王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
北木 滝太…水 | |
北木 小梅…青 | |
北木 常勝…灰 | |
並奈 美波…紫 | |
矢田吹 麦面…黄土 | |
河津 京作…黄緑 | |
引田(偽)…黄 |
美: |
『半年も前のカルテのために、 いまさら病院に行く必要ないでしょ。』(証言6) |
王: |
”半年前のカルテのために、 いまさら病院に行く必要はない” ”いまさら”‥‥あなたは、 本心では、そう思っていませんね? |
美: | どういうコト‥‥? |
王: |
今の証言‥‥オレには ハッキリ、見えるんです。 あなたは、”いまさら”という コトバを言うときだけ‥‥ 落ち着きなく、親指で指輪の ウラ側をいじっていましたね。 |
美: | な。なんですって! |
王: |
(動揺した‥‥やはり、 マチガイない! ”いまさら”‥‥コイツが 彼女の<<キーワード>>だ!) カルテは”過去のもの”では なかった。 現在進行形で、あなたにとって ”脅威”だったのです。 |
美: |
バカ言わないで! もし、そうならば‥‥ この半年のあいだに、 手を打ったに決まってるでしょ! |
王: | そのとおりですね。 |
美: | え‥‥ |
王: |
つまり‥‥ごく最近、”何か”が 起こった、というコトになる‥‥ このカルテを”いまさら”で 片づけられなくなるような事件が。 |
美: | ‥‥ッ! |
王: |
(‥‥美波さんの動揺が ヒシヒシと伝わってくる‥‥ トドメを刺すのは、今だ。 ‥‥証拠品で!) ‥‥美波さん。 もう、隠すことはできない。 カルテが、今になって”危険”に なったのは‥‥コイツのせいです! |
王: |
”健康診断書”‥‥ 被告人のものです。 キタキツネ組は最近、極道から 足を洗おうとしていますね。 今月に入って、はじめて ”健康診断”を実施した‥‥ ‥‥あなたは、その話を 聞いて、どう思いましたか? |
美: |
え。べ、別に。 なんとも‥‥ |
王: |
いいえ。あなたは、 気が気ではなかったはずです。 あなたは知っていたのですから‥‥ 滝太クンのレントゲンに、 金属片が写るであろうことを! |
美: | ‥‥‥ッ! |
王: |
‥‥そう。手術から半年後、 ”健康診断”をキッカケにして‥‥ カルテの脅威は、蘇ったのです! |
美: | いやああああああああああああッ! |
王: | ‥‥以上です。裁判長。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ な。なんだったのですか。 今のは‥‥ 証人が、トツゼン。ウソを 認めた‥‥ように見えましたが。 |
美: | ‥‥‥! |
牙: |
ぼくも感じたよ。 おデコくんの、強い ”オーラ”みたいなものを‥‥ ‥‥おもしろいね。 このおじょうさんは ウソをついていた、ってワケだ。 |
王: |
そのとおりです。 『宇狩医院とは無関係だった』 ‥‥その証言はウソだった。 それどころか、もし。 このカルテがキタキツネ組の手に わたったら‥‥ 彼女は、オシマイだったのです。 いかがですか! 証人ッ! |
美: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そのとおりよ。 |
裁: | 静粛に! 静粛に! |
王: |
(や、やった! 証言を つき崩したぞ‥‥!) |
み: |
すごい、王泥喜さん! みぬきには、見えなかったのに‥‥ やっぱり、パパが 見込んだだけのコトはあります! |
美: | ちょっと、待って! |
王: | ‥‥‥! |
裁: | なんですかな、証人。 |
美: |
たしかに、そのカルテは ツゴウの悪いものでした。 だから、あの日。わたし、 院長に会いに行ったんです! でも、それだけ! 滝太クンのコトを教えて、 すぐに帰ったわ! |
牙: |
‥‥どうやら。 尋問はまだ、終わらないみたいだ。 |
王: | な。なんですって‥‥! |
牙: |
たしかに、彼女には”かくしごと” があった‥‥しかし! それが、事件と関係しているか どうかは、わからない。 |
裁: |
ふむう‥‥ それでは、証人! 今の発言を、証言に加えてください。 もう少し。 ‥‥この尋問をつづけてみましょう。 |
王: |
(くそッ! ‥‥もう一歩 だったのに‥‥) |
み: |
でも、あと一歩です! オドロキさん! |
