王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
北木 滝太…水 | |
北木 小梅…青 | |
北木 常勝…灰 | |
並奈 美波…紫 | |
矢田吹 麦面…黄土 | |
河津 京作…黄緑 | |
引田(偽)…黄 |
<<運命>>の車輪は、回りつづける。 オレたちが、生きているかぎり‥‥ 大きな事件、小さな事件を 巻きこんで、車輪は回りつづける。 <<運命>>の車輪が止まるとき‥‥ その人生も、終わる。 | |
成歩堂法律事務所 | |
王: |
(牙琉先生がタイホされてから、 そろそろ2ヶ月‥‥ 初めての法廷で、オレは尊敬する 先生と職場をいきなり失った。 ‥‥正直なトコロ、途方に くれていたのは認めるけど‥‥ でも。ここにだけは来るつもりは なかったんだ。ホントだぜ) |
王: |
(ここが‥‥あの、伝説の <<成歩堂法律事務所>>か。 さすがに、キンチョーするな) |
?: |
あ。面接のカタですねー。 こちらへどうぞー。 |
王: | え。 |
?: |
ようこそ、成歩堂の事務所へ。 カンゲイします! |
王: |
は、はあ‥‥ (なんだ、この子は‥‥) |
?: |
それじゃ、 さっそく始めましょうか。 |
王: | 始める‥‥? |
?: |
じゃあ、そうですね‥‥ とりあえず。あなたのトクギは? |
王: | と。トクギ‥‥ですか? |
?: |
そう。あるでしょ? なんか。ひとつぐらいは。 |
王: |
は。ええと‥‥その。 やっぱり‥‥ベンゴ、かな。 |
?: |
”ベンゴ”‥‥ははあ。 ちょっとメズラシイですね。 ひょっとしたら、イケるかも。 |
王: | そ。そうですか? |
?: |
‥‥じゃ、サッソク やってみましょうか。 |
王: | え。 |
?: |
ベンゴですよ。やってみてください。 今すぐ、ここで。 ハイ、はりきってどうぞ! |
王: |
い。いやいや! ムリだよ! こんなトコロで! |
?: |
いいですか。プロならば、 舞台を選んではいけません。 |
王: | ‥‥はあ。 |
?: |
私たちは、お客さまを ”笑わせる”立場なのです。 そんなコトでは ”笑われる”だけですよ。 |
王: |
‥‥あの。 オレはベツに”笑わせる”つもりも ”笑われる”つもりもないんだけど。 |
?: |
なんですって‥‥ じゃ、あなたはここへ ナニしに来たんですか? |
王: |
”ナニ”、って‥‥その。 だから、ベンゴを‥‥ |
?: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あの。失礼ですが‥‥ここが どこだか、おわかりですか? |
王: |
え、ええ。 成歩堂法律事務所‥‥でしょ? |
?: |
‥‥なるほど。 たまに、いらっしゃるんです。 そういうカタが。いまだに。 |
王: |
‥‥あのさ。 きみこそ、なんなのかな。 オレは、ここの事務所の 所長さんに会いに来たんだよ。 |
?: |
‥‥どうやら。あなたは2つほど、 ゴカイしてらっしゃるようです。 |
王: |
ゴカイ‥‥? ナニ言ってるんだよ! 今朝、所長の成歩堂さんから 電話をもらったばかりだぞ。 |
?: |
トビラの文字‥‥もう一度。 よく、お読みになってください。 |
王: |
だから、 ちゃんと書いてあるじゃないか! ‥‥‥‥‥‥‥‥ん。 <<成歩堂‥‥芸能事務所>> ‥‥げいのう‥‥じむしょ‥‥? |
み: |
はじめまして。 所長の、成歩堂 みぬき 大魔術師です。 |
王: |
(その瞬間‥‥やっと、思い出した。 2ヶ月前の、あの事件を‥‥) |
?: |
『さあ、お客さま。1枚。 カードを選んでくださいな。』 |
成: |
『そうだ。 この子はぼくのムスメだよ。』 |
王: | なるほどう‥‥みぬき‥‥ |
み: |
これ、どうぞ! ウチの事務所のビラです。 ‥‥それで。あなたは? |
王: | 王泥喜 法介‥‥弁護士、です。 |
王: |
ホントに‥‥ ここは<<芸能事務所>>なの? |
み: |
はい。 7年前、法律事務所をやめて、 パパが始めたんです。 所属しているタレントは、まだ2人。 小さな事務所ですけどね。 |
王: |
タレント‥‥って。 もしかして、きみが? |
