王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
北木 滝太…水 | |
北木 小梅…青 | |
北木 常勝…灰 | |
並奈 美波…紫 | |
矢田吹 麦面…黄土 | |
河津 京作…黄緑 | |
引田(偽)…黄 |
王: |
(よかったあ。 これでイイんだな、やっぱり) |
牙: |
弁護士‥‥か。 あいかわらずだな。キミらは。 |
王: | え‥‥ |
牙: |
古い戦術だね。細かいムジュンを つついて、証人の動揺をさそう‥‥ ‥‥7年前。キミの大先輩が 致命傷を負ったのを忘れたのかな。 成歩堂 龍一‥‥とか言ったっけ? |
王: |
‥‥‥! と、とにかく! キズの位置が ムジュンしているのはたしかです! |
河: | ぐ‥‥ッ! |
牙: | ‥‥あのさ、おデコくん。 |
王: |
‥‥‥! (”おでこ”‥‥?) |
牙: |
たとえば。キミが公園を 通りかかったとしようか。 ふたりの男が向かい合っていて、 一方が相手にピストルを向けている。 ‥‥さあ。キミはどうする? |
王: |
それは、まあ‥‥ 止めようとするでしょうね。 『やめろ!』とか言って。 |
牙: |
じゃあ‥‥おじょうさん。 あなたは? |
み: |
え。み。みぬきですか? みぬきはねぇ。ええと‥‥ きゃーって言っちゃうカモ。 |
牙: |
それで。河津くん‥‥だっけ? キミは、ナニを”叫んだ”のかな? |
王: |
あ‥‥ッ! (コメカミの弾痕‥‥もしかして) |
河: |
‥‥そう。 たった今。思い出しましたよ。 |
裁: |
どうやら、証言をつづけて いただいた方がいいようですな。 |
河: |
『ハンニンがピストルを向けたとき、 ワタクシは、行動に出たのですよ。』(証言1) 『『キミタチ、ヤメタマヘッ!』 凛として、そう叫んだわけです。』(証言2) 『その声に、被害者はこちらを見た。 その瞬間、1発の銃声が。』(証言3) 『ヒキョウなるハンニン‥‥被告人は 発砲後、恐ろしくなったようです。』(証言4) 『そのままピストルを投げ捨てて、 すたこら逃げていきましたよ。』(証言5) |
裁: |
なるほど‥‥ 犯行を止めようとしたワケですね。 |
河: | そうです。‥‥凛として、ね。 |
み: |
あのおニイさんが叫ばなければ、 ハンニン、撃たなかったカモ。 |
王: |
そ。そういうこと、 言うモンじゃないよ。 |
牙: |
ちょっと、さ。今の発言を 検討してみようよ。 ‥‥上面図を見てくれるかな。 目撃者‥‥河津クンだっけ? この状況で叫んだワケだね。 『ヤメタマヘッ!』とかなんとか。 その声に反応して‥‥ 被害者は、目撃者の方を見る。 ‥‥その瞬間、 ハンニンが発砲すれば‥‥ ‥‥解剖記録のとおり。 <<右のコメカミ>>に着弾するね。 |
裁: |
たしかに‥‥ 反論しようがないですな。 |
河: |
‥‥勇盟大学理工学部の実力、 というヤツでしょうか。 |
裁: | それでは、弁護人。‥‥尋問を! |
王: | ちょっと待ってください! |
河: |
またまた、アイマイな発言ですね、 弁護士さん。 いかにも”日本人的”と 言わざるを得ない。 |
王: | はい‥‥? |
河: |
”ちょっと待て”の ”ちょっと”‥‥ ‥‥いったいワタクシは、 何分待てばよいのでしょうか? たとえばアメリカ人ならば <<ジャスタ・ミニット!>> ”1分待て”‥‥それでこそ 正確なスケジュールの立てようが |
裁: | ‥‥弁護人。 |
王: | はい。 |
裁: |
あなたは、”じゃすたみにっと”と やらに異議を申し立てたのですか? |
王: |
ちがいます! とにかく! このピストルを見てください! コイツには、 指紋が残っていません! |
河: |
テレビや映画の影響でしょうか。 なげかわしいコトですが‥‥ 最近のハンニンは、なかなか凶器に 指紋など残してはくれないのです。 |
王: |
‥‥しかし! ハンニンは ”すたこら”逃げたワケですよね? |
み: |
そうだよ! 指紋をぬぐい去るヒマなんて、 なかったじゃないっ! |
河: | ‥‥‥‥ッ! |
牙: |
少女にヘコまされる大学生‥‥ 新曲のテーマを見つけたよ。 |
み: | みぬきはもう、オトナですっ! |
牙: |
あっはっはっはっ‥‥ カンタンに考えてみたら どうかな? おじょうさん。 |
み: | え。 |
牙: |
ハンニン‥‥被告人が 手袋をしていたとしたら? |
み: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ その発想はなかったですね。 オドロキさん。 |
裁: | いかがですか? 弁護人。 |
王: |
(ハンニンは”手袋”をしていた ‥‥どうなんだろう? |
王: |
