成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
地方裁判所 第7法廷 | |
裁: |
‥‥それでは、審理を つづけたいと思います。 よろしいですかな? 証人。 |
ち: | 何かしら? ‥‥オジサマ。 |
裁: |
‥‥どうやら‥‥ <<真実>>を知るためには、 ワレワレは、あなたの証言を 聞く必要があるようです。 |
ち: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ アタシは、かまわないわ。 <<真実>>なんて、知らないほうが いいかもしれないけど、ね。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
‥‥それでは、 証言をおねがいします! 事件当夜、葉桜院で実行された <<計画>>について! |
ち: |
『‥‥すべての計画は、 アタシの死によって始まったわ。』(証言1) 『<<自分の娘を家元にする>>‥‥ 綾里 キミ子の、くだらない計画。』(証言2) 『そのためには‥‥、綾里 真宵を 暗殺してしまえばよかった。』(証言3) 『真宵を殺す役は、アタシ。その罪は あやめに着せるはずだったわ。』(証言4) 『ちょっと、計画は狂ったけど‥‥ どうやら、成功したみたいね。』(証言5) |
裁: |
そ‥‥それでは、 あなたは、やはり‥‥ |
成: |
ちょっと待ってください! 今の証言‥‥ 綾里 真宵を‥‥ <<暗殺>>ですって‥‥? |
ち: | それが、何か‥‥? |
成: |
ふざけるな! ‥‥まさか、彼女を‥‥ |
ゴ: |
みっともねえぜ‥‥まるほどう。 ギモンは、尋問で解決する。 ‥‥そいつが、オレのルールだぜ。 |
裁: |
そ、そうです! ちなみに それは、私のルールでもあります! |
成: |
(ま‥‥真宵ちゃんが‥‥ まさか、そんなことが!) |
成: | 先月の<<死刑>>‥‥ですか。 |
ち: |
そう。‥‥絞首刑。 死ぬのもラクじゃないわ。 |
成: |
いったい、どうやって 打ち合わせをしたんですか? 今回の計画のことを‥‥ 綾里 キミ子と。 |
ち: |
去年‥‥あの女の刑が 決まって、刑務所に入ってきたわ。 アタシが死刑囚で、彼女が 母親ということもあって‥‥ ふたりで会うのは、 意外にラクだったわ。 |
裁: |
なるほど。 そのときに、計画を‥‥ |
ち: |
‥‥ハッ! あきれるでしょ? あの女の計画には、最初から アタシの死が組みこまれていた。 ‥‥自分のムスメだってのにね。 |
成: |
綾里 春美を家元に するため、ですか‥‥ |
ち: |
キミ子のココロは、もうとっくに コワれているわ。 ‥‥自分がつかむハズ だった、彼女の”栄光”‥‥ <<家元>>の座を、 妹の舞子に奪われたときに‥‥。 その日から‥‥今回の 計画は始まっていたのね。 |
裁: | ‥‥<<計画>>‥‥ |
成: |
‥‥自分の娘、というのは‥‥ 綾里 春美、ですね。 |
ち: |
キミ子も、最初はアタシたちに 目をつけていたみたいだけど。 |
ゴ: |
アンタと‥‥双子の妹の あやめ、ってワケかい。 |
ち: |
幸い、アタシたちは、くだらない <<霊力>>には縁がなかったわ。 だから‥‥捨てられた。 父親といっしょにね。 |
裁: | す‥‥、捨てられた‥‥ |
ち: |
アタシは、自分の暮らし以外は どうでもよかったから‥‥ トロい妹を、あのビンボーくさい 古寺に追い払ってやったわけ。 |
成: | あやめさん、ですか‥‥? |
ち: |
‥‥父親の再婚相手にも、 ムスメがひとり、いたわ。 子どもの数は、少ないに 越したことはないでしょ? それに、父親は、子どもには まったく無関心だったし。 |
裁: | ‥‥なんと、ヒドいことを‥‥ |
ち: |
本当にヒドいのは、アイツよ。 あきらめの悪い、あのオンナ‥‥ アイツの執念で、あの子が 産まれた。‥‥春美という子が。 <<霊力>>もじゅうぶんだったわ。 あの子にとっては、不幸なコトに。 キミ子は、春美に自分の夢を たくしたの。 倉院流の<<家元>>になるという、 くだらない、ちっぽけな夢を‥‥ |
