成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
地方裁判所 被告人第2控え室 | |
茜: | あの‥‥成歩堂さん。 |
成: | ん? なに? |
茜: |
いつも、こんな調子なんですか? なんていうか‥‥ 見上げたら、頭上5センチのトコに 巨大なペンチが落ちてきていた‥‥ ‥‥そんな、やるせない 手遅れっぽい感じ。 |
成: |
まあ、そうだね。 今日落ちてきたのは、ペンチじゃ なくて、巨大なベンチだったけど。 ‥‥ところで、ともえさんは? |
茜: |
なんだか、裁判長さんの部屋に 呼ばれたみたいです。 |
成: |
ああ‥‥たぶん、 あの布きれのコトかな。 |
茜: |
さあ! ここから、キセキの 大逆転が始まるワケですよね! あの、一見どうしようもない、 ちっぽけでササイな布きれから。 |
成: |
正直なトコロ‥‥自分の存在が あの布きれみたいな気分だよ。 |
罪: |
ヘイ、カウボーイ! ウシってヤツは、赤い布きれを 見るとゲンキになる‥‥ オレは、そう聞かされて 大きくなったものだけどな。 |
茜: | 罪門さん‥‥! |
罪: |
気になったからね、来てみたさ。 どうやら、遅れちまったようだよ。 あいかわらずの厳戒態勢でね。 巡査が抜け出すのもヒト苦労、さ。 |
成: |
そういえば‥‥ 何か、あったんですか? ‥‥きのうから、ようすがヘン ですよね、ケイサツのヒトたち。 |
罪: |
ヒトのシンパイをしてる場合じゃ ないだろう? カウボーイ。 主席検事さんの、赤いマフラーの 巻き方でも考えておくことさ。 |
茜: |
あの‥‥罪門さん。 ”マフラー”は、エリマキのコト じゃなかったんですよ。 お姉ちゃん、あのときはマフラーを していませんでしたから。 |
罪: |
ヘェ‥‥そうなのかい。 そいつは、オカシイなァ。 |
茜: | ‥‥‥? |
罪: |
彼女の細いクビには、いつも 赤い風がそよ吹いているのさ。 オレは、見たよ‥‥あの日も。 彼女のクビに、赤いマフラーを。 |
茜: | え‥‥! |
罪: |
あの日の午後の式典でね。 御剣のヤツも、見ているはずさ。 |
成: |
(で、でも‥‥ 現場で撮影された写真では‥‥ マフラーは消えている!) |
茜: |
‥‥おキョウさん。 見マチガイ‥‥じゃなかったんだ。 |
罪: |
‥‥さあ。そろそろ、時間だね。 チエをしぼるより、チチをしぼれ。 ‥‥あらくれ野郎どものコトバさ。 考えたって、どうにもならない。 コタエは”時”がシボり出すさ。 |
成: |
(ううう‥‥ なんだか、イヤな予感がする) |
茜: |
いったい‥‥今度はナニが 落ちてくるんでしょうね。 |
罪: |
巨大なウシなら、オレがサバいて ステーキ弁当にしてやるさ! |
地方裁判所 第9法廷 | |
裁: | それでは、審理を‥‥再開‥‥‥‥ |
成: |
(なんだ? 裁判長、検事席の方を 見て、カタまってるけど‥‥) |
裁: |
どうされたのですかな? 御剣検事。 カオがマッサオで、クチビルが ムラサキ、ひたいのアブラアセ‥‥ ミケンのシワに、その歯ギシリ、 ぶるぶるフルえた上、ナミダ目‥‥ さらにその目は焦点が合っておらず 全身がシボんで、背中はネジ曲がり |
御: |
‥‥あり得ぬッ! こんな‥‥こんなコトがァァァ! |
茜: |
な、何かあったのかな、 御剣検事さん‥‥ |
裁: |
それでは、気にせず つづけたいと思います。 さて。先ほどの休憩中、 検察側には、緊急の調査を‥‥ |
御: |
‥‥バカなッ! ユルされるコトではないッ! |
裁: |
ふむう‥‥ すっかり、放心状態ですな。 |
?: |
あ。ちょっと。 ちょっといいかな、みんな。 |
裁: |
‥‥‥? どなたですかな。 |
成: |
(な、なんだ‥‥このオジサン。 妙にアツ苦しいオーラが、 法廷中に乱反射しているような) |
茜: |
あのオジサンが現れてから、 室温が3度、上がりました! |
成: | (いったい‥‥ナニモノなんだ!) |
裁: | あ。あなたは‥‥‥ |
?: |
や。どうもどうも。いやいや。 道がこんでてさー。チョイ、遅く なっちゃった。ゴメンねホント。 や。や。ひさしぶり、チョーさん。 最近どう? 泳いでる? |