凶器の記録に、 ハッキリ書いてあります! <<指紋はふきとられている>>‥‥ つまり”痕跡”が残っていた。 しかし。 あなたの証言では‥‥ ハンニンは、指紋をふきとるコトは できなかったはずです! |
河: |
‥‥しかしねェ。見たものを 変えることはできないのです。 ワタクシは、たしかに見た。 ハンニン‥‥被告人のヒトが‥‥ 手にしていた凶器を投げ捨て、 逃げていったのを。 |
裁: | ふむう‥‥ |
河: |
そして、現場には‥‥ このピストルが残っていた。 つまり。彼が投げ捨てたのは ピストルだったワケです。 |
牙: |
そういうことみたいだよ、 おデコくん。‥‥何か反論は? |
王: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
み: |
どうしたんですか! 発声練習してきてたんですよね! |
王: |
‥‥やっと気づいたよ。 いくら発声練習をしても‥‥ 発言することがなければ イミがないんだ、なんて‥‥ |
み: |
ナニ言ってるんですか! 今の、あのヒトのコトバを聞けば、 ハッキリしてるじゃないですか! |
王: | え‥‥なにが? |
み: |
あのおニイさんは、ハッキリ ”見て”いなかったんですよ。 ‥‥ハンニンが ”ナニを”投げ捨てたか。 |
王: | あ‥‥! |
み: |
現場にピストルが残っていたから、 そう思いこんでいるだけ。 あるイミ‥‥ ”カワイソウなヒト”なんです! |
河: |
な。なんだシツレイなッ! たしかにワタクシは、血で書いた ラブレターを黒板に張り出されたと いう苦いケイケンがあり、そういう イミでは、”カワイソウなヒト”と 呼ばれるのはムリもないと言える。 しかし、その一方で |
裁: |
証人の主張は、こうです。 犯人は”ナニか”を投げ捨てた‥‥ それに対する、弁護側の 意見をうかがいましょう! |
み: |
投げ捨てたのが、 ピストルじゃないとしたら‥‥ |
王: |
投げたのは、当然‥‥ ”他のモノ”だったコトになる! |
牙: |
‥‥どうやら、おじょうちゃんの 方が、アタマが回ってるみたいだ。 |
王: |
(くそ‥‥! サワヤカな笑顔 うかべやがって!) |
裁: |
それでは、 提示していただきましょう。 ハンニンが逃走の際に投げ捨てた ”他のモノ”の正体とは‥‥? |
裁: |
それは‥‥カタナ、ですか? ゆうべ<<深夜劇場>>の 映画で見ましたが。 |
王: |
(早く寝ろよ‥‥) 現場から発見されたものです。 ‥‥被告人の指紋が付着しています。 |
裁: | 指紋が‥‥ |
王: |
つまり。これで ふたつのコトが立証されます。 その1。被告人が投げ捨てたのは、 ピストルではなかったこと。 その2。被告人は、 手袋などしていなかったこと。 |
裁: | ふむう‥‥なるほど‥‥ |
牙: |
でもさ、おデコくん。 キミは同時に、ふたつのコトを 立証したことになるよね? |
王: | え。 |
牙: |
その1。目撃者が見たハンニンは、 被告人・北木 滝太だったこと。 その2。ドスを向けていた被告人は、 被害者に対して殺意があったこと。 |
王: | あ‥‥ |
裁: | ふむう‥‥なるほど‥‥ |
王: |
(くそ‥‥さすが、牙琉先生の弟、 といったところか‥‥) |
裁: |
‥‥この証人は、思いこみが 激しいところがあるようです。 もう少し、お話を 聞いておくべきでしょう。 ‥‥多少、キビしめに! |
河: |
‥‥あなたがたは いつだってそうだ。 『徒歩で家を出たマサオ君を、5分 後、お兄さんが追いかけました。 何分後に追いつくでしょうか? ‥‥ただし! マサオ君は、一度も信号に 引っかからなかったものとする』 ”ものとする”‥‥ そうですとも。 ジッサイには、そんなコトは めったにないのに。 あなたがたは”ものとする”の ヒトコトで、押しつけようとする! |
裁: |
それでは、証人。 おねがいします。 事件を目撃した”後”のコトに ついて、証言するものとします。 |
河: |
『ハンニンが逃げるのを止めることは できませんでした。』(証言1) 『現場を離れてはいけない‥‥ ワタクシは、そう思ったのです。』(証言2) 『だから‥‥そう。携帯電話で 警察に通報しました。』(証言3) 『10分後。警察が到着するまで、 現場にはダレも来ませんでしたね。』(証言4) |
王: |
なぜ、ハンニンを 追わなかったのですか! |
河: |
向こうは殺人犯ですからね。 モチロン追いつく自信はありました。 ウデにもおぼえはありますが‥‥ 逆上したハンニンが何をするか、 二次方程式では解けませんからね。 |
裁: | ふむう‥‥ |
牙: |
さっきの証言で、被告人が 現場にいたのは証明されたよね。 そして、現場に他の人物が いなかったのなら‥‥ ‥‥やはり。 ハンニンはカレしかいない。 そういうコトに なるんじゃないかな? |
裁: |
なるんじゃありませんか? 弁護人。 |
王: |
