成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
上級検事執務室・1202号 | |
成: | (御剣‥‥戻ってるかな) |
茜: |
あ。いましたよ! ‥‥何か、書いてます。 |
御: | な、なんだ! こんなところに‥‥ |
成: |
(御剣のヤツ‥‥書いてたモノを あわてて床に捨てたぞ) タイヘンだったな。 ‥‥今日も法廷も。 |
御: |
‥‥フッ。 この2年間、私はつねに ギワクのキリに包まれてきた。 今さら、どうということもない。 |
茜: |
元気出してくださいね! あたし、オウエンしてますから! |
成: |
(コイツは、 ムカシからそうだった‥‥ ‥‥本当に苦しいときこそ、 それをかくそうとする‥‥) |
御: |
それで‥‥なんの用だ? こう見えて、私も忙しいのだが。 |
成: |
(そういえば‥‥さっき アイツ、何を書いていたんだ?) |
茜: |
ね。ちょっと調べてみましょうよ、 成歩堂さん! |
成: |
え! ‥‥やめとこうよ。 シュミが悪いし。 |
茜: |
じゃ。検事さんの目をそらして くださいね。おねがいします! |
成: |
え‥‥! え。ええと、御剣‥‥ 窓のソト、コートをハタめかせて イトノコ刑事が落ちていくぞ! |
御: |
‥‥そんなコトより、この子は 私の足元で、何をしているのだ。 |
成: | (見もしない) |
茜: |
あ! こ、これは! じ‥‥じ。じ‥‥‥ |
御: |
読めないのなら、教えてあげよう。 <<じひょうとどけ>>‥‥そう読む。 |
成: |
じ‥‥”辞表”? 御剣! おまえ‥‥ |
御: |
どうやら‥‥ 少し、つかれたようだ。 私の中の”何か”が死んでしまった ‥‥そんな気がしている。 |
茜: |
でも! 御剣検事さんは、 なんにも悪くないのに‥‥ |
御: |
自分が歩いてきた道は 私自身、よく知っている。 ‥‥しかし。それは必ずしも、 正しいものではなかったようだ。 私には、それがユルせないし‥‥ また、ユルされるべきでもない! |
成: | (こいつ‥‥ホンキだぞ!) |
茜: |
な‥‥成歩堂さん! なんとかしないと、検事さんが! |
成: |
(この、辞表‥‥ 何かに使えないか‥‥?) |
ポケットにしまいこんだ。 | |
御: |
‥‥イイワケは、無意味だ。 2年前‥‥私は、ニセの証拠に よって、有罪判決を得た。 これは、ぬぐい去るコトの できない”ジジツ”なのだからな。 |
成: |
でも! おまえは 知らなかったんだろう? それが、”ねつ造”された 証拠品だった、なんて。 |
御: |
‥‥警察局と検事局は、 2つで1つなのだ。 その”信頼関係”がコワれたとき ‥‥我々は、すべてを失うだろう。 警察局のミスは、私のミスで‥‥ 担当検事である、私のセキニンだ。 理由など、モンダイにはならぬ。 |
茜: | 御剣検事さん‥‥ |
御: |
私は‥‥自分のシゴトに ホコリを持っている。 それなのに、なぜ! ここまで、ココロが乱れる‥‥ |
成: |
(やっぱり‥‥ショックは かくしきれないみたいだ) |
成: |
明日の法廷‥‥ おまえ、やれそうなのか? |
御: |
フッ‥‥ 去年の事件といい、 キミにシンパイされてばかりだな。 正直‥‥歯がゆい。 |
茜: |
まさか! 担当検事を はずれる、なんてコトは‥‥ |
御: |
明日は最終日だ。今さら、担当を 変えることなど、できない‥‥ それが、上層部のホンネだろう。 2年前の、あの事件が‥‥ 今さら、私の足元をすくうとは。 |
成: | それは‥‥? |
御: |
あの事件の証拠品リストだ。 たしかに、妙に少ない気がする。 リストの大きさも‥‥ いつもの半分ほど、だしな。 |
成: |
はんぶん‥‥ (そりゃ、たしかに少ないな) |
御: |
罪門 直斗検事が殺害されて‥‥ 私は、彼のかわりに法廷に立った。 捜査には加われなかったが、 与えられた証拠で、罪を立証する! ‥‥当時は、そのコトしか アタマになかったよ。 |
茜: |
そういえば‥‥そのころの 写真を見かけましたね。 |
成: |
(あの写真‥‥ 何か”違和感”があったっけ) |
