王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
マキ・トバーユ…黄土 | |
ラミロア…藤 | |
ローメイン・レタス…青 | |
眉月 大庵…紫 | |
或真敷 バラン…薄橙 |
ステージ前 | |
み: |
あれ。この曲‥‥ ラミロアさんの歌ですよね? |
王: |
ああ、そうだね。 <<恋するギターのセレナード>>‥‥ |
み: |
いいなあ。みぬきも、 こんな舞台に立ってみたいです! |
王: | そうだなあ。オレも、見てみたいよ。 |
み: |
満場のお客さんが、いっせいに 感動のタメイキをもらすんですよ。 みぬきのバラードで。 |
王: |
うんうん‥‥って、待てよ! 手品じゃないの? |
み: |
‥‥あ。 そういえば、みぬき。 魔術師志望だったっけ。 |
王: |
(ううん‥‥ 自分を見失ってるみたいだ) |
バ: | これはこれは‥‥みぬき嬢ッ! |
み: | あ! バランさん! |
王: |
ナニしてるんですか? こんなところで。 |
バ: |
‥‥このバラン、シゴトには セキニンを持つほうですからな。 こうして、トリックの点検を。 |
み: |
ああ。ラミロアさんの ”瞬間移動”の魔術ですね! |
バ: |
シッパイすれば、或真敷一座の名に キズがつくコトになりますからな。 その折りに、あのピアノが 目に入りましてね。 ‥‥かの異国のレディのメロディを 思い出していたところです。 |
み: |
ね。ね。オドロキさん! おハナシ、 聞かせてもらいましょうよー! |
み: |
事件があった夜の ステージですけど‥‥ ラミロアさんが”消えた”魔術、 バランさんのシワザですよね? |
バ: |
さよう。ムラサキの検事さんから 相談を受けました。 クライマックスで、ユメのように 彼女を消してくれないか、とね。 |
王: | ”ユメのように”‥‥ |
バ: |
しかし‥‥あのステージは、 あくまでも<<音楽会>>。 魔術のために、トクベツな装置を 使うことはできない。 なかなか挑戦しがいのある シゴトでしたよ。 |
王: |
たしかに‥‥ タワーの上で”消えた”あと。 ”移動”するためには‥‥ <<隠し通路>>が必要だもんなあ。 |
バ: |
そこは、バランも プロ中のプロ中のプロ。 その会場ごとに合わせて、 トリックを”作り出す”のですよ。 ‥‥事件のため、このコンサートは 全国の注目を集めています。 或真敷一座にとっても、 これは悪いハナシではない。 |
み: |
それで、シカケのカクニンを してたんですね! |
バ: |
ああ‥‥そうだ。 ピアノといえば‥‥ あそこのピアノ。バランとしては、 やや気になりますな。 |
王: |
”気になる”‥‥? どうしてですか。 |
バ: | さあ。どうしてでしょうか。 |
王: |
(やれやれ‥‥自分で 調べたほうが早そうだな) |
バ: |
‥‥あなたの考えていることは わかります。 『”或真敷”‥‥ああ。そういえば ムカシ、テレビで見たっけ』 おおかた、そんなトコロでは ないでしょうかな? |
王: | え‥‥ええ。そのとおりです。 |
み: |
これがウワサの ”読心術”かもしれませんよ! |
王: | ‥‥ウソつけ。 |
バ: |
‥‥今から、20年ほど前。 ひとりの天才魔術師が この世界に降り立った‥‥ ‥‥その名は、 <<或真敷 天斎(てんさい)>>。 ‥‥彼が立ち上げたのが、 <<或真敷一座>>なのです。 その全盛期。お茶の間のテレビに 彼らが立たない日はなかった。 |
王: |
(たしかに‥‥小さいころ、 よく見た気がするな‥‥) |
バ: |
‥‥しかし、この数年間。 ザンネンなコトですが‥‥ 或真敷一座は、世間からカンゼンに 姿を消したと言ってよいでしょう。 |
み: |
そ。そんなコトないです! みぬき、かならず見に行きますし! スーパーの屋上とかで やってるステージとか! |
王: | (スーパー、ねえ‥‥) |
バ: |
‥‥そういうシゴトを重ねて、 ワレワレは待っているのですよ。 ふたたび表舞台へ戻る、 そのチャンスをね。 我が相棒のためにも‥‥ 或真敷の奇跡は、守り抜かねば。 |
王: |
”相棒”‥‥それって、 モチロン‥‥ |
バ: | さよう。或真敷 ザックです。 |
王: |
(みぬきちゃんの、 おとうさん‥‥か) |
