王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
北木 滝太…水 | |
北木 小梅…青 | |
北木 常勝…灰 | |
並奈 美波…紫 | |
矢田吹 麦面…黄土 | |
河津 京作…黄緑 | |
引田(偽)…黄 |
王: |
証人! 事件当夜、あなたは‥‥ 被害者のガレージに 侵入していたことになります! |
裁: |
まさか‥‥弁護人! あなたは、この証人を‥‥ 宇狩 輝夫氏殺害容疑で 告発するつもりなのですかッ! |
河: |
や。やめてくれッ! ワルい冗談だ! け。け。け。け。検事さん! 何か言ってくれたまへッ! |
牙: |
ちなみに。そのカワイソウな 証人のために言っておくと‥‥ 河津 京作と宇狩医院のあいだには、 なんの関係も見つかっていない。 ‥‥今のところ、コイツ以外は。 |
裁: |
どうやら‥‥次の証言が、 大きなポイントになるようです。 よろしいですね? 証人‥‥ |
河: | は、はい、はいィィッ! |
王: |
(あの動揺‥‥ ”罪”をかくしたカオだ!) |
み: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
河: |
『あの晩は‥‥そう! スーパーに買い物に行ったのです!』(証言1) 『その途中‥‥携帯電話を 落としたのでしょう。』(証言2) 『そして、その道すがら、 公園を通りかかって、事件を見た!』(証言3) 『‥‥ハンニンも、被害者も、屋台も、 ハッキリおぼえているのです!』(証言4) 『あのヒトです! たしかに、 現場で被告人を見たんだ!』(証言5) |
裁: |
ですが‥‥携帯電話は、ガレージの 中に落ちていたのですよね? |
河: |
ま。まあ‥‥ ワタクシの携帯電話は、このとおり。 とてもよく転がるタイプですから。 坂道で落とすとタイヘンなのですよ。 |
裁: |
‥‥ごくフツーの 携帯電話に見えますがね。 とにかく。 尋問をおねがいしましょうか。 |
王: |
(ヘンだな‥‥ オレの”腕輪”。 今回は、まったく反応しないぞ) |
み: |
どうやら‥‥”クセ”は 出てないみたい。 みぬきも、なんにも ”感じ”ませんでした。 今回は、実力で勝負ですね! |
王: |
(大丈夫だ! ‥‥よな? 王泥喜 法介!) |
王: |
(‥‥やっぱり、 ここがポイントだよな‥‥ ”ハンニン””被害者””屋台” ‥‥詳しく聞いてみるか!) |
王: |
”屋台”のコトまで おぼえているんですか? |
河: |
モチロン、そうでしょう! 理工学部の学生たるもの、 観察力と好奇心がイノチですからね。 屋台のノレンに書かれていた屋号も ハッキリおぼえています。 たしか、ええと‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ”やきぶた屋”‥‥でしたね。 |
裁: |
”ハッキリおぼえてる”ワリには 大苦戦でしたな。 屋号‥‥ですか。 さすがに、それは関係ないでしょう。 いかがですか? 弁護人。 |
王: |
(どうだろう‥‥あの 屋台の”屋号”か‥‥) |
王: |
屋台の名は<<やきぶた屋>>‥‥ どうやら。弁護側は、 極上の証言を手に入れたようです。 |
裁: |
ほほお‥‥その屋台のラーメンは そんなにオイシイのですか。 今度、行ってみるコトに しましょう。 それでは、ただ今の発言を、 証言に加えていただきます。 |
河: |
‥‥フン! 我が理工学部の学生食堂名物、 <<りこうタンメン>>のスープ‥‥ そのために入学する者すらいると いう、伝説の味をオススメしますよ。 |
王: | (ちょっと、食べてみたい) |
河: |
『被害者がひいていた屋号だって 覚えている! <<やきぶた屋>>と!』(証言6) |
王: |
まちがいありませんね? <<やきぶた屋>>‥‥ |
河: |
こう見えても、教授から よくホメられているのですよ。 『河津くんは、目だけはイイ』 ‥‥まちがいなく <<やきぶた>>でしたね。 |
王: | そうですか‥‥ |
河: |
な‥‥なんですか! その。 ヒトをあわれむような目は‥‥ |
王: |
‥‥とにかく、 上面図を見ていただきましょう。 あなたが屋台を”見た” 場所は‥‥ ここ、ですね? ‥‥少し、見づらいですけど。 |
河: | そ、そうですが? |
王: |
それでは‥‥ 屋台をよく見てください。 そのノレンに、 なんと書いてあるか‥‥ ‥‥屋台のご主人の名前が 書かれています。 ‥‥<<やたぶきや>>と。 |
