成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
成: |
あなたにとって、綾里 真宵は 特別な存在だったはずです! なにしろ‥‥ 綾里 千尋の、たったひとりの 妹だったのですからね。 |
真: | ‥‥‥‥! |
ゴ: | アヤサト チヒロ‥‥ |
成: |
‥‥千尋さんは、 あなたの後輩でした。 あなた自身が‥‥まだ、 弁護士だったころのことです。 |
裁: |
ちょ‥‥ちょっと 待ってください! ゴドー検事が‥‥ 弁護士、ですって! |
成: |
さすがの裁判長も お気づきだと思いますが‥‥ <<ゴドー>>というのは、 彼の本名ではありません。 本当の名前は‥‥神乃木 荘龍。 そうですね? |
ゴ: |
‥‥最後にその名前で 呼ばれたのは‥‥ もう、6年以上も前のコトだ。 |
裁: |
”かみのぎ そうりゅう”‥‥ どこかで、聞いたことがあります。 |
成: |
すべては‥‥ある審理から 始まりました。 ‥‥脱獄犯・尾並田 美散が 服毒自殺をした、あの審理から‥‥ 初めての法廷で、綾里 千尋は ココロに深い傷を負いました。 ‥‥ある女の、 あまりに邪悪な犯行‥‥ 千尋さんは、それを暴くことが できなかったのです。 ‥‥そんな彼女に、 手をさしのべた人物がいました。 ‥‥神乃木 荘龍。彼女の先輩に あたる、弁護士でした。 |
千: |
『私のせいです! ‥‥私のせいで、 尾並田さんは‥‥』 |
神: |
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥ チヒロ‥‥ 今はまだ、泣くときじゃねえ。 オトコが泣いていいのは‥‥ すべてを終えたときだけ、だぜ。』 |
ゴ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ オレは、彼女に‥‥ ひかれていたんだろうぜ。 ひたむきに依頼人を信じる、 純粋な、そのココロに‥‥ だから‥‥美柳 ちなみを どうしてもユルせなかった。 オレとチヒロは、あの誘拐事件を テッテイ的に調べなおした。 そして‥‥あの、運命の日。 美柳 ちなみを呼び出したんだ。 審理から、半年後‥‥ 裁判所のカフェテリアに。 |
裁: |
あ‥‥ッ! お‥‥思い出しました! あなたは、6年前! 裁判所で、毒を盛られた‥‥! |
ゴ: |
‥‥さすがのオレも、 予想していなかったぜ。 美柳 ちなみが‥‥オレの コーヒーに、毒を盛るなんて‥‥ |
裁: |
‥‥一部の新聞記事は、 <<殺人事件>>と報道しましたな。 マスコミに流された情報は、 かなり制限されていましたから‥‥ |
成: |
しかし‥‥あなたは、 死んではいなかった! |
ゴ: |
‥‥公式資料のどこにも、 <<殺人事件>>とは書かれていねえ。 オレは、ただ‥‥‥ 深い眠りについたんだ。 |
成: | ”眠り”‥‥ |
ゴ: |
‥‥ずいぶん長いあいだ、 オレはムダに眠りつづけた。 あの女の毒は、オレの神経中枢を ズタズタにむしばんだのさ。 視力は失われて‥‥ 髪の色も、二度と戻らなかった。 |
真: | ‥‥検事さん‥‥ |
ゴ: |
‥‥オレが意識を取り戻したのは、 まさに奇跡だったらしい。 毒を飲まされてから‥‥ すでに5年の月日が流れていた。 ‥‥ある朝、オレは目をさました。 医者のいれたコーヒーのニオイで。 |
裁: |
ご‥‥5年間‥‥ あなたは、眠りつづけたのですか! |
ゴ: |
‥‥オレを待っていたのは、 絶望的な知らせだった。 ‥‥綾里 千尋の、死‥‥ 目ざめた瞬間‥‥オレは、 すべてを失っていたのさ。 ‥‥愛した女は、 すでに殺害されて‥‥ そして‥‥憎んだ女は、 すでに死刑判決を受けていた。 |