美: |
『なにも起こらなかったわよ。 ”警告”してすぐに帰ったわ。』(証言7) |
王: |
あなたが、院長室を訪れたとき、 ”何も起こらなかった”‥‥ それは、とおらないかもしれません。 これを見てください。 |
美: |
あら、なあに? その、 つぶれたねんど細工みたいなの。 ある種、あなたに似てるわね。 |
王: |
この弾丸は‥‥宇狩外科医院の 院長室で見つけました。 つまり。院長室で”何か”が 起こったと考えられるのです! |
牙: |
笑えない冗談はやめてほしいな。 警察だって、病院は調べたハズさ。 |
王: |
コイツは、院長室の金庫の中に 突き刺さっていました。 |
牙: | 金庫の、中‥‥? |
み: |
そこまでは調べなかった みたいですね‥‥警察のヒト。 |
牙: |
‥‥でも、ね。 その弾丸が果たして、事件の日に 撃ち込まれたモノかどうかは‥‥ |
王: |
さっき、説明してくれましたね? ‥‥<<線条痕>>について。 |
牙: | ‥‥! |
王: |
凶器のピストルが北木家から 持ち出されたのは、事件当日。 弾丸の線条痕が、凶器のピストルと 一致すれば‥‥ 事件当日。院長室で”発砲事件”が 起こったことが立証されます! |
牙: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ やるねえ、おデコくん。 |
裁: |
係官! 至急、この弾丸の 線条痕を調べるようにッ! |
‥‥そして、30分後‥‥ 1通の報告書が法廷に届いた。 『2つの弾丸の線条痕は 完全に一致するものと認める』 | |
裁: |
やはり‥‥ 金庫の中に残された弾丸は、 凶器から発射されたようです。 |
牙: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
それでは。あらためて 弁護側の主張をうかがいましょう。 |
王: |
‥‥金庫の中の弾丸は、 あるジジツを立証しています。 ”事件があった日‥‥ 院長室で、発砲事件があった” しかも、その発砲の瞬間、 金庫のトビラは開いていて‥‥ その金庫の中には、 ゴクヒのカルテがしまってあった。 |
裁: |
‥‥ダレかが、宇狩医師を 脅迫した、ということですか‥‥ 金庫を開けさせるために! |
王: |
それができた人物は、 たったひとりです。 並奈 美波さん。 あなたですッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛にィィィッ! 弁護人ッ! どういうつもりですか! あなたは‥‥この証人を、その。 告発するつもりですかッ! |
王: |
並奈 美波は、北木 滝太の 手術のミスを知っていた! そして、それをかくしたまま、 彼と婚約していました! ムネの銃弾が残っているかぎり、 被告人のイノチは危険な状態です。 それをかくしたまま”妻”になり、 銃弾が最後の火を吹いたとしたら! |
裁: | な‥‥なんですっとッ! |
牙: |
聞いたハナシだけどね。 最近、キタキツネ一家は マジメに商売をやって‥‥ かなり、もうけているらしいね。 ”一財産”と呼べるほどに、さ。 |
裁: |
まさか! それでは、その財産を 狙って、その。婚約をしたと‥‥ |
滝: |
イイカゲンなコトを 言い散らかしやがってェ‥‥ 訴えてやるぞッ! このクサレ弁護士がァッ! |
王: | ‥‥えッ! お、オレですか! |
滝: |
アンタ、今、言ったな‥‥ オレのみなみちゃんに‥‥ オレのみなみちゃんに‥‥ コクハクするとッ! |
王: |
いやいやいや! ”コクハツ”ですよッ! |
滝: |
おんなじコトだッ! みなみちゃんはわたさんぞッ! オレだよ! オレが、あの医者を撃ったんだ! オレを見殺しにしようとした あの医者を‥‥公園でなッ! |
王: |
た‥‥滝太クン! たのむから、早まらないで |
滝: |
みなみちゃんは、オレが守る! だから‥‥ |
美: | |
裁: | しょ‥‥証人‥‥? |
美: |
あ。ごめんなさい。 ちょっと、わたし。 ‥‥こんなに笑ったの、 ひさしぶりだから。 |
王: | どういうこと‥‥ですか? |
美: |
‥‥滝太クンさあ。 イイカゲン、 現実と向かい合いなさいって。 |
滝: | み‥‥ミナミちゃん‥‥? |
美: |
カルテのサイン‥‥ 退院を待って、婚約‥‥ わかるでしょ? フツー。 いくら、頭のカラッポな お坊ちゃんでも。 |
