王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
牙琉 霧人…紫 | |
裁判長…緑 | |
亜内検事…茶 | |
浦伏 影郎…青 | |
逆居 雅香…水 | |
成歩堂 みぬき…赤 |
地方裁判所 第2法廷 | |
裁: |
それでは、審理を再開します。 先ほどの証人‥‥ 逆居 雅香さんはいかがですか? |
亜: |
は、はッ! イシキが、その。 戻ったようです。 |
霧: |
それでは、もう一度。ハナシを 聞かせていただきましょうか。 |
亜: |
ううう‥‥しかし。彼女は、その。 ええ‥‥つかれておりまして。 |
裁: |
あなたもつかれたカオを しておりますな、亜内検事。 |
霧: |
ザンネンながら‥‥あなたに キョヒする権利はありません。 ‥‥逆居 雅香さんを、証言台へ。 おねがいしましょう。 |
裁: |
わかりました。 証人は、証言台につくように! |
霧: |
あらためて、うかがいましょうか。 あなたの、お名前と‥‥職業を。 |
雅: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
霧: |
往生際が悪いイカサマ師さんだ。 カクゴを決めたらいかがですか? |
雅: |
う‥‥うう‥‥う‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥なーんて。 逆居 雅香。 カードを配る”プロ”よ。 ヒト呼んで‥‥ ”イカサマサカイ”! |
裁: | い‥‥いかさまさかい‥‥ |
雅: |
‥‥ちなみに。 右から読んでも”イカサマサカイ” 左から読んでも”イカサマサカイ” ‥‥よろしく、お見知りおきを。 |
王: |
証人! あなたは、あの夜! ナニを企んでいたのですか! |
雅: |
いいさ。話してあげるよ。 アタシたちの‥‥”作戦”を! |
裁: |
あなたは、弁護側より<<告発>>を 受けている身です。 ‥‥これ以上の”ウソ”は、 イノチ取りになるでしょう。 |
雅: |
‥‥‥‥‥‥‥‥フン。 アタシは、あのオトコ‥‥ 浦伏にやとわれた”プロ”さ。 あらかじめ、勝負の数日前に <<ボルハチ>>に送りこまれた‥‥ ウエイトレスとして、ね。 |
王: |
被害者とあなたは、 ”グル”だったワケですね‥‥ |
雅: |
浦伏は、そのスジじゃ有名な ポーカープレイヤーらしいね。 ‥‥今回の作戦では、 <<勝敗>>は二の次だった。 これまでの成歩堂 龍一の 不敗記録をブチこわすコト。 ”ワナ”はシンプルなものだったね。 あらかじめ、ヤツのポケットに‥‥ オトリのカードを1枚、 コッソリ仕込んでおけばいい。 そして、<<5枚目のA>>のシナリオ どおりのカードを配って‥‥ ”イカサマだ!”と ケチをつけて、身体検査。 そのオトリのカードを取り出せば、 ワナのクチは‥‥閉じる! |
スリ替えたな!‥‥ | |
雅: |
イカサマを使った上、 勝負にも敗れる‥‥まさに、二重苦。 これで、 すべての”伝説”は、消える‥‥ |
裁: |
たしかに‥‥ 1つのイカサマが暴かれれば、 それまでの勝利も疑われるでしょう。 |
雅: |
たった1つの”デッチ上げ”で、 7年間の”無敗伝説”を破壊する。 ‥‥それが、 あの晩の勝負の目的だったのさ! |
霧: |
‥‥イカサマサカイさん、ですか。 オモシロイ。 しかし。ただひとつ、 ザンネンなコトがあるようです。 |
裁: | ざんねんな‥‥? |
霧: |
たしかに、興味深いワナです。 ただ、もっと興味深いのは‥‥ あなたの言う”オトリのカード”は、 いったい。どうなったのか‥‥? |
王: | たしかに‥‥そうです! |
雅: |
運のいいオトコ‥‥さ。 このイカサマサカイのワナを かいくぐるとはねェ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ どうも、あなたがちょっと かわいらしく見えてきました。 |
雅: |
ふ。ふざけないでッ! このイカサマサカイ、 見た目以上のいたずらッ子だよッ! |
裁: |
とにかく。 証言をおねがいしましょうか。 あなたたちの”ワナ”と‥‥ その結果について。 |
雅: |