成: |
ま、真宵ちゃんを‥‥ ”暗殺”だとッ! |
ち: |
家元の血を絶ってしまえば、 分家にチャンスが回ってくるわ。 春美が<<家元>>になるためには、 それしか方法はないでしょ。 |
成: |
そんな計画、春美ちゃんが 認めるワケがない! 春美ちゃんは、 真宵ちゃんのことを‥‥ |
ち: |
‥‥やれやれ。 まだ、わからないのかしら‥‥? 春美の意志なんて、 まったくカンケイないの。 キミ子にとってダイジなのは、 春美なんかじゃない。 <<家元>>の座。 ‥‥それだけなのよ。 |
成: | そ‥‥そんな、バカな話が‥‥! |
ち: |
‥‥そのためには、すべてを ギセイにしても、かまわない。 自分の娘も‥‥モチロン、 綾里 真宵の命も、ね。 |
成: | (‥‥なんてこった‥‥) |
成: |
お、おまえが‥‥ おまえが、真宵ちゃんを‥‥? |
ち: |
‥‥春美は、 何も知らなくてよかった‥‥ あの子は、手紙のとおりに アタシを呼ぶだけでよかった。 あとは‥‥あの子にかわって、 アタシが、ケリをつけるだけ。 なにしろ‥‥ 死者が何をしようと、アンタたち には、手がとどかないのだから‥‥ |
成: | ぐ‥‥‥ッ! |
ゴ: |
その”罪”を‥‥ 妹に着せようとしたワケか。 葉桜院の<<あやめ>>に‥‥ |
ち: |
アタシとあの子は、見分けが つかないほど似ていたわ。 アタシが真宵を殺すところを だれかに目撃させれば‥‥ <<殺人の罪を着せられる>> ‥‥そう考えたわけ。 |
ゴ: |
その<<目撃者>>ってのが‥‥ あの住職だったのか! |
ち: |
まさか、葉桜院に 帰っちゃうとは思わなかったわ。 でも‥‥‥結果的には、あやめの <<犯行>>を目撃してくれたけど。 |
裁: |
しかし! なぜ、あやめさんに 罪を着せようとしたのですか! あなたの妹さん‥‥なのですよね? |
ち: |
”いもうと”‥‥? とんでもないわ。 アイツは、ただの裏切り者よ。 何をされても、モンクは言えない。 |
成: | ”うらぎりもの”‥‥? |
ち: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ アンタには、わからないわ。 ‥‥永久に、ね。 とにかく‥‥ |
成: | せ、”成功”‥‥だって? |
ち: |
そうよ。 あのオンナの計画どおり‥‥ ‥‥綾里 真宵は死んだわ。 これで、<<家元>>の座は 春美のものになるわね。 |
成: |
ば、バカな! ま、真宵ちゃんは‥‥ 閉じこめられているんだ! あの、修験洞の中に! |
ち: |
フッ‥‥ あいかわらず、マヌケなのね。 ‥‥リュウちゃん‥‥ |
成: | ‥‥‥! |
ち: |
今だから、教えてあげる。 大っキライだったわ。 ‥‥初めて会ったときから。 アマったれで‥‥ ヒトを信じることしかできない。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥1つだけ‥‥ 教えてほしい。 きみ自身は、綾里 キミ子の計画を どう思っていたんだ‥‥? |
ち: |
言ったはずよ。 ”くだらない”って。 なんのイミも、価値もない。 自分のためにすら、ならない‥‥ ‥‥そう。 この世で、最低の計画ね。 |
成: |
それならば、なぜ! 綾里 キミ子に手を貸したんだ! 真宵ちゃんを‥‥ 殺そう、なんて‥‥! |
ち: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ お人好しのアンタには わからないかもしれないわね。 なぜ、このアタシが‥‥ あのオンナに手を貸したか? |
成: | どうしてなんだッ! |
ち: |
決まってるでしょ? アタシは、あのオンナとはちがう。 アタシは、アタシのためにしか 行動しないわ。 あのオンナに協力したのは‥‥ 自分のため。 この、アタシの<<目的>>を 果たすためよ! |
成: |
