王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
牙琉 霧人…紫 | |
裁判長…緑 | |
亜内検事…茶 | |
浦伏 影郎…青 | |
逆居 雅香…水 | |
成歩堂 みぬき…赤 |
亜: | それでは、証人。名前と職業を。 |
裁: |
いやいやいや。 ちょっと待ってください! どういう意味ですかな? ‥‥コレは。 |
亜: |
おそらく、コワいのでしょう。 弁護人の、ツノが。 |
王: | (なんだよそれ!) |
裁: |
ご安心なさい。そんなツノ、 この私がヘシ折ってあげますぞ。 |
?: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ホント‥‥ですか? |
裁: |
この木槌にかけて! だから、出ておいでなさい。 |
王: |
テキトーなヤクソク しないでください! |
?: |
それじゃ‥‥ おコトバにあまえて。 |
裁: | では、あらためて‥‥ |
裁: |
いやいやいや。 ちょっと待ってください! だから、どういう意味ですかな? ‥‥コレは。 |
亜: |
はあ‥‥それが。 プロは商売道具を手ばなさない、 と言われまして‥‥ |
裁: | しょうばいどうぐ‥‥? |
雅: |
逆居 雅香(さかいまさか) ‥‥と申します。 レストラン<<ボルハチ>>で ウエイトレス‥‥していますの。 |
裁: | しかし‥‥なぜ、カメラを? |
雅: |
もちろん、<<ボルハチ>>ジマンの ボルシチもお運びいたします。 でも、ワタシ。他にも、いろいろ サービスをいたしますのよ。 |
裁: |
お客さんの写真を撮影するのも そのひとつ‥‥ということですか。 |
雅: |
そのとおりですの。 ‥‥たとえば、このような。 |
裁: | こ、これは‥‥被告人、ですかッ! |
亜: |
そう。 ‥‥事件当夜のものです。 |
雅: |
白い帽子をかぶったお客様‥‥ お亡くなりになった、とか。 |
裁: |
たしかに‥‥ まちがいなく、被害者です。 |
裁: |
静粛に! 静粛に! さりげなく、トンでもない証拠品を 持ち出しましたな。 |
雅: |
あたたかなお料理をソッと出すのが ワタシのお仕事ですから。 |
裁: |
ふむう‥‥では、ソッと受理して おきましょう。 |
法廷記録にファイルした。 | |
亜: |
さて、証人。 事件当時は、どこに‥‥? |
雅: |
ワタシ、あの部屋にいたんです。 ‥‥<<ナラズモの間>>。 |
王: | ”ならずものま”? |
雅: |
伝説のギャング”ナラズモ”が タイホされたというお部屋。 ‥‥事件があった小部屋ですの。 |
王: | なんだってェェェ! |
雅: |
‥‥そのビックリしたカオ、 ステキです。 あとで法廷の前に 張り出しておきますので‥‥ ほしい写真の番号を、みなさま お書きくださいね。 |
王: |
(事件が起こったとき、 あの部屋にいたのは3人だけ。 被害者の浦伏 影郎、成歩堂さん、 そして‥‥ この証人‥‥逆居 雅香! ‥‥成歩堂さんが ハンニンでないとすれば‥‥) |
裁: |
それでは、証人! 事件当夜のことを 証言してください! |
雅: |
『あの晩、お客さまにたのまれて トランプをお配りしておりました。』(証言1) 『あの晩はサムくて‥‥お二人とも、 帽子もとらずゲームをされました。』(証言2) 『被害者の方は、首のロケットを 握りしめて勝負をなさってました。』(証言3) 『最後の勝負が終わった瞬間! オソロシイ事件が起こったのです。』(証言4) 『あの方が被害者の方に飛びかかって クビをお絞めになりました!』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥ ちなみに、勝負はどちらが 勝ったのですかな? |
亜: |
モチロン。 勝者は被害者‥‥浦伏氏です。 |
王: |
そんなバカなッ! だって、成歩堂さんが‥‥ 負けるハズがないッ! |
霧: |
あのね、オドロキくん。 もう少しマシな異議は ないのですか。 |
王: |
でも! ‥‥7年間、無敗だったんですよ! |
