第5話『華麗なる逆転』第2回法廷(その4)

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成歩堂 龍一…黒
綾里 千尋…赤
綾里 真宵…青
綾里 春美…黄緑
御剣 怜侍…茶
狩魔 冥…水
糸鋸 圭介…黄土
ゴドー検事…薄橙
裁判長…緑
裁判官…黄
矢張 政志…紺
天龍斎 エリス…桃
毘忌尼…橙
葉桜院 あやめ…藤
美柳 ちなみ…紫
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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同日 午後1時6分
地方裁判所 第7法廷

裁: ‥‥それでは、審理を
つづけたいと思います。
よろしいですかな? 証人。
ち: 何かしら? ‥‥オジサマ。
裁: ‥‥どうやら‥‥
<<真実>>を知るためには、
ワレワレは、あなたの証言を
聞く必要があるようです。
ち: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アタシは、かまわないわ。
<<真実>>なんて、知らないほうが
いいかもしれないけど、ね。
成: ‥‥‥‥‥‥‥
裁: ‥‥それでは、
証言をおねがいします!
事件当夜、葉桜院で実行された
<<計画>>について!

(<<計  画>>)
ち: 『‥‥すべての計画は、
アタシの死によって始まったわ。』(証言1)
『<<自分の娘を家元にする>>‥‥
綾里 キミ子の、くだらない計画。』(証言2)
『そのためには‥‥、綾里 真宵を
暗殺してしまえばよかった。』(証言3)
『真宵を殺す役は、アタシ。その罪は
あやめに着せるはずだったわ。』(証言4)
『ちょっと、計画は狂ったけど‥‥
どうやら、成功したみたいね。』(証言5)
裁: そ‥‥それでは、
あなたは、やはり‥‥

(成歩堂「待った!」)
成: ちょっと待ってください!
今の証言‥‥
綾里 真宵を‥‥
<<暗殺>>ですって‥‥?
ち: それが、何か‥‥?
成: ふざけるな!
‥‥まさか、彼女を‥‥
ゴ: みっともねえぜ‥‥まるほどう。
ギモンは、尋問で解決する。
‥‥そいつが、オレのルールだぜ。
裁: そ、そうです! ちなみに
それは、私のルールでもあります!
成: (ま‥‥真宵ちゃんが‥‥
まさか、そんなことが!)

(「証言1」をゆさぶる)
成: 先月の<<死刑>>‥‥ですか。
ち: そう。‥‥絞首刑。
死ぬのもラクじゃないわ。
成: いったい、どうやって
打ち合わせをしたんですか?
今回の計画のことを‥‥
綾里 キミ子と。
ち: 去年‥‥あの女の刑が
決まって、刑務所に入ってきたわ。
アタシが死刑囚で、彼女が
母親ということもあって‥‥
ふたりで会うのは、
意外にラクだったわ。
裁: なるほど。
そのときに、計画を‥‥
ち: ‥‥ハッ!
あきれるでしょ?
あの女の計画には、最初から
アタシの死が組みこまれていた。
‥‥自分のムスメだってのにね。
成: 綾里 春美を家元に
するため、ですか‥‥
ち: キミ子のココロは、もうとっくに
コワれているわ。
‥‥自分がつかむハズ
だった、彼女の”栄光”‥‥
<<家元>>の座を、
妹の舞子に奪われたときに‥‥。
その日から‥‥今回の
計画は始まっていたのね。
裁: ‥‥<<計画>>‥‥

(「証言2」をゆさぶる)
成: ‥‥自分の娘、というのは‥‥
綾里 春美、ですね。
ち: キミ子も、最初はアタシたちに
目をつけていたみたいだけど。
ゴ: アンタと‥‥双子の妹の
あやめ、ってワケかい。
ち: 幸い、アタシたちは、くだらない
<<霊力>>には縁がなかったわ。
だから‥‥捨てられた。
父親といっしょにね。
裁: す‥‥、捨てられた‥‥
ち: アタシは、自分の暮らし以外は
どうでもよかったから‥‥
トロい妹を、あのビンボーくさい
古寺に追い払ってやったわけ。
成: あやめさん、ですか‥‥?
ち: ‥‥父親の再婚相手にも、
ムスメがひとり、いたわ。
子どもの数は、少ないに
越したことはないでしょ?
それに、父親は、子どもには
まったく無関心だったし。
裁: ‥‥なんと、ヒドいことを‥‥
ち: 本当にヒドいのは、アイツよ。
あきらめの悪い、あのオンナ‥‥
アイツの執念で、あの子が
産まれた。‥‥春美という子が。
<<霊力>>もじゅうぶんだったわ。
あの子にとっては、不幸なコトに。
キミ子は、春美に自分の夢を
たくしたの。
倉院流の<<家元>>になるという、
くだらない、ちっぽけな夢を‥‥

