王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
マキ・トバーユ…黄土 | |
ラミロア…藤 | |
ローメイン・レタス…青 | |
眉月 大庵…紫 | |
或真敷 バラン…薄橙 |
検事局 牙琉のオフィス | |
み: |
はああ‥‥ここがあの。 ガリューウエーブの 事務所なんですねー。 |
王: |
ウエーブじゃないよ。 検事のオフィスだ。 |
牙: |
だから‥‥なんなのかな、 このキモチわるいシロモノは、さ。 |
王: |
‥‥あれ。 牙琉検事、電話中みたいだな。 |
み: |
じゃあ。しかたないですね。 あのタナのカゲにかくれて、 こっそり待たせてもらいましょうよ。 |
王: |
‥‥それ、盗聴じゃないか。 ダメだよ! さすがにそれは‥‥ |
み: |
えー。静かに待つだけですよー。 本人にも気づかれないように。 もしかしたら、ガリューウエーブの ”すきゃんだる”をニギれるかも! |
王: | (オソロシイ子だな‥‥) |
牙: |
”サンプル”だって‥‥? だからさ。なんでレタス氏は、 そんなモノを追っていたんだい? |
王: | (”レタス”‥‥?) |
牙: |
ボルジニア共和国の 連中のコトなんて、聞きたくないよ。 とにかくさ。 報告書を、早くたのむよ。 正体のしれないシロモノを、 ぼくのオフィスに置かないでくれ。 |
牙: |
やれやれ‥‥こんなときにこそ、 ダイアンが必要なんだけど。 ‥‥ん? |
王: | あ‥‥どうも。 |
み: |
えへ。 来ちゃいましたあ。 |
牙: |
‥‥”えへ”とこられちゃあ、 怒るワケにもいかないな。 まあ、座りなよ。 |
王: | (意外にココロの広いオトコだな) |
み: | オドロキさんも見習うんですよ。 |
牙: | で? ぼくは”ダレ”なのかな? |
み: | え。 |
牙: |
ガリューウエーブのボーカリスト、 ガリュー? それとも‥‥ 検事局きってのキレ者・牙琉検事? |
み: |
どういうコトでしょう、 オドロキさん。 |
王: |
コンサートのことと、 事件のこと‥‥ どっちを聞きたいのか‥‥ ってトコだろ。 (さて‥‥どう出る?) |
牙: |
ああ‥‥そうだ。 今日の新聞を見たかな? |
み: |
はい! テレビのページだけはみぬき、 毎朝チェックしてるんですよ! |
牙: |
それはエラいね。 おデコくん、キミは? |
王: |
オレも、4コマまんがは チェックしてますけど。 |
牙: | ‥‥コイツを見たまえ。 |
王: |
<<悪魔のしらべが惨劇をもたらす! 〜二枚目検事のキケンな歌声>> |
み: |
え。今夜、そんなドラマ、 ありましたっけ? |
牙: |
ドラマじゃないよ。 れっきとした、記事の見出しさ。 |
み: |
あ‥‥もしかして。 みぬきたちの‥‥ |
牙: |
法廷から帰ってから、 ぼくの電話は鳴りっぱなしだよ。 『ご自分の歌でヒトのイノチを 奪った感想は?』 『今までの有罪判決も、 法廷のハナウタで?』 『ちょっと、今、 歌ってみてくれませんか?』 ‥‥などなど。 キミたちが騒いでくれたおかげでね。 |
み: |
え‥‥あ。アレ、このヒトが 言いだしたことですからッ! |
王: |
(やれやれ‥‥) ん? そっちに置いてあるのも 新聞ですか? |
牙: |
ああ。これは、ボルジニアの新聞さ。 どうぞ。見てもかまわないよ。 |
王: |
‥‥‥‥‥‥と言われても、 読めませんけど。 |
牙: |
ああ。そうだったね。 まあ。むこうでも、 この事件は報道されてるってことさ。 でも、さすがに<<歌詞>>のことは、 書いていないみたいだけどね‥‥ |
み: |
ボルジニアの人たちには、 信じられなかったのかなあ。 |
牙: |
