王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
牙琉 霧人…紫 | |
裁判長…緑 | |
亜内検事…茶 | |
浦伏 影郎…青 | |
逆居 雅香…水 | |
成歩堂 みぬき…赤 |
霧: |
『あの夜。あのオトコの”殺気”が 気になって、店に戻ったのですよ。』(証言1) 『地下の階段を降り、廊下の小窓から <<ナラズモの間>>をのぞいてみた。』(証言2) 『それが‥‥ちょうど、事件の直後 だったようです。』(証言3) 『被害者は、現場写真のとおりの 姿勢で死んでいました。』(証言4) 『ハゲたアタマと、キゼツした少女。 ‥‥そして、ボトルを持った成歩堂。』(証言5) 『『ココにいてはマズい』‥‥ とっさに思い、その場を離れました。』(証言6) 『そこに、成歩堂からの 電話が入ったのです。』(証言7) |
亜: |
なんと‥‥あなた、 事件を目撃したというのですかッ! |
霧: |
幸か不幸か、”決定的瞬間”では ありませんでしたが。 |
裁: |
あ。あなたは 弁護人でありながら‥‥ 被告人に不利な証言を しているのですぞッ! |
霧: |
やむを得ない、でしょうね。 私は今、こうして 証言台に立っているのですから。 |
成: | ‥‥そうなんだよ、牙琉先生。 |
霧: | ‥‥‥? |
成: |
今のきみは、 そう証言せざるを得ないのさ。 ”廊下の小窓から事件を目撃した” ‥‥とね。 |
王: | 成歩堂さん‥‥? |
成: |
何しろ、それ以外に‥‥ 被害者のアタマを目撃できる タイミングはないからね。 |
王: | あ‥‥‥ |
裁: |
とにかく。弁護人に尋問を おねがいしましょう。 よろしいですね? オドロキくん。 |
王: |
はい‥‥ (まさか、こんなコトに なるなんて‥‥ 牙琉先生と‥‥”対決”!) |
王: |
現場にいたのは、 その3人だけですか? |
霧: |
そう‥‥ 私が見たかぎりは、ね。 |
亜: |
‥‥それならば、ハナシは早い。 ハンニンは、被告人‥‥ 成歩堂 龍一以外にないッ! なぜ、警察に 話さなかったのですかな? |
霧: |
理由は、2つ。 私は決して、犯行の”瞬間”を 見たワケではなかった‥‥ そして、もうひとつ。 ‥‥あろうことか、弁護を 依頼されたものですからね。 私には、友人を見捨てる ことはできなかったのですよ。 |
裁: | ふむう‥‥ |
王: |
事件が起こったとき、現場には ”第三者”がいたはずです! |
霧: |
オドロキくん。私は”見ていない” と言っていますよ。 |
王: |
で、でも! 成歩堂さんが すでに証明したはずです! |
霧: |
現場にいたという、その”第三者” ‥‥イコール”真犯人”。 当然、そう 主張するつもりなんでしょうね? |
成: | ‥‥そのとおりだよ、牙琉先生。 |
霧: |
では、私のほうからうかがおう。 いったい、なぜ。 ”真犯人”は、カードを スリ替えねばならなかったのか? |
王: | ‥‥‥! |
霧: |
どうかな? その”理由”‥‥ 提示できるのですか? |
王: |
(どうなんだ‥‥! オレに、できるのか?) |
成: |
たしか、スリ替えられたのは‥‥ 5枚目のAだったね。オドロキくん。 |
王: | 5枚目の‥‥”A”‥‥ |
裁: |
いかがですかな? 弁護人。 カードがスリ替えられて、 持ち去られた”理由”‥‥ そのコンキョを提示できますか? |
王: |
(‥‥どうやら、 ここが”勝負どころ”だ!) なぜ、カードは スリ替えられたのか‥‥。 弁護側は、その”理由”を 提示したいと思います。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
それでは、弁護人に 提示していただきましょう。 真犯人が”5枚目のA” を持ち去った、その理由とは! |
王: |
そのコンキョは‥‥ええと。 これ、です。 |
亜: | ”A”‥‥ですか‥‥? |
裁: |
これは‥‥ け。血痕が付着しています! スペードのヨコに‥‥! |
霧: | な‥‥‥なんだとッ! |
亜: |
バカなッ! 私は‥‥ 私は、聞いていませんぞッ! |
裁: |
これは‥‥まさか! 現場から持ち去られた ”5枚目のA”ですかッ! |
霧: |
ば‥‥バカな! なぜ‥‥なぜ、キミが‥‥ そんなものを持っているのだッ! |