なんだと‥‥! (このオンナ‥‥ 美柳 ちなみには‥‥ 彼女だけの <<目的>>があったのか‥‥!) |
ち: |
『綾里 真宵を殺した理由‥‥ その<<目的>>がわかるかしら?』(証言6) |
成: |
もしかしたら‥‥ あなたの<<目的>>は、綾里 真宵 自身ではなかったのでは‥‥? |
ち: |
‥‥アンタたちは、アタシを 罰することはできない。 なぜなら‥‥ アタシは、<<死者>>だから。 それと同じコトよ。 死者は、罰することも‥‥ 復讐することもできないの。 |
裁: | ふ、”ふくしゅう”‥‥ |
ち: |
アタシが死刑になったのは‥‥ あのオンナのせいよ。 ‥‥綾里 千尋‥‥。 |
成: | (やっぱり‥‥そうか) |
ち: |
‥‥思い知らせてやりたかった。 アタシに、初めてクツジョクを 与えた、あの綾里 千尋に‥‥ 同じ思いをさせたかったのよ! でも‥‥それは、不可能だと あきらめていたわ。 |
ゴ: |
その理由は、モチロン‥‥ 綾里 千尋も‥‥すでに 死んでいるから、だな‥‥? |
ち: |
‥‥たった1つだけ‥‥ 死者に復讐する方法に気づいたの。 |
裁: |
な‥‥ なんですかな、それは! |
ち: |
肉体は消えても、その魂は‥‥ プライドは、永遠に残るわ。 綾里 千尋にとって、いちばん 大切な者の命を、奪う。 アタシが、この手で‥‥殺す! それこそが‥‥ 綾里 千尋に対する、 アタシの復讐だったのよ! それこそが、あのオンナの計画に 手を貸した、たった1つの理由よ! |
成: |
そんなことのために、 真宵ちゃんを‥‥! おまえのやったことは‥‥ 綾里 キミ子と同じだ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 母親も母親なら‥‥ 娘もムスメ、ですね‥‥ ひたすら自己中心的で、 ‥‥ザンコクな計画です。 |
ち: |
‥‥ハッ! 死者に何を言っても、ムダよ。 どうあがこうと、アンタたちは アタシに手が届かないんだから。 |
成: | ぐ‥‥‥ッ! |
ち: |
‥‥あの夜‥‥ 午後9時半ごろ、アタシは ”この世”に降りてきた。 急いで髪を結いなおして‥‥ <<退魔のずきん>>を用意したわ。 そして‥‥そばにあったツエを 持って、葉桜院を出たの。 |
成: |
(やはり‥‥彼女を霊媒したのは 天流斎 エリスだったのか‥‥) |
ち: |
‥‥あの住職、アタシには 気がつかなかったわ。 <<はなれ>>でしたくをしている 綾里 真宵を残して‥‥ コシを抱えて、よろめきながら 帰ってしまった‥‥ |
裁: | そ。そこで、あなたは‥‥? |
ち: |
あんな、ガキ‥‥ カンタンなシゴトだったわ。 大きな灯ろうの前で‥‥ アタシは、あの子を追いつめた。 そして‥‥物置で拾った 小刀で、切りかかったの。 |
成: |
そ、それで! お、おまえは‥‥ ま‥‥真宵ちゃんを‥‥ 刺した、って言うのかッ! |
ち: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥フシギなことに‥‥ そこからの記憶は ハッキリしないの。 |
裁: |
‥‥どういうことですか! ”ハッキリしない”‥‥? |
ち: |
わからない‥‥ アタシ‥‥ 刺されたような気がするわ。 |
成: | さ、刺された‥‥だって! |
ち: |
最後の瞬間‥‥綾里 真宵は アタシに反撃したのね、きっと。 |
成: |
ば‥‥バカなッ! 真宵ちゃんが‥‥反撃なんて! |
ち: |
とにかく‥‥急に‥‥ 意識が、遠くなって‥‥ アタシ、灯ろうにもたれかかって ‥‥あの、名前を書いたわ。 背中ごしに<<マヨイ>>って‥‥。 ‥‥夢中だった。 せめて‥‥綾里 真宵に 疑いがかかるように‥‥ |
成: |
(な、なんという くらい執念だ‥‥) |
ち: |
‥‥そこで‥‥ アタシの記憶は、とぎれたの。 |
裁: | と‥‥”とぎれた”‥‥? |
ち: |
