成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
地方裁判所 被告人第2控え室 | |
成: |
(ともえさんも、あかねちゃんも いない、控え室‥‥か。 今朝から、ともえさんに 連絡がとれない。 これは、どうやら‥‥) |
?: |
‥‥我々の知らないところで、 何か、動きがあったようだな。 |
成: | み‥‥‥御剣! |
御: |
‥‥キミのコトだ。すでに、 見当はついているのだろう。 <<7777777>>の IDナンバーについて。 |
成: |
‥‥ああ。 (コイツも、つきとめたみたいだ。 あのナンバーの”主”を‥‥) |
御: |
きのうの審理で、判決が 下されなかった理由は、ただ1つ。 このID使用記録のリストに、 ギモンの余地が残っていたからだ。 このナンバーが”彼”のもので あれば‥‥そのギモンは消える。 警察局長には、”公式な容疑”は かかっていないからな。 |
成: | ‥‥今のところは、だよ。 |
御: |
とにかく、すべての ギモンが消える以上‥‥ 開廷後、5分。私は、被告人に 対する判決を求めることができる。 |
成: |
でも! それは まちがった判決だ! |
御: |
そう言うと思った。 ‥‥だから、話を聞きにきた。 |
成: |
(コイツがそんなコト言うの、 初めて聞いたな‥‥) 彼女は、何かをかくしている。 真実を知るためには‥‥ それを引きずり出すしかない。 |
御: | ”真実”‥‥だと? |
成: |
<<SL9号事件>>だ。 すべては、そこにつながっている。 |
御: |
バカなッ! 宝月 巴の審理は 今日が最後なのだ! 過去をふりかえっている ヒマなど、ない! |
成: | おまえしだいだよ、御剣。 |
御: | ‥‥! |
成: |
判決が下れば‥‥真実を知る チャンスは、永久に失われる! |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 考えておこう。 それでは‥‥法廷で会おう。 |
成: |
(‥‥今こそ、つきとめるんだ。 なぜ彼女は、局長の”命令”に 逆らうコトができないのか‥‥) |
地方裁判所 第9法廷 | |
裁: |
これより、宝月 巴の 法廷を開廷します。 |
成: | 弁護側、準備完了しております。 |
御: | 検察側、準備完了している。 |
裁: |
いつもならば、ここで検事による 冒頭弁論があるのですが‥‥ |
御: | ‥‥‥? |
裁: |
その前に、警察局長より 緊急提案があるそうです。 |
成: | (巌徒局長‥‥!) |
巌: |
や。みんな。おはよ。 どうよチョーさん。泳いでる? |
裁: |
いやいや。シゴトにおぼれて アップアップしとりますよ。 |
巌: |
あ。それ。ウマいなチョーさん。 かなわないや。イヤまったく。 |
御: |
それで‥‥局長。 ”提案”というのは? |
巌: |
トモエちゃん‥‥被告人がね。 どうしても、言っておきたい コトがある、って言いだしてさ。 |
成: | (ともえさんが‥‥?) |
巌: |
いろいろ。手っ取り早いと思って。 ちょっとさ。聞いてみてよ。 ‥‥ソンはないと思うんだよねェ。 |
御: |
‥‥いったい、 どういうコトだろうか。被告人‥‥ |
巴: |
‥‥申し上げたい内容は、 ヒトコトで済みます。 |
裁: | と、いいますと? |
巴: |
即刻、審理を終了して いただきたいのです。 |
成: | ど‥‥どういうコトですか! |
巴: |
‥‥私は、全面的に 犯行を認めます。 本年2月21日、地方検事局の 地下駐車場において‥‥ 捜査官・多田敷 道夫を 殺害いたしました。 |
成: |
な‥‥‥‥‥ なんですッてエエエェェッ! |
成: |
ま、待ってください! 被告人の発言は、 弁護側の主張と反しています! |
巴: |
‥‥それならば、成歩堂弁護士。 私は、あなたを 自分の弁護人とは認めません。 |
成: | と、ともえさん‥‥! |
巴: |
裁判長。これより、私は、 いっさいの弁護を受け入れません。 幸か不幸か、直接的な証拠品は まだ、足りないかもしれません。 しかし。状況的な証拠ならば、 検察側の立証はじゅうぶんです。 ‥‥判決をおねがいいたします。 |
裁: |
ふ、ふむう‥‥ たしかに被告人には、代理人である 弁護士を拒否することができます。 ‥‥ただ今の被告人の主張は、 法の定めに反するものではない‥‥ 前代未聞の事態ですが‥‥どうやら 審理の必要は、ないようです。 ‥‥弁護人にとっては、不本意な 結果となったようですが。 |
