第5話『甦る逆転』探偵パート3日目(その3)

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成歩堂 龍一…黒
御剣 怜侍…茶
糸鋸 圭介…黄土
裁判長…緑
宝月 茜…桃
宝月 巴…藤
巌徒 海慈…紫
罪門 恭介…紺
市ノ谷 響華…水
原灰 ススム…黄
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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2月24日 某時刻
上級検事執務室・1202号

成: (御剣‥‥戻ってるかな)
茜: あ。いましたよ!
‥‥何か、書いてます。
御: な、なんだ! こんなところに‥‥
成: (御剣のヤツ‥‥書いてたモノを
あわてて床に捨てたぞ)
タイヘンだったな。
‥‥今日も法廷も。
御: ‥‥フッ。
この2年間、私はつねに
ギワクのキリに包まれてきた。
今さら、どうということもない。
茜: 元気出してくださいね!
あたし、オウエンしてますから!
成: (コイツは、
ムカシからそうだった‥‥
‥‥本当に苦しいときこそ、
それをかくそうとする‥‥)
御: それで‥‥なんの用だ?
こう見えて、私も忙しいのだが。

(「床に落とした紙」を調べる)
成: (そういえば‥‥さっき
アイツ、何を書いていたんだ?)
茜: ね。ちょっと調べてみましょうよ、
成歩堂さん!
成: え! ‥‥やめとこうよ。
シュミが悪いし。
茜: じゃ。検事さんの目をそらして
くださいね。おねがいします!
成: え‥‥!
え。ええと、御剣‥‥
窓のソト、コートをハタめかせて
イトノコ刑事が落ちていくぞ!
御: ‥‥そんなコトより、この子は
私の足元で、何をしているのだ。
成: (見もしない)
茜: あ! こ、これは!
じ‥‥じ。じ‥‥‥
御: 読めないのなら、教えてあげよう。
<<じひょうとどけ>>‥‥そう読む。
成: じ‥‥”辞表”?
御剣! おまえ‥‥
御: どうやら‥‥
少し、つかれたようだ。
私の中の”何か”が死んでしまった
‥‥そんな気がしている。
茜: でも! 御剣検事さんは、
なんにも悪くないのに‥‥
御: 自分が歩いてきた道は
私自身、よく知っている。
‥‥しかし。それは必ずしも、
正しいものではなかったようだ。
私には、それがユルせないし‥‥
また、ユルされるべきでもない!
成: (こいつ‥‥ホンキだぞ!)
茜: な‥‥成歩堂さん!
なんとかしないと、検事さんが!
成: (この、辞表‥‥
何かに使えないか‥‥?)

<<御剣の辞表>>を
ポケットにしまいこんだ。

(「”ねつ造”の事実」を聞く)
御: ‥‥イイワケは、無意味だ。
2年前‥‥私は、ニセの証拠に
よって、有罪判決を得た。
これは、ぬぐい去るコトの
できない”ジジツ”なのだからな。
成: でも! おまえは
知らなかったんだろう?
それが、”ねつ造”された
証拠品だった、なんて。
御: ‥‥警察局と検事局は、
2つで1つなのだ。
その”信頼関係”がコワれたとき
‥‥我々は、すべてを失うだろう。
警察局のミスは、私のミスで‥‥
担当検事である、私のセキニンだ。
理由など、モンダイにはならぬ。
茜: 御剣検事さん‥‥
御: 私は‥‥自分のシゴトに
ホコリを持っている。
それなのに、なぜ!
ここまで、ココロが乱れる‥‥
成: (やっぱり‥‥ショックは
かくしきれないみたいだ)

(「明日の法廷」を聞く)
成: 明日の法廷‥‥
おまえ、やれそうなのか?
御: フッ‥‥
去年の事件といい、
キミにシンパイされてばかりだな。
正直‥‥歯がゆい。
茜: まさか! 担当検事を
はずれる、なんてコトは‥‥
御: 明日は最終日だ。今さら、担当を
変えることなど、できない‥‥
それが、上層部のホンネだろう。
2年前の、あの事件が‥‥
今さら、私の足元をすくうとは。
成: それは‥‥?
御: あの事件の証拠品リストだ。
たしかに、妙に少ない気がする。
リストの大きさも‥‥
いつもの半分ほど、だしな。
成: はんぶん‥‥
(そりゃ、たしかに少ないな)
御: 罪門 直斗検事が殺害されて‥‥
私は、彼のかわりに法廷に立った。
捜査には加われなかったが、
与えられた証拠で、罪を立証する!
‥‥当時は、そのコトしか
アタマになかったよ。
茜: そういえば‥‥そのころの
写真を見かけましたね。
成: (あの写真‥‥
何か”違和感”があったっけ)

