成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
成歩堂法律事務所 | |
茜: |
あの‥‥ごめんなさい、 成歩堂さん。 お姉ちゃんが‥‥いきなり、 あんなコト言いだして‥‥ |
巴: |
『真に恐ろしい犯罪には、 こちらも恐ろしい手を使う‥‥ いたしかたのないことです。 彼に正当な裁きを与えるため‥‥ 私は、手段を選ばなかった。』 |
茜: |
あたし‥‥知りませんでした。 まさか、<<SL9号事件>>が‥‥ <<青影事件>>の コトだった、なんて。 |
成: |
(有名な事件みたいだけど‥‥ 聞いたことないんだよな、ぼく) |
茜: |
お姉ちゃん、どうしても 青影をタイホしたかったんです。 だから、あの日‥‥‥ あたしの事件を、利用したの。 |
成: |
‥‥ちょっと待って! ”きみの”事件だって? |
茜: |
資料にも書いてありますが‥‥ 青影 丈の最後の被害者は、 検事の、罪門 直斗さんでした。 罪門さんの弟を殺害したとき、 致命的な証拠を残したんです。 |
成: |
その事件に‥‥あかねちゃん。 きみが関わっているの? |
茜: |
青影 丈は、あのとき‥‥ あたしを殺そうとしていたの。 |
成: | なんだって! きみを‥‥! |
茜: |
罪門 直斗検事‥‥罪門さんの 弟は、あたしを助けようとして‥‥ |
成: | じゃ‥‥じゃあ、きみは‥‥ |
茜: |
‥‥はい。 <<青影事件>>の法廷で、 目撃者として証言台に立ちました。 |
成: |
(‥‥なんてこった‥‥! いろいろ聞いてみたほうが よさそうだな‥‥) |
茜: |
2年前の、あの日。 ちょうど今ごろの季節でした。 雨が降っていて‥‥季節はずれの カミナリも近づいていました。 あたし‥‥お姉ちゃんの オフィスにいたんです。 お姉ちゃんのシゴトが終わったら、 晩ゴハンを食べに行こう、って。 そうしたら‥‥そこへ、 あのヒトが逃げてきたの! |
成: | ‥‥青影 丈‥‥ |
茜: |
どうやら、追われていたみたい。 ナイフを向けて‥‥叫んでた。 あたし、もう何がなんだか わからなくなっちゃって。 そのとき‥‥オフィスに、 罪門検事さんが現れたんです。 |
成: | (罪門 直斗検事‥‥弟さんか) |
茜: |
青影は、あたしをヒトジチに とって、ナイフを向けました。 でも! 一瞬はやく、罪門さんが アイツに飛びかかってきました。 そして、そのとき‥‥ |
成: | 何が起こったの? |
茜: |
あたし、一生忘れません! カミナリが落ちて、 部屋の電気が消えて。 窓のソトに、はげしいイナズマが 走って、目がくらんで。 あたしの目に、焼きついていたの。 あの一瞬が‥‥今も、忘れない‥‥ |
成: | (目に、焼きついた”一瞬”‥‥) |
茜: |
あたし‥‥青影が罪門さんを刺した ”瞬間”は、覚えてないんです。 |
成: |
じゃあ‥‥そのことは 証言できなかったんだ。 |
茜: |
はい。あたし、自分が襲われた コトだけ、聞かれました。 だから、お姉ちゃんは‥‥ 事件を”作った”んだと思います。 |
成: |
”作った”‥‥それって、 証拠品の”ねつ造”‥‥かな。 |
茜: |
あの有罪判決は、検事局にとって、 もっとも大きな勝利だったんです。 お姉ちゃんが証拠を作って、 それを使って、御剣検事さんが‥‥ |
成: | み、御剣が‥‥! |
茜: |
あ。御剣検事さん、きっと 知らなかったんだと思います! まさか、ねつ造された証拠を わたされていたなんて。 でも‥‥ それからなんです。 御剣検事さんに、イヤなウワサが。 ‥‥ゼンブ、あたしのせい。 あたしがしっかり証言できて いれば、あんなコトには‥‥ |
成: |
(‥‥カタチはどうであれ、 御剣のヤツ、関わっていたのか。 検事局の”ねつ造”に‥‥!) |
茜: |
そして、お姉ちゃんも。 あの事件がカイケツしてから‥‥ あんなに、冷たいヒトに なっちゃったんです。 |
成: |
(‥‥ダメだ。彼女に対して ココロを閉ざしてしまっている) |