成: | (そ、そんな‥‥バカな!) |
裁: |
それでは被告人、宝月 巴に 判決を言いわたします! |
御: | お待ちいただこう、裁判長。 |
裁: | み‥‥‥御剣検事! |
御: |
‥‥検察側の立証は、 まだ終了していない。 今の時点での判決に、 我々は同意できないッ! |
巌: |
‥‥あのさあ、御剣ちゃん。 今、キミ。ムズカシイ時期なワケ。 わかるでしょ? オトナなんだし。 これ以上。モンダイを起こさない ほうが、身のためだと思わない? |
御: |
フッ‥‥ 見くびらないでもらいたいな ‥‥局長殿。 |
巌: | ‥‥どういうこと? |
御: |
過去のアヤマチをかくすために、 新しいイツワリをくりかえす‥‥ ザンネンながら、 私はそれほど、愚かではないのだ。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
御: |
被告人の、いきなりの自供‥‥ ウラで何か”取引”が あったとしか考えられないが? |
巌: |
取引‥‥ねェ。キミのトクイな ゲームじゃないの? それ。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥ どうやら‥‥ 私のココロも決まったようだ。 裁判長。最初の証人を変更したい。 |
裁: | と、いいますと‥‥? |
御: |
検察側の証人は‥‥‥ 宝月 茜! 彼女の入廷を要請するッ! |
巴: |
御剣検事! 私は自己弁護のケンリ を行使しているのです。 これ以上の審理は‥‥ |
御: | 知ったことではない。 |
巴: | ‥‥! |
御: |
”真実”を暴くことは‥‥ 時に、ヒゲキを引き起こす。 ‥‥しかし。 それ以上のヒゲキが存在する。 それは‥‥ ”真実”から目をそらすこと、だ。 |
裁: |
検察側の要請を認めます! ‥‥よろしいですな? 巌徒局長。 |
巌: |
‥‥御剣ちゃん‥‥ 後悔するよ。かならず。 |
御: |
‥‥宝月 茜を 入廷させていただきたい。 |
成: |
(御剣‥‥ カクゴを決めたようだな!) |
御: | それでは、証人。名前と職業を。 |
茜: |
あ、あの。あたし‥‥ 名前は、宝月 茜です。 職業は‥‥お姉ちゃんの妹で、 カガク捜査官をめざしています。 |
御: |
‥‥あなたは、今から2年前。 <<青影事件>>と呼ばれる事件で、 殺人者・青影 丈に遭遇した‥‥ マチガイないだろうか。 |
茜: |
‥‥はい。 あたし‥‥いっしょうけんめい、 忘れようとしてるんですけど‥‥ |
御: |
まことに 申しわけないのだが‥‥ これから、そのキオクを もう一度、たどっていただく。 |
裁: |
しかし。この場で審理すべきは、 多田敷捜査官の殺害事件です。 ‥‥2年前に解決した事件が、 それほど重要なのですかな? |
御: | 重要なのだ。 |
裁: | ‥‥‥‥‥‥ |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
裁: | わ、わかりました! |
成: | (弱ェ!) |
御: |
それでは‥‥2年前。 あなたが体験したことを 証言していただこう。 |
成: |
(‥‥ついに、 過去への旅が始まる‥‥ 旅の終着点は‥‥きっと。 今回の事件の”真相”だ!) |
茜: |
『あの日‥‥警察局のオフィスで お姉ちゃんを待っていました。』(証言1) 『ハンニンが逃げてきて‥‥ ヒトジチにされたんです。』(証言2) 『罪門 直斗検事さんが、あたしを 助けてくれたんですけど‥‥』(証言3) 『そのとき、一瞬見た光景は、 今も忘れません!』(証言4) 『ハンニンがナイフを振り上げて、 検事さんのムネに‥‥!』(証言5) |
裁: |
‥‥本当に、 ブジでよかったですな。 |
茜: |
あたし、キゼツしちゃって‥‥ よく覚えていないんです。 |
裁: |
当然でしょう。 しかし‥‥この証言が、いったい。 多田敷捜査官の殺人事件と、 どう関わってくるのですかな? |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ それは、これから アキラカになるだろう。 |
成: |
(‥‥なんのコンキョもないのに、 よくあんなコト、言えるよな) |
裁: |
それでは、弁護人! ‥‥尋問をおねがいします。 |