バ: |
7年前、彼がいなくなるまで‥‥ <<或真敷>>の名は、まさに ショウビジネス界の王だったのです。 <<或真敷一座の、 ザックとバラン>>こそがッ! |
バ: |
我々の師匠・或真敷 天斎こそ、 まさに奇跡を生み出す大天才でした。 |
み: |
みぬき、今も忘れません。 小さいころ見た、あの奇跡! おっきな飛行機が、こう‥‥ どうにかなっちゃう、アレ! |
王: | (‥‥よくおぼえてないみたいだ) |
バ: |
天斎が、その才能を認めた弟子は、 私とザックのふたりだけでした。 <<ザックとバラン>>は、一座の 花形スターだったのです。 |
み: |
スゴいでしょ? 或真敷 ザック、 みぬきのパパなんですよ! |
バ: |
天斎とザックの亡き、今。 私のねがいは、ただひとつ。 残されたこの私が、天斎の奇跡を ステージによみがえらせるッ! |
み: | みぬき。応援してますから! |
バ: |
みぬき嬢。早く大きくなることです。 あなたのウデっぷしが必要なのだ。 |
み: | はいッ! このウデっぷしで! |
王: |
(やれやれ。ものすごいスピードで 話が事件からそれていくな‥‥) |
み: |
おっきなピアノですよね! みぬき。弾いたことないんですよね。 |
王: |
ふうん。 成歩堂さんに習えばいいのに。 |
み: |
あー、ダメダメ。 パパ、弾けないから。 |
王: |
(これだけソンケイされてない パパもめずらしいな) |
み: |
ひとつここは。ベンキョウさせて いただいちゃおうかな。 ‥‥あれ。 |
王: | 今‥‥ヘンな音がしなかった? |
み: |
もう一度。やってみますね! やっぱり。ピアノに、なんか 引っかかってますよ! ちょっと、見てみますね。 ピアノのフタの中。 ‥‥あれ。 弦のあいだに、こんなものが。 スイッチ‥‥がついてますけど。 |
王: |
(だれかがピアノの中に 放り込んだらしいな) |
ポケットに入れた。 | |
ラミロア 楽屋 | |
‥‥さくさくさくさく‥‥ | |
王: |
う‥‥‥ このキョーレツなニクシミをこめて カリントウを噛み砕く音は‥‥ |
茜: | ‥‥ナニしに来たのよ。 |
王: |
あいかわらず、フキゲンそうですね。 アカネさん。 |
茜: |
そりゃそうでしょ。 法廷でアンタにやりこめられて、 牙琉検事にバカにされちゃうし。 |
王: |
レタスさんが書き残した 血の跡、ですか。 |
茜: |
アレを見れば、犯人の目が 見えるのはアキラカじゃないか! ‥‥って。さっき、刑事部長に コッテリしぼられちゃった。 |
み: |
でも! あの血の跡のおかげで わかったコトもあります! |
王: |
レタスさんが、じつは国際警察の 捜査官だったコト、とか。 |
み: | だから、おてがらじゃないですか! |
茜: |
そうなんだけどね。 だから、コッテリしぼられたあと、 これ、もらっちゃった。 ごほうびだって。 |
王: |
‥‥カリントウ、 流行ってるんですか? 刑事部屋で。 |
茜: | ‥‥さくさくさくさく‥‥ |
み: |
‥‥それで、また 現場を調べていたんですか。 |
茜: |
まあ、ね。でも。 なんにも手がかりがないのよねー。 ‥‥ヘンなモノを1ヶ、 見つけただけ。 |
み: | ”ヘンなモノ”‥‥? |
茜: |
もう、今年1年ぶんの ハジをかいた、って感じ? |
み: | よかったじゃないですか! |
茜: | え。なにが? |
み: |
だって、ホラ。 今年はもう、ハジをかかないですむ、 ってコトですよね! |
王: | ‥‥そういうコトじゃないと思うぞ。 |
茜: |
とにかくね。あのちっちゃな子に ダマされてたと思うと、くやしくて。 目が見えたんなら、よけいに アヤシイんじゃない? あの子。 天井の通気口も見えたワケだし、 ピストルも撃てたし。 |
み: |
でも‥‥ラミロアさん、 そうは証言していませんよ。 |
茜: |
ああ。現場で、ハンニン‥‥ 眉月刑事の声を聞いた、ってね。 |
み: | そうですっ! |
茜: |
もう。なんでワケのわかんない 事件ばっか起こるのよ、この国は! |
王: |
クニのせいに しないでくださいよ‥‥ |
茜: |
今日の法廷で言っていたコト、 ホントなのかな。 あの事件が‥‥その。 検事さんのくだらない”歌”の とおりに起こっている、って‥‥ |