(「事件当日のこと」を聞く)
成: 最後に、もう一度‥‥事件が
あった日のコトを聞かせてくれ。
‥‥多田敷捜査官が
殺害された、あの日‥‥
おまえ、警察局の式典に
参加していたんだよな?
御: 式典はスキではない。しかし‥‥
欠席するわけには行かなかった。
茜: やっぱり‥‥コレ、ですか?
御: 表彰される本人が
欠席するワケにも行くまい。
シゴトを午前中にかたづけて、
クルマで警察局へ向かったのだ。
成: ”シゴトをかたづけた”‥‥?
御: ‥‥ああ。
つまらぬ事務シゴトだ。
その日はもう、検事局に
戻るつもりはなかったからな。
あの、たのみごとを
されるまでは。
茜: ”たのみごと”‥‥ですか?
御: コイツだよ。
茜: ああ。巌徒局長さんから
たのまれたんでしたっけ、それ。
御: すでに、半年前。
解決した事件の証拠品だ。
これを、検事局に持って帰って
ほしい‥‥そう言われたのだ。
成: (たしか‥‥
きのうも聞いたな‥‥)
あの日、検事局に帰ってきたのは、
局長に言われたから、なんだな?
御: まあ‥‥そういうことになるが。
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥

(「2年前の写真」をつきつける)
成: 巌徒局長の部屋に、
こんな写真がかざってあったよ。
御: ‥‥罪門 直斗検事、か。
将来がキタイされていたよ。
<<検事・オブ・ザ・イヤー>>を
受賞したときの写真のようだ。
茜: あ。そういえば‥‥
気になることがあるんですけど。
御: ‥‥なんだろうか。
茜: 罪門検事さんが、
手に持っている”賞品”‥‥
御剣検事さんのと、
ちょっと、ちがいますよね。
御: あ、ああ。たしかに。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥そう。思い出したようだ。
成: ? 何をだ?
御: 2年前まで‥‥検事局賞の
賞品は、あのカタチが正式だった。
モチロン‥‥それには、
ちゃんとした由来がある。
茜: ゆらい‥‥?
成: (ちょっと、キョーミがあるな)
聞かせてくれるか? そのハナシ。
御: カンタンなコトだがな。
<<ムジュン>>‥‥
それが、コタエだ。

(「検事局賞の由来」を聞く)
御: ムジュン‥‥<<矛盾>>と書く。
このコトバの由来は‥‥
ヤリのような武器<<矛(ホコ)>>と
防具である<<盾(タテ)>>だ。
このコトバには、有名な物語が
あるのだが‥‥知っているな?
成: あ、ああ。聞いたことはあるよ。
‥‥ちょっと、ド忘れしたけど。
御: ‥‥中国の、古い故事だ。
ムカシ、楚(そ)の国に、
ある武器商人がいた。
王の前に出た彼は、
2つの商品を取り出した。
1つ目は‥‥すべてを貫く<<矛>>。
どんな防具も貫く、最強の武器だ。
もう1つは、決して破れぬ<<盾>>。
どんな攻撃も防ぐ、最強の防具だ。
成: ふうん‥‥‥アレ。

(成歩堂「異議あり!」)
成: その証人の発言は、
アキラカにムジュンしているッ!
御: ”その証人”ではない。
”楚の商人”‥‥だ。
そのとおり。この<<矛>>と<<盾>>は
互いに、あり得ない存在だ。
‥‥王は、商人にたずねた。
『ならば、その<<矛>>で<<盾>>を
突いたら、どうなるのか?』と。
‥‥その商人は、
コトバを失ったという。
そこから、<<ムジュン>>という
コトバが生まれた。
茜: あ! もしかして。
<<割れた盾>>と<<折れた剣>>は‥‥
御: その賞品は‥‥
楚の商品、というわけだ。
中国の物語は、商人が答えに
詰まったところで終わっている。
しかし‥‥我々は、その先にある
<<答え>>を追求しなければならぬ。
その結果が‥‥たとえ、このように
ミニクイものであっても、な。
茜: へええ。ベンキョウに
なりましたね、成歩堂さん!
成: ‥‥でも。ちょっと、
ヘンじゃないか?
じゃあ、おまえの賞品には
なぜ、<<盾>>しかないんだ?
御: ‥‥‥‥‥‥‥‥
私にも、よくわからない。
2年前、巌徒局長の提言で、
<<矛>>は廃止されたようだ。
成: (‥‥巌徒局長が‥‥)