滝: | みなみちゃん‥‥ |
牙: |
どうやら‥‥ホンネが 聞けそうだね。おじょうさん。 |
美: |
まあ‥‥このぶんじゃ、ね。 無傷じゃア、済みそうもないし。 |
王: | じゃあ‥‥やっぱり! |
美: |
ええ、そうよ。わたし、 おカネがほしかったの。 |
滝: |
そ。そんな‥‥ 信じねェぞ‥‥そんなの。 |
美: |
こんなコトなら、さっさと 式を挙げときゃよかったなあ。 ‥‥トコロで。 ひとつ、聞いてもいいかしら? |
王: | な。なんですか? |
美: |
さっき、言ってたわよね? わたしにコクハクしてくれるとか。 |
王: | ‥‥コクハツです。 |
美: | いったい、なんの罪かなあ? |
王: | え。 |
美: |
わたし。財産目当てで、お坊ちゃん に近づいたわ。‥‥イケナイ子。 でも。ジッサイにピストルを 持っていたのは、そのお坊ちゃん。 おおかた、わたしが帰ったあと、 撃っちゃったんじゃないの? |
王: | なんだって‥‥ |
美: |
わたしじゃないわ。 マヌケなお坊ちゃんのイタズラ。 |
王: | だから、それは‥‥ |
み: | なんて言い方をするのよッ! |
王: | み。みぬきちゃん‥‥ |
み: |
カルテが見つかって、イチバン 困るのは、あなたじゃない! |
美: |
‥‥でも、ピストルは? わたし、そんなの持ってないけど。 |
み: |
そ。それは! 滝太さんの ピストルを盗んじゃえば‥‥ |
美: |
それならそうと、お坊ちゃんが 言うハズでしょお? 『オレが撃ちましたー』って 言ってるみたいだけど‥‥? |
王: |
それは、きっと! あなたをかばおうとしたんだ! |
牙: |
白熱しているところ、 もうしわけないんだけど‥‥ |
王: | ‥‥! |
牙: |
キミたちは‥‥ひとつ。 大きな見落としをしてるようだね。 |
み: | な‥‥なんですかっ! |
牙: |
たしかに、彼女は カルテがほしかっただろうね。 でもさ。もし、彼女が院長を 脅迫して、金庫を開けさせたのなら。 そのカルテを、 持ち去っているはずだよね。 |
み: | え‥‥ |
牙: |
‥‥つまり。 金庫の中に、残ってるハズが ないんじゃないかなあ。 |
み: | あ‥‥ッ! |
王: | (たしかに‥‥そのとおりだ!) |
裁: | ‥‥証人。 |
美: | ‥‥なにかしら。 |
裁: |
あなたは、あまりよい ”婚約者”とは言えないようです。 |
美: | それは、どうも‥‥ |
裁: |
そろそろ、真実を 話していただきましょうか。 あなた自身のコトを‥‥ 事件当日の行動もふくめて。 |
王: |
あなたが、あの日。宇狩外科医院に 行ったコトは、証明されている! そのことを忘れないでください! |
美: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
美: |
『たしかに、あの日。院長と 話すために、病院へ行ったわ。』(証言1) 『カルテを手に入れたかった。だから もう一度。事件の後、病院へ行った。』(証言2) 『でも、わたしじゃない。ピストルを 盗んだなんて証拠、ないでしょ?』(証言3) 『それに、お坊ちゃんは見られてる。 犯行の瞬間を、公園で。』(証言4) 『院長さんのコメカミの弾痕なんて、 モンダイにもならないと思うけど。』(証言5) |
裁: | ”もう一度”‥‥というのは? |
美: |
正直なトコロ‥‥カルテは キケンな存在だったから。 始末しておきたかった。だから、 あの日‥‥病院へ行ったの。 |
牙: |
しかし‥‥カルテは 手に入らなかった。 |
美: |
あきらめて帰って‥‥その晩。 宇狩は殺されてしまったの。 事件を知って、1日ようすを見て。 やっぱりもう一度、病院へ行ったわ。 ‥‥警察が来てたから。 スンナリとは入れなかったケド。 |
王: |
‥‥あ! も。もしかして! あのときの‥‥? |
ゴト‥‥‥ | |
み: |
『‥‥‥! お。オドロキさん。 今の‥‥ドアの向こうから!』 |
王: |
『(‥‥ダレか、いる!) 侵入者だ! あの窓から逃げたんだ!』 |
王: | あのときの”侵入者”‥‥ |
美: |
ああ‥‥あれ、あなたたちだったの。 あと、1分あれば‥‥ 金庫を開けて、カルテを 持ち出すことができたのに。 |
裁: |
なんと! それはリッパな 不法侵入ではないですかッ! |
美: |