成: |
証拠品リストのウラに、 マジックで描かれた絵。 ‥‥なんか、とてつもなく イヤな予感がする‥‥ |
成: |
そのときのこと‥‥ 聞かせてもらえるかな。 |
茜: |
検事さんは、あたしと青影に 飛びかかってきました。 そのとき‥‥ 部屋の電気がパッと消えたんです。 |
裁: | 電気が‥‥? |
茜: |
ちょうど今ごろの 時期だったんですけど‥‥ あの日は、カミナリが鳴っていて ‥‥近くに落雷したんです。 |
成: | それで、停電に‥‥ |
裁: |
しかし‥‥妙ですな。 部屋が暗かったのなら‥‥ 何も見えないハズでは? |
茜: |
あの、一瞬‥‥窓のソトで カミナリが光ったんです。 そのストロボのような光が 目に焼きついて‥‥ |
裁: | なるほど‥‥ |
茜: |
あたし‥‥そのときのコト、 刑事さんにも話しましたから‥‥ |
成: | 刑事さん‥‥? |
茜: |
多田敷刑事さんです。 ‥‥捜査セキニンシャの。 |
成: |
(多田敷 道夫‥‥ 被害者の捜査官、か‥‥) |
成: |
‥‥多田敷捜査官と、 話をしたんだ。2年前に‥‥ |
茜: |
はい。‥‥今回の事件‥‥ あたし、コワかった‥‥ 2年前に会った捜査官のヒトたちが ‥‥みんな関係していたから。 |
成: |
(罪門さんに、おキョウさん、 巌徒局長に‥‥多田敷さん、か) |
御: |
多田敷捜査官には、あなたが 目撃したコトを話したのだろうか? |
茜: |
話しました。‥‥でも。 あたし‥‥そのとき。 うまくコトバが出てこなくて。 絵を描いたりしたんですけど‥‥ |
成: |
(”絵”‥‥か。 前にも聞いたような気がするな) |
裁: |
いかがですかな、弁護人。 今の証言は。 |
成: |
証人が描いたという”絵”‥‥ 重要なイミを持つと考えます。 |
御: |
しかし! 2年前、証拠品の中に そんな絵はなかったハズだが。 |
裁: |
‥‥証人。今の発言を 証言に加えていただきましょう。 |
茜: |
は、はい。わかりました‥‥ 『そのときのこと、絵に描いたのに。 なくなっちゃったみたいですね‥‥』(証言6) |
成: |
‥‥御剣検事。 この少女が、いっしょうけんめい マゴコロをこめて描いた”絵”‥‥ あなたは、あくまでも 否定するのですかッ! |
御: |
‥‥えッ! わ、私をワルモノにしないで もらいたい! 否定も何も‥‥担当検事として 私は、そんな絵は知らぬッ! |
成: |
‥‥しかし! ジッサイ、ここに こうして存在するのですよ。 |
裁: |
これは‥‥<<SL9号事件>>の 証拠品リスト、ですか? |
成: |
そのリスト、ウラ返して ごらんください。 |
裁: |
‥‥ウラ、うら、と。 ああああああああッ! これは! |
御: | な‥‥なんだ、コレは‥‥ |
茜: |
あ! あたしの 描いた絵です、それ! |
裁: |
たしかに‥‥2人のオトコが 争っているようです。 |
御: |
ば‥‥バカなッ! そもそも、弁護人ッ! なぜ、キサマごときが このリストを持っているのだ! |
成: | ご、”ごとき”‥‥ |
御: |
証拠品リストは、担当検事が 管理している! それなのに‥‥ |
裁: |
‥‥おや‥‥? この、2枚のリスト‥‥ 内容がちがうようですぞ。 |
御: | ‥‥なんだと‥‥? |
裁: |
どうやら、御剣検事‥‥ 2年前の証拠品リストは、 不完全だったようです。 このリストは、 2枚で1つになるようです。 ‥‥おたがい、切り取られた アトがありますからな。 |
成: |
つまり‥‥御剣検事。 これで、ハッキリしたワケだね。 ‥‥2年前。 きみのところに、すべての 証拠品は届いていなかったんだ。 |
御: |
な‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ナニィィィィィィィィィィッ! |
裁: |
静粛に! 静粛にッ! ‥‥しかし、こんなダイジな リストのウラに絵を描くとは‥‥ |
茜: |
取調べ室で、多田敷刑事さんに わたされたんです、それ。 |
成: |
(‥‥待てよ‥‥ ”半分に切り取られたリスト” ‥‥もしかして!) 裁判長! |
裁: |
なんですか、弁護人。 いいトシして、目をキラめかせて。 |
成: |
証拠品リストが、半分に 切り取られたモノならば‥‥ 御剣検事のリストのウラにも、 何か描かれているかもしれないッ! |
御: | ‥‥! |
裁: |