成: |
最後に、もう一度‥‥事件が あった日のコトを聞かせてくれ。 ‥‥多田敷捜査官が 殺害された、あの日‥‥ おまえ、警察局の式典に 参加していたんだよな? |
御: |
式典はスキではない。しかし‥‥ 欠席するわけには行かなかった。 |
茜: | やっぱり‥‥コレ、ですか? |
御: |
表彰される本人が 欠席するワケにも行くまい。 シゴトを午前中にかたづけて、 クルマで警察局へ向かったのだ。 |
成: | ”シゴトをかたづけた”‥‥? |
御: |
‥‥ああ。 つまらぬ事務シゴトだ。 その日はもう、検事局に 戻るつもりはなかったからな。 あの、たのみごとを されるまでは。 |
茜: | ”たのみごと”‥‥ですか? |
御: | コイツだよ。 |
茜: |
ああ。巌徒局長さんから たのまれたんでしたっけ、それ。 |
御: |
すでに、半年前。 解決した事件の証拠品だ。 これを、検事局に持って帰って ほしい‥‥そう言われたのだ。 |
成: |
(たしか‥‥ きのうも聞いたな‥‥) あの日、検事局に帰ってきたのは、 局長に言われたから、なんだな? |
御: | まあ‥‥そういうことになるが。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
巌徒局長の部屋に、 こんな写真がかざってあったよ。 |
御: |
‥‥罪門 直斗検事、か。 将来がキタイされていたよ。 <<検事・オブ・ザ・イヤー>>を 受賞したときの写真のようだ。 |
茜: |
あ。そういえば‥‥ 気になることがあるんですけど。 |
御: | ‥‥なんだろうか。 |
茜: |
罪門検事さんが、 手に持っている”賞品”‥‥ 御剣検事さんのと、 ちょっと、ちがいますよね。 |
御: |
あ、ああ。たしかに。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥そう。思い出したようだ。 |
成: | ? 何をだ? |
御: |
2年前まで‥‥検事局賞の 賞品は、あのカタチが正式だった。 モチロン‥‥それには、 ちゃんとした由来がある。 |
茜: | ゆらい‥‥? |
成: |
(ちょっと、キョーミがあるな) 聞かせてくれるか? そのハナシ。 |
御: |
カンタンなコトだがな。 <<ムジュン>>‥‥ それが、コタエだ。 |
御: |
ムジュン‥‥<<矛盾>>と書く。 このコトバの由来は‥‥ ヤリのような武器<<矛(ホコ)>>と 防具である<<盾(タテ)>>だ。 このコトバには、有名な物語が あるのだが‥‥知っているな? |
成: |
あ、ああ。聞いたことはあるよ。 ‥‥ちょっと、ド忘れしたけど。 |
御: |
‥‥中国の、古い故事だ。 ムカシ、楚(そ)の国に、 ある武器商人がいた。 王の前に出た彼は、 2つの商品を取り出した。 1つ目は‥‥すべてを貫く<<矛>>。 どんな防具も貫く、最強の武器だ。 もう1つは、決して破れぬ<<盾>>。 どんな攻撃も防ぐ、最強の防具だ。 |
成: | ふうん‥‥‥アレ。 |
成: |
その証人の発言は、 アキラカにムジュンしているッ! |
御: |
”その証人”ではない。 ”楚の商人”‥‥だ。 そのとおり。この<<矛>>と<<盾>>は 互いに、あり得ない存在だ。 ‥‥王は、商人にたずねた。 『ならば、その<<矛>>で<<盾>>を 突いたら、どうなるのか?』と。 ‥‥その商人は、 コトバを失ったという。 そこから、<<ムジュン>>という コトバが生まれた。 |
茜: |
あ! もしかして。 <<割れた盾>>と<<折れた剣>>は‥‥ |
御: |
その賞品は‥‥ 楚の商品、というわけだ。 中国の物語は、商人が答えに 詰まったところで終わっている。 しかし‥‥我々は、その先にある <<答え>>を追求しなければならぬ。 その結果が‥‥たとえ、このように ミニクイものであっても、な。 |
茜: |
へええ。ベンキョウに なりましたね、成歩堂さん! |
成: |
‥‥でも。ちょっと、 ヘンじゃないか? じゃあ、おまえの賞品には なぜ、<<盾>>しかないんだ? |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 私にも、よくわからない。 2年前、巌徒局長の提言で、 <<矛>>は廃止されたようだ。 |