成: |
事件が起こった”一瞬”‥‥ いったい、何を見たの? |
茜: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 青影が、罪門さんを押し倒して、 凶器のナイフをふりあげたの。 |
成: |
(罪門 直斗は‥‥‥この子の 目の前で刺されたのか!) |
茜: |
そのアトは‥‥覚えていない。 キゼツしちゃったみたいで。 気がついたら、お姉ちゃんが あたしを介抱してくれていた‥‥ |
成: |
‥‥かわいそうに。 ヒドい目にあったんだね。 |
茜: |
あたし‥‥あの”一瞬”を うまく証言できなかったの‥‥ 必死に、がんばったけど‥‥ コトバが出なかった。 絵で描いたりもしたけど。 それもあたし、へたくそで。 |
成: |
2年前といえば‥‥14才だ。 ムリもないよ。 |
茜: |
あの事件のあと‥‥ あたし、決心したの。 カガク捜査官になって、今度こそ。 自分のコトバで犯罪と戦いたい! そして、決定的な証拠を見つける。 そうすれば‥‥ お姉ちゃんが、証拠を”作る” 必要なんて、ないでしょう? |
成: |
そう、だったのか‥‥ (‥‥あかねちゃんのコト、 やっとリカイできた気がする。 でも‥‥事件のハナシには、 少し気になるコトがあるな) |
成: |
ひとつ‥‥気になることが あるんだけど。 |
茜: | なんですか? |
成: |
きみは、2年前‥‥ともえさんの オフィスにいたんだよね? |
茜: | そうですよ。 |
成: |
なぜ‥‥連続殺人犯が、 そんなところに逃げてきたのかな。 しかも、それを追ってきたのが <<検事>>だった、なんて‥‥ |
茜: |
ああ。それならカンタンです。 青影 丈は、あの日‥‥ 取調べ中に逃げ出したんです。 |
成: | ”取調べ”‥‥というと、警察に? |
茜: |
ええ。 モチロン、舞台は警察局ですよ。 事情徴収の途中に逃げ出して、 お姉ちゃんのオフィスに‥‥ |
成: |
いやいや、だから。なんでそこで ともえさんのオフィスなのかな。 |
茜: |
だって。取調べ室とオフィスは、 エレベータで直通だから。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ”エレベータで直通”‥‥? ‥‥あの。ともえさんは、 ”主席検事”だったよね? |
茜: |
あ! もしかして‥‥ あたし、言ってませんでした? お姉ちゃん‥‥ 2年前まで、捜査官だったんです。 警察局でナンバーワンの スゴウデだったの。 |
成: |
え‥‥‥えええええッ! (はじめて、聞いたぞ!) |
茜: |
あの<<青影事件>>の直後、 検事局に移ったんです。 ”主席検事”として。 |
成: |
(ともえさんが‥‥かつて ”捜査官”だった‥‥? どうやら‥‥本人のハナシを 聞いたほうがいいみたいだ!) |
留置所 面会室 | |
茜: | あ。お姉ちゃん‥‥ |
巴: |
成歩堂弁護士‥‥あなたに メイワクをかけたようです。 |
成: |
証拠品の”ねつ造”‥‥ まさか、と思っていました。 |
巴: |
犯罪者は手段を選びません。 こちらも、カクゴが必要なのです。 |
茜: |
‥‥でも! お姉ちゃんたちが まちがえていたら! 無実のヒトを有罪に しちゃうかもしれないんだよ! |
巴: |
たしかに‥‥ そのキケンは、承知しています。 |
成: |
ともえさん。 あかねちゃんから、 あなたのことを聞きました。 |
巴: | ‥‥なんのコトかしら。 |
成: |
あなたは‥‥2年前は 捜査官だったそうですね。 そして、<<SL9号事件>>を キッカケに、検事局に移った。 |
巴: | ‥‥そのとおりです。 |
成: |
聞かせていただけますね? その不自然な”異動”のコトも。 |
巴: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ あなたには、聞くケンリが あるでしょう。成歩堂弁護士‥‥ |
成: |
