成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
?: |
‥‥ちょっと。 よろしかったかしら。 そこの、おふたかた。 |
茜: | あ。あたしたちですか? |
成: | (なんだ? まさか‥‥) |
茜: |
お、お弁当屋さん、かな。 ‥‥殺人現場なのに。 |
?: |
はい。こちら、とりそぼろ弁当で よろしかったかしら? |
茜: | あ、ど。どうもスミマセン‥‥ |
?: | そちらの殿方も。 |
成: | は、はい! |
?: | ノリ弁当でよろしかったかしら? |
成: |
は、はあ‥‥ (ぼくももらっちゃったよ‥‥) |
?: |
こちら、関係者以外は 立入禁止ですのよ。 ‥‥特に、一般のカタは。 おわかりだったかしら‥‥? |
茜: |
あ。でも、あなたも、その。 カンケイ者には見えませんけど。 |
?: |
ふう‥‥。これはまた、 ずいぶんなゴアイサツですわねえ。 この”ゲロまみれのおキョウ”も 今はムカシ。はかないユメ‥‥ |
成: |
げ、”げろまみれ”‥‥? あ、あなたが? |
茜: |
あ、あたし。おなかいっぱいだし、 やっぱり、このお弁当は‥‥ |
?: |
ワタクシ、この件には深い ゆかりがございますのよ。 今も、目に焼きついていますの。 あのツヤっぽい、ヒメゴトが‥‥ |
茜: | ‥‥ひめごと‥‥? |
?: |
‥‥やれやれ。 じれったいコムスメだねえ。 捜査官が刺された、 あの事件に決まってるだろうが。 |
成: | え‥‥‥ええええッ! |
巴: |
『‥‥私、犯行の瞬間を ハッキリ見られましたので。』 |
茜: |
じゃ、じゃあ‥‥お姉ちゃんが 言ってた”目撃者”って‥‥ |
成: |
あの! 詳しく聞かせてください、 ゲロまみれさん! |
響: |
市ノ谷 響華 (いちのたにきょうか)ですわ。 ‥‥以後、お見知りおきを。 さもないと‥‥おキョウのカカトに むせび泣くコトになるだろうさ。 |
成: |
は、ははは、はいッ! (なんだ、このムチャな迫力は!) |
響: |
ワタクシ‥‥知っていたような 気がしますの。 毎週、金曜日の日替わり弁当が シャケであるように‥‥ きのうこそは、何が起こっても おかしくない‥‥ウンメイの日。 |
成: |
”ウンメイ”‥‥あの。 何かトクベツな日だったんですか? |
響: |
‥‥そちら、弁護士でしたわねぇ。 ならば、ご存じなのでは? ここに巣食うツミ深い殿方たちの、 非道のかぎりをつくした悪行。 |
茜: | あ、あくぎょう‥‥ |
響: |
ヒトに罪の汚名を着せるため、 手段を選ばない‥‥それが、検事。 きのうは‥‥そう。最も邪悪なる 者をたたえる日でしたのよ。 ”優秀な検事”を、表彰する‥‥ まさに茶番、ですわね。 |
茜: |
カンタンに言うと‥‥ 検事さんたちの大会が あったみたいですね。きのう。 |
響: |
お弁当に、カラダに悪いオカズを 入れようか、迷いあぐねましたわ。 |
茜: |
あの。どうして検事さんのコト、 そんなふうに言うんですか? 検事さんがワルモノだっていう、 カガク的な証拠でも‥‥ |
響: |
‥‥おじょうちゃん。 このおキョウ、 ナメるとゲロの味がしますわよ。 |
茜: | え! |
響: |
きのう表彰された、 この辺で最もコッケイなオトコ‥‥ 被害者の遺体が発見されたのは、 その検事のクルマだったのさ。 ヤツらが、極悪の弁当をむさぼり 食ってる、何よりの証拠さね! |
茜: | そ‥‥そうなんですか! |
成: |
(なんなんだろう‥‥ このひとの、”検事”に対する 憎しみのようなものは‥‥) |
成: |
それで、その。響華さんが 目撃した、というのは‥‥? |
響: |
それは‥‥ナマめかしいながめ、 でしたわねえ。 オンナの情念‥‥そのようなものを 感じてしまいましたわ。 あの、宝月 巴が ナイフを使った瞬間に。 |
成: | ! |
響: |
怒りのタンザク切り、悲しみは イチョウ切りのナイフさばき‥‥ それはそれはミゴトなモノ、 でしたわねぇ‥‥ |
茜: |
ま、まさか! おキョウさん、犯行の瞬間を‥‥? |
響: |