成: | (‥‥巌徒局長が‥‥) |
書きなおした。 | |
検事局・地下駐車場 | |
?: |
‥‥そちら‥‥ 最高級和牛のシンタマ、 90グラムでよろしかったかしら。 |
成: |
お、おキョウさん! (すでに弁当ですらないな) |
響: |
あなたたちも、よほどのモノ好きで いらっしゃるコトですわねぇ‥‥ まるで‥‥そう。この世で初めて ナットウを口にした殿方のごとく。 あの‥‥2年前の事件まで レンジであたためなおすとは‥‥ |
成: |
<<SL9号事件>>は‥‥関係者 すべての名前が登場する事件です。 それが<<申し送り>>によって完全に 終わる日、今回の事件が起こった。 グーゼンとは思えません。 |
響: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ワタクシの見た、あの光景‥‥ よもや、お忘れじゃないでしょう? |
成: |
(ともえさんが、多田敷捜査官に ナイフを突き立てた、瞬間‥‥) |
響: |
過去のヒミツを暴いても‥‥ その瞬間を変えるコトは、不可能。 ソテーにしたシンタマは、味わって 飲みくだすしかないんだよ。 |
成: |
(おキョウさんの、ともえさんに 対する”悪意”‥‥ すべては、やはり‥‥ 2年前に始まっているんだ!) |
響: |
青影 丈‥‥その名前は、 今も忘れちゃいないさ。 ヒドい緊張とプレッシャーの下で、 アイツを追っていた、半年間。 今、思えば。あれほど充実していた 日々はなかったねぇ。 ひたすら熱く、濃く煮つめた グレービーソースのような毎日‥‥ もっとも‥‥罪門 恭介にとっては ジゴクのような日々だったろうが。 |
成: |
それは‥‥やっぱり、 弟さんの”死”ですか。 |
響: |
‥‥罪門兄弟は、それは仲が よかったからねぇ。 ナオトが死んでからのキョウスケの 執念‥‥見ていて恐ろしかった。 そんなアイツを見て‥‥あの女も ほっておけなかったんだろうさ。 |
成: | あの女‥‥? |
響: | 宝月 巴だよ。 |
茜: | お‥‥‥お姉ちゃん、ですか‥‥ |
響: |
<<SL9号事件>>には、最高の 捜査班が組まれたモノさ。 当然‥‥その指揮には、 伝説のコンビがあたった。 |
茜: | お姉ちゃんと‥‥巌徒局長! |
響: |
<<伝説のコンビ>>を信じていたから ‥‥キビしい捜査をつづけられた。 それだけに、あの事件の結末は あまりにショックだったね‥‥ |
成: | 証拠品の”ねつ造”‥‥ですか。 |
響: |
たしかに、青影 丈は ムクイを受けた。‥‥それはいい。 でも! 法廷に提出された証拠は、 あきらかに”操作”されていた! 捜査班の知らない証拠や‥‥ 逆に、提出されなかった証拠。 |
茜: |
でも。ジッサイに 不正があったという証拠は‥‥ |
響: |
このおキョウを見れば‥‥ 何があったか、アキラカだろうさ。 |
茜: | ‥‥! |
響: |
事件のあと‥‥多田敷をのぞいた 捜査官たちは、その任を解かれた。 ‥‥ほとんど、なんの説明もなく。 そして‥‥宝月 巴は、主席検事 として、検事局に移転したのさ。 |
茜: |
お姉ちゃん‥‥ムカシから、 検事を志望していたから。 |
響: |
‥‥コトは、そう タンジュンじゃないよ。 |
茜: | え‥‥ |
響: |
宝月 巴は‥‥操られていた。 おキョウは、そうニラんでるねェ。 |
成: | ”操られていた”‥‥‥? |
響: |
巌徒 海慈に、宝月 巴‥‥ 2年前は、主席捜査官と、副主席。 警察捜査のトップだった。 |
茜: |
ふたりで、数々の難事件を カイケツしたんですよね! |
響: |
‥‥特に、巌徒 海慈の磁力は、 異常なほどだったねぇ。 |
成: | ”磁力”‥‥? |
響: |
”証拠品”を 引きつけるチカラだよ。 彼が扱った事件では‥‥不自然な ほど、意外な証拠が出たものさ。 |
成: | (”意外な証拠”‥‥まさか!) |
響: |
そう。そのころから、 ある種の”ギワク”はあった。 ‥‥ダレも、口には 出せなかったけどね。 |
成: |