王: |
そ、それは‥‥その。 (なんだ、このあわてようは‥‥ アヤシイ女の子からもらった、 ただのアヤシイカードなのに) |
成: |
そのカードはね。 あの晩、事件の後‥‥ <<ボルハチ>>で、 ぼくが拾ったんだよ。 カードは商売道具だからね。 ‥‥ムスメにわたしておいたんだ。 |
霧: |
う‥‥ウソだッ! そんな‥‥そんな、バカなッ! こ、こんな証拠‥‥ 認められぬッ! ニセモノだッ! |
成: |
”ニセモノ”? ‥‥どうして そんなコトが断言できるのかな? |
霧: | な。なんだと‥‥ |
成: |
コイツが”ニセモノ”だと 断言することができるのは‥‥ 犯行現場からカードを持ち去った、 ”真犯人”だけのハズだよ‥‥? |
霧: | ‥‥‥‥‥‥! |
成: |
じゃ、ハナシをつづけようか。 この”血痕”が原因だった としたら、どうでしょう。 |
亜: | 原因‥‥? |
成: |
真犯人が、カードを 持ち去った”理由”ですよ。 |
裁: | ど。どういうことですか‥‥? |
成: |
現場写真‥‥被害者の頭部を もう一度、よく見てください。 犯行の瞬間、帽子は床に落ちて、 このとおり‥‥ ひとすじの血が、 後頭部に向かって流れています。 この血が、一滴。カードに落ちた。 ‥‥そうは考えられないでしょうか。 |
王: | カードに、血が‥‥ |
成: |
ハンニンは、それをかくすために カードを持ち去ったのです。 |
霧: |
と。とにかく! この証拠品は、違法だッ! |
成: | 違法‥‥? |
霧: |
成歩堂! キミも 一度は法廷に立ったオトコだ。 証拠品を隠すことが、 どれだけ大きな”罪”であるか‥‥ |
成: |
そのギロンはあとだよ、先生。 それよりも‥‥ これで、きみの疑問に 答えるコトができたようだね。 |
霧: | な。なんのコトですか? |
成: |
ハンニンがカードを 持ち去った”理由”だよ。 カードに残った、1滴の血。 彼にとっては”致命的”だった。 ‥‥だから、持ち去った。 |
霧: |
そ。そんなスイリ‥‥ なんのコンキョもないッ! |
成: | それはちがうんだ、牙琉先生。 |
霧: | な‥‥なんだと‥‥ |
成: |
カードに残された、1滴の血‥‥ これだけで、ぼくたちは 真相に達することができるのさ。 ‥‥1本道の、 ごくカンタンなロジックでね。 どうだろう、オドロキくん。 |
王: | は、はい! |
成: |
想像してくれないか。 事件現場の状況を。 事件は、この <<ナラズモの間>>で起こった。 あわれな被害者の死体は、 ポーカーテーブルで発見された。 そして、ハンニンによって カードがスリ替えられる前‥‥ 被害者の手札の中には、 血のついたカードが1枚、あった。 ‥‥と、なれば。 現場の状況で、ひとつ。 決定的にオカシイところがある。 |
裁: |
いったい、それは‥‥ なんですかッ! |
成: |
わかりやすくいこう。 血痕のついたカードがあることで、 ”ムジュン”するのは‥‥ 上面図の、どのマークか? ”被害者”? ”犯人”? ”証人”? ”目撃者”? ‥‥カードに残された血痕と ムジュンするのは‥‥? |
王: |
それは、やっぱり‥‥ ”被害者”、じゃないでしょうか。 |
裁: | どういうこと、ですかな? |
王: |
‥‥被害者はヒタイを殴られて、 のけぞった状態で死んだワケです。 ということは‥‥血が落ちるならば、 ”後頭部の下”になります。 |
裁: | あ‥‥‥ |
王: |
‥‥現場写真を見てください。 この状態で、血が落ちたのであれば。 ‥‥血痕はカードの上ではなく、 床の上に残るハズです。 |
裁: |
た、たしかに! すると‥‥どういうことに? |
成: |
ぼくたちが座っていたのは、 回転イスだった。 |
王: |
‥‥”回転イス”‥‥ ま。まさか‥‥! |
成: |
‥‥オドロキくん。ちょっと、 イスを回してみようか。 |
裁: | イスの向きが”逆”‥‥! |
王: |
そういうコトになりますね。 犯行が行われた、その瞬間‥‥ イスは”逆”を向いていたと 考えなければオカシイのです。 |
裁: |
では、成歩堂くんが警察に 通報して、戻ってきたときは‥‥? |
成: |
ぼくが戻ってきたとき、死体は この写真と同じ向きでした。 |
王: |