裁: |
あ‥‥! そのセツはどうも。 最近は忙しくて‥‥ |
?: |
あ。ダメダメ。ダメよチョーさん! ヒマはさ。作るモンだよコレ。 |
裁: |
は、はあ。マッタク。 おハズカシイ‥‥ほっほっ。 |
茜: |
”チョーさん”‥‥って、 裁判長のコト、かな‥‥ |
成: |
オソロシイことに‥‥ どうやら、そうみたいだね。 あの‥‥すみません。あなたは? |
?: |
あ。あ。キミがナルホドちゃん? 弁護士の。ウワサ聞いてるよー。 |
成: | え! はあ、どうも‥‥ |
?: |
なんか、ゴメンねホント。ウチの 御剣ちゃん、メイワクかけてさ。 今度さ。今度。どう、コレ。 泳ぎに行こうよ。みんなでさ。 |
成: |
み‥‥‥‥‥ ”みつるぎちゃん”‥‥? |
裁: |
コラッ、弁護人! あなた、地方警察局長のカオも 知らないのですかッ! |
成: |
け‥‥‥‥‥ ケーサツキョクチョー‥‥? |
裁: |
このへんの警察で イチバン偉いヒトです! |
巌: |
あ。巌徒 海慈(がんとかいじ)。 よろしく。よろしくね、みんな。 |
裁: |
あの‥‥それで、今日はいったい どうしたのですかな? あなた自身が法廷にお出ましなど ‥‥2年ぶり、ではないですか。 |
巌: |
いや、ホラ。御剣ちゃんたらさ。 あんな感じ、じゃない? だからね。とりあえず‥‥ボク。 持ってきたワケ。コイツをね。 |
成: | あ! そ、それは‥‥ |
茜: | お姉ちゃんの‥‥マフラー‥‥? |
成: |
(やっぱり‥‥おキョウさんの 見マチガイじゃなかったんだ! 事件があったとき‥‥彼女は クビに、あのマフラーを‥‥!) |
巌: |
それにしてもさ。御剣ちゃんの クルマの排気パイプにねー‥‥ しかも! その中に。こんなモノが 包まれてる、なんてさあ‥‥ ‥‥ホント。コマっちゃうんだ。 ウチとしてもさあ‥‥ |
裁: | な‥‥なんですか、それはッ! |
巌: |
飛び出しナイフ‥‥かな。 ホント。どうなってるんだろ。 |
御: |
‥‥局長ッ! いったい、あなたは部下に どんな教育をしているのだッ! |
裁: | み、御剣検事‥‥ |
御: |
そんな重要な手がかりを 見落とすなど‥‥考えられぬ! 警察の捜査がそんなにズサンでは、 検事局が、まともな立件など‥‥ |
巌: |
ちょ、ちょっと。 待ってよぉ、御剣ちゃんさ。 |
御: | イイワケなど、聞くつもりは‥‥ |
巌: |
待て、と言ってるんだよ。 あれ。聞こえなかった? |
御: | ‥‥! |
巌: |
あのね。ホラ。書類を見てよ。 ‥‥捜査セキニンシャのトコ。 サインしてあるのよ。ハッキリ。 ”御剣 怜侍”‥‥って。 |
御: |
そ、それは‥‥しかたあるまい! 事件があった日、私は‥‥ |
巌: |
賞をもらって、浮かれてた、と。 わかる。わかるよ。ケドさあ‥‥ セキニンシャ、キミなんだから。 ‥‥あとでさ。始末書。たのむね。 |
御: | な‥‥なんだと‥‥! |
巌: |
ま。なんとか処理しておくよ。 この、キミのミスを‥‥ね。 |
御: | ‥‥‥! |
茜: |
御剣検事さん‥‥めずらしく、 コトバに詰まっちゃいましたね‥‥ |
裁: |
マッタク‥‥御剣検事らしくない 大失態でしたな。 |
御: | ぐ‥‥‥ッ! |
裁: |
それでは、証拠品を受理します。 ‥‥と。その前に、弁護人。 |
成: | は、はい。 |
裁: |
いちおう、念のため‥‥ このナイフの”刃”を 見ておきたいのですが。 |
成: |
は、はあ‥‥”刃”ですか。 いいと思いますけど。 |
裁: |
私のかわりに、ひとつ おねがいできますかな。 |
成: |
え。でも‥‥それなら、たぶん。 スイッチを押せば‥‥ |
裁: |
指を切って、木づちが叩けなく なったら、商売になりません。 |
成: |
(指を切って、人を指せなくなった ら、商売にならないんだけどな) |
茜: | もう! 早く調べてみましょうよ! |
茜: |
ナイフに、小さなタグが ついてますね。 |
成: |
<<SL9号−2番>>‥‥ そう書かれているみたいだ。 |
茜: | どういうイミですか? |