この場で裁かれてるのは、何? お坊ちゃんの”サツジン”でしょ? かよわい女のコが、ヤクザから 身を守るためのカワイイいたずら。 それぐらい、 大目に見てもらえないものかしら。 |
裁: |
とにかく、弁護人! 尋問をおねがいいたします! |
王: |
(小さな罪を認めて、大きな罪から 逃れよう、ってワケか‥‥) |
王: |
被害者の、右のコメカミの 弾痕、ですね? |
美: | そう。他にないでしょ? |
牙: |
‥‥ここで、もう一度。 おさらいしてみようか。 ‥‥この位置から、ハンニンが ピストルを撃った場合‥‥ 当然、弾丸はヒタイに 命中するハズ、だよね。 しかし。 ジッサイは、右のコメカミ‥‥ この部分に弾痕は残っている。 |
裁: |
それに関しては、きのう。 このような証言がありましたな。 事件当時、目撃者は‥‥ この位置に立っていました。 そして、発砲の直前に、 叫び声を上げたため、 被害者がその方向を向いた直後、 発砲があった‥‥と。 |
王: |
しかし、その証言は ”ウソ”であると立証されました! 無類のパンツドロボー・河津さんが ジッサイに事件を目撃したのは‥‥ パンツをゴミ箱に捨てた位置‥‥ 屋台の”北側”でした。 この位置で河津さんが叫んだ場合、 右のコメカミは撃てません! |
美: | ‥‥ホント、ちっぽけなオトコね。 |
王: | な。なんですか‥‥! |
美: |
あなた‥‥事件が起こった日の朝、 何を食べたか、おぼえてる? |
王: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ おぼえてる? みぬきちゃん。 |
み: |
みぬき。いつも朝は ミルクしか飲まないから。 |
美: |
大事なのは、ヒトツ。院長は、 右のコメカミを撃たれた。 それならば。考えられるのは、 ヒトツじゃなくて? パンツのヒトの、カンちがいよ。 |
王: |
でも! パンツのヒトが事件を 目撃した位置は、立証されました! それを”カンちがい”で 片づけるなんて‥‥! |
牙: |
‥‥それならば、おデコくん。 キミが立証すればいい。 |
王: | りっしょう‥‥? |
牙: |
やれやれ‥‥しかたないな。 もう一度、整理してあげようか。 目撃者‥‥パンツのカレが、 屋台の”北側”にいたのならば。 モンダイは‥‥被害者を撃った ”犯人の位置”ということになる。 ”真犯人は、 どこから被害者を撃ったか?” |
裁: |
しかし! 証人が、その位置で 犯行を目撃したのならば‥‥ 被害者の右のコメカミを撃つなど、 不可能なのでは‥‥? |
牙: |
‥‥あっはっはっは。 ぼくは、状況を整理しただけさ。 コタエを提示するのは、 おデコを光らせた、キミさ。 ‥‥もし”コタエ”が あるなら‥‥ね。 |
王: |
(”ハンニン”の位置には、 北木 滝太‥‥ ”目撃者”の位置には、 河津 京作‥‥ そして、”被害者”の位置には モチロン、宇狩 輝夫がいた) |
裁: |
それでは、弁護人にうかがいます。 真犯人が、被害者を撃ったのは、 どのポイントだったのか‥‥? |
王: |
オレたちは、 まだこの犯行に関して‥‥ ムジュンのない説明が できないでいます。 その理由は、ただひとつ。 真犯人は、まったくちがう場所から ピストルを撃ったのです! |
美: |
何を言ってるの! そんな場所、あるわけが‥‥ |
裁: |
どうやら‥‥弁護人には 何か、考えがあるようですな。 ‥‥それを、うかがいましょう。 この公園。いったいハンニンは、 どこからピストルを撃ったのか‥‥ |
牙: |
‥‥せっかくだ。 ”ゲーム”を盛り上げようか。 |
王: | え。 |
牙: |
ぼくにとっても、あるイミ 目ざわりな、この<<ペナルティ>>。 さらに目ざわりにしては どうかな、って思ってさ。 ‥‥こんなふうに。 |
裁: | ば‥‥倍、ですか‥‥ |
牙: |
キミは、今までの流れとは マッタクちがう主張をしている。 これぐらいのカクゴは してもらわないとねえ‥‥! |
王: |
‥‥いいでしょう。 (オレ自身を信じるんだ‥‥!) |
み: |
だ。大丈夫なんですか? オドロキさん! |
王: |
(‥‥ヒントはすべて、 目撃者の証言の中にある! 目撃者・河津さんの位置と 彼の証言を信じるならば‥‥ 河津さんが叫んだ瞬間、 被害者は、そっちを向いた‥‥ コタエは、ひとつしかない!) ハンニンが発砲した場所は、 ここだったのです! |