『あの晩‥‥アタシは、たしかに オトリのカードを仕込んだ。』(証言1) 『最後の勝負。‥‥シナリオどおりの 成歩堂の敗北。そして、身体検査!』(証言2) 『でも‥‥オトリのカードは消えた! なぜか、作戦はシッパイしたのさ。』(証言3) 『次の瞬間‥‥成歩堂のニイさんが、 ビンを取って殴りつけた!』(証言4) 『浦伏を殴ったのはアタシじゃない! 被告人のイカサマおニイさんだよ!』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥タネを明かされたワリに、 スッキリしない証言でしたなあ。 |
雅: |
ワナはカンペキだったのに‥‥ あの、ペテン師のせいでッ! |
王: | あなたに言われたくありませんッ! |
裁: |
あやしげな証言ですが‥‥弁護人。 あなたにおまかせしましょう。 |
王: |
(やれやれ‥‥ この証人もアレだけど‥‥ 成歩堂さんも、ちゃんと 教えてくれればいいのに‥‥) |
王: |
でも‥‥ ちょっと、おかしくありませんか? |
雅: | な‥‥ナニがよ! |
王: |
成歩堂さんの身体検査、 何も出てこなかったんですよね? だったら、どうして。被害者を殴る 必要があったんですか? |
雅: | そ。それは‥‥ |
王: |
(な。なんだ‥‥ 今の”感じ”は‥‥) |
裁: | どうしましたかな? 弁護人。 |
王: |
い。いえ‥‥ (どうしよう‥‥ もっと詳しく聞いてみるか?) |
王: |
雅香さん‥‥あなた。 何か、隠していますねッ! |
雅: |
な‥‥ナニを言うんだいッ! ここ、この。この。 このイカサマサカサマサイが、その。 かかかか隠してる、なんて‥‥ |
亜: |
こ。コンキョのない言いがかりは やめてもらいたいですなッ! |
王: |
それでは。 もう一度、うかがいましょう。 ”被告人が殴った瞬間を見た” ‥‥本当ですか? |
雅: |
ほ‥‥本当に。 き、決まってるさ‥‥ あ‥‥アタシ‥‥たしかに‥‥ 成歩堂のニイさんが、 殴りつける瞬間を見たんだ‥‥ |
王: |
(こ、この”感じ”‥‥ な。なんなんだ‥‥!) |
成: |
『たとえば。あの証人‥‥ 逆居 雅香を思い出してごらん。 彼女は、ある証言をするとき‥‥ かならず”首筋をさする”。 ‥‥気がついていたかい?』 |
王: |
(首筋をさするクセ‥‥だって? なんだ、これ‥‥ 感覚が‥‥ 研ぎすまされていく! 雅香さんの”動き”が ‥‥ハッキリ見える! 彼女の”クセ”‥‥ バッチリ<<見抜く>>んだ!) |
王: |
雅香さん‥‥あなたは、 ご自分で気がついていますか? |
雅: | な‥‥なんのコト‥‥? |
王: |
あなたは‥‥ ある証言をするとき、かならず。 左手で首筋を さわる”クセ”があるんです。 |
雅: |
‥‥! く。くびすじ‥‥? そ。それがなんだというの! |
霧: |
‥‥どういうこと、なのですか? オドロキくん。 私は、気がつきませんでしたが‥‥ |
王: |
その”証言”をするとき‥‥ 雅香さんはムイシキに ”あるコト”を思い出している。 その”記憶”に、身体が 反応して‥‥首筋にふれてしまう。 きっと、 そういうことなんだと思うんです。 |
亜: |
か。彼女の”記憶”ですと‥‥ それはいったい、なんなのだッ! |
裁: |
それでは‥‥異例のコトですが、 弁護人にうかがいましょう。 あなたの主張する、 証人の”記憶”‥‥ それを示す<<証拠品>>を 提示していただきます! |
王: |
(彼女が首筋をさする ”クセ”‥‥ それは、彼女が”犯行の瞬間”の コトを話すときに現れる!) 証人。 あの夜‥‥<<犯行の瞬間>>。 それを思い出すたびに、 あなたは首筋をさすってしまう。 それには、かならず。 何か<<理由>>があるはずです。 その首筋に、忘れられない ”記憶”を刻んだ<<凶器>>とは‥‥ |
王: |
犯行の瞬間のコトを話すとき、 かならず首筋に手をやる‥‥つまり。 あなたは、この凶器のビンを 思い出しているのです。 |
雅: | ‥‥! |
王: |
しかし‥‥少し、妙ですね。 殴られたのが、浦伏氏‥‥ 被害者なのだとすれば。 なぜ、あなたが首筋を さすらなければならないんですか? |
亜: | ど。どういうコトですかッ! |
王: |
まるで、そう‥‥ あなた自身が殴られたかのように! |
雅: | う‥‥ううううう‥‥ |
亜: |
こ。こんな尋問は 聞いたことがないッ! しょ‥‥証人の、 く、”クセ”などと‥‥ |