裁: | ”憎んだ女”‥‥ |
ゴ: |
オレに、あのアツい1杯をおごって くれた女‥‥美柳 ちなみさ! クッ‥‥! さすが、チヒロだぜ。 自分が殺される前に、キッチリ 復讐を済ませちまっていた。 ‥‥そう。 オレの目ざめを待つ者は‥‥ だれもいなかったのさ。 |
真: | そ‥‥そんな‥‥ |
ゴ: |
お寝坊さんのオレに残された <<生きる目的>>は‥‥ もう、たった2つしかなかった。 そのために‥‥オレは、 検事になることにしたのさ。 |
成: | 2つの‥‥<<生きる目的>>‥‥? |
ゴ: |
1つ目は、アンタだ。 ‥‥まるほどう。 |
成: |
え‥‥! ぼ‥‥ぼく、ですか‥‥! |
ゴ: |
‥‥もし、くだらねえ毒で 眠らされていなかったら‥‥ オレは決して、綾里 千尋を 死なせはしなかった。 |
成: | ‥‥‥! |
ゴ: |
アンタが‥‥アンタだけが! あのとき、彼女を守れたんだ。 だが‥‥‥彼女は死んだ。 アンタがガキだったせいで。 |
成: | そ、そんな‥‥ |
ゴ: |
オレは、この手で‥‥ アンタの力を試したかったのさ。 |
裁: |
そ‥‥そのために‥‥ あなたは、検事に? |
ゴ: |
‥‥もう1つ、理由があった。 モチロン‥‥”綾里 真宵”さ。 |
真: | あ‥‥あたし、ですか‥‥ |
ゴ: |
チヒロを守れなかったオレの、 せめてもの罪ほろぼしさ。 ‥‥1年前。倉院の里の 事件が解決されたとき‥‥ 綾里 キミ子が、何かを たくらむのは、明白だった。 その計画がどんなものだろうと‥‥ オレは、阻止するつもりでいた。 ‥‥<<検事>>という立場は、 その目的にピッタリだったのさ。 |
成: |
そして‥‥春美ちゃんとの面会を 盗聴したわけですか。 |
ゴ: |
”その時”が近づいているのは わかっていた。 <<計画書>>のありかを知ったオレは ‥‥先回りをした。 あの計画の、ウラをかくために。 それができれば‥‥ ‥‥もう、あの少女が計画に 利用されるコトもないはずだ。 |
成: |
(‥‥たしかに‥‥ 計画の真意が、真宵ちゃんの 暗殺だと思い知らされれば‥‥ 春美ちゃんは、もう二度と 協力しないだろう) |
ゴ: |
‥‥いよいよ犯行の日が 近づいたとき‥‥ オレは、ふたりの協力者たちと 連絡をとった。 |
裁: | <<協力者>>‥‥? |
ゴ: |
葉桜院の尼僧、あやめと‥‥ 綾里 舞子‥‥だ。 特にあやめは、計画書によると ”罪を着せられる”立場だった。 ‥‥彼女の協力は、 ゼッタイに必要だったのさ。 |
真: |
で、でも‥‥! どうして、おかあさんを 知っていたんですか! もう‥‥20年近くも 行方不明だったハズなのに‥‥! |
ゴ: | 表向きには、な‥‥ |
真: |
ど、どういうことですか! ‥‥<<表向き>>‥‥? |
ゴ: |
アンタも、聞いたことは あるだろう。 かつての倉院流霊媒道と、政財界の 結びつきの強さを‥‥ |
成: |
(そういえば‥‥ビキニさんが 言ってたっけ‥‥ 倉院流・家元の権力は、 絶大だった、って‥‥) |
ゴ: |
‥‥権威は失われても、 その力はホンモノだ。 警察は‥‥つねに、綾里 舞子の 動きを、マークしていたのさ。 だから‥‥オレは、 彼女に接触することができた。 <<検事>>という、 この身分のおかげで、な。 |
真: |
おかあさんは‥‥検事さんと 協力していたんですね‥‥ |
ゴ: |
‥‥忘れるな。 どんなに離れていても、彼女は 常に、アンタのことを考えていた。 |
真: | ‥‥おかあさんが‥‥ |
ゴ: |
だから‥‥アンタを守るためなら、 なんでもやったはずだ。 その<<カクゴ>>は‥‥ 彼女のツエに、あらわれている。 |