<<検事局賞の盾>>のデータを
書きなおした。

(「検事局・地下駐車場」に移動する)


2月24日 某時刻
検事局・地下駐車場

?: ‥‥そちら‥‥
最高級和牛のシンタマ、
90グラムでよろしかったかしら。
成: お、おキョウさん!
(すでに弁当ですらないな)
響: あなたたちも、よほどのモノ好きで
いらっしゃるコトですわねぇ‥‥
まるで‥‥そう。この世で初めて
ナットウを口にした殿方のごとく。
あの‥‥2年前の事件まで
レンジであたためなおすとは‥‥
成: <<SL9号事件>>は‥‥関係者
すべての名前が登場する事件です。
それが<<申し送り>>によって完全に
終わる日、今回の事件が起こった。
グーゼンとは思えません。
響: ‥‥‥‥‥‥‥‥
ワタクシの見た、あの光景‥‥
よもや、お忘れじゃないでしょう?
成: (ともえさんが、多田敷捜査官に
ナイフを突き立てた、瞬間‥‥)
響: 過去のヒミツを暴いても‥‥
その瞬間を変えるコトは、不可能。
ソテーにしたシンタマは、味わって
飲みくだすしかないんだよ。
成: (おキョウさんの、ともえさんに
対する”悪意”‥‥
すべては、やはり‥‥
2年前に始まっているんだ!)

(「2年前の捜査」を聞く)
響: 青影 丈‥‥その名前は、
今も忘れちゃいないさ。
ヒドい緊張とプレッシャーの下で、
アイツを追っていた、半年間。
今、思えば。あれほど充実していた
日々はなかったねぇ。
ひたすら熱く、濃く煮つめた
グレービーソースのような毎日‥‥
もっとも‥‥罪門 恭介にとっては
ジゴクのような日々だったろうが。
成: それは‥‥やっぱり、
弟さんの”死”ですか。
響: ‥‥罪門兄弟は、それは仲が
よかったからねぇ。
ナオトが死んでからのキョウスケの
執念‥‥見ていて恐ろしかった。
そんなアイツを見て‥‥あの女も
ほっておけなかったんだろうさ。
成: あの女‥‥?
響: 宝月 巴だよ。
茜: お‥‥‥お姉ちゃん、ですか‥‥
響: <<SL9号事件>>には、最高の
捜査班が組まれたモノさ。
当然‥‥その指揮には、
伝説のコンビがあたった。
茜: お姉ちゃんと‥‥巌徒局長!

(「事件解決、その後」を聞く)
響: <<伝説のコンビ>>を信じていたから
‥‥キビしい捜査をつづけられた。
それだけに、あの事件の結末は
あまりにショックだったね‥‥
成: 証拠品の”ねつ造”‥‥ですか。
響: たしかに、青影 丈は
ムクイを受けた。‥‥それはいい。
でも! 法廷に提出された証拠は、
あきらかに”操作”されていた!
捜査班の知らない証拠や‥‥
逆に、提出されなかった証拠。
茜: でも。ジッサイに
不正があったという証拠は‥‥
響: このおキョウを見れば‥‥
何があったか、アキラカだろうさ。
茜:‥‥!
響: 事件のあと‥‥多田敷をのぞいた
捜査官たちは、その任を解かれた。
‥‥ほとんど、なんの説明もなく。
そして‥‥宝月 巴は、主席検事
として、検事局に移転したのさ。
茜: お姉ちゃん‥‥ムカシから、
検事を志望していたから。
響: ‥‥コトは、そう
タンジュンじゃないよ。
茜:え‥‥
響: 宝月 巴は‥‥操られていた。
おキョウは、そうニラんでるねェ。
成: ”操られていた”‥‥‥?