み: |
大魔術師の成歩堂 みぬきです。 スゴいんですよ、みぬきってば。 もう、ステージにも立って、 キチンとおカネもらってるし。 れっきとした ”プロ”なんですから! |
王: | ‥‥はあ。 |
み: |
今度、ぜひステージを 見に来てくださいね。 ええと‥‥そして。 もうひとりのタレントが‥‥ ピアニストの成歩堂 龍一、 となっております。 |
王: |
”ピアニスト”って、 おとうさんかよ。 ピアノは弾けないって言ってたぞ。 たしか。 |
み: |
モンダイありません。 世の中、手品のできない手品師も、 たくさんいますからね。 |
王: | ‥‥カラクチだね。若いのに。 |
王: |
きみは‥‥ムスメさん、なんだ。 その。成歩堂 龍一の。 |
み: |
そうですよ。パパね。 7年前に弁護士をやめてからは‥‥ みぬきが食べさせてあげてる、 みたいな感じかな。 ”ヒモ”っていうんでしたっけ? こういうの。 |
王: | ‥‥ちょっと、ちがうと思うよ。 |
み: |
みぬきね。この事務所を 任されてるんですよ。 15才にして、もう! |
王: |
じゅ、じゅうごさい‥‥ねえ。 成歩堂さん、いくつだっけ。 |
み: |
パパなら、たしか‥‥今年で33才 だったと思いますけど。 |
王: |
‥‥何か”ワケあり”みたいだな。 (そう信じたい‥‥) |
み: | ? |
王: |
成歩堂さんが 弁護士をやめたのって‥‥ やっぱり。 7年前の、あの事件が‥‥? |
み: |
え! 知ってるんですか? あの事件。 |
王: |
あ、いや‥‥詳しくは 知らないけど。 大騒ぎになったからね。 あの事件は‥‥ |
み: |
そう、みたいですね。 みぬきも小さかったし、 よくおぼえてないけど。 今度、パパに聞いてみますね。 |
王: |
ああ。それで、そのパパ‥‥ 成歩堂さんは? 今朝、電話がかかってきて、 呼び出されたんだけど‥‥ |
み: |
ああ‥‥パパなら、 ここにはいませんよ。 ‥‥病院にいます。 |
王: | びょういん‥‥? |
み: |
入院してるんです。 ‥‥絶対安静だって。 |
王: |
な‥‥なんだって! とにかく‥‥ 成歩堂さんが入院している病院を 教えてくれないか。行ってみるよ。 |
み: |
ええと‥‥この近くです。 <<引田クリニック>>っていう。 |
王: |
じゃ、またね。芸能界入りは、 今度、考えておくよ。 |
み: |
あ。待ってください! みぬきも行きます! |
引田クリニック | |
王: |
(‥‥ここが、成歩堂さんが 入院している病院か‥‥) |
?: | ん。ご面会かな? ん。 |
王: |
あ、どうも。 先生は、ここの‥‥? |
引: |
ん。院長の引田(ひきた)ですわ。 ほっほっ。 |
み: | おはようございます、センセイ! |
引: |
お。みぬきちゃん。 今日もカワイイねー。ん。 |
み: |
‥‥あの。 ここ、パパの病室、ですよね? |
引: |
ああ。朝の診察に行っとるよ。 すぐ、戻ってくるんじゃないかな。 それより、みぬきちゃん。ん。 どこか悪くないのかな? ん? |
成: |
‥‥センセイ。 お医者さんが探してましたよ。 |
引: |
お! これはこれは。 おとーさん。どうも。 ん。ん。シツレイしますぞ。ん。 それじゃ、みぬきちゃん。ん。 |
王: |
なんだったんだよ、 あのセンセイは‥‥ |
成: |
おはよう。思ったより早かったねえ ‥‥オドロキくん。 |
王: | 成歩堂さん‥‥ |
王: | いったい、何があったんですか? |
成: |
‥‥ああ。 まさか、こんなコトになるとはね。 ヒキ逃げ、ってヤツだよ。 |
王: |
ひきにげ‥‥って、 クルマにひかれたんですか? |
成: |
向こうも、よけようとした‥‥ その努力は認めるけどね。 ボンネットにハネ上げられて、 10メートルほど飛ばされて‥‥ 電柱にしたたかアタマを 打っちまったよ。 |
王: |
そ。それで! 大丈夫なんですか! そんな目にあって! |
成: |
さいわい、足首の ネンザだけですんだよ。 |
王: |
(ウワサ以上に ラッキーなヒトだな‥‥) |
王: |
なんか、まだピンと来ないんですよ。 成歩堂さんに、 ムスメさんがいたなんて。 しかも‥‥こんな大きな子が。 |