王: |
<<恋するギターのセレナード>> ‥‥ですか。 |
み: |
あ、それ! みぬきが見つけたんですよ! ‥‥まず、牙琉検事の ”ハートのキー”が盗まれました。 ‥‥そして、ラミロアさんが 空中に”放たれた”あと‥‥ 牙琉検事のギターが ”燃え上がった”‥‥ 最後に、レタスさんは ”弾丸”にイノチを奪われて‥‥ ギターを抱いて”空”へ‥‥ 高さ、5メートルですけど。 |
茜: |
ここまで一致していると‥‥ グーゼンとは思えないよね。 |
み: |
ですよねっ! みぬきが見つけたんですけど。 |
茜: |
これって、やっぱり。 ハンニンがやった‥‥のかなあ? |
王: |
オレに聞かないでくださいよ。 ハンニンじゃないし。 |
茜: |
あたしだってちがうよ。 あの通気口、入れないし。 |
み: |
‥‥え! みんな‥‥ みぬきを疑ってるんですかっ? |
王: | (ダレも言ってない) |
み: |
‥‥あの。 ナニか見つけたんですか? |
茜: |
まあね。ちっちゃくて、きのうは 見落としていたんだけど‥‥ あの、ソファの下に、 コイツがね‥‥ |
み: | ‥‥なんですか。コレ。 |
茜: |
何かの機械の部品、みたいだけどね。 サッパリわからないの。 ハジっこについてるキカイ、 見覚えがあるから調べてみたら‥‥ どうやら<<アンテナ>>みたい。 |
み: | アンテナ‥‥ |
茜: |
だから。電波に反応するのかな、 って思って。 |
み: |
電波、か。ココロ当たり あるような‥‥ないような。 |
王: |
あの‥‥コレ、なんですけど。 どう思いますか? |
茜: |
これまた、ちっちゃい機械ね‥‥ どうやら、発信器みたいだけど。 |
み: | はっしんき‥‥ |
茜: |
このスイッチを押すと、 電波信号が発信される仕組みね。 なんに使うかわからないけど。 |
王: | ‥‥電波‥‥ですか。 |
み: |
どうしたんですか? オドロキさん。 |
王: |
あの‥‥アカネさん。 さっき、”ヘンなモノ”を見つけた、 って言ってましたよね。 |
茜: | ああ‥‥コレ? |
王: |
ちょっと‥‥こっちのスイッチを 押してみますね。 |
茜: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あちちちちちちちちちちちちちッ! |
み: |
もも。燃えてますよ! アカネさんのキカイがッ! |
茜: | アンタ、ナニすんのよ! |
王: | ‥‥ぎゃあッ! |
茜: |
どうやら‥‥コレ。 発火装置みたいね。 |
み: |
たしかに! ライターの燃えるトコ、 みたいな感じですよね。この部分。 |
茜: |
あやうく、焼きコロされる トコだったけどね! |
王: |
そんな目で見ないでくださいよ。 ワザとじゃないんですから。 |
茜: |
そうだね、たしかに‥‥ まあ。一歩、前進だよね。 |
み: |
ね。ね。オドロキさん! アカネさん、キカイに 強いみたいだし‥‥ もう少し、聞いてみましょうよ! このスイッチのコト! |
茜: |
‥‥まったく。 いきなり燃やされるとはね! |
王: |
ちょっと火花が散った だけじゃないですか! |
茜: |
ナニよ! 加害者が、 ヒラキなおるつもり? |
み: |
ううん。ここにも小さな 火花が散ってますねー。 |
王: |
とにかく‥‥ これ、発火装置の リモコンスイッチだったんですね。 |
茜: |
ちょっと、見せて。それ。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: | どうですか? |
茜: |
たしかに、これは ちっちゃな発信器ね。 電波は弱いみたい。せいぜい、 10メートルていど、かしら。 |
み: | はっしんき‥‥ |
書き換えた。 | |
茜: |
ちなみに。 会場の断面図を見ると‥‥ ここ‥‥ラミロアさんの楽屋から 10メートルは‥‥ 楽屋エリアはもちろん‥‥ ステージもいちおう、 有効エリアに入るみたいね。 |
王: |
(ステージ‥‥は、さすがに 関係ないと思うけど‥‥) |
法廷記録にファイルした。 | |
茜: |
‥‥さてと。それじゃ、 あたしは捜査をつづけようかな。 |
王: |
じゃあ、オレたちも、 他の手がかりを探してみます。 |
茜: |