(なんとしても‥‥ この証言をくずさないと!) |
王: |
ハンニンは、どっちの方向に 逃げていきましたか? |
河: |
ハンニンも、ワタクシの 存在に気づいていたのでしょう。 当然、ワタクシとは逆の 方向に逃げていきましたね。 |
王: |
(キタキツネの屋敷とは 逆の方向になるな‥‥) |
牙: |
被告人が、自宅と”逆方向”に 逃げたコトを指摘しても、ムダだよ。 ほんの少し回り道をすれば、 帰れるんだからね。 |
王: |
(ううう‥‥ 読まれちまった) |
み: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
ずいぶん落ち着いていましたね。 殺人事件を目撃したのに‥‥ |
河: |
どんなときも 平静を保つ強いココロ‥‥ 理工学部の道を歩む者には、 それが必要なのです。 世紀の大発見の瞬間。フラスコを 取り落としてしまわないように。 |
牙: |
クールな対応だった、と 評価できるんじゃないかな。 |
王: |
(うーん。事件後の行動に 不自然な点はないか‥‥) |
み: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
(‥‥みぬきちゃん、 なんか言いたそうだな‥‥) |
王: |
まず、救急車を呼ぼうとは 思わなかったのですか? |
河: |
当然のことながら‥‥ワタクシは 医学もカジっております。 ワタクシの所見によれば、 頭部に銃弾を一発。ゆえに、即死。 ゆえに、救急車を呼ぶ 必要は、マッタクなし! おお‥‥なんとウツクシイ。 これが、”三段論法”なのです。 |
王: | (‥‥ナミダぐんでるぞ) |
み: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
その10分間のコト、 詳しく話してください! |
河: |
いつ、ナニが起こるか、わからない。 いつ、ダレが現れるか、わからない。 極限のキンチョー感の中。 ワタクシは立っていたのです。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
もしかして‥‥ それだけ、ですか? |
河: |
ダレも来ず、ナニも起こらない。 ワタクシは宇宙の中心だったのです。 |
裁: |
夜の公園ですからね。ヒトが とおらないのも、当然でしょう。 |
王: |
(見ていただけ‥‥ それじゃ、どうしようもないぞ) |
み: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
(‥‥みぬきちゃん、 なんか言いたそうだな‥‥ ダメだッ! なんのモンダイもない‥‥) |
牙: |
‥‥そろそろ気が済んだかい、 おデコくん。 |
王: |
(今は、もう‥‥ いったん、ひくべきなのか!) |
王: |
ぐ‥‥‥ッ! (ダメだ! 特に、 アヤシイところはない‥‥) |
裁: |
どうやら‥‥証人の証言には モンダイはないようですな。 |
牙: |
このピストルに”指紋がない” ‥‥説明なら、カンタンだよ。 たとえば、犯行当時。ハンニンは やはり、手袋をしていたとしようか。 犯行後、ピストルを投げ捨てたとき。 ポケットから、コイツを落とした。 まあ‥‥愛すべきチンピラくんに ふさわしいミス、かな。 |
王: | う‥‥‥うおおおおおおおおッ! |
裁: |
どうやら‥‥ ここまで、のようですな。 |
王: |
(やっぱり‥‥ オレじゃ、ダメだったか!) |
牙: |
ガッカリ、だね。正直なトコロ。 ‥‥どうやら。 キミは、ぼくの相手じゃ なかったみたいだ。おデコくん。 |
裁: |
それでは、これにて 証人の尋問を終了します。 ‥‥被告人・北木 滝太に 判決を言いわたしましょう。 |
きゃああああああああああああっ! | |
王: | み‥‥みぬきちゃんッ! |
?: | ‥‥動くな。 |
裁: |
な‥‥なんですか、 あなたはいったいッ! |
牙: | ‥‥‥‥‥‥ |
?: | その判決‥‥待ってもらおうか。 |
王: |
おまえ‥‥まさか! キタキツネ一家の‥‥ |
裁: |
キタキツネ一家、と言えば‥‥ あの、極道の! |
?: |
この、かわいいムスメの イノチと引きかえだ。 ‥‥20分。休廷しろ。 |
裁: |
な。なんですとッ! ほ。法廷がそんな、チンピラの オドシに屈するなど‥‥ |
牙: | ‥‥裁判長さん、さ。 |
裁: | ‥‥! |
牙: |
強がっても、イミはないさ。 従うより、ないんじゃないかな。 |
裁: | ぐッ。むむむむむ‥‥ |
?: |
‥‥20分、休廷だ。 さもないと‥‥後悔するコトになる。 |
王: |
あ‥‥待てッ! (クソッ! 風にように消えた!) |
み: | オドロキさん!‥‥ |
裁: |
‥‥いたしかたない。 20分、休廷します! 係官! すぐ、きゃつの後を追うようにッ! |