イノチの赤い糸が千切りにされる マナイタの音‥‥今も、この耳に。 宝月 巴の赤い糸を刻む 包丁のリズムも、ここまでだねぇ。 |
成: |
あの‥‥あなたは、 宝月 巴さんを知ってるんですか? |
響: |
主席検事サマ、かしら? どれだけの罪を重ねて、 その名をつかんだコトか‥‥ |
茜: | に‥‥2段がさね‥‥ |
成: |
(キレイな弁当屋のお姉さんが、 なぜ主席検事の名前を‥‥?) |
茜: |
あの。おキョウさんのコト、 聞かせていただけますか? |
響: |
‥‥‥‥‥‥ オンナもこのトシになると‥‥ ひとつやふたつ、昔話があるもの。 ‥‥オコサマには 聞かせられないような、ねぇ。 |
茜: | は、はあ。 |
響: |
くさや弁当の味がわかるように なったら、またいらっしゃいな。 |
茜: | ま、まいりましたっ! |
成: | (やれやれ‥‥クサいな) |
響: |
ワタクシ、毎日ここへ お弁当を売りにまいりますの。 この検事局の守衛室に、 カレがいるんですのよ。 |
茜: | か、”カレ”‥‥? |
響: |
ほら。あそこに、 守衛室が見えますでしょ? |
成: |
”SECURITY”と書かれた、 あのガラス張りの部屋ですか。 |
響: |
お弁当を売りに来るついでに、 カオを出してさしあげますの。 |
成: | (カレのほうは”ついで”か) |
茜: |
とりあえず、これまでの情報を カガク的に整理すると‥‥ おキョウさんは、何かワケありの お弁当屋さん、というコトですね! |
成: | (‥‥役に立たない情報だな) |
成: |
おキョウさん‥‥検事局で、 何かあったんですか? 強い”悪意”のようなものを 感じるんですけど‥‥ |
響: |
悪意‥‥ そうかもしれないわねぇ‥‥ 検事なんて、みんな同じ。 エラいヤツほど、始末が悪い‥‥ シジミのおみおつけに、あえて アワビを入れるようなものかしら。 |
成: |
(おキョウさん‥‥ムカシ、 事件にまきこまれたのかな) |
茜: |
あ。きっと、食中毒がらみですよ! カガク的に考えて。 だって、なんと言っても <<ゲロまみれ>>だし! |
成: |
(おキョウさん‥‥いったい、 何をしていたヒトなんだ‥‥?) |
上級検事執務室・1202号 | |
茜: |
いかにも”シゴトできます”って 感じの部屋ですよねー。 成歩堂さんの事務所とちがって。 |
成: | ‥‥うるさいな。 |
茜: |
ホラ。ホラ。なんか、トロフィー みたいなのがありますよ! |
成: |
(トロフィー‥‥って、 あの<<盾>>か‥‥) |
茜: |
こんなの、うれしそうに かざっちゃって。 きっと、権力をハナにかけた イヤらしいヤツに決まってますよ! |
?: |
‥‥成歩堂 龍一‥‥ どこまでも、おせっかいな オトコだな、キミは。 |
成: |
(‥‥この声は‥‥やっぱり) ひさしぶり‥‥だな、御剣。 |
茜: |
あ‥‥ あああああああああッ! み、み、御剣検事さん! |
成: |
‥‥! 知ってるの? コイツのコト。 |
茜: |
え、え‥‥だってあたし、 大ファンなんです! お姉ちゃんに紹介されたコトも あるし‥‥いろいろと‥‥ |
成: |
(そうか‥‥この子、 主席検事の妹さんだもんな) |
御: |
それで? なんの用かな。 イヤミで権力をハナにかけた イヤらしい検事の部屋に‥‥ |
茜: |
え! あ、いえッ! それは、このヒトが勝手に‥‥ |
成: |
いやいや! ぼくのせいにするなよ。 |
茜: |
あの。あの。あたしたちはただ、 殺人事件を調べてるだけなんです! |
御: | ‥‥殺人事件‥‥? |
茜: |
ホラ。イヤミでハデで、まっ赤な クルマから、死体が見つかった‥‥ |
御: |
むう‥‥ アレなら、私のクルマだが。 ‥‥それが、なにか? |
茜: |
うえええええええええええええッ! み、み、み、御剣検事さんのォォ! |
成: |
(いっそ、キモチいいぐらいの 驚きっぷりだなあ‥‥) |
成: |
やっぱり、おまえのクルマ だったのか‥‥あれ。 |
御: |
フッ‥‥思ったままを 言えばいいだろう、成歩堂。 去年、せっかく 助けてやったオトコが‥‥ ついに、本当に殺人に 手を染めたか、と。 |
茜: |