(「証言3」をゆさぶる)
成: ま、真宵ちゃんを‥‥
”暗殺”だとッ!
ち: 家元の血を絶ってしまえば、
分家にチャンスが回ってくるわ。
春美が<<家元>>になるためには、
それしか方法はないでしょ。

(成歩堂「異議あり!」)
成: そんな計画、春美ちゃんが
認めるワケがない!
春美ちゃんは、
真宵ちゃんのことを‥‥
ち: ‥‥やれやれ。
まだ、わからないのかしら‥‥?
春美の意志なんて、
まったくカンケイないの。
キミ子にとってダイジなのは、
春美なんかじゃない。
<<家元>>の座。
‥‥それだけなのよ。
成: そ‥‥そんな、バカな話が‥‥!
ち: ‥‥そのためには、すべてを
ギセイにしても、かまわない。
自分の娘も‥‥モチロン、
綾里 真宵の命も、ね。
成: (‥‥なんてこった‥‥)

(「証言4」をゆさぶる)
成: お、おまえが‥‥
おまえが、真宵ちゃんを‥‥?
ち: ‥‥春美は、
何も知らなくてよかった‥‥
あの子は、手紙のとおりに
アタシを呼ぶだけでよかった。
あとは‥‥あの子にかわって、
アタシが、ケリをつけるだけ。
なにしろ‥‥
死者が何をしようと、アンタたち
には、手がとどかないのだから‥‥
成: ぐ‥‥‥ッ!
ゴ: その”罪”を‥‥
妹に着せようとしたワケか。
葉桜院の<<あやめ>>に‥‥
ち: アタシとあの子は、見分けが
つかないほど似ていたわ。
アタシが真宵を殺すところを
だれかに目撃させれば‥‥
<<殺人の罪を着せられる>>
‥‥そう考えたわけ。
ゴ: その<<目撃者>>ってのが‥‥
あの住職だったのか!
ち: まさか、葉桜院に
帰っちゃうとは思わなかったわ。
でも‥‥‥結果的には、あやめの
<<犯行>>を目撃してくれたけど。
裁: しかし! なぜ、あやめさんに
罪を着せようとしたのですか!
あなたの妹さん‥‥なのですよね?
ち: ”いもうと”‥‥?
とんでもないわ。
アイツは、ただの裏切り者よ。
何をされても、モンクは言えない。
成: ”うらぎりもの”‥‥?
ち: ‥‥‥‥‥‥‥‥
アンタには、わからないわ。
‥‥永久に、ね。
とにかく‥‥

(「証言5」をゆさぶる)
成: せ、”成功”‥‥だって?
ち: そうよ。
あのオンナの計画どおり‥‥
‥‥綾里 真宵は死んだわ。
これで、<<家元>>の座は
春美のものになるわね。

(成歩堂「異議あり!」)
成: ば、バカな!
ま、真宵ちゃんは‥‥
閉じこめられているんだ!
あの、修験洞の中に!
ち: フッ‥‥
あいかわらず、マヌケなのね。
‥‥リュウちゃん‥‥
成:‥‥‥!
ち: 今だから、教えてあげる。
大っキライだったわ。
‥‥初めて会ったときから。
アマったれで‥‥
ヒトを信じることしかできない。
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥1つだけ‥‥
教えてほしい。
きみ自身は、綾里 キミ子の計画を
どう思っていたんだ‥‥?
ち: 言ったはずよ。
”くだらない”って。
なんのイミも、価値もない。
自分のためにすら、ならない‥‥
‥‥そう。
この世で、最低の計画ね。
成: それならば、なぜ!
綾里 キミ子に手を貸したんだ!
真宵ちゃんを‥‥
殺そう、なんて‥‥!
ち: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
お人好しのアンタには
わからないかもしれないわね。
なぜ、このアタシが‥‥
あのオンナに手を貸したか?
成: どうしてなんだッ!
ち: 決まってるでしょ?
アタシは、あのオンナとはちがう。
アタシは、アタシのためにしか
行動しないわ。
あのオンナに協力したのは‥‥
自分のため。
この、アタシの<<目的>>を
果たすためよ!
成: なんだと‥‥!
(このオンナ‥‥
美柳 ちなみには‥‥
彼女だけの
<<目的>>があったのか‥‥!)
ち: 『綾里 真宵を殺した理由‥‥
その<<目的>>がわかるかしら?』(証言6)

