成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
地方裁判所 被告人第2控え室 | |
巴: |
‥‥いかがでしたかしら、 成歩堂弁護士。きのうの調査は。 |
成: |
正直なところ‥‥まだハッキリ しない点がいくつか、あります。 |
茜: |
‥‥というか、 ハッキリしない点だらけだよ‥‥ |
巴: |
どんな判決になっても、 気に病むことはありません。 カクゴはできていますから。 |
茜: |
‥‥あたし、信じてるから。 お姉ちゃんのコト‥‥ |
巴: |
成歩堂弁護士。センパイとして 1つだけ、忠告しておきます。 |
成: | なんですか? |
巴: |
弁護士は、依頼人を信じるなど もってのほか。 |
茜: | ‥‥! |
巴: |
被告人は、疑われる理由が あるから、起訴される‥‥ それを忘れないことです。 |
成: |
‥‥ともえさん。 あなたは、千尋さんの先輩で、 あのひとに、よく似ています。 ‥‥でも。おふたりには、決定的に ちがう点が、1つあります。 |
巴: | それは? |
成: | あなたは、弁護士ではありません。 |
巴: |
‥‥‥‥‥‥ そろそろ時間ですね。 それでは、おねがいします。 ‥‥弁護士さん。 |
成: |
(真宵ちゃんがいない、 初めての法廷‥‥か。 それって、つまり‥‥ ‥‥だれのチカラも借りない。 ぼく自身が、見つけるんだ。 この手で‥‥真実を!) |
茜: |
がんばりましょう、成歩堂さん! あたしがついてますからね! |
地方裁判所 第9法廷 | |
裁: |
これより、宝月 巴の 法廷を開廷します。 |
成: | 弁護側、準備完了しております。 |
御: | 検察側‥‥もとより。 |
成: |
(御剣‥‥ あの事件以来、ひさしぶりだな。 ‥‥法廷に立つのは) |
御: |
‥‥よけいな感情をまじえる 必要はない、成歩堂 龍一。 |
成: | ‥‥! |
御: |
まわりの者が何を言おうが、 自分の進むべき道は、私が決める。 外野にはしょせん、 判決を変えることはできないのだ。 |
裁: |
それでは、御剣検事。 冒頭弁論をおねがいします。 |
御: |
宝月 巴は、主席検事でありながら ユルされざる罪を犯した。 しかも‥‥検事局を犯行現場に 選ぶという暴挙ッ! |
茜: |
くうう‥‥やっぱり、ナマは ハクリョクがちがいますね。 なんかあたし、いろいろ 白状したくなってきちゃいました。 |
御: |
しかし‥‥その暴挙が イノチ取りとなったようだ。 犯行は、ある証人に目撃された。 いわば”プロ”と呼べる証人に! |
裁: |
それでは、その証人を 入廷させていただきましょう! |
御: | 市ノ谷 響華を証人席へ。 |
成: |
(<<ゲロまみれのおキョウ>>さん、 か‥‥) |
裁: | ええと、あなたはどこかで‥‥ |
響: |
あら、こちら。キャビア弁当で よろしかったかしら。 |
裁: |
おほッ! これが、キャビア! 生まれて初めて食べますぞッ! |
成: |
(ナミダ目で メシをかきこんでる‥‥) |
響: |
そちらさまも。‥‥ふりかけ弁当で よろしかったかしら? |
成: | は、はあ‥‥どうも。 |
御: | ‥‥証人。名前と職業を。 |
響: |
それで、そちらさまは‥‥ ゴマ弁当でよろしかったかしら? |
御: |
ランチタイムには、まだ早い。 名前と、職業をおねがいする。 |
響: |
‥‥‥‥‥‥ そちらさま、いかがかしら? お味のほうは。 |
裁: |
これが、アコガレのキャビア‥‥ 脳がとろけそうですぞッ! 私、キャビアとは、ヒジキに 似たものだと思ってました! |
成: | (どんなイメージだよ‥‥) |
御: | ‥‥名前と、職業だ。 |
響: |
市ノ谷 響華でございますわ。 ‥‥以後、お見知りおきを。 ワケあって<<ベントーランド>>にて 陣頭指揮をとっております。 これでよろしかったかしら? ‥‥御剣検事サマ? |
御: |
それでは、証人。 事件の説明をおねがいしよう。 |
裁: |
ちょっと待ってください! ‥‥もうヒトクチ食べちゃいます。 |
成: | (早くしろよ!) |
裁: |
ふう‥‥さて、御剣検事。 事件のセツメイですが、 できれば、警察関係者のカタに‥‥ |
響: |