亜: |
フッ‥‥ 私も、検事になってから 7年は無敗でしたがねえ。 ちなみに。 ここにちょっとした証拠があります。 事件が起こった瞬間の、 ふたりのポーカーのチップです。 こちら側の手札とチップが 被告人・成歩堂くんのもの。 あちら側が、 被害者・浦伏氏のものです。 |
裁: | ちっぷ‥‥ですか。 |
亜: |
ご存じとは思いますが、 ポーカーというゲームは‥‥ 自分の手札を武器に、 チップの枚数で戦うものなのです。 |
裁: |
も。モチロン、知っておりますぞ! 私も若いコロは‥‥ ”第3法廷のポーカーヘッド”と 呼ばれたものです。 |
王: |
(”フェイス”だけどな。 フツーは) |
裁: |
たしかに‥‥ この写真を見るかぎり、 ほとんどのチップは‥‥ 被害者のほうにありますな。 |
法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
それでは、弁護人。 尋問をおねがいしましょうか。 |
王: |
”クビを絞めた”‥‥ それはオカシイですね。 |
雅: | あの。ナニがでしょうか‥‥ |
王: |
被害者は、”ヒタイを殴られて” 亡くなったのです。 |
雅: | あああっ! |
王: |
証人! 本当に 犯行の瞬間を見たのですかッ! |
雅: | きゃああああああああああああッ! |
裁: |
ふむう‥‥ たしかに、現場写真をみるかぎり、 殴られたようには見えません。 帽子まで、キチンとかぶって。 |
亜: |
しかし‥‥殴られたのはたしかです。 こちらをごらんください。 現場検証のため、 帽子をとって撮影した写真です。 |
裁: |
‥‥なんとなく 親近感を覚えます。このアタマ。 たしかに一発、 ガツンとやられたようですね。 |
法廷記録にファイルした。 | |
雅: |
で、でも! ワタシ、見たんです! ‥‥被告人さまが、被害者さまに のしかかって、首を‥‥ |
王: |
(フン! ウソに決まっているさ。 これで勝負は決まったな!) |
霧: |
‥‥オドロキくん。 ガッツポーズもいいけど、もう少し 考えてみてはどうでしょう。 |
王: |
ど。どういうコトですか? オレ。ムジュン、見つけたし‥‥ |
霧: |
彼女の証言の中に、ひとつ‥‥ 気になることがあるのですよ。 |
裁: |
‥‥どうやら。 尋問をつづけたほうが よさそうですね。 |
王: |
(ヤレヤレ‥‥ 慎重すぎるんだよな、先生は。 イシバシを叩いて コワすタイプ?) |
霧: | 聞こえてますよ、オドロキくん。 |
王: |
(たしかに‥‥先生の言うとおり。 証言には、不自然な点があった。 でも、いったい。 なんの意味があるのか‥‥) |
裁: |
弁護人! ダマってないで 説明をおねがいします! |
王: |
‥‥証人は、こう証言しています。 『被害者は、クビのロケットを 握りしめていた』‥‥ |
亜: | そ。それが‥‥? |
王: |
この写真を見てください。 ‥‥被害者の首に、 そんなものはありません! |
霧: |
そう。そのとおり。 ‥‥さすが、ですね。 私の見込んだだけのことは あるようです。 |
王: |
で、でも。それって、 どういうコト、なんでしょう‥‥? |
裁: |
この証人の証言を 信じるのであれば‥‥ ロケットは、被害者の死後‥‥ ”消えた”コトになります。 |
王: |
”消えた”‥‥ そんな、バカなコトが! |
霧: |
なあに。シンプルに 考えればいいのですよ。 ロケットが”消えた”‥‥ならば。 はずした者がいるはず、ですね? |
王: |
ロケットを、はずした‥‥ あッ! それって、まさか! |
霧: |
”被告人が、被害者のクビを 絞めた”‥‥そうではなかった。 被告人は”ロケットをはずした” ‥‥そうは考えられませんか? |
裁: | あ‥‥‥ |
亜: | え‥‥‥ |
裁: |
ひ、被告人ッ! 弁護人の主張‥‥いかがですかッ! |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そういえば。 |
成: | なんですか。 |
裁: |