(「証言6」に「綾里 千尋」をつきつける)
成: もしかしたら‥‥
あなたの<<目的>>は、綾里 真宵
自身ではなかったのでは‥‥?
ち: ‥‥アンタたちは、アタシを
罰することはできない。
なぜなら‥‥
アタシは、<<死者>>だから。
それと同じコトよ。
死者は、罰することも‥‥
復讐することもできないの。
裁: ふ、”ふくしゅう”‥‥
ち: アタシが死刑になったのは‥‥
あのオンナのせいよ。
‥‥綾里 千尋‥‥。
成: (やっぱり‥‥そうか)
ち: ‥‥思い知らせてやりたかった。
アタシに、初めてクツジョクを
与えた、あの綾里 千尋に‥‥
同じ思いをさせたかったのよ!
でも‥‥それは、不可能だと
あきらめていたわ。
ゴ: その理由は、モチロン‥‥
綾里 千尋も‥‥すでに
死んでいるから、だな‥‥?
ち: ‥‥たった1つだけ‥‥
死者に復讐する方法に気づいたの。
裁: な‥‥
なんですかな、それは!
ち: 肉体は消えても、その魂は‥‥
プライドは、永遠に残るわ。
綾里 千尋にとって、いちばん
大切な者の命を、奪う。
アタシが、この手で‥‥殺す!
それこそが‥‥
綾里 千尋に対する、
アタシの復讐だったのよ!
それこそが、あのオンナの計画に
手を貸した、たった1つの理由よ!
成: そんなことのために、
真宵ちゃんを‥‥!
おまえのやったことは‥‥
綾里 キミ子と同じだ!

(ざわめきが起こる)
裁: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
母親も母親なら‥‥
娘もムスメ、ですね‥‥
ひたすら自己中心的で、
‥‥ザンコクな計画です。
ち: ‥‥ハッ!
死者に何を言っても、ムダよ。
どうあがこうと、アンタたちは
アタシに手が届かないんだから。
成: ぐ‥‥‥ッ!
ち: ‥‥あの夜‥‥
午後9時半ごろ、アタシは
”この世”に降りてきた。
急いで髪を結いなおして‥‥
<<退魔のずきん>>を用意したわ。
そして‥‥そばにあったツエを
持って、葉桜院を出たの。
成: (やはり‥‥彼女を霊媒したのは
天流斎 エリスだったのか‥‥)
ち: ‥‥あの住職、アタシには
気がつかなかったわ。
<<はなれ>>でしたくをしている
綾里 真宵を残して‥‥
コシを抱えて、よろめきながら
帰ってしまった‥‥
裁: そ。そこで、あなたは‥‥?
ち: あんな、ガキ‥‥
カンタンなシゴトだったわ。
大きな灯ろうの前で‥‥
アタシは、あの子を追いつめた。
そして‥‥物置で拾った
小刀で、切りかかったの。
成: そ、それで! お、おまえは‥‥
ま‥‥真宵ちゃんを‥‥
刺した、って言うのかッ!
ち: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥フシギなことに‥‥
そこからの記憶は
ハッキリしないの。
裁: ‥‥どういうことですか!
”ハッキリしない”‥‥?
ち: わからない‥‥
アタシ‥‥
刺されたような気がするわ。
成: さ、刺された‥‥だって!
ち: 最後の瞬間‥‥綾里 真宵は
アタシに反撃したのね、きっと。