裁: |
カタナを仕込まれた‥‥ あのツエ、ですか! |
ゴ: |
いよいよ、計画が実行される その日になって‥‥ オレたちは、葉桜院で初めて カオを合わせた。 そのとき‥‥アンタの母親から あのツエを見せられて‥‥ ‥‥オレは、思い知らされた。 ”娘を想うキモチ”ってヤツを‥‥ あのカタナで、綾里 舞子は アンタを守るつもりだったのさ。 ‥‥そう! 自分の命にかえても‥‥ |
真: | お‥‥おかあさん‥‥ |
ゴ: |
あの晩‥‥事件当夜。 綾里 キミ子の計画をツブす ポイントは、たった1つだった。 |
成: |
モチロン‥‥ 綾里 春美、ですね。 |
ゴ: |
あの子に<<美柳 ちなみ>>の霊を 霊媒させてはならない‥‥ |
エ: |
『‥‥春美ちゃんは‥‥ 今晩は、どうするのかしら?』 |
春: | 『え‥‥ええと。そうですね‥‥』 |
エ: |
『よかったら‥‥わたくしの お部屋に来ないかしら? いっしょに、 ご本を読んであげましょう。』 |
ゴ: |
‥‥オレたちは、あの子の 足止めをしようと考えた。 しかし‥‥‥ あの子は、来なかった。 |
真: |
‥‥あたしのために、 <<奥の院>>へ来ちゃったから‥‥ |
ゴ: |
それは、考えられる サイアクの事態だった。 だからこそ‥‥ 綾里 舞子は、 霊媒せざるを得なかったのさ。 <<美柳 ちなみ>>の霊を‥‥ 自分自身の身体に。 |
裁: | ど‥‥どういうコトですか! |
成: |
‥‥彼女が、先に 霊を呼んでしまえば‥‥ 春美ちゃんには、もう どうすることもできないのです。 |
真: | ‥‥‥! |
ゴ: |
綾里 舞子‥‥ <<家元>>の霊力は、ゼッタイだ。 ‥‥そう。 彼女は、綾里 春美に霊媒させない ために、みずから霊を呼んだのさ! |
真: |
あ‥‥‥ あああああああああああッ! |
裁: |
‥‥な‥‥ なんということでしょう‥‥! |
ゴ: |
‥‥オレは、なんとしても アンタを守るつもりでいた。 だから‥‥<<奥の院>>には、 オレ自身が身をひそめていたのさ。 ”もしも”のときに‥‥ <<美柳 ちなみ>>を止めるために。 |
成: | ‥‥ゴドー検事‥‥ |
ゴ: |
‥‥さて。 オレが認めるのは、ここまでだぜ。 ‥‥まるほどう。 |
成: | え‥‥‥ |
ゴ: |
たしかに、 アンタは優秀な弁護士だよ。 だが‥‥ ただ、それだけだったのさ。 |
裁: |
‥‥この事件が起こるに至った 背景は、ハッキリしました。 残された問題は‥‥ただ1つです。 『だれが、被害者を殺害したのか』 犯行が可能だったのは‥‥ たった、ふたりです。 ‥‥綾里 真宵さん‥‥ もしくは、ゴドー検事! ‥‥あなたです。 |
ゴ: |
‥‥なあ、まるほどう。 もし、アンタが ”ホンモノ”ならば‥‥ 最後に、立証してみせてくれよ。 だれがやったのか‥‥カンペキに! アンタ自身の手でなァ! |
真: |
な‥‥なるほどくん! 待って‥‥おねがい! |
成: | ま‥‥真宵ちゃん‥‥ |
真: |
あたし‥‥ゼンブ、聞いたの。 お姉ちゃんから、さっき。 医務室で‥‥! だから! あたし‥‥ 検事さんを守らなきゃ、って‥‥ |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
真: |
あたし‥‥できないよ。 ‥‥証言なんて‥‥ だって‥‥ お姉ちゃんと、あたしのために‥‥ 命をかけてくれたヒトなんだよ! |
成: | ‥‥そんなコト、わかってるよ! |
真: | な、なるほどくん‥‥! |
成: |
でも‥‥ だからと言って、その<<罪>>が 消えるわけじゃない! ‥‥証言をしてもらうよ、 真宵ちゃん。 |
真: | ‥‥‥! |
