第1話『逆転の切札』第1回法廷(その7)

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王泥喜 法介…紺
成歩堂 龍一…黒
牙琉 霧人…紫
裁判長…緑
亜内検事…茶
浦伏 影郎…青
逆居 雅香…水
成歩堂 みぬき…赤
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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裁: どうやら‥‥ここに至って‥‥
この事件は、まったくベツの
局面を見せてきたようです。
まことに‥‥まことに
ザンネンです。‥‥牙琉弁護士。
霧: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
王: 牙琉先生‥‥
裁: 亜内検事ッ!
亜: は‥‥はああああッ!
裁: 検察側には、
さらなる捜査を要求します!
被告人・成歩堂 龍一に対する
容疑は、これですべて晴れました。
亜: ぎゃああああああああああッ!
裁: ‥‥牙琉弁護士。
私としては、信じたくありません。
しかし。こうなった以上、
あなたに、緊急逮捕の命令を‥‥

(牙琉霧人「異議あり!」)
霧: なるほど‥‥
これが、伝説の弁護士の
キタナイ戦術‥‥というヤツですか。
成: ‥‥何が言いたい? 牙琉先生‥‥
霧: 裁判長、おどろくばかりです。
あなたほどのカタが‥‥
こんなコドモだましの
インチキにダマされるとはね。
裁: ど。どういうことですか?
霧: ”被告人に対する、
すべての容疑が晴れた”‥‥?
ご冗談でしょう。
彼がやったのは、
無実の立証ではありません。
<<違法な証拠品>>を使って、
ツミをなすりつけたにすぎないッ!
しかも。みずからの弁護人である、
この私にッ!
裁: い。<<違法な証拠品>>ですか‥‥

(成歩堂「異議あり!」)
成: じゃあ、聞かせてもらおうか。
牙琉先生。
現時点で、まだ。ぼくに
疑わしい点でもあるのかい?
霧: ‥‥ありますよ。
たとえば、このボトル。
王: それは‥‥成歩堂さんが
飲んでいた、ジュース‥‥
霧: ごまかそうとしてもムダですよ。
”凶器”に付着した、指紋‥‥
しかも、きわめて不自然な状態‥‥
そうですね? 亜内検事。
亜: た。たしかに‥‥付着した指紋は、
ボトルを逆手に持った状態でした。
王: ‥‥‥!
(たしか‥‥前にも一度。
問題になったな‥‥)
霧: 答えを出さず、逃げることは
ユルしませんよ。
こんなふうに指紋が付着する
ケースは、ひとつしかありません。
‥‥ヒトを殴るとき。
いかがですか? 裁判長。
裁: ‥‥ふむう‥‥
成: 最後のあがき、か。
どうだい、オドロキくん。
王: は‥‥はいッ!
成: あの先生、今さら
このボトルにこだわっているけど。
説明はできないのかな?
こんな指紋ぐらい‥‥スパッと。
王: そ。そうですね‥‥
(で、でも‥‥たしかに。
ビンを逆手に持つなんて、
フツーじゃないような‥‥)
成: キミは、弁護士さんの”暗示”に
縛られてしまっているんだよ。
王: あんじ‥‥ですか。
成: ‥‥もう一度。
法廷記録を見てみるといい。
そこに、ごく自然でシンプルな
コタエがあるかもしれないよ。
王: (ニコニコしてないで
教えてくれればいいのに‥‥)
裁: たしかに、ギモンが残る以上、
判決を下すことはできません。
いかがですかな? 弁護人。
王: (答えを出さず、逃げることは
できない‥‥先生はそう言った。
‥‥オレだって、
逃げるつもりはないぜ!)
裁: ‥‥それでは、
うかがいましょうか。
ボトルの指紋が”逆手”である
理由を示す”証拠品”とは‥‥?

(「雅香の写真」を選択)
王: 説明するより、ジッサイに
やってみたほうが早いでしょう。
そのボトルを、
床に置いてみてください。
裁: 床に‥‥ですか?
王: そして、それを
取り上げてみてください。
‥‥イスに座ったまま。
亜:あ‥‥‥
王: そう。ボトルのネックの部分を
持ちますね‥‥ごく、自然に。
‥‥そして、そのとき。
指紋は”逆手”に付着します!