河: |
や‥‥た‥‥ぶき‥‥バカなッ! たしかに<<やきぶた>> だったハズだったのだったハズだ! |
裁: |
ふむう‥‥どうやら。 この証人は、目すら悪いようです。 |
王: |
さあ、それは どうでしょうか‥‥ (この証人が”見た”屋号‥‥ それが、全てを変える!) 証人が見た<<やきぶた屋>>の文字。 それは‥‥ |
王: |
‥‥この公園で、1ヶ所。 屋台の屋号を読みまちがえるコトが できる場所がある‥‥としたら? |
河: | なんですって‥‥? |
裁: |
弁護人! いったい、 それは‥‥どこですかッ! |
王: |
証人が、屋台を見た場所‥‥ それは、ここです! |
王: |
それは‥‥ここです! 屋台を挟んで、公園の反対側ッ! |
裁: | ど‥‥どういうことですか? |
王: |
屋台の南側から見たとき‥‥ ノレンには<<やたぶきや>>と 書かれています。 ‥‥しかしッ! 反対側のノレンを フツウに読んでみてください。 |
裁: | ‥‥あッ! <<やきぶたや>>‥‥ |
王: |
本来は、右から読むのが 正しいのでしょう‥‥ 河津さん! あなたは ウソをついていたコトになる! ジッサイは、あなたは公園の 北側で事件を目撃していたのです! |
河: | うわあっ! バレたァァァッ! |
牙: | ナンセンス‥‥だ。 |
王: | な。なんですって! |
牙: |
公園の南側から見ようと、 北側から見ようと‥‥ そこに、どんな”ちがい”が あると言うのかな? |
河: |
そ。そーですとも! 南は北につながり、逆もまたしかり。 地球規模で考えれば、 方向感覚など無意味なのですッ! |
王: |
(言われてみれば‥‥あまり 状況は変わらないのか‥‥?) |
み: | そう、でしょうか‥‥? |
王: | みぬきちゃん‥‥? |
み: |
あのヒトの証言‥‥ 思い出してみてください。 なんか‥‥タイヘンなコトに なるような気がするんですけど‥‥ こうして、ハンニンと被害者の ヒトが向かい合っています。 そして、ハンニンが武器を 向けた瞬間‥‥ 河津さんは、”叫び声”を 上げています。 そして、被害者が思わず 振り向いたとき‥‥ 犯人は拳銃を撃った。 ‥‥だから、右のコメカミに 弾痕が残った‥‥ これは、なんのムジュンも ありません。‥‥でも。 |
王: |
そうか‥‥もし、河津さんが公園の ”北側”にいたとなると‥‥ すべては”逆”になってしまう! |
み: |
そう。もし、ここで 河津さんが叫び声を上げると‥‥ 被害者のクビは、 こっちを向きますから‥‥ 弾痕は、コメカミの”左側”に 残っていなければなりません! |
裁: | あ‥‥ああああああッ! |
み: |
つまり。”犯人”のポイントに 立っている人物は‥‥ 右のコメカミを撃つなんて、 ”不可能”なんです。 |
裁: | た‥‥たしかにッ! |
み: |
‥‥そして、河津さんが 公園の北側にいたとなると‥‥ キズの位置は、マッタク、ちがった 意味を持ってくるのです。 |
牙: |
なるほど‥‥モチロン、 そういうコトだね、おじょうちゃん。 |
裁: | な‥‥なんですかッ! |
み: |
被害者のキズは、コメカミの ”右側”にあったんですよね? それって、つまり‥‥ 公園の”北側”ですよね? |
裁: |
‥‥きたがわ‥‥あッ! そこは、証人‥‥河津 京作が 立っていた場所ではないですかッ! |
み: |
‥‥つまり。河津さんが ”北側”に立っていた場合。 被害者の”右のコメカミ”を 撃つことができたのは‥‥ 河津さん自身しかいないんです! |
河: | ぎゃああああああああああああッ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! 静粛にィッ! |
王: |
(す。スゴい‥‥さすが、 成歩堂さんのムスメ、か‥‥ オレが考えゴトしてる間に‥‥ 勝負の場をひっくり返した!) |
牙: |
‥‥ひとつ。たしかめて おこうか、おデコくん。 |
王: | な‥‥なんですか。 |
牙: |
キミは、ホントにこの大学生を 告発するつもりかい? ‥‥”殺人罪”で。 |
王: |
‥‥‥! (あの、証人のカオ‥‥ とても”無実”には見えない。 でも‥‥なんか、スッキリ しない気もするんだよな。 あのヒトが‥‥”真犯人”!) |
河: |
やめてくれッ! ボクは 見かけによらず、イイ奴なんだ! トモダチだって、 みんなそう言ってるし! |