(”ねつ造”だろうな ‥‥言うまでもなく) |
響: |
あのころの宝月 巴は、 捜査官全員のアコガレだったよ。 |
茜: | ! そうだったんですか? |
響: |
このおキョウも、そのひとりさ。 ‥‥バカみたいだけどねェ。 曲がったコトがキライで、いつも 捜査官のコトを考えてくれていた。 だから‥‥あの事件でも、 キョウスケのコトを気にしてたよ。 |
茜: | 罪門さんを‥‥ |
響: |
弟を殺害された苦しみを、 自分のコトにように感じていたね。 キョウスケが、弟の死に耐えられた のは、彼女のおかげだった。 ‥‥ちょっと、クヤシイけどね。 |
茜: | おキョウさん‥‥ |
響: |
だからこそ‥‥よけいに、 あの女がユルせないのさ。 どうして。あんなふうに、 冷たい女に変わっちまったのか‥‥ |
茜: | ‥‥‥‥‥ |
成: |
ともえさんが移転したのは‥‥ 2年前、だったそうですね。 |
響: |
‥‥そう。巌徒<<局長>>の、 強力な後押しのおかげで、ね。 |
茜: | <<局長>>‥‥ |
響: |
<<SL9号事件>>を解決した功績で 巌徒は、警察局のトップに立った。 その彼が、次に狙うエモノは‥‥ 当然、ひとつしかない。 ‥‥検事局さ。 |
成: |
! ま、まさか‥‥ そのために、ともえさんを! |
響: |
<<主席検事>>を押さえれば、事実上 検事局を動かすことができる。 ‥‥それが、巌徒 海慈の 狙いだったんだろうねェ‥‥ |
茜: |
でも! なぜ、お姉ちゃんが 局長さんの言いなりに‥‥ |
響: |
それは、わからないさ。‥‥でも。 彼女が”変わった”のは、 あの事件が終わってから、だ。 そこに”何か”ある‥‥ そう考えるべきじゃないかねェ。 |
成: |
(どうやら‥‥ やっと、この事件のポイントが 見えてきたような気がするな) ‥‥ありがとうございます。 おキョウさん。 |
響: |
ボウヤ‥‥ 食材を活かすも殺すも、 料理のウデしだい、さ。 ‥‥アンタに、この情報を 活かすコトができるかしらね‥‥ |
警察署内 刑事課 | |
糸: | お、アンタたち。また来たッスか。 |
成: | 刑事さんも、まだいたんですか? |
糸: |
捜査資料を150部、 コピーしてるッス。 お茶を入れて、コピーして‥‥ もう、まるっきりOKッス! |
茜: |
”おーけい”‥‥‥? どういうコトかな。 |
成: |
ハナシの流れから察するに‥‥ ”オフィス・ケイジ”の略かな。 |
茜: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あ、そっちか! |
糸: |
アンタも、何度もゴクロウッスが ‥‥ダメッスよ。アレだけは。 |
茜: | ”アレ”‥‥? |
糸: |
巌徒局長室の調査ッス。 アンタたちを入れてしまったら、 自分のクビが火を吹くッス! |
成: |
(局長室は、<<SL9号事件>>の 最後の現場だ。 調べないわけにはいかない!) |
茜: |
何か、いい手はありませんか? 刑事さんのキモチを変えるような。 |
糸: |
なんスか。この シワシワの紙クズは。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ これは‥‥まさかッ! まさか、御剣検事が‥‥ |
成: |
どうやら‥‥ ホンキ、みたいなんです。 |
糸: |
そ、そこまで 追いつめられているとは‥‥ |
茜: |
セキニン感が強そうですよね。 御剣検事さん。 |
糸: |
‥‥自分も、最初は冷たいだけの オトコだと思っていたッス。 でも。今は知っているッス。 御剣検事が、ワレワレ刑事を 信じてくれていることを。 それなのに‥‥ その信頼を‥‥ワレワレ警察は、 ウラ切ってしまったッスね‥‥ |
茜: | 刑事さん‥‥ |
糸: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ わかったッス。 自分もハラを決めたッス! |
茜: | え。 |
糸: |
このIDカード、 持っていくッス。 |
成: |
でも! そんなコトしたら、 あなたが‥‥ |
茜: |
今年3枚目の遺失物届で 済むモンダイじゃないですよ! |
