、あなたが‥‥ 本当に<<あやめさん>>ならば。 |
あ: |
え‥‥‥ な‥‥何を言いだすのですか! 成歩堂さま‥‥ |
裁: |
な‥‥ナニをバカなことを! ‥‥こ、この証人が、 葉桜院 あやめではない‥‥ |
ゴ: |
‥‥ま、まるほどう! もしかして‥‥ こ‥‥‥コイツは‥‥‥ このオンナは‥‥ッ! |
成: |
(あの晩‥‥死体を受け取ったのは あやめさん以外、あり得ない! どうやら‥‥ハッキリしたな。 この”違和感”の正体が。 ‥‥彼女の証言が、きのうから 急に変わってしまった理由‥‥ そして‥‥真宵ちゃんに罪を 着せようとしている理由‥‥) ‥‥たった今、 証言台に立っている人物‥‥ この証人の、本当の名前はッ! |
成: |
‥‥この名前を、二度と口に出す ことはないと思っていました。 まして、本人を目の前にして。 ‥‥ひさしぶりですね。 美柳 ちなみさん。 |
あ: | ‥‥‥! |
裁: | ‥‥‥みやなぎ‥‥‥ |
成: |
あやめさんには、 双子の姉がいました。 ‥‥それが、彼女。 美柳 ちなみです。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ いつか、どこかで‥‥ その名を聞いたような気がします。 |
ゴ: |
クッ‥‥ 気のせいじゃねえさ、ジイさん。 ここに‥‥美柳 ちなみに 関するデータがあるぜ。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥ そうだったのですか‥‥ 5年前‥‥、あのときの! |
美: |
『‥‥お名前は、美柳 ちなみと 申しますわ。 ふつつか者ですが‥‥なにとぞ、 よろしくおねがいいたしますね。』 |
亜: | 『こちらこそ!』 |
裁: | 『よろしくおねがいしますぞ!』 |
裁: |
‥‥し、しかし! この記録によると‥‥ 美柳 ちなみは‥‥‥ すでに死んでいるではないですか! ‥‥先月、死刑が 執行されたばかりです! |
ゴ: |
‥‥”死”だって? そんなもの‥‥‥ この法廷じゃァ、 なんのイミもねえのさ! |
裁: | なんですッとぉぉぉぉぉぉッ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! 静粛に! |
あ: |
‥‥ま、待ってください! 私のお姉さまは‥‥もう、 お亡くなりになったのですよ! い、今さら‥‥ |
成: |
‥‥あなたには、説明するまでも ないでしょう。 その身体には、倉院流霊媒道の 家元の血が流れているのですから。 |
裁: | くらいんりゅう‥‥れいばい‥‥ |
成: |
‥‥そう。正確には、あなたは <<美柳 ちなみ>>ではありません。 霊媒師の身体を借りた、 <<霊体>>なのですから! |
ゴ: |
ハナシとしてはオモシロイが‥‥ さすがに、ムリがあるぜ。 事件の晩、美柳 ちなみの霊が 霊媒された、ってワケかい? 彼女の双子の妹・あやめがいる <<葉桜院>>で‥‥ |
成: | ‥‥そのとおりです。 |
ゴ: |
そんなグーゼン、 あるわけがねえぜ! |
成: |
‥‥もちろん、 グーゼンではありません。 すべては、<<計画>>どおり、 実行されていたのです。 この<<指示書>>に書かれている とおりに‥‥! |
あ: | あ‥‥ッ! そ、それは‥‥ |
成: |
あなたたちの母親、綾里 キミ子が 書いたものです。 <<美柳 ちなみ>>が霊媒される ことは、最初から決まっていた! あの晩‥‥ 葉桜院には、ふたりの <<あやめさん>>が存在したのです。 |
ゴ: | ‥‥”ふたり”‥‥だと? |
成: |
この手紙では、霊媒をする 時間が指定されています。 『<<消灯の鐘>>が聞こえたら』‥‥ すなわち、午後10時です。 しかし、夕食より以前から <<あやめさん>>は、いました。 |
裁: |
つまり‥‥それは”ホンモノ” ということですね‥‥ |
成: |
彼女は、葉桜院で ぼくに、このずきんをくれました。 つまり、ビキニさんが<<奥の院>>で 会ったという<<あやめさん>>は‥‥ 修験者の装束を着た、別人‥‥ <<美柳 ちなみ>>だったのです! |
ゴ: |
アンタ‥‥自分で言ってることが わかってるのかい? 事件当夜、<<美柳 ちなみ>>が 霊媒された‥‥ 計画書が残っている以上、 それは、たしかだろうぜ。 ‥‥しかし! これだけはハッキリしている。 そこの証言台に立っている証人は、 ホンモノの<<あやめ>>だぜ! |