裁: |
それでは。弁護人に うかがいましょうか。 |
王: |
(‥‥どうする、王泥喜 法介! オレは、河津さんを 告発するべきなのか‥‥?) |
王: |
(‥‥河津 京作は、殺人犯では ないかもしれない。しかし‥‥ ”無実”でないことは、不自然な 沈黙を見ればアキラカだ‥‥) ‥‥河津さん! あなたのチンモクの”理由”‥‥ 白状してください! ‥‥あなたのクチから! |
河: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ この河津の辞書に<<白状>>の 文字はありませんからッ! |
牙: |
どうやら、おデコくん。 こうなった以上‥‥ キミが、立証するしかないね。 カレのチンモクの”理由”‥‥ |
裁: |
弁護人。あなたは、この証人を ”告発する”と言いました。 ‥‥殺人以外の”罪”で。 その考えをうかがいましょう。 |
王: |
(殺人以外の”罪”‥‥ 他に、考えようがない! 彼が関わった、殺人”以外”の 事件を示す証拠品を提示しよう) |
裁: |
それでは、証拠品を 提示してください。 この証人が告発されるべき”罪”。 それを示す証拠品とは! |
王: |
その証拠は‥‥ コイツですッ! |
裁: |
そ、それは‥‥! パンツ、ですか? |
み: | あ、それ! みぬきの! |
河: |
だから、そんな目で 見ないでいただきたいィィィィッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛にィッ! ‥‥証人。 どうかと思いますな。さすがに。 |
河: | だから、ちがうのだあああぁぁッ! |
王: |
事件当夜‥‥9時すぎ! 少女は、パンツを盗む ドロボーに気づいて‥‥ 勇敢に、あとを追い回しました! ハンニンは、あわてて逃げだし‥‥ 身をかくした場所こそが、 宇狩外科医院のガレージだった! |
裁: | あ‥‥‥! |
王: |
ちなみに、このパンツは‥‥ クルマの排気パイプに 丸めて詰め込まれていました。 ”盗み”の証拠をかくしたつもり だったのでしょう。 つまり! あなたは、殺人犯では ないかもしれませんが‥‥ それはそれは、いかがわしい、 パンツドロボーだったのです! |
河: |
だから、その呼び方は いかがなモノかとォォォォォォッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛にィッ! ‥‥証人。 それはダメでしょう。 |
河: |
‥‥だから‥‥ ちがうのにいいいいいいいいいいい いいいいいいィィィィィィィィィィ ィィィィィィィィィィィィィィィィ ィィィィィィィィィィィィィィィィ ィィィィィィィィィィィィィッ‥‥ |
裁: |
それでは、あなたは‥‥ このコトを告白する勇気がなくて、 チンモクを‥‥? |
河: |
勇盟大学の”勇”は ”勇気”の”勇”! 勇気ならば、ひとやま10円で 売るほどありますとも! |
裁: | それでは、なぜ‥‥? |
河: |
ワタクシは、勇盟大学・理工学部に 籍を置く、学士サマなのです。 理工学部の”理”は ”理想”の”理”! ワレワレ理工学部の人間は、 つねに好奇心を忘れないッ! 世の中の仕組みを解明していく 使命を持っているのですッ! |
王: |
でも! それがパンツというのは マズいでしょう! |
河: |
あ! あなたがた! 何か‥‥ オソロシイ誤解をしている! ワタクシは、ただ‥‥ その”パンツの謎”を 解明したかっただけなのです! そのパンツから、タイヤが出てきた その謎を‥‥ッ! |
王: | ”タイヤ”‥‥? |
河: |
わ、ワタクシは見たのだッ! その少女が! パンツから! タイヤを! ナベを! ラーメンを! ミゴトに取り出した、 奇跡の大魔術をッ! |
み: |
あ‥‥思い出した! おニイさん‥‥ 最近、毎晩<<ビビルバー>>に 来ているお客さんだ! |
王: | え‥‥ |
み: |
みぬきのステージだよ。 <<マジック・パンツ>>ッ! |
河: |
どうしても、わからないのです! なぜ、パンツから ホウキが出てくるのか‥‥ |
王: |
‥‥あのさ、みぬきちゃん。 もう少し、ロマンの あるものを出しなよ。 |
裁: |
で、では証人! あなたは、手品のタネを知りたい ばかりに、その少女のパンツを? |
河: |
気やすく”パンツ”と 呼ばないでいただきたい。 ワタクシにとっては、 レポートの”研究対象”なのです! |