(ざわめきが起こる)
王: 事件当夜の、
この写真を見てください。
被告人・成歩堂さんは、
いつも‥‥
ボトルを床に置いて、
ピアノを演奏していました。
つまり。”逆手”に指紋が
付着するのは、当然なのです。
裁: まさか! そんなシンプルな
コタエだったとは‥‥
成: あの晩‥‥
きみと夕食を食べたっけね、牙琉。
霧: ‥‥‥‥‥‥‥
成: あのときも、
ぼくはジュースを飲んだ。
王: 犯行の際‥‥あなたは現場の
ボトルを使って、被害者を殴った。
そして、そのとき。
‥‥思い出したんじゃないですか?
ピアノの下に置かれた、
ジュースのボトルを‥‥
だから、あなたは‥‥
ボトルをスリ替えたんです!
犯行に使ったボトルと、
ピアノの下に置かれたボトルを!

(ざわめきが起こる)
裁: 静粛に! 静粛に! 静粛に!
いかがですかッ! 牙琉弁護士!
霧: なるほど‥‥
これが、伝説の弁護士の
目くらまし戦術‥‥ですか。
王: ‥‥ど。どういうことですかッ!
霧: この私が
ボトルをスリ替えた‥‥?
そんな証拠、どこにあるのです?
王: え‥‥そ。
それは‥‥その。
霧: ‥‥ケッキョク、何もかもが
コンキョのない言いがかり。
弁護側の”ボトル”は、やはり。
カラッポだったようですね。

(成歩堂「異議あり!」)
成: ‥‥それは、どうだろう。
霧:‥‥‥!
成: ‥‥裁判長。
先ほど、<<ナラズモの間>>の
タナを調べていただいたとき‥‥
”もうひとつ”おねがいしたコトが
ありましたね?
裁: あ。ああ‥‥たしかに。
メモをいただきましたな。
『<<ボルハチ>>店内。
 ピアノの下のボトルを押収せよ』
こちらに届いておりますね。
これが、そうです。
霧: ふ‥‥フン!
指紋でも調べるつもりですか?
何か、残っているか‥‥
ギモンだと思いますけどねえ。
王: (たしかに‥‥牙琉先生なら、
そんなヘマをするハズがない!
あのボトルに、”痕跡”は
残っていない‥‥!)
成: オドロキくん、さ。
王: は、はい‥‥ッ!
成: とにかく。あのボトルを
調べてみようよ。
王: え、ええ。でも‥‥
成: いいから、調べるんだ。
王: 成歩堂さん‥‥
成: それで、この事件は‥‥
解決するはずさ。‥‥カンゼンに。
王: なんですって!
(このボトルに‥‥いったい、
何があるっていうんだ?)

(ボトルを調べる)
王: ‥‥!
な、中に何か入っている‥‥!
こ‥‥これは‥‥
霧: な。なんだッ!
そのカードは、いったい‥‥
成: 思い出してくれないか。
あの、キノドクな女性の証言‥‥
王: 逆居 雅香さん、ですか?
成: そう。あの、かわいいイタズラさ。

雅: 『あの晩‥‥アタシは、たしかに
オトリのカードを仕込んだ。
最後の勝負。‥‥シナリオどおりの
成歩堂の敗北。そして、身体検査!
でも‥‥オトリのカードは消えた!
なぜか、作戦はシッパイしたのさ。』

王: そ、そうか‥‥成歩堂さん!
あなたは、その”オトリのカード”
を‥‥”捨てた”んですね!
‥‥たしかに、証言している!

成: 『たまたまポケットに手を入れたら
‥‥カードが入っていたんだよ。』
『コッソリ見てみたら
”ハートの5”だった。
イヤな予感がしたんでね。
始末しておいたよ。』
裁: 『しまつ‥‥
いったい、どこに!』
成: 『かたわらに、ぼくが飲んでいた
ジュースのボトルがあった。
その中に捨てておいたよ。』

成: ”ハートの5”
‥‥あのときのカードだ。
あの晩、ボトルはスリ替えられた。
そして、それができたのは‥‥
事件が起こったとき<<ボルハチ>>に
いたコトを認めたオトコ‥‥そう。
きみしかいないのさ! 牙琉先生!
亜: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
裁: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
成: ‥‥以上です。

霧: ‥‥これが‥‥キミの復讐、
というワケですか。成歩堂 龍一。
裁: 復讐‥‥?
霧: 7年前‥‥キミが弁護士バッジを
失うことになった、あの事件の‥‥
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ヒトの”過去”は、
ロジックといっしょ‥‥一本道だよ。
今さら、何をしても変わりはしない。
ぼくは、ただ‥‥
降りかかる火の粉を払っただけさ。
‥‥正しい方向に、ね。
霧: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
まあ、いいでしょう。
楽しかったですよ。
キミと戦うことができて、ね。
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
亜: こんな‥‥こんな、バカなッ!
この亜内が‥‥またしてもッ!