裁: |
綾里 真宵さん。 ‥‥おねがいします。 |
成: |
これが、最後の証言だよ。 かくそうとしても、ムダだ。 ぼくは、かならず見つけだす。 きみのコトバから‥‥<<真実>>を。 |
真: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥わかりました。 きっと‥‥それがイチバン いいんだね。なるほどくん‥‥ |
裁: |
犯行の瞬間‥‥。あなたが 気を失うまでの、その一瞬‥‥ いったい、何が起こったか‥‥? 聞かせていただきましょう! |
真: |
『あたし‥‥あのとき、赤い光を 見たような気がしたんです。』(証言1) 『助けを求めようとしたら‥‥ 血がふりかかってきました!』(証言2) 『でも‥‥<<彼女>>は死ななかった。 背後の<<敵>>に、反撃したんです。』(証言3) 『突然、赤い光が消えて‥‥ あたりは、闇に包まれました。』(証言4) 『‥‥そして、その瞬間! 恐ろしい悲鳴が聞こえたんです!』(証言5) 『やがて‥‥美柳 ちなみは倒れて、 あたしも意識を失いました‥‥』(証言6) |
裁: |
<<赤い光>>‥‥ハッキリ おぼえていないのですか! |
真: |
は、はい‥‥。 たぶん、見たと思うんですけど。 すぐに、見えなくなったから‥‥ |
ゴ: |
クッ‥‥! ザンネンだったな、まるほどう‥‥ |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
ゴ: |
綾里 舞子を刺したのが、だれか? ‥‥まだ、立証できねえぜ。 |
成: |
(今度こそ、真宵ちゃんは 真実を証言している‥‥ ‥‥これから先は、 ぼくのシゴトだ!) |
裁: |
‥‥それでは、弁護人! この証人に対する、 最後の尋問をおねがいします! |
成: |
『その瞬間』というのは‥‥ やっぱり、<<赤い光が消えたとき>> ‥‥ということ? |
真: | ‥‥うん。そうだよ。 |
成: |
そのときの”悲鳴”は‥‥ 美柳 ちなみ、だったのかな。 |
真: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ちがうと思う。 あれは、たぶん‥‥ ‥‥男のヒトの声、だったから。 |
裁: |
な‥‥‥‥ なんですってェェェッ! |
裁: |
で、では! その悲鳴は‥‥ <<犯人>>のものですかッ! |
成: | ‥‥そういうことになります。 |
裁: | ふ‥‥‥ふむう‥‥‥ッ! |
真: |
きっと‥‥ 美柳 ちなみが、<<犯人>>の ツエを奪って反撃したんだね。 |
裁: |
それで、思わず<<犯人>>は 悲鳴を上げたのでしょう。 |
真: |
そのあと、ツエを奪い返して トドメを刺した‥‥のかな。 |
裁: |
‥‥いかがですか、弁護人。 こう考えれば、モンダイないと 思いますが‥‥ |
成: |
(今のスイリ‥‥もっともらしく 聞こえたけど‥‥どうだろう?) |
成: |
ザンネンながら‥‥ 今の説明には、 大きなムジュンがあります! |
裁: |
‥‥まあ、私のスイリは めったに当たりませんからな。 |
成: |
証言を、よく思い出してください。 犯人が悲鳴を上げるより<<前>>‥‥ すでに証人は、被害者の血を 身体にあびているのです。 つまり! すでに、ツエは、 被害者の身体をつらぬいていた! |
真: | あ‥‥そ、そうか‥‥! |
成: |
‥‥身体に刺さったツエを、 反撃に使えるワケがありません。 <<犯人>>に悲鳴を上げさせた ”凶器”は‥‥ ‥‥ツエとはベツに 存在したはずなのです! |
ゴ: |
それならば‥‥聞かせて もらおうか、まるほどう。 |
成: |