牙: |
‥‥あのさ。もしかして‥‥ 最近、それと似た感じのパンツが 盗まれる事件が多発しているケド。 ‥‥ゼンブ、キミが? |
河: |
申しワケないとは思っていた。 ‥‥でも! のき先に揺れている、パンツを目に するたび思うのです。もしかしたら 今度こそ、そのシカケがわかるかも しれない‥‥あの晩もそうでした。 彼女に街中を追い回されながら、 <<今度こそ、我、真実をこの手に>> ワタクシは歓喜のナミダにむせび、 ヨロコビに打ち震えていたのです! それなのにッ! またしても真実は 我が指の間からスルリとスリ抜けて |
裁: |
‥‥しかし。それだけでは 説明がつかないコトがあります。 |
牙: |
‥‥証人がついた、 もうひとつの”ウソ”だね? 事件を目撃した場所が‥‥じつは ”公園の北側”だったという。 |
裁: |
そのとおりです。 なぜ、そんなウソをついたか‥‥ その理由は、なんでしょうか。 |
河: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
牙: | どうかな? おデコくん。 |
王: | ‥‥えッ! |
牙: |
さっき、キミは言ったはずだ。 『この証人を、殺人罪で 告発する気はない』ってね。 |
王: | ‥‥‥! |
牙: |
なぜ、証人は、目撃した場所に 関して<<ウソ>>をついたか? 今になってみれば、その理由が わかる気がしないかい‥‥? |
み: |
オドロキさん‥‥ 上面図を見ていて、ひとつ 気になったことがあるんですけど。 河津さんが立っていた場所の 近くにある、”これ”って‥‥ |
裁: |
それでは、弁護人! うかがいましょう! 証人が、目撃した場所を偽った ”理由”を示す証拠品とは? |
王: |
その証拠品ですが、おそらく‥‥ コレ、じゃないかと。 |
裁: | またしても、パンツですかッ! |
牙: |
いったい、そのポケットには いくつパンツが入ってるのかな? |
王: |
これが最後ですッ! コイツは‥‥ 公園のゴミ箱から見つけました。 上面図でいえば‥‥ ‥‥証人の立っていた、 まさに、そのヨコです。 |
裁: | まさか‥‥証人。これは‥‥ |
河: |
ああ、そうですよ! どうせボクは、世の中の仕組みも パンツの仕組みも知らないオトコ! |
裁: |
じゃあ、やっぱり。 コレもあなたが‥‥? |
河: |
‥‥あの晩。ワタクシは ガレージに追いつめられて‥‥ 泣く泣く、パンツを 手放さなければならなかった! そのときのキモチ、 わかりますか? |
王: | ‥‥わかりたくないです。 |
河: |
‥‥しばらく、 ガレージに身をひそめて‥‥ パンツをあきらめて、 ウチへ帰ろうとした際。 少女のいる事務所を避けて、 公園の南側の入口に向かった‥‥ そのとき、目に入ったのです。 大きなお屋敷の庭先にハタめく‥‥ コイツが‥‥ |
王: |
(キタキツネ一家の屋敷だと 知らなかったみたいだな‥‥) |
河: |
今度こそ、うまく手に入れて 帰ろうとした瞬間‥‥ 今度は、あの事件です。 |
王: | 宇狩さんの、殺人事件‥‥ |
河: |
通報して、警官の到着を 待っているとき‥‥コワくなった。 もしかしたら、身体検査を されるかもしれない! |
王: | それで、パンツを‥‥? |
河: |
‥‥そう。真理の探究は、これで また、一歩遠のいてしまったのです。 |
裁: | なんというコトでしょう‥‥ |
裁: |
どうやら。本日の審理は、 これまでのようですな。 あの証人は、 もう使い物にならないようです。 |
牙: | ひとつだけ、いいかな。 |
裁: | ど。どうぞ‥‥牙琉検事。 |
牙: |
最後がどうであれ。今日の法廷で、 立証されたことがある。 この被告人‥‥北木 滝太が、 サツジン現場にいたこと。 そして‥‥被害者に 凶器を向けていたこと。 ‥‥もうひとつ。 北木 滝太には、 歴然とした”動機”があること。 |
裁: |
たしかに、被告人・北木 滝太氏の 容疑は、ぬぐい去られていません。 現場に第三者がいなかった以上、 犯行が可能だったのは、被告人だけ。 しかし。その一方で‥‥ 被害者のコメカミの弾痕など、 ナゾが残っているのもジジツです。 検察側・弁護側ともに、 これからの調査に期待します。 |
牙: | ‥‥オーライ。 |
王: | ‥‥大丈夫ですッ! |
裁: |
それでは‥‥ 本日の審理は、ここまで。 これにて、閉廷します! |