‥‥裁判長さま。そこの検事さんが おっしゃったでしょう。 この市ノ谷 響華は、 ”プロである”と。 |
裁: |
は、はあ‥‥ どういうことですかな? |
御: |
市ノ谷 響華は、2年前まで 捜査一課の特別捜査官‥‥ 甲種殺人事件担当の 刑事だったのだ。 |
茜: |
え‥‥ええええッ! おキョウさんが、刑事ッ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ああああああああああああああッ! あ、あなたは‥‥もしや! <<ゲロまみれ>>の‥‥? |
響: |
おキョウですわ。 ‥‥おひさしゅう、裁判長さま。 |
裁: |
わ、わわ、わかりました! せ。せ、説明をおねがいします! |
成: |
(‥‥ナニモノなんだ、 あのネエさん‥‥) |
響: |
それでは、みなさま。 こちらをごらんくださいな。 検事局の地下駐車場は、2つの ブロックにわかれておりますの。 Aブロックは検事局職員用、 Bブロックは外来者・来客用‥‥ 2つのブロックは金網で 仕切られておりますわ。 |
裁: |
まあ‥‥部外者に侵入されては コマりますからなあ。 |
響: |
事件現場は、Aブロック奥の クルマ‥‥その、後部トランク。 犯人は、被害者をナイフで殺害後、 クルマで運びだそうとしました。 でも‥‥運悪く、目撃者によって 現行犯タイホされましたの。 |
裁: |
その、勇敢な”目撃者” というのが‥‥? |
響: |
このおキョウですわ。 ‥‥裁判長さま。 |
法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
証人。あなたは、 犯行の瞬間を目撃したのですか? |
響: |
もちろんですわ。 その後ただちに、主席検事サマの 身柄をカクホいたしましたの。 |
裁: |
ふむう‥‥これはもう、 キマリだと思うのですが。 いかがですかな、弁護人。 |
成: |
‥‥ぼくに同意を 求めないでください。 |
響: |
それでは、裁判長さま。 往生ぎわの悪い殿方を、まっぷたつ にさせていただきますわ。 |
裁: |
たのもしいかぎりです。 ひとつ、おねがいいたしますぞ! |
成: |
(まっぷたつ、って‥‥ ぼくのことか?) |
響: |
『ワタクシ、わかっておりました。 いつか、こんな日が来ることを‥‥』(証言1) 『あの日‥‥カレにお弁当を お持ちする途中のコトでしたのよ。』(証言2) 『捜査官としてのカンと申すのかしら ‥‥何かを感じてしまいましたの。』(証言3) 『見ると、金網越しに、シュミの悪い クルマのそばにいる主席検事殿が。』(証言4) 『主席検事殿は、右手にナイフを かまえておりましたわね。』(証言5) 『そして‥‥多田敷捜査官の胸に ズブリと突き刺しましたのよ!』(証言6) |
裁: |
ふむう‥‥コイビトにお弁当。 オトメゴコロ、というヤツですな。 |
御: |
フッ‥‥ ギモンの余地はないようだ。 |
裁: |
たしかに‥‥ナイフをズブリ! と 刺したところを、そのものズブリ! 目撃しているワケですからなあ。 |
響: |
‥‥いかがでしたかしら? まっぷたつにされた感想は。 |
成: | か‥‥考え中です。 |
茜: |
き‥‥キズは浅いです、 成歩堂さんっ! |
裁: |
それでは、弁護人。尋問を おねがいします‥‥さっさと! |
成: | なぜ、そんなことを‥‥? |
響: |
検事サマの、罪をにくむ感情‥‥ ソンケイすべき点もありますわ。 しかし。彼らのやり方は、 みにくくユガんでいる。 ユガんだやり方は、 いつかヒゲキを生み出すもの。 |
御: |
‥‥弁当屋の意見として、 ありがたく受けとめておこう。 |
響: |
ツゴウの悪い証拠品はモミ消して、 存在しなかったことにする‥‥ そのためなら、知りすぎた捜査官を 切り捨てる‥‥お手のモノだねェ。 |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
茜: |
おキョウさん‥‥何か、 検事さんにウラミでもあるのかな? |
響: |
私、捜査官を天職とココロ得て おりましたわ。おそらく‥‥ そこのすました検事さんたちに 解雇通知を受けなければ‥‥今も。 |
成: |
カイコ通知? (クビにされたのか‥‥) |
響: |