(成歩堂「異議あり!」)
成: ば‥‥バカなッ!
真宵ちゃんが‥‥反撃なんて!
ち: とにかく‥‥急に‥‥
意識が、遠くなって‥‥
アタシ、灯ろうにもたれかかって
‥‥あの、名前を書いたわ。
背中ごしに<<マヨイ>>って‥‥。
‥‥夢中だった。
せめて‥‥綾里 真宵に
疑いがかかるように‥‥
成: (な、なんという
くらい執念だ‥‥)
ち: ‥‥そこで‥‥
アタシの記憶は、とぎれたの。
裁: と‥‥”とぎれた”‥‥?
ち: <<綾里 真宵をこの手で殺害した>>
‥‥アタシに、その記憶はないわ。
あのときの、最後の記憶は‥‥
綾里 真宵の、おびえきった目。
‥‥そして‥‥
次に意識を取り戻したとき‥‥
アタシは、闇の中‥‥
<<修験洞>>にいたわ。
裁: しゅ‥‥修験洞?
ほら穴の中、ですか‥‥
ち: ‥‥入り口には、いまいましい
<<錠>>がかかっていた。
アタシ、閉じこめられて
しまったわけね。
ゴ: なぜ‥‥アンタが、
そんなところに?
ち: ‥‥こっちが聞きたいわね。
とにかく‥‥アセったわ。
アタシは、まだ綾里 真宵の
死体を、この目で見ていなかった。
この手で、殺すまで‥‥
冥界に帰るワケには行かない。
ゴ: く‥‥‥クッ!
しつこいオンナだぜ‥‥
ち: すぐにでも、あの子の死体を
カクニンしに行きたかった。
‥‥でも‥‥できなかったわ。
ゴ: <<からくり錠>>‥‥か‥‥
ち: アタシ、はずし方を
知らなかったから。
裁: そ、それでは‥‥あなたは!
閉じこめられていたわけですか!
修験洞の中に‥‥!
ち: 一刻も早く、いまいましい<<錠>>を
解除したかったんだけど‥‥
そうカンタンには行かなかった。
途中で何度か、ジャマが入ったし。
成: ”ジャマ”‥‥?
ち: あれは、まだ朝も早いころ‥‥
修験堂に、だれかが入ってきたの。
裁: な‥‥なんですと!
いったい、だれが!
成: もしかして‥‥
真宵ちゃんがッ!
ち: アタシも、そう思ったわ。
でも‥‥見ることはできなかった。
成: な‥‥なぜ!
ち: もし、第三者に私の姿を見られたら
そこで復讐のチャンスは、終わり。
‥‥だから、修験洞の奥に
かくれるしかなかったのよ。
成: (‥‥あの日、修験堂に入ることが
できたのは‥‥2人だけ。
真宵ちゃんと‥‥
春美ちゃん、だ。
春美ちゃんは‥‥あの掛け軸に
カレーをかけるために‥‥)
ち: ‥‥それでも、やっと<<錠>>を
はずすことができたわ。
‥‥ただ‥‥
もう、すでに遅かったみたい。
ゴ: ”遅かった”‥‥?
ち: ‥‥うるさいハエどもが
むらがってきたのよ。
ゴ: ‥‥橋が修復されて、警官たちが
捜査を始めたワケ、だな‥‥
ち: アタシは当然、
出ていくことはできなかった。
だから‥‥修験洞に戻って、
自分で<<錠>>をかけなおしたの。
もう、自分の目で真相をたしかめる
チャンスはない‥‥そう思ったわ。
でも、そのとき‥‥
奇跡が起こった。
成: <<キセキ>>‥‥?
ち: あの、大きな地震のあと‥‥
あの子が来たわ。たったひとりで。
成: ‥‥”ホンモノ”の
あやめさん、か‥‥
ち: 修験洞がブジかどうか、
見に来たんだって。‥‥バカな子。
アタシは、修験洞を出て‥‥
大まかな話を聞いたわ。
‥‥そして、かわりに
あの子を閉じこめておいたの。
そのとき‥‥やっと。
すべてがわかったのよ。
アタシたちの計画は‥‥
成功していたのだ、と。
成: ‥‥どういうことだ?
計画が‥‥”成功”‥‥?
ち: アタシは‥‥1つだけ、
大きなカンちがいをしていたの。
あの晩、アタシの霊を
呼び出したのは‥‥
当然、<<綾里 春美>>だと
思っていたわ。
裁: そ、それはそうでしょう。
手紙で指示されているのですから。
ち: でも‥‥ちがった。
事件当夜、アタシを
霊媒していたのは‥‥
<<綾里 舞子>>‥‥あの
絵本作家だったのよ。
裁: な‥‥なんですって‥‥!
ち: だって‥‥そうとしか
考えられないでしょう?
あの中庭で、アタシの
意識がとぎれて‥‥
そのあとに残ったのは、
彼女の死体だったのだから‥‥

(ざわめきが起こる)
ち: 綾里 真宵‥‥。このアタシが
手をくだすまでもなかったわ。
あの子は‥‥この世で最も
大きな<<罪>>を犯してしまった。
裁: この世で‥‥最も大きな‥‥?
ち: ‥‥そう。自分の母親を
殺害するという<<罪>>を!
成: そ‥‥‥‥
そんなあああァァァッ!

(ざわめきが起こる)


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