成: |
さ、さあ‥‥ (似たヒビキのコトバを知ってる。 DL6号‥‥”事件”) |
茜: | でも‥‥なんだか。 |
成: | ? どうしたの? |
茜: |
なんか‥‥どこかで見たような 気がするんですよねー。 この、タグの文字と‥‥ ”よく似た”文字を‥‥最近。 |
茜: |
きゃあああ! びび、 ビックリさせないでくださいっ! |
成: | ビックリしたの、こっちだよ! |
茜: |
‥‥この、ナイフの刃‥‥ 先が欠けてますね! |
成: |
(それに、この赤黒いシミ。 ”血”かな、やっぱり‥‥) |
法廷記録にファイルした。 | |
御: |
とにかく! 事件当日の警察局の 動きは、ナットクできない! できれば、局長自身のクチから 説明をおねがいしたい。 |
裁: |
申しワケないのですが‥‥ 証言していただけますかな? 検事局と警察局の行きちがいと‥‥ この、ナイフについて。 |
巌: |
あ。いいよ。も。ゼーンゼン。 モンダイないからさ。ホント。 |
巌: |
『このナイフ、特別なモノなんだけど ‥‥この場じゃ、言えないのよ。』(証言1) 『ナイフと多田敷ちゃんを結びつける 証拠でもあれば、ベツだけどさ。』(証言2) 『あの日ね。ウチも大変だったのね。 正直、捜査どころじゃなくて。』(証言3) 『警察局で、捜査官が殺されちゃって ‥‥もう。シャレにならないよね。』(証言4) 『犯行時間。これが、5時15分。 グーゼンってコワいね。ホント。』(証言5) 『今のトコ、公式には検事局の事件と 関係ないから。詳しく言えないの。』(証言6) |
裁: |
け‥‥‥‥警察局内で 捜査官が殺害された、ですとッ! |
巌: |
これね。ナイショよ、チョーさん。 まだね。発表してないからさ。 |
御: |
ま、待っていただきたい! ”5時15分”といえば‥‥ ‥‥検事局で、多田敷捜査官が 殺害された時刻ではないかッ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! 静粛に! |
巌: |
とにかくね。ウチ‥‥警察局も 今、大コンランでさ。 ゴクヒ捜査の、まっ最中なワケ。 あ。みんなもしゃべらないでね。 |
裁: |
‥‥警察局の事情はわかりました。 いかがですかな? 弁護人。 |
成: |
(検事局と警察局‥‥2人の捜査官 が、同時刻に殺害された‥‥) |
茜: | 不自然、ですよね‥‥ものすごく。 |
成: |
‥‥弁護側は、 尋問のケンリを主張します。 |
裁: |
わかりました。‥‥ただし。 2つの事件が無関係であるかぎり、 よけいな質問は認めません。 |
成: | ちょっと待ってください! |
巌: |
お。来たね、サッソク。 弁護士名物『異議あり!』 |
成: |
このナイフ‥‥多田敷捜査官と 何か、関係があるはずです! |
裁: | ど、どういうことですかッ! |
巌: |
お、来たね、これまたサッソク。 裁判長名物『どういうことですか』 |
成: |
このナイフ、タグがついています。 <<SL−9>>‥‥ |
裁: | それが、どうかしましたかな? |
成: |
その一方で‥‥ここに、被害者が 身につけていたメモがあります。 |
裁: |
これが‥‥ナニか? 6、まいなす7えす、12月2日 ‥‥ですかな。 |
成: | ‥‥裁判長。”逆”なんですよ。 |
裁: | ぎゃく‥‥? |
成: |
メモ用紙に名前が印刷されている ため、正しいように見えますが‥‥ しかし! 被害者は、 おそらく、こう書いたのです! |
裁: |
あ‥‥‥ ああああああッ! |
成: |
メモを書いたとき‥‥たまたま、 用紙が逆を向いていたのでしょう。 |
裁: |
<<SL−9>>‥‥ナイフのタグの 文字と、カンゼンに一致しますッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! いかがですか、局長! |
巌: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ま。いいか。 見抜かれちゃしかたないもん。 ね。ナルホドちゃん。 |
成: |
え‥‥! あ、はあ。 (よゆうタップリ、だな‥‥) |