霧: |
オドロキくん‥‥ なんですか、今のは。 このような尋問は、 私も初めてですが‥‥ |
王: |
説明はあとで! ‥‥あの証人を 崩すのは、今しかありません! 証人。事件を目撃した”瞬間”‥‥ ハッキリ証言していただきましょう。 |
雅: | ‥‥ワタシ。ナニも知りませんの。 |
亜: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ さすがに、 それはムリなのでは。 |
裁: | 証人。‥‥よろしいですかな? |
雅: |
フン! わかってるさ! 『殴ったのは、アイツよ! 警察が 来るまで、目を離さなかったんだ!』(証言6) |
王: |
証人。ここに記録があります。 ハッキリ、書かれているんですよ。 『被告人による通報で 現場に急行』 |
雅: | え‥‥ |
王: |
しかも。被告人は 部屋を出て階段を上がって‥‥ <<ボルハチ>>店内から 携帯電話で通報しているのです。 |
雅: | あ‥‥‥ |
王: |
本当に、被告人から ”目を離していない”のならば! 彼が部屋から出たところを 見ていなければならないッ! |
雅: | きゃあああああッ! |
雅: |
‥‥あの夜。ビンで殴ったのは‥‥ 被告人のニイさんじゃなかった。 |
『ショーダウンだ。』 | |
『‥‥これは、イカサマだッ! そのオトコの‥‥ ポケットを調べろッ!』 | |
『な‥‥ない! カードが‥‥‥』 | |
『‥‥アンタの負けだよ。』 | |
『うおおおおおおおおッ!』 | |
雅: |
そのとき‥‥浦伏は成歩堂のそばに あったボトルを取って‥‥ このアタシを殴りつけやがった! |
『‥‥この、使えない インチキイカサマ師めェェッ!』 | |
『きゃあああああああッ!』 | |
雅: |
そして、アタシが 目をさますと‥‥ |
裁: |
被害者はすでに亡くなっていた、 というワケですか‥‥ |
雅: |
とにかく、アタシ。 身分を明かすワケにはいかなかった。 浦伏と共謀してたのがバレたら、 ‥‥ゼッタイ、疑われる! |
裁: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
亜: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
いったい‥‥これは どうしたことでしょうか? |
亜: |
バカな‥‥こんな。 これは、ユメだ。 ビンで殴られたのは、 いっそ、このアウチだったのだ‥‥ |
裁: |
むうう‥‥放心状態ですな。 しからば、牙琉弁護士。 あなたの考えは、いかがですかな? |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: | が。牙琉先生‥‥? |
霧: |
‥‥弁護側としては、 逆居 雅香のただ今の供述は‥‥ ”まっ赤なウソである”‥‥ そう主張せざるを得ません。 |
雅: | な‥‥なんだって! |
霧: |
事件当夜、あの部屋にいたのは、 被告人・被害者・証人の3人。 ‥‥そして、この証人には ”動機”があった。 |
王: | どうき‥‥ |
霧: |
イカサマにシッパイした証人は、 浦伏と口論になった。 ‥‥その挙げ句の犯行なのです! |
雅: |
そんな! アタシ‥‥アタシじゃない! アタシは‥‥ ワナにハメられたんだ! |
成: |
クックックッ‥‥ ヒトをワナにはめようとする人間は みずから、足を取られる‥‥ まさに、そんな感じだ。 |
裁: | ひ、被告人‥‥ |
成: |
牙琉 霧人。 キミらしくもない‥‥ ずいぶん、荒っぽい論証だ。 |
霧: | どういうことですか‥‥? |
成: |
なぜ、残された、もう1つの 可能性を論証しようとしない? ‥‥事件が起こったとき。 ”現場には、第三者がいた” |
王: |
(たしかに、休憩に入る前‥‥ 成歩堂さんは証明した!) |
成: |
事件が起こった後。 1枚のカードがスリ替えられた。 スリ替えた人物は、カードが 2種類あったコトを知らなかった。 ‥‥つまり。”第三者”だ。 |
亜: |
しかし! そんな人物など、 どこにも存在しないッ! |
成: |
そのとおり。 だからこそ‥‥ぼくは、この事件を 法廷まで持ちこんだのですよ。 この逃げ場のない、いかなる イカサマも通用しない場所で‥‥ 真犯人をいぶり出すためにね。 |