そ、そんな! 御剣検事さんじゃありません! だって、刺したのは あたしのお姉ちゃん‥‥ アレ。ええと、そうじゃなくて ‥‥その。 |
御: |
あなたは、たしか‥‥ 主席検事の妹さん、でしたね。 |
茜: |
は、はい! 宝月 茜ですっ! ‥‥えーと、あの。 そのセツは、ホントにどうも! |
成: |
(とってつけたような アイサツだな‥‥) |
御: |
ああ‥‥そうですね。 すっかり、見ちがえました。 ‥‥しかし、 この私もさすがに予想外だった。 まさか、自分のクルマで 殺人事件が起きようとは。 しかも‥‥ この手で、自分の上司の罪を 立証することになろうとは。 |
成: |
ま。そうだろうなあ‥‥ な、なんだって! |
御: |
宝月 巴‥‥主席検事といえば、 地方検事局のトップだ。 ‥‥明日の法廷は、 この私が担当することになった。 |
茜: |
そ、そんな! 御剣検事さんが‥‥ |
御: |
正直なトコロ‥‥ ここにこうしていられるのが、 フシギなくらいだ。 |
成: | ‥‥どういうことだ? |
御: |
ウワサ、だ。 キミも聞いたことがあるだろう。 私についてのウワサは。 |
成: |
(御剣 怜侍‥‥ たしかに、その名声の影では 黒いウワサがウズを巻いている。 証拠品のねつ造や、偽証の取引、 違法な裏づけ捜査、など‥‥) |
御: |
年末の、あの事件。キミのおかげで 無実が立証されたが‥‥ 今回の事件が、私のしわざである というウワサも流れているようだ。 |
成: | ば、バカ言うなよ‥‥ |
御: |
フッ‥‥ ヒトの悪意というものは、ふとした キッカケであふれ出す。 それを止めることは、 不可能なのだよ。 |
茜: | 御剣検事さん‥‥ |
御: |
その一方で、こんなオモチャを 私に押しつけるヤカラもいる。 ‥‥コッケイ、だな。 |
成: |
(ブロンズの盾‥‥か。 何かいわくがあるのかな) |
御: |
宝月主席検事とは、‥‥2年前。 初めていっしょにシゴトをした。 あれは、私にとっても 初めての大きな事件だった。 |
茜: | ‥‥そう、でしたね。 |
成: |
(2年前‥‥ぼくはまだ 弁護士にもなってないな) |
御: |
それ以来、何かと目をかけてくれて いる‥‥そう思っていたのだが。 どうやら、 私の思いちがいだったようだ。 |
茜: |
お、”思いちがい”って、 どうしてですか! たしかに、お姉ちゃんは あんな冷たいヒトだけど。 きっと、御剣検事さんのコトは‥‥ |
御: |
ならば‥‥なぜ。 彼女は、私のクルマのトランクで ヒトを刺したのだろうか? しかも‥‥ この私のナイフを使って。 |
茜: |
‥‥え! ええええええッ! 御剣検事さんの‥‥ナイフ! |
御: |
事件の凶器は、トランクの 私の道具箱に入っていたナイフだ。 |
法廷記録にファイルした。 | |
成: | あのさ‥‥御剣。 |
御: | なんだ。 |
成: |
もしかして、おまえ‥‥ やったんじゃないの? |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(‥‥やれやれ。ジョークの センスがないヤツだよ) |
茜: |
センスがないのは 成歩堂さんのほうですッ! |
成: |
さっきから気になってたんだけど ‥‥なんだ、コレ。 |
茜: | <<K>>って書いてありますね。 |
御: | ‥‥オブ・ザ・イヤー‥‥ |
成: | え? なんだって? |
御: | <<検事・オブ・ザ・イヤー>>だ。 |
茜: |
けけ、け。け‥‥ けんじ・おぶ・ざ・いやー! |
御: |
その年度でイチバン優秀な検事に 贈られる、名誉ある像だ。 ‥‥悪いかッ! |
成: |
も‥‥もしかして、 この<<K>>って‥‥ |
茜: | ”けんじ”の<<K>>ですか? |
御: |
うるさいッ! 私がデザインしたワケでは ないのだッ! |
茜: |
ひゃああ。ちょっと 恥ずかしいですねー、コレは。 |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
つまり。今年イチバンだった ワケだよな。おまえが。 |
御: |
‥‥そのニヤニヤ笑いは やめてもらいたいな。 それをもらうために、 きのうはシゴトにならなかった。 |