今、気がつきましたが‥‥ あなたも、クビから 何かブラさげているようですが。 |
成: |
ああ‥‥コイツ、ですか? たしかに、コイツはロケットだ。 中には、写真が入っている。 ぼくのムスメの写真が‥‥ね。 |
王: | え。 |
裁: |
なんとねえ‥‥ あなたに、ムスメさんが! |
亜: |
タイホしたとき、ワレワレも カクニンしました。 ロケットの写真は、たしかに 被告人のムスメさんです。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
(成歩堂さんの、ロケット‥‥か。 正直なところ、 グーゼンとは思えないな‥‥) |
裁: |
さて。ポーカーの”勝敗”が 事件の引き金になったとなると‥‥ やはり、そのコトについて もう少し、聞いておきたいですな。 |
亜: |
まあ‥‥証言を聞くまでもなく、 このように。 被告人は、惨敗でしたがね。 |
雅: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
それでは! 証人! 被害者と被告人の”勝負”について お聞かせねがいましょう。 |
雅: | は、はい‥‥ |
雅: |
『おたがい、チップで3500点の 持ち点で勝負は始まりました。』(証言1) 『チップはお店のもので、大小の 2種類のものをご用意しました。』(証言2) 『ゲームに勝っていたのは‥‥そう。 被害者さまのほうでございました。』(証言3) 『被告人の方。最後の勝負をしかけて、 やはり。負けてしまいましたの。』(証言4) 『負けが決まった瞬間、被告人の方は、 かたわらのビンを握りしめて‥‥』(証言5) |
裁: |
たしかに、 この写真を見ると‥‥ 勝負は一方的だったようですな。 |
亜: |
”ポーカーこそすべて”という 世界に住む被告人にとっては‥‥ 耐えられないコト だったのでしょうなあ。 |
裁: |
なるほど‥‥ 『むしゃくしゃしてやった。 今は後悔している』‥‥ ‥‥の、パターンですな。 |
王: |
(成歩堂さんは、ハッキリ言った。 『7年間、負けたことがない』 ‥‥この証言には、ゼッタイ ”何か”あるはずだ!) |
王: |
チップは、写真に写っている これでゼンブですか? |
雅: |
は‥‥‥‥‥ はい。モチロンですの。 |
王: |
‥‥? (なんか、落ちつかないな‥‥ 少し、くわしく聞いてみるか?) |
王: |
チップについて、くわしく 話していただけますか? |
雅: | そ。そう言われましても‥‥ |
亜: |
チップはチップです。 いつまで待っても‥‥ キップにはなりませんぞ! |
王: |
‥‥はあ。 (セッカクだ。 なにか聞かないとソンだな) たとえば‥‥そのチップ。 ”円”ですか? ”ドル”ですか? |
雅: |
‥‥あの。 先ほども申しましたけれど‥‥ ギャンブルでは ございませんでしたから‥‥ ”1000点”と ”100点”の2種類。 おカネではございませんの。 |
霧: | ‥‥オドロキくん。 |
王: | はいッ! |
霧: |
今の証言‥‥ ちょっと、おもしろいですね。 |
王: | え‥‥ |
霧: |
私ならば‥‥そう。 証言に加えていただくところですが。 |
裁: |
いかがですか、弁護人。 今の、証人の発言は‥‥? |
王: |
‥‥そうですね。 少し気になる点があります。 証言に加えてください! (‥‥あまりピンと来てないケド) |
裁: | それでは、証人。おねがいします。 |
雅: |
わ‥‥わかりました。 『チップは100点と 1000点の2種類でした。』(証言6) |
王: |
”ゲームに勝ったのは、 被害者のほうだった”‥‥ まちがいありませんか? |
雅: | ‥‥! |
亜: |
ナニを言い出すのかな、 新人くん。 この写真を見ればわかるでしょう。 ‥‥小学生じゃないのですから。 |
裁: | 何か、モンダイでも? |
王: |
モンダイは、ひとつ。 大きいチップと小さいチップ‥‥ どちらが1000点 だったのでしょうか? |
亜: |
そんなの! 大きい方に 決まっているでしょう。 |
王: |
ザンネンながら‥‥ それじゃ、計算が合わないのです。 |