た、たしかに! ‥‥御剣検事ッ! |
御: |
可能性はあるだろう。 このリストのウラは‥‥‥‥‥む。 むむむむ‥‥む‥‥むゥゥゥッ! |
裁: | ‥‥どうかしましたかな? |
成: |
(アキラカに どうかしたみたいだな‥‥) |
御: |
‥‥シツレイ。 たしかに、私のリストのウラにも 絵が描かれていたようだ。 ‥‥これが、それだッ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ こ、これは‥‥その。 いわゆる、アレですかな? きのう、証拠保管室で おどっていた、カレ‥‥ |
御: |
おそらく‥‥どこかの刑事課長が、 ラクガキをしたようだ。 |
成: |
(やれやれ‥‥刑事課の、 あのオジサン‥‥かな) |
茜: | ‥‥‥‥‥‥ |
完全なものになった。 | |
裁: |
‥‥とにかく、証人。 証言していただきましょうか。 2年前に、あなたが描いた この”絵”について。 |
茜: |
‥‥‥‥‥‥え。 は、はいっ! |
成: |
(どうしたんだ? あかねちゃん。 絵を見て、何か考えている‥‥) |
茜: |
『この”絵”‥‥あたしが 2年前に描いたものです。』(証言1) 『カミナリがまぶしくて、 黒い影しか見えなかったけど‥‥』(証言2) 『このあと、あたし‥‥ キゼツしちゃったみたいです。』(証言3) 『‥‥まちがいなく、あのとき見た 光景を、そのまま描いてあります。』(証言4) |
裁: |
一瞬の、カミナリの光が、 目に焼きついたのですね。 |
成: |
(それだけに‥‥あかねちゃんは ”見たまま”を描いている!) |
裁: |
‥‥どうやら、ムジュンは 見あたらないようです。 殺人犯・青影 丈が、 罪門 直斗検事を殺害した‥‥ |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
それでは、弁護人。 尋問をおねがいします。 |
成: |
非常にザンネンですが‥‥ 証人の描いた、この絵には、 大きなムジュンがあります。 |
茜: |
そ、そんな‥‥! だって、あたし! 今でも、 ハッキリ思い出せるのに‥‥ |
裁: |
どうやら‥‥指し示して いただいたほうが早いようです。 証人が描いた、この”絵”‥‥ 解剖記録とムジュンする点とは! |
成: |
ムジュンしているのは モチロン、ここですッ! ”ハンニン”が振り上げている ナイフを、よく見てください。 なんと! 刃がポッキリ、 折れているんです! |
裁: |
よく見なくてもわかります、 それぐらい。 |
茜: |
でも、成歩堂さん。 証拠品を見てください! 凶器のナイフの先も、ホラ。 ちゃんと欠けてるじゃないですか! |
裁: |
たしか‥‥その、折れた刃の先は 被害者の体内から発見されました。 |
茜: |
青影 丈が刺したっていう、 決定的な証拠ですよね! |
成: |
‥‥そうはいかないんだよ、 あかねちゃん。 |
御: |
‥‥いったい、 何がモンダイだと言うのだッ! |
成: |
カンタンなコトです。 <<背後より一度、刺されて失血死>> 被害者が、1回しか 刺されていないのであれば! ハンニンが振り上げたナイフが、 折れているハズがないのです! |
裁: |
ああああああああああッ! ‥‥これは、いったいどういう |
御: |
そのナイフは、犯行の前から 折れていたと考えればよい! |
成: |
‥‥そうはいきません! 折れたナイフの先は、被害者の 体内から発見されています。 はじめから折れていたのなら! そんなところにあるハズがないッ! |
裁: |
たしかに、そのとおりです! ‥‥これは、いったいど |
御: |
刃の先が、被害者の体内から 発見されたのは、ジジツなのだ! それならば! その証人の キオクちがいとしか考えられぬッ! |
成: |
だからこそ、ぼくは何度も 証人にカクニンしたのです。 ”キオクちがいではないのか?” ‥‥でも、そうではなかった! |
御: |
しかし! 他に、このムジュンに コタエを与える方法など、ないッ! |
成: |
ザンネンながら‥‥ 1つだけ、あるんですよ。 ‥‥御剣検事。忘れたのかな? この事件には‥‥ ”不正な証拠の操作”が あったことを‥‥ |
御: | なに‥‥ッ! |
成: |
‥‥つまり。 この”折れた刃先”は‥‥ 検察側の”ねつ造”だった! そう考えることができるのです。 |
御: |
ぐ‥‥‥‥‥ ぐおおおおおおおおおおおおおッ! |