茜: | ‥‥? どうしてですか。 |
御: |
そのコワれた盾を受け取るため、 警察局の式典に出席していたのだ。 |
成: | 警察局‥‥? |
御: |
警察署のトナリにある。署のほうは キミも行ったことがあるだろう。 |
成: |
ああ‥‥イトノコ刑事がいる、 あそこか。 |
茜: |
あの‥‥この<<盾>>なんですけど。 なんでコワれてるんですか? |
御: |
大したイミはない。 ‥‥今となっては、ね。 |
茜: | は、はあ‥‥ |
成: |
(キョーミがないみたいだな、 賞とか、そういうモノには‥‥) |
御: |
とにかく‥‥きのうは、検事局が 最も忙しい1日だったのだ。 |
茜: |
‥‥もう少し聞いたほうがいい みたいですね。きのうのコト‥‥ |
成: |
事件当日‥‥きのうのこと、 詳しく聞かせてくれないか? |
御: |
きのうは‥‥検事局にとって、 年に一度の大そうじがあったのだ。 |
茜: | 大そうじ‥‥ですか? |
御: |
警察局と協力して、決着のついた 事件の証拠やデータの整理をする。 我々は、証拠品の<<申し送り>>と 呼んでいるが。 |
茜: |
ふむふむ。たしかに ”大そうじ”みたいですね‥‥ |
御: |
そして、もう1つ。 警察局で、式典が行われた。 今年度の検事・捜査官たちの評価が 発表、そして表彰されたのだ。 |
成: |
‥‥ああ。それでこの<<盾>>を もらった、というワケか。 |
御: |
きのうの午後は、警察局にいた。 戻ってきたのは‥‥5時12分だ。 |
成: | ‥‥イヤにハッキリ覚えているな。 |
茜: |
御剣検事さんとあたしは、 成歩堂さんとはちがいますからね。 |
御: |
‥‥いや。私はキオクを アテにしないことにしている。 このとおり、 キチンと証拠があるのだよ。 |
法廷記録にファイルした。 | |
御: |
地下駐車場が発行している、 利用記録だ。 |
成: |
(事件が起こったのは、 5時15分ごろ‥‥) |
茜: |
クルマで戻ってすぐに 事件は起こったワケかあ。 |
御: |
‥‥なんだ? 成歩堂。 そのシツレイな目は‥‥ |
?: |
‥‥あのおッ! スミマセン! 御剣検事ってヒト、 いらっしゃるでありますかッ! |
御: |
‥‥なんだろうか。 私が御剣だが。 |
警: |
本官! 警察局長のお使いで本官! 報告書を持ってきたでありますッ! |
御: |
報告書、だと‥‥? まさか! 宝月主席検事の件で、 新しい手がかりが出たのかッ! |
成: |
(‥‥目の前で、 イヤなハナシをされてるなあ) |
警: |
ほーづき、でありますかッ? ‥‥いえッ! そんな名前、本官! 報告書にはありませんけれどもッ! |
御: | ‥‥! |
成: |
(うわあ‥‥御剣のカンニン袋の ヒモが切れる音が聞こえたぞ) |
茜: |
ゆ、ユルいですね‥‥ 御剣検事さんのカンニン袋。 |
御: |
警察局には、言っておいた ハズではないかッ! 明日の審理に集中したいから、 よけいな書類は届けないように! |
警: |
はッ! でも。 でも、だって本官ッ! コレを持って行けって言われた だけでありますからしてッ! ムズカシイことはコレ本官、 わからないのでありますからし |
御: | ‥‥キサマの名前はッ! |
原: |
あ、あのッ! 本官、あのッ! は、は。は。ハラバイです本官ッ! |
御: |
もういい、原灰巡査。 報告書を持って、帰りたまえ。 ‥‥来月の給与査定を 楽しみにしておくことだ。 |
原: |
ううう‥‥ だって本官‥‥そんな、本官‥‥ |
成: |
(いるよなー。こういう、 アタマも運もよくないヒト‥‥) |
御: | ‥‥成歩堂。 |
成: |
は、はいッ! 本官! (こういうときのコイツ、怖ェな) |
御: |
見てのとおり、私もヒマではない。 ‥‥キミたちもそろそろ、 帰ったほうがいいだろう。 |
茜: |
そ、そうしましょうよ。 成歩堂さん! |
御: |
被害者は、捜査官‥‥今の 巡査と同じく、警察の人間だ。 警察局へ行ってみることだ。 被害者のことは、そこで聞ける。 |
成: |
あ、ああ。‥‥ありがとう。 (キゲンが悪くなったみたいだな) |