<<綾里 真宵をこの手で殺害した>> ‥‥アタシに、その記憶はないわ。 あのときの、最後の記憶は‥‥ 綾里 真宵の、おびえきった目。 ‥‥そして‥‥ 次に意識を取り戻したとき‥‥ アタシは、闇の中‥‥ <<修験洞>>にいたわ。 |
裁: |
しゅ‥‥修験洞? ほら穴の中、ですか‥‥ |
ち: |
‥‥入り口には、いまいましい <<錠>>がかかっていた。 アタシ、閉じこめられて しまったわけね。 |
ゴ: |
なぜ‥‥アンタが、 そんなところに? |
ち: |
‥‥こっちが聞きたいわね。 とにかく‥‥アセったわ。 アタシは、まだ綾里 真宵の 死体を、この目で見ていなかった。 この手で、殺すまで‥‥ 冥界に帰るワケには行かない。 |
ゴ: |
く‥‥‥クッ! しつこいオンナだぜ‥‥ |
ち: |
すぐにでも、あの子の死体を カクニンしに行きたかった。 ‥‥でも‥‥できなかったわ。 |
ゴ: | <<からくり錠>>‥‥か‥‥ |
ち: |
アタシ、はずし方を 知らなかったから。 |
裁: |
そ、それでは‥‥あなたは! 閉じこめられていたわけですか! 修験洞の中に‥‥! |
ち: |
一刻も早く、いまいましい<<錠>>を 解除したかったんだけど‥‥ そうカンタンには行かなかった。 途中で何度か、ジャマが入ったし。 |
成: | ”ジャマ”‥‥? |
ち: |
あれは、まだ朝も早いころ‥‥ 修験堂に、だれかが入ってきたの。 |
裁: |
な‥‥なんですと! いったい、だれが! |
成: |
もしかして‥‥ 真宵ちゃんがッ! |
ち: |
アタシも、そう思ったわ。 でも‥‥見ることはできなかった。 |
成: | な‥‥なぜ! |
ち: |
もし、第三者に私の姿を見られたら そこで復讐のチャンスは、終わり。 ‥‥だから、修験洞の奥に かくれるしかなかったのよ。 |
成: |
(‥‥あの日、修験堂に入ることが できたのは‥‥2人だけ。 真宵ちゃんと‥‥ 春美ちゃん、だ。 春美ちゃんは‥‥あの掛け軸に カレーをかけるために‥‥) |
ち: |
‥‥それでも、やっと<<錠>>を はずすことができたわ。 ‥‥ただ‥‥ もう、すでに遅かったみたい。 |
ゴ: | ”遅かった”‥‥? |
ち: |
‥‥うるさいハエどもが むらがってきたのよ。 |
ゴ: |
‥‥橋が修復されて、警官たちが 捜査を始めたワケ、だな‥‥ |
ち: |
アタシは当然、 出ていくことはできなかった。 だから‥‥修験洞に戻って、 自分で<<錠>>をかけなおしたの。 もう、自分の目で真相をたしかめる チャンスはない‥‥そう思ったわ。 でも、そのとき‥‥ 奇跡が起こった。 |
成: | <<キセキ>>‥‥? |
ち: |
あの、大きな地震のあと‥‥ あの子が来たわ。たったひとりで。 |
成: |
‥‥”ホンモノ”の あやめさん、か‥‥ |
ち: |
修験洞がブジかどうか、 見に来たんだって。‥‥バカな子。 アタシは、修験洞を出て‥‥ 大まかな話を聞いたわ。 ‥‥そして、かわりに あの子を閉じこめておいたの。 そのとき‥‥やっと。 すべてがわかったのよ。 アタシたちの計画は‥‥ 成功していたのだ、と。 |
成: |
‥‥どういうことだ? 計画が‥‥”成功”‥‥? |
ち: |
アタシは‥‥1つだけ、 大きなカンちがいをしていたの。 あの晩、アタシの霊を 呼び出したのは‥‥ 当然、<<綾里 春美>>だと 思っていたわ。 |
裁: |
そ、それはそうでしょう。 手紙で指示されているのですから。 |
ち: |
でも‥‥ちがった。 事件当夜、アタシを 霊媒していたのは‥‥ <<綾里 舞子>>‥‥あの 絵本作家だったのよ。 |
裁: | な‥‥なんですって‥‥! |
ち: |
だって‥‥そうとしか 考えられないでしょう? あの中庭で、アタシの 意識がとぎれて‥‥ そのあとに残ったのは、 彼女の死体だったのだから‥‥ |
ち: |
綾里 真宵‥‥。このアタシが 手をくだすまでもなかったわ。 あの子は‥‥この世で最も 大きな<<罪>>を犯してしまった。 |
裁: | この世で‥‥最も大きな‥‥? |
ち: |
‥‥そう。自分の母親を 殺害するという<<罪>>を! |
成: |
そ‥‥‥‥ そんなあああァァァッ! |