(「伝説のコンビ」を聞く)
響: 巌徒 海慈に、宝月 巴‥‥
2年前は、主席捜査官と、副主席。
警察捜査のトップだった。
茜: ふたりで、数々の難事件を
カイケツしたんですよね!
響: ‥‥特に、巌徒 海慈の磁力は、
異常なほどだったねぇ。
成: ”磁力”‥‥?
響: ”証拠品”を
引きつけるチカラだよ。
彼が扱った事件では‥‥不自然な
ほど、意外な証拠が出たものさ。
成: (”意外な証拠”‥‥まさか!)
響: そう。そのころから、
ある種の”ギワク”はあった。
‥‥ダレも、口には
出せなかったけどね。
成: (”ねつ造”だろうな
‥‥言うまでもなく)
響: あのころの宝月 巴は、
捜査官全員のアコガレだったよ。
茜: ! そうだったんですか?
響: このおキョウも、そのひとりさ。
‥‥バカみたいだけどねェ。
曲がったコトがキライで、いつも
捜査官のコトを考えてくれていた。
だから‥‥あの事件でも、
キョウスケのコトを気にしてたよ。
茜: 罪門さんを‥‥
響: 弟を殺害された苦しみを、
自分のコトにように感じていたね。
キョウスケが、弟の死に耐えられた
のは、彼女のおかげだった。
‥‥ちょっと、クヤシイけどね。
茜: おキョウさん‥‥
響: だからこそ‥‥よけいに、
あの女がユルせないのさ。
どうして。あんなふうに、
冷たい女に変わっちまったのか‥‥
茜: ‥‥‥‥‥

(「”操られていた”」を聞く)
成: ともえさんが移転したのは‥‥
2年前、だったそうですね。
響: ‥‥そう。巌徒<<局長>>の、
強力な後押しのおかげで、ね。
茜: <<局長>>‥‥
響: <<SL9号事件>>を解決した功績で
巌徒は、警察局のトップに立った。
その彼が、次に狙うエモノは‥‥
当然、ひとつしかない。
‥‥検事局さ。
成: ! ま、まさか‥‥
そのために、ともえさんを!
響: <<主席検事>>を押さえれば、事実上
検事局を動かすことができる。
‥‥それが、巌徒 海慈の
狙いだったんだろうねェ‥‥
茜: でも! なぜ、お姉ちゃんが
局長さんの言いなりに‥‥
響: それは、わからないさ。‥‥でも。
彼女が”変わった”のは、
あの事件が終わってから、だ。
そこに”何か”ある‥‥
そう考えるべきじゃないかねェ。
成: (どうやら‥‥
やっと、この事件のポイントが
見えてきたような気がするな)
‥‥ありがとうございます。
おキョウさん。
響: ボウヤ‥‥
食材を活かすも殺すも、
料理のウデしだい、さ。
‥‥アンタに、この情報を
活かすコトができるかしらね‥‥

(「警察局・エントランス」に移動する)

(「警察署・刑事課」に移動する)


2月24日 某時刻
警察署内 刑事課

糸: お、アンタたち。また来たッスか。
成: 刑事さんも、まだいたんですか?
糸: 捜査資料を150部、
コピーしてるッス。
お茶を入れて、コピーして‥‥
もう、まるっきりOKッス!
茜: ”おーけい”‥‥‥?
どういうコトかな。
成: ハナシの流れから察するに‥‥
”オフィス・ケイジ”の略かな。
茜: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
あ、そっちか!
糸: アンタも、何度もゴクロウッスが
‥‥ダメッスよ。アレだけは。
茜: ”アレ”‥‥?
糸: 巌徒局長室の調査ッス。
アンタたちを入れてしまったら、
自分のクビが火を吹くッス!
成: (局長室は、<<SL9号事件>>の
最後の現場だ。
調べないわけにはいかない!)
茜: 何か、いい手はありませんか?
刑事さんのキモチを変えるような。

(「御剣の辞表」をつきつける)
糸: なんスか。この
シワシワの紙クズは。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
これは‥‥まさかッ!
まさか、御剣検事が‥‥
成: どうやら‥‥
ホンキ、みたいなんです。
糸: そ、そこまで
追いつめられているとは‥‥
茜: セキニン感が強そうですよね。
御剣検事さん。
糸: ‥‥自分も、最初は冷たいだけの
オトコだと思っていたッス。
でも。今は知っているッス。
御剣検事が、ワレワレ刑事を
信じてくれていることを。
それなのに‥‥
その信頼を‥‥ワレワレ警察は、
ウラ切ってしまったッスね‥‥
茜: 刑事さん‥‥
糸: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
わかったッス。
自分もハラを決めたッス!
茜:え。
糸: このIDカード、
持っていくッス。
成: でも! そんなコトしたら、
あなたが‥‥
茜: 今年3枚目の遺失物届で
済むモンダイじゃないですよ!
糸: 見てのとおり‥‥自分は今、
捜査からハズされているッス。
御剣検事とイチバンつながりの
強い捜査官だったッスから。
事件の決着によっては、
この自分も‥‥
成: (な、なんだって‥‥)
糸: だから、せめて‥‥最後ぐらいは。
検事のチカラになりたいッス!
成: ‥‥わかりました。
お借りします。