とりあえず。コイツが 発火装置だとわかったワケだしね。 もう少し、調べてみるよ。 |
み: | がんばってくださいね! |
王: |
(”発火装置”‥‥か。 オレも調べてみたほうがいいな) |
法廷記録にファイルした。 | |
県立国際ひのまるコロシアム | |
大: |
なんだい? このあわれな殺人犯に、 なにかご用かな? |
み: | ダイアンさん‥‥ |
大: |
まったく、メーワクなハナシさ! あのおばさんのせいで‥‥ すっかりシゴトを 取り上げられちまったぜ! |
み: | ダイアンさん、フキゲンそうです。 |
王: |
やれやれ‥‥たまには ゴキゲンなヤツはいないのかな。 |
み: |
サツジン現場ですからねー。 それはムリかも。 |
大: |
バカにしやがって。牙琉のヤツ‥‥ オレには、これ以上ない ”アリバイ”があるってのにな! |
み: |
あの‥‥ダイアンさんの ”アリバイ”って、やっぱり‥‥? |
大: |
聞くまでもないだろう? 事件が起こったのは、コンサートの 第3部の真っ最中だった。そうだろ。 |
王: |
ええ‥‥たしかに。 (オレたちは、 その時間に銃声を聞き‥‥ 撃たれたレタスさんを 発見した‥‥) |
大: |
その時間ならさ。1万人の人間が、 オレを見ていたワケ。 ‥‥あの、ステージの上でな。 |
み: |
ダイアンさんのギター、 ゴキゲンでしたよね! |
大: |
ありがとうな、おじょうちゃん。 ‥‥ってなワケだからよ! どうしてオレが、 シゴトができねえんだよ! |
王: |
お。オレにドナられても‥‥ (ラミロアさんの”証言”か‥‥ 犯行のとき、ダイアンさんの 声を聞いた、って‥‥) |
大: |
くそッ! オレは、あのおばさんと 話したコトもなかったんだぜ! それなのに‥‥そもそも、 おぼえられるはず、ねえだろうが! |
み: | シゴトが取りあげられた、って‥‥ |
大: |
牙琉のヤツさ! ”ウタガイが 晴れるまで”とか言ってたが‥‥ ホント、マジメすぎるんだよな! |
み: | がりゅう検事が‥‥マジメ‥‥? |
大: |
ちゃらちゃらしたカッコしてるがな。 うっとうしいほどマッスグなヤツだ。 ‥‥いや。正直なトコロ、 実際うっとうしいな。 おとといのイザコザ、 聞いてただろ? |
王: |
え‥‥もしかして、アレですか? この、”ミキサー”を使って‥‥ |
牙: |
『さっきの演奏だ。 なんなんだよ、アレは!』 |
王: |
『ズレているのは‥‥ このパートですね。』 |
牙: |
『どこのどいつだ? ええと。 <<ギター・2>>‥‥』 |
大: | 『あ。』 |
牙: | 『ダイアン! オマエじゃないか!』 |
大: |
コマかいんだよな、ジッサイ。 ワルいヤツじゃないんだが。 |
み: |
みぬき。大好きですよ、 ガリューウエーブ! アルバムはゼンブ、持ってるし。 |
大: |
まあ‥‥悪くないバンドだけどな。 牙琉のヤツなかなかいい歌を書くし。 |
王: |
そういえば‥‥ 牙琉検事の姿が見えませんけど‥‥ |
大: |
ああ。アイツなら、 今日は検事局のオフィスだろう。 |
王: |
けんじきょく‥‥ (そういえば、行ったコトないな) |
大: |
あの被害者のデータが国際警察から 送られてきているハズだ。 ‥‥本来なら、オレが 対応しているハズ、なんだけど。 |
み: |
ね。ね。みぬき、行ってみたいな。 がりゅう検事のオフィス! |
王: | 検事局‥‥行ってみようか。 |
み: | そう来なくちゃ! |
大: |
ヤレヤレ‥‥アイツに よろしく言っておいてくれよ。 現場にも入れず、 相棒がイライラしている、ってな! |
王: | ‥‥それじゃ、オレたちはこれで。 |
大: | なあ、おまえさ。 |
王: | は‥‥はい? |
大: |
どう思ってるんだよ。 ホントのトコロは。 ‥‥オレがやった‥‥なんて 考えてないだろうなあ? |
王: | そ。それは‥‥ |
大: |
なんか、たよりないからな、 おまえさ。おぼえておいてくれよ。 事件が起こった瞬間。オレは ステージで、暴れてたんだぜ。 |
王: | ‥‥‥! |
大: |
あの”歌姫”とかいうおばさんの 言うことに、ダマされるなよ。 さもないと‥‥ 1年ぶんのハジをかくことになるぜ。 |
み: | なんか‥‥感じ悪いですね。 |
王: | (眉月 大庵‥‥刑事、か‥‥) |