今日の法廷で、いろいろなコトが わかりました。 やはり‥‥2年前の事件が 大きく影響していること。 |
巴: |
あの事件の証拠品が、盗まれた‥‥ なんとなく、予想はしていました。 罪門‥‥巡査の執念は、 よく知っていましたから。 |
茜: |
‥‥2年前の、あの裁判。 やっぱり、不正があったんだね。 |
巴: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
茜: |
お姉ちゃんを信じてたのに! どんなコトがあっても、真実だけを 見つめてくれる、って‥‥ |
巴: |
‥‥しかたないのです、あかね。 2年前の、あの事件で‥‥私は タマシイを売ったのですから。 |
成: |
‥‥とにかく。 今日の法廷のケツロンは、1つ。 事件当日の、午後5時15分。 <<警察局で、殺人事件はなかった>> |
茜: |
ウソだよね! 証人が‥‥ おキョウさんが言ったコト。 お姉ちゃんが、多田敷さんを ナイフで刺した、なんて‥‥ |
巴: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
茜: |
お姉ちゃん! いいかげんにしてよ! どうして教えてくれないの? |
巴: |
‥‥あかね。これは、 私だけのモンダイではないのです。 |
成: |
(ともえさん‥‥こんな苦しそうな カオをするの、初めてだ‥‥) |
巴: |
たしかに‥‥2年前。 私は警察局の一員でした。 |
茜: |
すごかったんですよ、お姉ちゃん。 ガント局長とお姉ちゃんのチーム。 今でも刑事課の伝説なんですから! |
成: | 巌徒局長‥‥? |
巴: |
当時は、警察局副長でありながら 捜査の現場にいたのです。 巌徒 海慈は‥‥私にとって、 アコガレの捜査官だったのです。 |
茜: |
ふたりでコンビを組んで、スカッと カイケツ! カッコよかったなあ。 |
成: |
(ジマンのお姉さん、か‥‥ うれしそうだな、あかねちゃん) でも‥‥今は、主席検事ですよね。 何があったんですか? |
巴: |
‥‥私はもともと、 検事を志望していたのです。 |
茜: |
警察局で捜査の現場を学んで、 転向するつもりだったんだよね! |
巴: |
<<SL9号事件>>の解決で、 巌徒のチカラは決定的なモノに。 彼は、警察局長に就任して‥‥私の 検事局への異動を決めたのです。 |
成: |
(2年前の”捜査”‥‥ もう少し、詳しく聞いてみよう) |
巴: |
2年前‥‥私は、副主席捜査官と して、青影を追っていました。 |
成: |
”副主席”‥‥すると当然、 主席は‥‥巌徒 海慈、ですか。 |
巴: |
私と巌徒捜査官は、オフィスも共有 して、捜査に取り組んでいました。 |
成: |
(巌徒局長と、オフィスまで いっしょだったのか‥‥) |
巴: |
私たちの下についたのも、 みな優秀な捜査官でした。 捜査責任者の多田敷捜査官。 罪門 恭介に、市ノ谷 響華‥‥ 特に罪門は、初めて弟さんと組んで ‥‥はりきっていました。 青影 丈は、まちがいなく 連続殺人事件のハンニンでした。 私たちは、本人に任意同行を求めて 証拠をつかもうと必死だった‥‥ そんなとき。 あの事件は起こったのです。 |
成: | (あかねちゃんの”事件”‥‥!) |
茜: |
あたしを助けようとした 罪門検事さんが、青影に‥‥ |
巴: |
あの事件‥‥第一発見者は、 この私自身だったのです。 |
成: |
‥‥! (初めて聞くぞ‥‥その情報は) |
巴: |
あの日。取調べは、巌徒捜査官と 罪門 直斗検事が担当しました。 捜査は大詰めを迎えていて‥‥ 青影もアセっていたのでしょう。 巌徒捜査官たちのスキをついて、 取調室から逃走したのです。 青影が逃げこんだのは‥‥ 巌徒捜査官と私のオフィスでした。 |
茜: |
‥‥そこに、 あたしがいたんだね‥‥ |
成: |
あなたが‥‥最初に かけつけたんですか? 現場に。 |
巴: |
そのようです。 私は、取調べには立ち会わず、 資料の整理をしていました。 オフィスに戻ると‥‥3人の人影が 倒れて、血のニオイがしました。 |