(あの状況で、”凶器”として 使えたモノは‥‥ もう‥‥1つしか、 考えられない!) |
ゴ: |
‥‥ツエで身体をつらぬかれた <<美柳 ちなみ>>は‥‥ いったい、何を使って <<犯人>>に反撃したのか‥‥? |
成: |
もちろん‥‥犯人が凶器として 用意していた、小刀です。 |
裁: |
あ‥‥そういえば! 忘れていましたな‥‥ |
成: |
この小刀は、現場にあった 松の木に刺さっていたそうですね。 |
ゴ: |
‥‥ああ。今朝、刑事が見つけて オレのところへ持ってきた。 |
成: |
<<美柳 ちなみ>>は、これで 犯人に反撃したのです! そして‥‥犯人の身体に、 <<傷>>を負わせた! |
ゴ: |
悲鳴を上げたからといって、 傷を負ったとはかぎらねえ。 小刀に付着した血痕は、 被害者のものかもしれねえぜ! |
成: |
すでに、血痕の検査が済んで いるのを、お忘れですか? |
ゴ: | ‥‥‥! |
成: |
被害者のものでない以上‥‥ これは、犯人の血痕なのです! 犯人が、身体のどこかを 負傷したのは、まちがいない! |
裁: |
その小刀に残った血痕が‥‥ <<犯人>>の血だ、と‥‥? |
成: |
そのとおり! 血痕の遺伝子情報を検査すれば、 カンペキに立証できるはずです! ‥‥そう! これは、 あなたの血であると! |
ゴ: | おもしれェじゃねえか。 |
裁: | せ‥‥静粛に! 静粛にッ! |
成: |
(‥‥これで、キマリだ‥‥ いくらアイツでも、科学調査の 結果を変えることは、不可能!) |
ゴ: |
‥‥クッ! なあ‥‥まるほどう。 仮に、オレが犯人だと 考えてみようか。 |
成: | ‥‥‥! |
ゴ: |
このオレが‥‥そんな マヌケな証拠を残すと思うかい? |
成: | なんだって‥‥ |
ゴ: |
いいか。よく思い出してみな。 その小刀は、今朝。刑事が見つけて オレのところへ持ってきた。 その時点で、たしかに 血痕は付着していたさ。 だが‥‥‥ コイツを刑事から受け取って ここへ持って来たのは、オレだぜ。 |
裁: | そ‥‥それが、いったい‥‥? |
ゴ: |
あくまでも、仮に‥‥ オレが犯人ならば。 小刀を完全に洗浄して、ベツの 血痕をデッチ上げただろうぜ。 |
成: | そ、そんな‥‥バカな‥‥! |
ゴ: |
とにかく、これだけは 保証してやるさ、まるほどう。 その血痕‥‥ オレの血とは、一致しねえさ。 ‥‥ゼッタイにな! |
成: | ‥‥なんですってェェッ! |
裁: |
とにかく‥‥犯人が負傷したのは ジジツのようですね。 ‥‥それでは、証人。 証言をつづけてくださ |
真: |
ちょ、ちょっと‥‥ 待ってくださいっ! |
裁: | ‥‥なんですかな? 証人。 |
真: |
あ、あたしがこんなコト 言うのもアレなんですけど‥‥ なるほどくんのセツメイには‥‥ 大きなムジュンがありますっ! |
成: | ま‥‥‥真宵ちゃん! |
真: |
その、小刀‥‥犯人を傷つけた、 って言ってたよね。 |
成: | ‥‥そうだよ。 |
真: |
でも‥‥‥ でも、でも‥‥! ‥‥もし、ゴドー検事が カタナで傷つけられたのなら‥‥ ‥‥服に血がついたり、 破れているハズじゃないですか! |
成: |
‥‥あのさ、真宵ちゃん。 そんなの、着替えれば 済むハナシじゃないか! |
真: |
ナニ言ってんの! そういうコトじゃないよ! 事件があった日のこと、 思い出してみて! <<奥の院>>側にいたヒトは‥‥ 閉じこめられていたんだよ! |
裁: |
あッ! そ‥‥そうです! そして‥‥橋が修理されて、警察が <<奥の院>>に向かったとき‥‥ |
真: |
そこには、ゴドー検事も いたはずでしょ! 着替える服も、ヒマも なかったじゃない! |