ワタクシにとって”検事”は、 虫けらにもおよばぬ存在。 さりとて、ワタクシも”プロ”。 証言にクモリはございませんのよ。 |
裁: |
‥‥わかりました。それでは、 つづけていただきましょう。 |
成: |
シュミの悪いクルマというのは、 モチロン‥‥ |
響: | 御剣検事サマのクルマですわ。 |
裁: | み、御剣検事の‥‥! |
響: |
ちなみに。死体に刺さっていた ナイフも、検事サマのモノ‥‥ そうでしたわね? |
御: |
‥‥‥‥‥‥ まちがいない。 |
裁: |
ふ‥‥ふむう‥‥マッタク。 ビミョーな事件です。 それで、あなたの見た人物は‥‥ 被告人にマチガイないのですかな? |
響: |
ワタクシ、現場から10メートルも 離れていない場所で見ましたのよ。 ‥‥まちがえようが ないだろうねえ‥‥ |
成: |
(もし、これが本当なら‥‥ 攻めようがないぞ!) |
茜: |
とりあえず、つけてみましょうよ! ケチの1つでも。 |
成: |
証人! あなたは先ほどの証言で ハッキリ、こう言っています! ”検事は虫けらにもおよばぬ存在” ‥‥それならば! あなたは、ある”悪意”を持って 犯行を目撃していたことに‥‥ |
響: |
‥‥クチを つつしむんだねえ、ボウヤ‥‥ |
成: | え。 |
響: |
おキョウのコトバにアヤをつける ‥‥カクゴはいいんだろうねぇ? 初めちょろちょろ、なかパッパ。 おいしく炊きあげられたいかいッ! |
裁: |
で‥‥出ました! おキョウさんのグルメタンカ! |
茜: |
‥‥”新米弁護士”と”新米”を かけたものと思われる、と。 |
響: |
弁当屋に身をやつしていても スジはとおす。ワタクシなりにッ! |
裁: |
こ‥‥‥この写真はッ! あなたが撮影したのですか! |
響: |
事件に気づいた、その瞬間。 反射的にシャッターをひとつ。 ワタクシ‥‥弁当の1つに カメラを仕込んでありますのよ。 |
成: |
(ふつうにクビから ぶら下げておけばいいのに) |
御: |
このような写真‥‥ 私も初めて見るが? |
響: |
検事サマに見せたら、何をされるか わかりませんからねえ。 |
御: | ‥‥! |
響: |
‥‥ワタクシ、捜査課の写真班に カレがいますのよ。 |
裁: |
たしかに‥‥これは被告人に まちがいないようです! |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
(マズいな‥‥これはたしかに、 ともえさんにマチガイないぞ!) |
御: |
それで‥‥このとき、 被告人はいったい‥‥? |
成: |
‥‥あなたは、 それを目撃したわけですか? ともえさんが、ナイフで被害者を ”刺す”‥‥その瞬間を。 |
響: |
すでに申し上げたとおり。 ‥‥この、ソース弁当にかけて! |
裁: |
ふむう‥‥! 食欲をそそるニオイですなあ。 |
成: |
しかし‥‥それはオカシイのです。 この写真を見てください! あなたの撮影した、この写真‥‥ 巴さんは、ナイフなど 持っていないッ! |
響: | ‥‥‥‥‥‥ |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
‥‥‥‥‥‥あの。 御剣検事。 何かコメントをおねがいします。 |
御: | 異議あり。 |
成: |
‥‥もう少し ヤル気を出して行きましょうよ。 |
御: |
ヤル気を出すべきは キサマのほうだ、弁護士。 |
裁: | どういうことですかな? |
御: |
この写真は‥‥犯行直前に 撮影されたものではない。 シャッターが切られたのは すでにナイフを刺した”あと”だ。 |
成: |
ど‥‥どうしてそんなコトが わかるんですかッ! |
響: | ‥‥返り血。 |
成: | え‥‥ |
響: |
主席検事サマのコートの 赤いシミ‥‥見えませんかしら? |
成: | (シロクロ写真じゃないか!) |
裁: |
はああ‥‥わかりにくいですが、 これは血痕だったのですか‥‥ |
御: |
いかがかな、弁護人。 問題はマッタク、見あたらないが。 ‥‥”キミ”以外は。 |
茜: |
成歩堂さん! モンダイ児あつかい されてますよ! |
成: | (ううう‥‥どうなんだろう‥‥) |
成: |