亜: | け、けいさん‥‥? |
王: |
いいですか。 証人、あなたはこう証言しました。 おたがいのチップは、 3500点ずつ‥‥ つまり、ふたりの合計点数は、 7000点になります。 |
裁: | たしかに‥‥そのとおりですな。 |
王: |
そして‥‥ ”すべてのチップが写っている” この写真を見てください。 大きいチップを1000点、 小さい方を100点として、 計算すると‥‥ |
亜: | いくらですかッ! |
王: |
(自分で計算してくれよ‥‥ 小学生じゃないんだから) ‥‥10600点です。 計算が合わない。 アキラカにムジュンしています! |
亜: |
い、いったい、なぜ! このようなコトが‥‥ |
霧: |
そうです‥‥オドロキくん。 その”理由”が、 すべてをひっくり返すのですよ。 |
王: |
(たしかに‥‥このムジュンを 解く”コタエ”はひとつ!) |
王: |
おたがいの最初の持ち点が、 3500点ずつ。 そして、チップの枚数も これですべてだとすれば‥‥ コタエは、ひとつです。 |
裁: | それは、いったい‥‥! |
王: |
”逆”だったんですよ。 ‥‥チップの点数が。 |
亜: | な。なんですと‥‥ |
王: |
そう。つまり‥‥ 小さなチップのほうこそ 1000点だったのです! |
亜: | な、なんですと‥‥! |
裁: |
さっきの写真! もう一度、見せてください! ‥‥小さいチップが6枚、 大きいチップが10枚‥‥ たしかに! 合計すると、 7000点になります! |
霧: |
さすがオドロキくんですね。 まるで自分で見つけたみたいに 見えます。 |
王: |
まあ‥‥こういうのはホラ。 言ったヒトが勝ちですから! |
亜: |
し‥‥しかしッ! チップが逆だとしても、 ナニも変わらないではないかッ! |
裁: |
たしかに‥‥被害者のほうが大量に チップがあるというジジツは‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ。 |
王: |
‥‥そうなんです。 小さいチップが1000点、 大きい方が100点として‥‥ もう一度。‥‥ふたりの点数を 計算してみてください。 |
亜: | あ‥‥あああああああ‥‥! |
裁: |
被害者・浦伏氏が2900点、 そして、被告人・成歩堂くんは‥‥ 4100点ッ! |
王: |
‥‥どうやら。 勝負は成歩堂さんが 勝っていたようですね。 |
亜: | そんな‥‥バカなッ! |
王: |
‥‥被告人が、被害者を 殺害するはずはなかった! だって‥‥その。 勝ってたんですから! |
亜: | ぎゃああああッ! |
王: |
‥‥そして、証人。 あなたが、それを 知らなかったハズはない。 その場に”いた”んですから。 いかがですか、証人ッ! |
雅: |
あ‥‥‥ きゃああああああッ! |
裁: |
静粛に! 静粛にッ! どうやら、被告人には‥‥ ”動機”が消えてしまったようです。 検察側の主張していた”敗北”は、 存在しなかった‥‥ |
亜: | く‥‥くくくうッ! |
裁: |
それどころか。どうも、 この証人の証言は、信頼で |
裁: |
な‥‥なんですかな? 証人。 |
雅: |
これは‥‥本当は、 申し上げたくなかったのですが‥‥ じつは‥‥じつは。 |
亜: | な。なんですか、証人! |
雅: |
最後の勝負には‥‥ イカサマがあったのです。 |
亜: |
い‥‥いかさま‥‥? というと‥‥その。 ”インチキ”ですかッ! |
裁: |
というより‥‥その。 ”ズル”と言うべきでしょうッ! |
王: | (ゼンブ同じだよ!) |
雅: |
最後の、この勝負には イカサマがあった。だから‥‥ 勝負のチップが動かないまま、 ゲームは終わってしまったのです。 |
王: |
(な‥‥なんだなんだ。 ”勝負”の次は‥‥ ”イカサマ”だって‥‥?) |
霧: |
どうやら‥‥法廷が 大きく動き出したようですね。 ‥‥おもしろくなってきました。 |
裁: |
証人! 証言をおねがいしますッ! 最後の勝負‥‥ その”イカサマ”についてッ! |