糸: |
見てのとおり‥‥自分は今、 捜査からハズされているッス。 御剣検事とイチバンつながりの 強い捜査官だったッスから。 事件の決着によっては、 この自分も‥‥ |
成: | (な、なんだって‥‥) |
糸: |
だから、せめて‥‥最後ぐらいは。 検事のチカラになりたいッス! |
成: |
‥‥わかりました。 お借りします。 |
ポケットの中でニギりしめた。 | |
警察局・局長室 | |
茜: | じゃ。行きますよ、成歩堂さん。 |
‥ピー‥ | |
茜: |
‥‥ついに、来ちゃいましたね。 こんなところを見つかったら、 カクジツに‥‥ |
成: |
クビ、だね。 ‥‥イトノコ刑事が。 |
糸: |
そのときは、よろしく たのむッスよ、アンタ。 |
茜: | きゃああああああああああああッ! |
糸: | ほほほおおおおおおおおおおいッ! |
茜: |
ご、ごめんなさい。 死神かと思ったんです。 |
糸: |
‥‥死神に、いきなり ビンタはどうかと思うッス。 |
成: |
いいいい、イトノコ刑事ッ! なんですか急にッ! |
糸: |
いいいい、いやそのッ! ヤッパリ自分もその。気になって。 ‥‥来ちゃったッス。 |
成: |
じゃ、じゃあ‥‥イミないじゃ ないですか! コレ! |
ポケットの中でニギりつぶした。 | |
糸: |
きゃー! そんなコトしちゃ ダメッス! とにかく。局長室に入るなんて、 めったにないッスから‥‥ いっしょけんめい捜査したいッス! ‥‥一生の思い出に。 |
茜: | クビになる気、マンマンですね。 |
糸: |
さ。自分がついているッス。 思うぞんぶん、やってみるッス! |
成: | (ちょっぴり、不安だ‥‥) |
成: |
あの、部屋の反対側にある デスクは‥‥お姉さんの? |
茜: |
そうです。 2年前の、あの日‥‥ あたし、あそこで待ってた ハズですから。お姉ちゃんを。 |
成: |
あの‥‥今は、だれか 使っているんですか? あそこ。 |
糸: |
いや。巌徒局長が1人ッスよ。 ”現場保存”をテッテーする ヒトッスからねえ、局長殿は。 |
成: | (そういうコトなのか‥‥?) |
糸: |
‥‥いつまでも残しておいて、 警察局のイマシメにする‥‥ いつか、局長が そう言っていたッス。 忘年会のドンチャン騒ぎの席で。 |
成: | ‥‥軽いですね。 |
茜: |
じゃあ‥‥あそこは、 ダレも手を触れていないんですか? ‥‥あの事件があってから。 |
糸: |
そッス。局長と‥‥毎朝来る、 そうじのオバチャン以外は。 |
成: |
(‥‥なんと言っても、 2年前の事件だ。 手がかりが残ってるとも 思えないんだけど‥‥) |
糸: |
1つ‥‥カクニンして おきたいコトがあるッス。 |
成: | なんですか? |
糸: |
アンタたち‥‥ここへ来たのは、 あくまで、捜査のためッスよね? <<SL9号事件>>の”現場”と いうことで。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ どうして、そんなコトを? |
糸: |
まさか‥‥いや。 まさか、アンタたち‥‥いや。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ いや。ヤッパリ、いいッス。 気にしないでほしいッス。 |
成: |
あ、そうですか。 ‥‥じゃ、もう少し調べてみます。 |
糸: |
あ。ちょ、ちょっとアンタ! それは、あんまりッス! |
成: | え。な、ナニがですか? |
糸: |
『”気にしないでくれ”と言われ たら、よけい気になるッス!』 ‥‥と、ここは そう答えるべきトコッス! |
成: |
す、すみません。 (メンドくさい刑事さんだな) それで、なんですか? |
糸: |
アンタたち、まさか‥‥‥ 巌徒局長を‥‥ 疑ってるッスか? |
茜: |
え‥‥! そうなんですか! 成歩堂さん! |
成: |
(巌徒局長‥‥ ついに、その名前が出てきたか。 ぼくが、彼のコトを どう思っているか‥‥‥? ‥‥今はまだ、自分のムネに しまっておくほうがいいな) |
糸: | ‥‥ケッキョク、ムシッス。 |