しかし! さっき証人は ハッキリ証言した! 『事件に気づいた”瞬間”に シャッターを押した』と! |
響: |
コトバが足りませんでしたわね。 ‥‥ごめんあそばせ。 |
成: | ‥‥‥‥‥ |
響: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
成: | そ、それで終わりですか。 |
響: |
‥‥ゴハンが足りなければ、 おかわりをすれば済むコト。 それがイヤなら、最初から 大盛りを注文するコトだねッ! |
茜: |
ワケもわからず 怒られちゃいましたね。 |
響: |
ワタクシには、彼女の犯行を止める ヨユウはありませんでしたの。 宝月検事サマは、プログラムされた ロボットのように、セイカクに‥‥ そして冷酷に、殺人計画を 実行したのですわ! |
成: |
け、”計画”‥‥ なぜ、わかるんですか! |
御: |
‥‥写真の、主席検事の手に 注目していただきたい。 |
裁: |
これは‥‥ ”手袋”ですかな‥‥? |
御: |
うすい、ゴム製の手袋だろう。 彼女はなぜ、こんな特殊なものを? |
成: | あ‥‥ |
御: |
犯行計画なくして、 こんな手袋をしているハズがない! |
成: | ぐはあああああッ! |
裁: |
たしかに、この手袋は 犯行の計画性を物語っています! |
響: | ”計画殺人”‥‥重罪ですわね。 |
裁: |
‥‥証人! 証言に追加していただきましょう! |
響: |
『殺人は、すべてが計画的だった! ゴム手袋が、いい証拠じゃないか。』(証言7) |
成: |
‥‥証人。これがなんだか、 おわかりですか? |
響: |
このおキョウを試そうなんて 10年早くてよ。 モチロン、凶器ですわ。‥‥そこの 検事サマのトランクに入っていた! |
御: | ‥‥そのとおり。私のナイフだ。 |
どうなってるんだよ、この事件‥‥ | |
赤い凶器も、赤いクルマも‥‥ あの赤い検事さんのですって! | |
‥‥そもそも、被告人が 地方検事局の主席検事、だろう? | |
ママー。どうなってるの? 検事局のおじちゃんたち‥‥ | |
成: |
‥‥弁護側から、要請します。 証人は、セイカクな証言を してください! |
響: |
どういうことかしら? ボウヤ‥‥ |
成: |
あなたは、こう証言しました。 『宝月 巴は、あらかじめ犯行を ”すべて”計画していた。 だから、こんな特殊な ゴム手袋を用意していたのだ』 |
裁: |
自然なスイリではないですか。 手袋には、計画性を感じますが‥‥ |
成: |
しかし、それならば! なぜ、かんじんの”凶器”を 用意していなかったのでしょうか? |
響: | あ‥‥‥ |
成: |
このナイフは、たまたまクルマの トランクに入っていたものです。 もし、殺人を計画するのならば! まず用意するのが”凶器”です! |
響: | く‥‥‥‥くううううう‥‥ッ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! 静粛にッ! |
成: |
(‥‥よし! これで、状況は変わった!) |
茜: |
さすがですっ、成歩堂さん! お姉ちゃん、これでムザイに‥‥ |
御: |
‥‥弁護士クン。 シオ弁当‥‥でよかったかな? |
成: | な、なんだって? |
御: |
‥‥まさか、 こんなササイなことで‥‥ ”状況は変わった”などと カンちがいしていないだろうな。 |
成: |
し、しかし! ジッサイ、 殺人の計画性は、これで‥‥ |
御: |
‥‥バカな。 検察側は、”計画性”など 最初から、モンダイにしていない。 ‥‥そこの弁当屋が 勝手に言いだしたことだ。 |
響: | ! |
御: |
<<被告人・宝月 巴が、 捜査官をナイフで刺殺した>> 検察側が立証すべきは その1点のみ。‥‥他にはない。 |
響: |
フン‥‥! 検事局のボウヤが アタマのいいトコを見せたワケ? でもね。あの女はアキラカに やっつけるつもりだったのさ! それでなければ、あんな‥‥ |
裁: |
どうやら‥‥その先は、証言して いただいたほうがいいようです。 |
御: |
証人。”見たことだけ”‥‥ おねがいしよう。 |
響: |
おだまりなさいな。 おキョウのスイリは、ボウヤの目玉 50コぶんのビタミンがあるのさ! |
成: | (コワいなあ‥‥) |