成: |
3人‥‥ 殺害された罪門 直斗検事と、 キゼツした、あかねちゃんと‥‥ |
巴: |
ハンニンの青影 丈です。 格闘の際に‥‥罪門検事は、 最後の抵抗をしたようです。 青影は現場で、軽い脳しんとうを 起こして倒れていました。 |
成: | ‥‥それで、あなたは? |
巴: |
さすがの私も、パニックに なってしまって‥‥ とにかく、あかねを現場から 運びだして、介抱しました。 |
成: |
(そりゃそうだよな‥‥ 妹さんが襲われたんだから) |
巴: |
そして‥‥青影を、 緊急タイホしたのです。 |
成: |
‥‥ケッキョク‥‥ 全員が関係者だったんですね。 <<SL9号事件>>の‥‥ |
巴: |
そう‥‥ フシギなもの、ですね。 |
成: | ぼくは、そう思いません。 |
茜: | え! どういうことですか? |
成: |
関係者が全員、過去の事件に 関係しているなんて‥‥ グーゼンとは考えられないよ。 |
茜: |
でも‥‥! 2年前に 解決した事件なんですよ! |
成: |
その”解決”が認められなくて、 彼は、あんなコトをしたんだ。 |
巴: |
罪門巡査‥‥彼のコトは、 私もずっと、気にしていました。 弟さんを亡くしてから、すっかり ヒトが変わってしまって‥‥ |
茜: |
やっぱり‥‥青影の裁判に、 ナットクできなかったのかな。 |
巴: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 1つの事件が終わっても‥‥ 人生は終わってくれないのです。 その記憶を一生、 抱えたまま生きるしかない。 |
成: |
その”事件”‥‥まだ、 終わっていないかもしれません。 |
巴: | ‥‥! |
成: |
あかねちゃんが襲われたのは、 警察局なんですね? |
巴: |
巌徒 海慈と私が、いっしょに 使っていたオフィスです。 現在は<<警察局長室>>‥‥ 巌徒局長が1人で使っています。 |
成: |
(行ってみるか。局長室‥‥ <<SL9号事件>>の現場へ!) |
警察署内 刑事課 | |
成: |
イトノコ刑事は‥‥ 見あたらないね。 |
茜: |
なんか今日は、特に 静かな気がしますね。刑事課。 |
成: |
‥‥たしかにね。 (課長さんはあいかわらずだけど) |
茜: |
あの。もう少し、他のヒトの ハナシを聞いてみませんか? |
成: |
‥‥そうだなあ。 また、あとで来てみようか。 |
警察局・エントランス | |
罪: | よお。バンビーナ。 |
茜: | あ‥‥ざ、罪門さん! |
罪: |
今朝、目がさめたとき‥‥こんな 1日になるとは思わなかったよ。 人生なんて、ケ・セラ・セラ。 わからないものさ、バンビーナ。 ビリーがつけた花が枯れたのが、 すべてを予言していたのかもな。 |
茜: | びりー‥‥? |
成: |
サボテンじゃないかな、たぶん。 あの‥‥どこか、行くんですか? |
罪: |
ちょっと検事局まで、 事情聴取に、ね。 <<任意出頭>>というカタチだが‥‥ もう、戻ってくるコトはないさ。 ワルいが、今日は 証拠保管室には入れねえぜ。 |
茜: |
罪門さん‥‥‥ どうして、あんなコトを! |
罪: |
さあな‥‥あの事件だけは、 コタエを知りたかったのかな。 |
成: |
‥‥すみませんけど。 検事局へ出頭する前に、 ハナシを聞かせていただけますか? |
罪: |
フン‥‥‥今日は ステーキ弁当はナシ、のようだ。 |
罪: |
‥‥あの裁判は、 最初からアヤしかった。 それは、恐らく‥‥捜査にあたった 全員が感じていたはずだ。 |
成: | ”アヤしかった”というのは‥‥? |
罪: |
オレたちの捜査とくいちがう ”ジジツ”が報告された。 たとえば‥‥凶器だ。 |
成: |
”凶器”‥‥この、 先の折れたナイフですか? |
罪: |
たしかに、そいつは 青影 丈のものだったさ。 しかし‥‥最初の解剖記録では、 ひとつのギモンが記されていた。 |
茜: | ‥‥ギモン‥‥? |