裁: | し‥‥しんはんにん‥‥ |
成: |
さいわい‥‥ぼくたちはすでに、 ”手がかり”を得ている。 見えない”第三者”の手がかりを。 ‥‥かなり早い段階でね。 |
亜: | な‥‥なんですとッ! |
成: |
オドロキくん‥‥ キミにはわかるかい? |
王: |
だ、大丈夫‥‥ じゃないような。今回ばかりは。 |
成: |
さっきも言ったが、カードを スリ替えた”第三者”は‥‥ ひとつ。 大きなカンちがいをしている。 |
王: | カードの”ウラ”の色‥‥ですね? |
成: |
そう。 手札を見ればアキラカだが‥‥ ”最後の勝負”に使われたのは、 ”赤”のカードだった。 しかし‥‥ この法廷で、ただヒトリ。 そのカードを”青”と 表現した人物がいたのです。 |
王: |
(たしかに‥‥”青”のカードが 使われている印象があったな) |
成: |
どうかな、オドロキくん。 思い当たる人物は‥‥? |
亜: | わた。私じゃありませんぞ! |
裁: |
いったい、ダレですかッ! ”第三者”とは‥‥ |
王: |
(どういうコトなんだ‥‥ いきなり!) |
成: |
さあ、きみのコタエを聞こうか、 弁護士くん。 カードの色を<<青>>と 思っていた人物とは‥‥? |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ぼくの見込んだとおりだ。 きみの目と耳は‥‥そう。 きみのおデコ以上にクモリがない。 |
王: | や、やっぱり‥‥ |
成: |
牙琉 霧人。ぼくは、さっきから キミの話をしているんだよ。 |
王: |
で、でも! 牙琉先生は、 カードの色を知っていて当然です! |
成: |
‥‥どうしてかな? 見てのとおり。 現場写真はモノクロだ。 テーブルの上と床の上のカード。 どちらが”青”かは、見えない。 |
王: |
で、でも‥‥ホラ! こっちの写真には、 バッチリ写っています! |
成: |
ザンネンながら。彼が最初に カードを”青”と表現したのは‥‥ その写真が提出されるより、 ずっと”前”だったのさ! |
霧: |
『たしかに被告人は事件当時、 被害者とポーカーをしていました。 しかし。それは純粋なゲーム‥‥ ”勝負”だったのです。』 |
亜: | 『しょうぶ‥‥ですと‥‥?』 |
霧: |
『静かな情熱‥‥青い炎を 背にまとったカードだけが、 その勝負の行方を 知っていたのですよ。』 |
成: | どうだい? 牙琉。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: | がりゅう‥‥先生‥‥? |
裁: |
牙琉弁護士! ど。どうしたのですかな? |
霧: |
い。いや、失礼しました。 ‥‥あまりに意外だったもので。 成歩堂。まさか、 ホンキじゃないでしょうね? |
成: |
牙琉‥‥きみこそ。 ここまできて、まさか冗談だとは 思ってないだろうな? |
亜: |
ヒジョーシキですぞッ! 弁護士を、罪人呼ばわりなど‥‥ |
成: | ヒジョーシキ‥‥どこが、ですか? |
亜: |
そもそも、被害者と牙琉弁護士には、 なんのつながりもないッ! |
成: |
ぼくだって、つながりはない。 浦伏 影郎なんてオトコはね。 |
亜: |
そもそも、被害者と牙琉弁護士は、 会ったコトすらないハズですッ! |
成: |
‥‥もし‥‥ そうではなかったとしたら? |
亜: | え‥‥ |
成: |
じつは‥‥あの晩。 ポーカーが始まる前。 牙琉 霧人は、浦伏 影郎と 会っている可能性があるのですよ。 |
裁: | な‥‥なんですと! |
王: |
(成歩堂さんが話していなかった ”本当のこと”‥‥これか!) 成歩堂さん! ‥‥証言をおねがいします! |
霧: |
‥‥その要請には 賛成できませんね。 |
王: | ‥‥牙琉先生‥‥? |
霧: |
‥‥証言は 事件に限るべきと考えます。 ポーカーの勝負に入る前のことは、 本件とは無関係でしょう。 |
裁: | いかがですかな? 弁護人。 |
霧: |
弁護側の見解は、ただいま 申し上げたとおり‥‥ |
裁: |
‥‥本件の弁護士は、 あなたではありません。 |
霧: | ‥‥! |
裁: |
王泥喜弁護士。 あなたが決めることです。 |
王: | は‥‥、はい‥‥ |
裁: |
被告人・成歩堂 龍一の証言が 必要だと考えますか? |