<<イトノコ刑事のID>>を
ポケットの中でニギりしめた。

(「警察局長室」に移動する)


2月24日 某時刻
警察局・局長室

茜: じゃ。行きますよ、成歩堂さん。

‥カチ‥
‥ピー‥
茜: ‥‥ついに、来ちゃいましたね。
こんなところを見つかったら、
カクジツに‥‥
成: クビ、だね。
‥‥イトノコ刑事が。
糸: そのときは、よろしく
たのむッスよ、アンタ。
茜: きゃああああああああああああッ!
糸: ほほほおおおおおおおおおおいッ!

茜: ご、ごめんなさい。
死神かと思ったんです。
糸: ‥‥死神に、いきなり
ビンタはどうかと思うッス。
成: いいいい、イトノコ刑事ッ!
なんですか急にッ!
糸: いいいい、いやそのッ!
ヤッパリ自分もその。気になって。
‥‥来ちゃったッス。
成: じゃ、じゃあ‥‥イミないじゃ
ないですか! コレ!

<<イトノコ刑事のID>>を
ポケットの中でニギりつぶした。
糸: きゃー! そんなコトしちゃ
ダメッス!
とにかく。局長室に入るなんて、
めったにないッスから‥‥
いっしょけんめい捜査したいッス!
‥‥一生の思い出に。
茜: クビになる気、マンマンですね。
糸: さ。自分がついているッス。
思うぞんぶん、やってみるッス!
成: (ちょっぴり、不安だ‥‥)

(「局長のオフィス」を聞く)
成: あの、部屋の反対側にある
デスクは‥‥お姉さんの?
茜: そうです。
2年前の、あの日‥‥
あたし、あそこで待ってた
ハズですから。お姉ちゃんを。
成: あの‥‥今は、だれか
使っているんですか? あそこ。
糸: いや。巌徒局長が1人ッスよ。
”現場保存”をテッテーする
ヒトッスからねえ、局長殿は。
成: (そういうコトなのか‥‥?)
糸: ‥‥いつまでも残しておいて、
警察局のイマシメにする‥‥
いつか、局長が
そう言っていたッス。
忘年会のドンチャン騒ぎの席で。
成: ‥‥軽いですね。
茜: じゃあ‥‥あそこは、
ダレも手を触れていないんですか?
‥‥あの事件があってから。
糸: そッス。局長と‥‥毎朝来る、
そうじのオバチャン以外は。
成: (‥‥なんと言っても、
2年前の事件だ。
手がかりが残ってるとも
思えないんだけど‥‥)

(「巌徒局長」を聞く)
糸: 1つ‥‥カクニンして
おきたいコトがあるッス。
成: なんですか?
糸: アンタたち‥‥ここへ来たのは、
あくまで、捜査のためッスよね?
<<SL9号事件>>の”現場”と
いうことで。
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥
どうして、そんなコトを?
糸: まさか‥‥いや。
まさか、アンタたち‥‥いや。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
いや。ヤッパリ、いいッス。
気にしないでほしいッス。
成: あ、そうですか。
‥‥じゃ、もう少し調べてみます。
糸: あ。ちょ、ちょっとアンタ!
それは、あんまりッス!
成: え。な、ナニがですか?
糸: 『”気にしないでくれ”と言われ
たら、よけい気になるッス!』
‥‥と、ここは
そう答えるべきトコッス!
成: す、すみません。
(メンドくさい刑事さんだな)
それで、なんですか?
糸: アンタたち、まさか‥‥‥
巌徒局長を‥‥
疑ってるッスか?
茜: え‥‥!
そうなんですか! 成歩堂さん!
成: (巌徒局長‥‥
ついに、その名前が出てきたか。
ぼくが、彼のコトを
どう思っているか‥‥‥?
‥‥今はまだ、自分のムネに
しまっておくほうがいいな)
糸: ‥‥ケッキョク、ムシッス。


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