成: | ぎゃあああああッ! |
裁: |
‥‥静粛に! 静粛に! たしかに、それはなんと |
成: |
あ‥‥あらかじめ、着替えを 用意しておいたかもしれない! |
裁: |
し、しかし‥‥ 落雷によって橋が消失したのは、 あくまでもグーゼンですぞ。 着替えなど、用意するハズが ないではないですかッ! |
成: |
うう‥‥ッ! (くそ。裁判長のクセに‥‥) じゃ、じゃあ! ‥‥犯行の際、 犯人は服を脱いだのかもしれない! ‥‥返り血が付着するのを恐れて! |
ゴ: |
あり得ねえよ、まるほどう。 夜の吾童山のサムさは‥‥ アンタもよく、知ってるハズだ。 |
成: | あ‥‥‥ |
ゴ: |
何も着てなかったら‥‥ すぐに、動けなくなっちゃうぜ! |
成: | うおおおおおおお‥‥ッ! |
裁: | ふ、ふむむむううう‥‥ |
ゴ: |
クッ‥‥! やっぱり‥‥ このテイドなんだよ、アンタは。 |
成: | ぐ‥‥‥ |
ゴ: |
こんなとき‥‥ もし、綾里 千尋なら。 |
成: | ‥‥‥! |
ゴ: |
綾里 千尋なら‥‥‥ たった一度でキメただろうぜ。 |
成: | (”千尋さんなら”‥‥?) |
ゴ: |
‥‥どうだい、まるほどう! アンタには、できるのか? |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
‥‥いかがですか、弁護人。 あなたは、ゴドー検事を <<犯人>>として告発しています。 それを‥‥立証できますか? たった1つの証拠品で! |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (”立証できるか”‥‥? そんなことは、問題じゃない。 ”立証する” ‥‥ぼくには、それしかない。 ‥‥それが、ぼくが学んだ <<弁護士>>のルールなんだ!) ‥‥立証します。 ‥‥お望みどおり、華麗に 引導をたたきつけましょう! |
ゴ: |
クッ‥‥! かかったな、まるほどう‥‥ |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
ゴ: |
証拠品が、1つ。 それならば‥‥ 無限大のペナルティを 背負ってもらおうか? |
成: |
プレッシャーをかけるつもり ですか? ゴドー検事‥‥ ‥‥かまいませんよ。 証拠品は、1つきりですからね。 |
ゴ: |
ば‥‥バカな! アンタなんかに できるわけがねえ! |
成: |
(こんなとき、ぼくなら どうするか‥‥? ‥‥決まってるじゃないか! 発想を<<逆転>>させるんだ!) |
裁: |
それでは、弁護人。 聞かせていただきましょうか。 |
成: |
‥‥さきほどの尋問で、1つ。 立証されたことがあります。 <<犯人が、傷を受けたこと>>‥‥。 小刀の血痕が、その証拠です。 |
裁: |
し、しかし‥‥! その傷をかくすことは <<不可能>>だったのでは! カタナで切られたのならば、 衣服に痕跡が残ったハズです! |
成: |
‥‥1カ所だけ‥‥ 犯人には、傷をかくせる 場所があったのです。 |
裁: | な‥‥なんですって‥‥! |
真: | き、傷を‥‥かくした‥‥ |
ゴ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(この、最後の瞬間‥‥今こそ、 発想を<<逆転>>させろ! 服に痕跡が残らなかった<<理由>> を考えるのではなくて‥‥ 犯人が、傷をかくした‥‥ その<<方法>>をたたきつける!) |
ゴ: |
これが、最後だな‥‥まるほどう! 聞かせてもらおうか。 犯人が傷を<<かくした場所>>‥‥ いったい、どこだッ! |