(ざわめきが起こる)

裁: どうやら、審理はここまで
のようですな。今度こそ。
亜内検事。
牙琉 霧人は‥‥?
亜: ‥‥すべてを認めました。
緊急逮捕の手続き中です。
裁: しかし。いったい‥‥なぜ。
彼は殺人を犯したのでしょうか。
被害者との接点は、
なかったハズでは‥‥?
亜: はあ‥‥
それはマチガイありません。
裁: いかがですか? 成歩堂くん。
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥
ぼくには、なんとも
言えませんね。
裁: それに、被害者の浦伏 影郎さん。
たしか”旅行者”
ということでしたが‥‥
彼の素性も、
一切。ナゾのままでしたな。
亜: ‥‥追跡調査をお約束いたします。
裁: よろしい。‥‥成歩堂くん。
成: なんでしょうか。
裁: またしても‥‥やってくれましたね。
7年ぶり、ですか。
成: 牙琉 霧人‥‥
ぼくにとっても、
特別のイミを持ったオトコでした。
友人としても‥‥弁護士としても。
裁: 彼は‥‥オソロシイほど
優秀でしたからな。
成: 彼を追いつめるためには、
2つの条件が必要でした。
1つは、”不正”の入りこむ
余地のない舞台‥‥つまり、法廷。
もう1つは、”不正”の
入りこむ余地のない、役者‥‥
つまり、弁護士だった。
それが、キミだ。オドロキくん。
王: オレ、ですか‥‥
成: 今‥‥法曹界には
暗黒の時代が訪れている。
”序審法廷”‥‥現在の制度が
生み出した”ゆがみ”のようなもの。
ぼくたちは、それを
ただしていかなければならない。
王: ‥‥成歩堂さん‥‥
成: これからだ。
‥‥期待してるよ。
裁: それでは。とにかく、
被告人‥‥成歩堂 龍一くん。
あなたに、
判決を言いわたしましょう。


(無罪判決)

裁: 本日は、これにて閉廷します!


同日 午後4時28分
地方裁判所 被告人第3控え室

成: ありがとう、オドロキくん。
やっぱり‥‥やってくれたね。
ぼくの期待していたとおりだ。
王: オレは、何もやっていませんよ。
先生‥‥ハンニンを追いつめたのは、
成歩堂さんです。
成: ぼくだけじゃ、不可能だったよ。
‥‥今日、感じただろう?
自分の中の”可能性”を。
王: かのうせい‥‥?
成: ぼくにはない、”感覚”‥‥
そのうち、きみもわかるようになる。
王: (もしかして、あのときの‥‥)

王: 『それでは。もう一度、
うかがいましょう。
”被告人が殴った瞬間を見た”
‥‥本当ですか?』
雅: 『ほ‥‥本当に。
き、決まってるさ‥‥
王: 『(こ、この”感じ”‥‥
な。なんなんだ‥‥!)』