罪: |
あのナイフは‥‥被害者の傷口と ビミョーな”ズレ”があった。 |
成: | どういうことですか? |
罪: |
本当の凶器は、あのナイフじゃ なかった‥‥そういう可能性さ。 |
成: | ‥‥! |
罪: |
しかし‥‥提出された記録からは、 その”可能性”は消えていた。 |
成: |
(それが‥‥”インペイ”と ”ねつ造”だったのか‥‥?) |
罪: |
そう。あの事件は、オレたちに 大きなキズを残したのさ。 |
茜: |
<<SL9号事件>>が残した、 ”ツメ跡”‥‥‥ |
罪: |
‥‥優秀な検事だったよ。オレとは ちがって、アタマがよくてなァ。 当時、捜査官になったばかりの オレと組んで、ひとシゴト‥‥ そんな矢先の事件だったぜ。 |
茜: |
いくつ、だったんですか? 弟さん‥‥ |
罪: |
‥‥当時、27才だったよ。 まさにあの日、最高の栄誉を つかんだばかりでね‥‥ |
成: |
”最高の栄誉”‥‥? それって、もしかして‥‥ |
罪: | <<検事・オブ・ザ・イヤー>>さ。 |
成: | (で、出たよ‥‥) |
罪: |
そんなカオ、しないでくれよ。 検事にとっては、名誉なんだろ? |
成: |
(罪門さん‥‥弟さんのコトに なると、やさしい顔になるな) |
茜: |
<<SL9号事件>>が起こった日。 それって、まさか‥‥ |
罪: |
そう。‥‥今回と同じ、 証拠品の<<申し送り>>の日だった。 |
成: |
‥‥! そうだったんですか‥‥ |
罪: |
朝から冷たい雨がふっていて‥‥ 夜には、カミナリが鳴りだした。 ‥‥あれから、2年。 オレは、事件を死なせないために 証拠品を奪おうとしたのさ。 |
成: |
(しかし‥‥ダレかが、 それを阻止しようとしたんだ。 多田敷さんは殺害されて‥‥ 保管庫はカラッポになっていた) |
罪: |
この事件には、ウラがある‥‥ 裁判のあと、思い知らされたよ。 捜査に関係した捜査官が 1人をのぞいて全員、整理された。 おキョウはクビを切られ、 オレは小部屋に押しこまれた。 |
成: |
多田敷捜査官は‥‥ ”整理”されなかったんですか? |
罪: |
アイツまで切っちまったら、 総監クラスの耳に入っちまう。 ヤツらには、ツゴウが 悪かったんだろうぜ。 |
成: | ”ヤツら”っていうのは‥‥ |
茜: | いったい、ダレですか! |
罪: |
‥‥気を悪くするなよ、 バンビーナ。 巌徒 海慈と‥‥宝月 巴さ。 |
罪: |
‥‥巌徒 海慈主席捜査官と、 副主席の宝月 巴‥‥ 警察局では知らない者のない 名コンビだったぜ。 彼らが、そのキャリアに決定的な 王手をかけたのが、あの事件さ。 |
成: |
<<SL9号事件>>のあと、彼女は 検事局へ移ったんですよね。 |
罪: |
ああ。新局長に就任した、 巌徒 海慈が手配したのさ。 ‥‥検事局に異動してからさ。 彼女のようすがおかしくなった。 |
茜: | ? |
罪: |
彼女を知っているヤツは、 クチをそろえて言ってるぜ。 『宝月主席検事は、捜査官だった ころとは別人だ』‥‥ってな。 |
成: |
(そういえば‥‥あかねちゃんも 言ってたな、そんなコトを) |
茜: |
いったい‥‥お姉ちゃんに 何があったんですか! |
罪: |
‥‥ザンネンだが。 彼女の闇は深すぎてね。 オレの手には負えなかったよ。 |
成: |
(ともえさんの”ヒミツ”は‥‥ 2年前から始まっていたんだ) |
罪: |
‥‥さて。 オレの話は、こんなトコロだ。 楽しんでくれたかい、カウボーイ。 |
成: | ‥‥参考になりました。 |
罪: |
今日の法廷で、ハッキリわかった。 オレの敵は、御剣のボウヤじゃ なかったんだ、ってね。 2年前。不正な証拠で有罪判決を モギ取ったのは、あの男だった。 しかし。証拠をそろえて、戦術を 組み上げ‥‥与えたヤツがいた。 巌徒 海慈だ。 まあ‥‥もうすぐ、巡査ですら なくなるオトコのタワゴトさ。 一度、組んでみたかったよ。 科学捜査官になったアンタと、ね。 それじゃあな、バンビーナ! |