成: |
おいおい。 みぬきは、まだまだ子供だよ。 |
み: |
もう! パパ。 いつも言ってるじゃない! みぬき、もうコドモじゃないって! |
成: |
はっはっはっ。 みぬきには、かなわないなあ。 |
王: |
(‥‥なんか ウソっぽいんだよなあ‥‥) |
成: |
ああ、オドロキくん。 この子はね‥‥ |
王: |
本人から聞きましたよ。 大魔術師、なんでしょう? |
成: |
ただの大魔術じゃない。 この子は‥‥天才だよ。 |
み: | へへ。ホメられちゃった。 |
成: |
すぐにわかるさ。 彼女の”チカラ”が。 |
王: |
‥‥その、何かをホノめかすクセ、 やめてもらえませんか。 |
王: |
それで、なんの用ですか? <<成歩堂芸能事務所>>の ヒトが、このオレに。 |
成: | そう、トガらなくてもいいだろ。 |
王: |
オレは、 来るつもりなんてなかった! |
み: |
え。でも、今日は電話をもらって、 来てくれたんですよね? |
王: |
そりゃ、しかたないよ。 『たのむ! 事務所がタイヘンな コトになっているんだ!』 ‥‥なんて、死にそうな声で 言われたんだから。 |
成: |
たしかに”タイヘンなコト” だと思わないかい? ふたりきりのタレントの片割れが、 活動不能になってるんだからね。 |
み: |
そうだよ、パパ! 今月のお家賃 どうするの! それに、給食費も! |
成: |
ううん‥‥困ったなあ。 ウチは共働きだからな。 どっちかがコケると、 みんなが路頭に迷うんだよ、みぬき。 |
王: |
15才のコドモにする ハナシじゃないでしょう! |
成: |
とにかく。このおニイちゃんが 助けてくれなかったら‥‥ また、転校するしかないな。 |
み: |
そんなの、ないよ! せっかく、 トモダチもできたのに‥‥ ひどい、おニイちゃん! |
王: | え。お。オレのせいかよ! |
成: |
とにかく、オドロキくん。 ウチで働かないか。 きみにピッタリの依頼だって、 ちゃんと用意してある。 |
王: |
い。依頼‥‥ですか? (もう一度‥‥弁護できるのか? このオレが!) ‥‥わかりました。 お話を聞きましょう。 |
み: | やったあ! 釣れたよ、パパ! |
成: | ああ。釣れたねえ、みぬき。 |
王: | (イヤな言い方をする親子だな) |
王: | それで! ”依頼”というのは! |
成: |
ああ。とにかく、 地図を見ながらハナシを聞いてくれ。 ゆうべのコトだ。 9時前に、事務所を出て‥‥ ぼくは、そば屋<<あるでん亭>>に 向かったんだ。 その店で、ピアノを 弾いてるワケだけどね。モチロン。 ‥‥そのとき! ぼくをフッ飛ばしたクルマは、 そのままカドを曲がって‥‥ 夜の街を逃げて行ったんだ。 ‥‥オソロシイ話だろう? |
王: |
たしかに、オソロシイですね。 ‥‥そんな目にあって、すずしい カオをしている成歩堂さんが。 |
成: |
クルマは、 こっちの方角に逃げていった。 ‥‥というわけで、 よろしくたのむよ。 |
王: | ‥‥え。 |
成: |
だから、依頼だよ。 ぼくと電柱を引き合わせた 犯人を見つけてほしいんだ。 |
王: |
いやいやいや! オレ、弁護士だし! |
成: |
ああ。犯人が見つかったら モチロン、訴えるつもりだ。 そのときは、法廷で 追いつめてくれていいから。 |
王: |
いやいや! そっちは 検事の仕事でしょう! ‥‥悪いけど、 帰らせてもらいます! |
成: |
まあまあ、待ちなよ。 カルいジョークだ、ジョーク。 |
王: | え。 |
み: |
すみません。 パパ、ジョークが大好きなんです。 おもしろいかどうかはともかく。 |
成: |
ホンモノの依頼人は、きっと今ごろ 事務所に来ているハズだよ。 |
王: |
事務所‥‥って、 あの、芸能事務所ですか? (いちおう、行っておくか。 シゴトがないのはたしかだし) |
成: |
‥‥ああ。それから。 ぼくの事故のほうも よろしくたのむよ。 あのヒゲキの現場は 地図に書きこんでおいたからね。 この公園の前だから、 行けばすぐに分かると思うよ。 |
王: | (ケッキョクやらされるのか‥‥) |
法廷記録にファイルした。 | |