王: あれは‥‥いったい。
なんだったんですか?
成: 自分で探すことだね。
‥‥そのコタエは。
王: コタエ、ですか‥‥
コタエのわからない疑問ばかりです。
‥‥牙琉先生のコトも。
成: ”なぜ、彼が殺人を犯さなければ
ならなかったのか”‥‥
いつか、きみも知ることに
なるかもしれないね。
王: え‥‥じゃ、じゃあ、成歩堂さんは
知っているんですか?
成: 手がかりは‥‥この、ロケットだ。
王: あ。ああ‥‥そういえば。
さっき、会いましたよ。
その写真の女の子に。
‥‥ムスメさん、なんですよね。
成: そうだ。この子はぼくのムスメだよ。
‥‥だがね。実は‥‥
きみたちのスイリは、正しかった。
王:え‥‥
成: こいつは、あの晩。現場で、
彼のクビからハズしたものだ。
‥‥あの、イカサマおじょうさんに
見られちまったけどね。
彼のモノだったのさ。
このロケットは。
王: じゃあ! あれは、
偽証だったんですか!
たしか、証言しましたよね!
”これは、自分のものだ”って。
成: そんなコトは言ってないよ。
王:え。
成: ぼくは、こう言っただけだ。
『このロケットには、ぼくの
ムスメの写真が入っている』
それは、真実だよ。
王: でも‥‥じゃあ、なぜ!
被害者のロケットに、成歩堂さんの
ムスメさんの写真が‥‥?
成: ‥‥まあ。
お楽しみは取っておくことだ。
きみの弁護士人生は、
始まったばかりなのだからね。
王: ‥‥これから、どうなるんでしょう。
牙琉法律事務所は。
(先生‥‥
なんで、あんなコトを‥‥!)
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
オドロキくん。
王:はい?
成: よかったら‥‥
ぼくの事務所に来ないか?
王: えッ! ‥‥あの。
<<成歩堂法律事務所>>ですか?
オレたちの世代の弁護士で、
知らないヤツはいませんよ!
成: そんな、たいそうなモノじゃないさ。
王: あ。でも‥‥たしか。
成歩堂さん、弁護士は‥‥
成: ああ。バッジなら返却したよ。
今のぼくは、もう弁護士じゃない。
王: (7年前の、ある”事件”。
今では伝説となった、
あの裁判の中心人物‥‥
それが、このヒト。
成歩堂 龍一弁護士だった。
事件の、悲しい決着とともに‥‥
彼は、法曹界を去った)
あの。もう一度、
法廷に立とうという気は‥‥?
成: ぼくには‥‥法廷に立つ資格もない。
気づいていたかい?
今日の裁判には、ひとつ。
”ニセモノ”の証拠が
あったことに。
王: ニセモノ‥‥?
な、何を言ってるんですか?
成: 本来、あるはずのなかった証拠。
‥‥罪深い、手品の”タネ”さ。
王: (やっぱり‥‥か。
じつは、ひとつだけ‥‥
気になっていた証拠品があった。
なんというか‥‥不自然な。
”ニセモノ”の証拠品。
アレ、のことじゃないだろうか)

(「血のついたA」を選択)
王: もしかして‥‥これ、のことですか。
成歩堂さんの”ムスメさん”から
もらったんですけど。
成: そう‥‥こんなもの、
現場に存在するワケがない。
犯行の後、”犯人”が
まっ先に持ち去ったんだからね。
‥‥不器用なスリ替えまでして、ね。

霧: 『こ、こんな証拠‥‥
認められぬッ! ニセモノだッ!』
成: 『”ニセモノ”? ‥‥どうして
そんなコトが断言できるのかな?
コイツが”ニセモノ”だと
断言することができるのは‥‥
犯行現場からカードを持ち去った、
”真犯人”だけのハズだよ‥‥?』
霧: 『‥‥‥‥‥‥!』

成: ‥‥そう。ぼくに対する<<審判>>は、
すでに下されていた。‥‥7年前に。
王: あなたが‥‥やったんですか。
成: ‥‥そうだ。
コイツは、ぼくが用意した。
現場を見れば、真相は
アキラカだったからね。
王: でも! それは弁護士として、
やってはいけないコトです!
成: だから‥‥何度も言ってるだろ?
ぼくはもう、弁護士じゃないんだ。
王: やっぱり‥‥
やっぱり、あのウワサは。
‥‥ホントだったんですね!
7年前の‥‥あのウワサ‥‥
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
今となっては、もう。
どうでもいいコトさ。
王: ‥‥!
く‥‥。くそおおおおおおッ‥‥!
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
王: (な。殴っちまったぞ‥‥)
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥これから始まるのは、
キミ自身の物語だ。
その、新しいページを開くのに、
ぼくが手助けになるのならば‥‥
事務所の場所が書いてある。
よかったら‥‥訪ねてきてくれ。
王: 成歩堂さん‥‥
成: さっきの一発‥‥
ぼくなら『くらえ!』とでも
叫んだだろうね。
それじゃ。
今日は楽しかったよ。

王: 成歩堂さんは、
そう言って部屋を出ていった。
‥‥これで、オレの最初の
事件の話はおしまいだ。
本当に、いろいろな謎が
残っちまったけど‥‥
でも。このときのオレには、
想像もつかなかった。
これらの謎が‥‥すべて。
1本道の”ロジック”で
つながっていた、なんて‥‥
‥‥ともあれ。
弁護士・王泥喜 法介の物語は、
こうして始まったんだ‥‥


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