つまり‥‥回転イスを回したのは、 ハンニンだということになります。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
では、次の段階に進みましょうか。 もう一度、上面図を見てください。 事件が起こった瞬間‥‥ 死体の向きは、逆だった。 と、なると‥‥ふたたび、 キョーレツなムジュンが生まれます。 |
亜: | ま。またですか! |
成: |
さあ。ロジックをたどろうか、 オドロキくん。 この状況で”ムジュン”するのは、 上面図の、どのマークか? ”被害者”? ”犯人”? ”証人”? ”目撃者”? 殺害されたときの、被害者の 向きとムジュンしてるのは‥‥ |
王: |
たしか、被害者は‥‥正面から ヒタイを殴られたんですよね。 |
成: | そのとおり。 |
王: |
そうなると‥‥あの。 殴れませんよね、ヒタイは。 ‥‥今の”犯人”の位置では。 |
成: | ああ。殴れないだろうね。 |
亜: |
しかし! 弁護側の主張は あまりにも不自然ですぞッ! ゲームの最中‥‥被害者が、なぜ 壁を向いて座っていたのか! |
成: |
その理由も、そのうち アキラカになるかもしれませんよ。 |
亜: | な。なんですと‥‥ |
成: |
現場では、もっと不自然なコトが 起こっているのですよ。 ‥‥引きつづき、 上面図を見てください。 オドロキくん。この状況で ヒタイを殴ったとすれば‥‥ 犯人が立っていた場所は ”どこ”だったか‥‥? マークしてみようじゃないか。 |
王: |
え。で、でも‥‥! (その場所に立つのは ”不可能”じゃないか‥‥) |
成: |
‥‥大丈夫。 いいから、スイリを進めてみよう。 事件が起こったときの死体の ”向き”は、決定された。 その他のものは”ないもの” として考えてかまわない。 この状況で、犯行が可能だった 場所は、どこか‥‥? |
王: |
このとき、犯行が可能だった 場所‥‥それは、ここです! |
亜: |
マジメに やってもらいたいですなァ‥‥ |
王: |
は、はあ‥‥ (‥‥大マジメなんだケドね) |
亜: |
言うまでもないコトですが。 その場所に立つことは不可能だ。 ‥‥なんと言っても、被害者の 目の前に、タナがありますからな。 犯人は、タナの上から殴った ‥‥とでも? |
成: |
‥‥言ったはずですよ。 ロジックは1本道だと。 犯人の位置が、ロンリ的に そこしかなかったのであれば。 事件が起こったとき、 その場所には‥‥ |
王: |
あッ! ‥‥そうか! ‥‥事件が起こったとき。 タナは‥‥なかったんですね! |
裁: | な。なんですって‥‥ |
成: |
そう考えるしかないでしょう。 どうだい、牙琉先生? |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
‥‥裁判長! 弁護側に、提案があります。 事件の現場‥‥<<ナラズモの間>>の タナを、今すぐ調査するのです! |
裁: |
係官! 現場を 調べる手配をしなさい! 現場‥‥<<ナラズモの間>>の タナを、動かしてみるのです! |
成: | ああ‥‥裁判長。 |
裁: | なんですか! |
成: |
捜査員には、もうひとつ。 調べるべきことがあります。 係官に、コイツをわたして いただけますか。 |
裁: |
ふう‥‥やれやれ。 ‥‥どうやら。 やはり、あなたの立つべき場所は 法廷‥‥のようですね。 |
成: | それは、どうも‥‥ |
成: |
‥‥では。ぼくたちは、さらに。 先に進むことにしましょう。 上面図を見てください。 また、変更が加わりました。 事件が起こったとき、ここに 犯人が立っていたということは‥‥ このタナは、ここにはなかった。 と、なれば‥‥ オドロキくん。今度は タナを動かしてくれるかな? |
成: |
ありがとう。 ‥‥そうです。 タナの位置こそが問題でした。 犯行時のタナの位置は、 この状態でなければならない。 これで、事件が起こったときの 位置関係が再現できたね‥‥おや。 ‥‥おかしいですねえ。 |
裁: | こ。今度はなんですかな? |
成: |
現場の状況‥‥上面図です。 もう一度、よく見てください。 どうやら、新しいムジュン‥‥ 最後のムジュンが、 ついにカオを出したようです。 |
王: | (あ‥‥こ。これは‥‥) |
成: |
さあ、オドロキくん。 見えてきたかな。 ぼくたちが行き着こうとしている、 ロジックの”終着点”が。 |