成: | ‥‥‥な、なんですって‥‥‥! |
ゴ: |
事件当夜のこと‥‥、落ちついて よく思い出してみな。 霊媒された<<美柳 ちなみ>>は、 住職に会ったあと‥‥ 落雷によって、<<奥の院>>に 閉じこめられてしまった。 死体が<<振り子>>で運ばれたのは、 それよりも後、だ。 |
成: | ‥‥そうなりますね。 |
ゴ: |
このとき、対岸で死体を 受け取った<<あやめ>>は‥‥ 当然、<<本物>>ということになる。 ‥‥ここまでは、いいか? |
成: | ‥‥はい。 |
ゴ: |
事件の通報を受けて、警察は 葉桜院の本堂にかけつけた。 そして、自室にいた <<葉桜院 あやめ>>を逮捕した。 ‥‥それ以来、彼女は留置所で 警察の管理下にあった‥‥。 |
成: |
た、たしかに‥‥ (そういうことになる‥‥な) |
あ: |
ふう‥‥よかったですわ。 やっと、ナットクして もらえたようですね‥‥ |
成: |
(しかし‥‥ やはり、何かがちがう! 今日の<<あやめさん>>は‥‥ あの晩の彼女とは、別人だ!) |
ゴ: |
クッ‥‥! それなら、アンタ‥‥ こう主張するつもりかい? 本物の<<あやめ>>と、 霊媒された<<ちなみ>>‥‥ どこかで入れ替わった、 とでも‥‥? |
裁: | い、入れ替わった‥‥! |
裁: |
‥‥正直なところ‥‥ 私にはまだ、よく わからない点もありますが‥‥ 証人の身元が確定しないかぎり、 審理を進めることは不可能です。 |
成: |
(‥‥あやめさんに、<<ちなみ>>を 霊媒する霊力は、ない。 そうなれば、たしかに‥‥ どこかで、入れ替わるしか ないわけか‥‥) |
裁: |
いかがですか、弁護人! 葉桜院 あやめが逮捕されてから、 今日、証言台に立つまでの間‥‥ <<美柳 ちなみ>>と入れ替わる 機会は、あったのですか? |
成: |
‥‥裁判長! 一度だけ‥‥チャンスが あったかもしれません。 |
裁: | な‥‥なんですと‥‥ |
成: |
きのう‥‥数分間ですが、 空白の時間が存在したのです。 |
ゴ: |
空白の‥‥時間‥‥ どういうイミだ? |
成: |
もちろん‥‥ あやめさんが、だれにも見られず 自由に行動できた時間ですよ。 |
裁: |
いったい、ダレですか! 殺人事件の容疑者に、そんな <<自由>>を与えたのは! |
成: |
(‥‥悪いな。 おまえのせいじゃないけど‥‥) あやめさんの<<空白の時間>>‥‥ それを与えた人物とは! |
裁: |
こ、これは‥‥たしか。 御剣検事、ですな‥‥? |
成: |
‥‥裁判長。 きのう、大きな地震が ありましたね? |
裁: | じしん‥‥ですか‥‥ |
毘: |
『じ、地震よおお‥‥ッ! た‥‥タイヘン! この揺れ‥‥奥の院が危ないよ!』 |
御: |
『わ‥‥私としたことが‥‥ ”脱走”、だ。 ‥‥取り逃がしてしまった。』 |
成: |
ぼくたちは、すぐに <<奥の院>>へ向かいました。 ‥‥そこには、たしかに <<あやめさん>>がいました。 しかし‥‥ ‥‥すでに、 入れ替わりは終わっていた。 あのとき、修験堂にいたのは <<美柳 ちなみ>>だったのです! |
裁: |
い‥‥いいかげんに しなさいッ! ‥‥弁護人! よろしいですかッ! <<霊媒>>などというものを 認めてしまっては、裁判など‥‥ |
?: |
‥‥おだまりなさいな。 おひさしぶりね‥‥ オジサマ。 |
裁: |
‥‥‥‥! そ、その‥‥しぐさは‥‥‥ |
ゴ: |
どうやら‥‥あらためて、 聞く必要がありそうだな。 |
?: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
ゴ: |
‥‥カワイコちゃんには、 名前と職業を聞く。 それが、オレのルールだぜ。 |
ち: |
美柳 ちなみよ。 今は‥‥‥死者、やってるわ。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
ゴ: |
クッ‥‥! もう、正体をかくすつもりは ねえようだな。 |
ち: |
‥‥まあ、そうね。 アタシ、もう死んでるから。 アンタたちには‥‥、もうアタシを 罰することはできないでしょ? |
裁: | ‥‥な、なんという‥‥ |
成: |
(‥‥美柳 ちなみ‥‥ まさか‥‥こんな状況で <<再会>>するなんて‥‥ 今こそ‥‥決着をつけるんだ! 彼女と、ぼく自身に‥‥) |