裁: |
それでは、弁護人。 指摘してください! ”被害者”? ”犯人”? ”証人”? ”目撃者”‥‥? この状況で”ムジュン”して いるのは、どのマークか‥‥? |
王: |
あの。タナ、なんですけど‥‥ いいんですよね? ”動かされていた”ってコトで。 |
成: | いいんじゃないかな。 |
王: |
でも‥‥そうなると。 決定的にオカシイです。だって‥‥ タナが、小窓を ふさいでるじゃないですかッ! |
裁: | あああッ! |
王: |
そうなんです。 廊下にいた牙琉先生は‥‥ 小窓から、部屋の中を 目撃することができないんです! |
霧: | な‥‥なんだと‥‥ッ! |
成: |
‥‥おや。はじめて 動揺したみたいだねえ‥‥ |
霧: | ぐ‥‥ッ! バカな‥‥ |
成: |
どうやら‥‥ 見落としていたみたいだな。 犯行の瞬間、あの小窓は ”ふさがれていた”というジジツを。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
さあ、牙琉先生。 聞かせてもらえるかな? いったい、きみは‥‥ どこから事件を見たのか! |
霧: | ぐ‥‥ぐ‥‥ッ! |
係: | 失礼します! 裁判長殿ッ! |
裁: | 静粛になさいッ! 審理中ですぞ! |
係: |
た‥‥ただ今! <<ボルハチ>>の 捜査員から、連絡が入りました! 現場の‥‥<<ナラズモの間>>の タナの調査報告です! |
裁: | ほ、ほお‥‥どうでしたかな? |
係: |
それが、その‥‥ あのタナの後ろには、隠しトビラの シカケがほどこされていました! |
裁: | な‥‥‥なんですッとおォォォッ! |
成: |
‥‥言ったはずですよ。 <<ナラズモの間>>には‥‥ 常連客なら知っている ”あるシカケ”がある、と‥‥ |
王: |
(そういえば‥‥ そんな証言を聞いたな) |
成: |
あの部屋は、かつて非合法の 取引に使われていたそうだ。 だから、警察に踏みこまれたときの ”逃げ道”が設置されていたのさ。 |
王: | それが、”隠しトビラ”‥‥ |
成: |
トビラの向こうは、 レストランの中につながっている。 暗黒街のボスたちは、そこから 警察の目を逃れて‥‥ さめたボルシチを 食べたそうですよ。 今回のハンニンと 同じように‥‥ね。 これが、ロジックの”終着点”さ。 ‥‥オドロキくん。 |
王: |
(なんてコトだ‥‥ たしかに、この”切札”が‥‥ 真相を暴いちまった!) 事件が起こった時間‥‥ 廊下の小窓は、ふさがれていた。 そして、被害者のアタマから 帽子が落ちていたのは‥‥ 犯行の瞬間から、成歩堂さんが 通報しているあいだの、数分間。 つまり。被害者の”アタマ”を 目撃するコトができたのは‥‥ <<ナラズモの間>>の”中”。 そこしか、あり得ません。 ‥‥いかがですか? 牙琉先生。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
ふむう‥‥ それでは、あの晩。本当は、 何があったのでしょうか‥‥? |
王: |
ここまで来た以上、 スイリはカンタンだと思います。 あの晩の、あの時間‥‥ 犯人は、なんらかの理由で浦伏氏を 殺害しなければならなかった。 そこで、その人物は チャンスを待っていたのです。 隠しトビラの向こうで、 息を殺して‥‥ そして‥‥そのチャンスは、訪れた。 |
うおおおおおおおお! | |
きゃあああああああッ! | |
なんて、バカなコトを! 待ってろ。今、ヒトを呼んでくる! | |
王: |
‥‥浦伏さんに殴られた 逆居 雅香さんは、気を失った‥‥ 成歩堂さんは、通報をするために 1階に向かった。 <<ナラズモの間>>には、 浦伏 影郎だけが残される。 ”犯人”は隠しトビラから <<ナラズモの間>>へ侵入‥‥ |
成: |
被害者は‥‥その気配に 気づいたんだろうね。 |
王: |
だから、イスを回転させて、 タナのほうを見た! |
成: |
‥‥犯行後‥‥犯人は カードに落ちた”血痕”を見た。 ”彼”としては、 そいつを持ち去るしかなかった。 血痕は、彼の”犯行ルート”を まっすぐ指し示していたから‥‥ |
王: |
そう。犯人は、ケッキョク <<ナラズモの間>>には入らなかった。 だから‥‥気がつかなかったんだ。 部屋の奥に散らばった、 ”赤”いカードに! |
霧: | ‥‥‥‥‥‥ッ! |