‥‥まだ”ひとつの推理” でしかないってことだろうね。 ボルジニアの記者は、とりあげる 必要ないと思ったんだろうさ。 |
王: |
まあ。ムリもないか。オレたちも、 イミが分からないでいるもんな‥‥ |
法廷記録にファイルした。 | |
牙: |
夕刊には、ラミロアさんの証言も 載るはずだ。 だから‥‥ダイアンには、 捜査からハズれてもらった。 |
み: |
そういえば‥‥コロシアムの前で ふてくされてました。 |
牙: |
ラミロアさんは、ぼくが招いた ”客”でもある。だからこそ。 この事件は解決したいんだよ。 なんとしても‥‥この手で、ね。 |
み: |
みぬき、好きですよ、あの曲。 なんか、フシギなフンイキがあって。 |
王: |
たしか‥‥ラミロアさんと いっしょに作った、とか‥‥? |
牙: |
うん、そうだね。 ‥‥去年のことだったよ。 ぼくが、北欧の小国・ボルジニアの 司法制度の視察に行ったのはね。 |
み: |
そこで、ラミロアさんの歌声に 出会ったんですね? |
牙: |
あれは、小さなライブハウスでね。 ぼくはナミダを落とした。 それで、どうしても直接 話をしたくなってね‥‥ ささやかなぼくのチカラを使って、 彼女に会わせてもらったんだよ。 |
み: |
”検事さん”って、ものすごい 権力があるんですねー。 |
王: |
トクベツなんだと思うぞ。 このヒトの場合。 |
牙: |
彼女もぼくを気に入ってくれてね。 そのまま、楽屋で曲を作ったのさ。 マキさんのピアノ。 ラミロアさんの歌‥‥ そしてぼくは、ラミロアさんから 借りたギターを弾いてね。 |
み: |
へえ‥‥なんか。 ステキなエピソードですねー。 こう。オドロキさんには一生、 縁がなさそうな。 |
牙: |
ああ。すばらしい思い出だよ。 そのときにできたのが、あの曲さ。 そして‥‥ そのときのギターが、そこにある。 |
王: |
え! この‥‥なんていうか、 燃えカスみたいな‥‥ |
み: |
ダメですよ! そんな言い方しちゃ。 ちょっとコゲ目がついてる だけじゃないですか! |
牙: |
いいさ‥‥あの歌は、もう歌えない。 ラミロアさんにもらったギターを 手に取る理由もなくなったからね。 |
王: |
(‥‥コンサートの最中、ギターは いきなり燃え上がった。 いったい、 何があったんだろう‥‥) |
み: |
ちょっと、見せてもらいませんか? その‥‥ ちょっとコゲ目がついたギター。 |
王: |
あの燃えカスに、そこまで 気をつかわなくていいと思うけどな。 |
王: | これは、また‥‥よく燃えたなあ。 |
み: |
あのギターですよね。 コンサートの‥‥ |
牙: |
あのときはね。スタッフの イタズラかとも思ったんだけどね。 さすがに、こんな事件が起きると、 気になって‥‥ 鑑識課に調べてもらったんだよ。 |
み: |
へええ。 それで、何かわかったんですか? |
牙: |
あまり時間がとれなくてね。 ハッキリしないんだけど‥‥ ”気になる結果”が出てきた。 |
王: |
”気になる”‥‥? (ギター‥‥か。 事件に関係あるのかな‥‥) |
み: |
もう少し、 詳しく聞き出したいですね。 |
み: |
おサラの上に、何か乗ってますね。 なんだろ。 |
王: | ガム、じゃないか? |
み: | がむ‥‥ |
王: |
噛んでる途中に電話が かかってきたから‥‥ 一度サラの上にもどして、あとで もう一度噛みなおそう、っていう。 |
み: |
うわ。なんか、 みみっちいですよねー。 |
牙: |
おいおい。 勝手な想像はやめてくれよ。 そいつはガムなんかじゃない。 よく見てくれ‥‥ っていうか、 あんまり見てほしくないんだけどね。 |
王: |
(これは‥‥ なんだか、プラスチックの カタマリ‥‥みたいだな) |
み: | ‥‥そういえば、さっきの電話‥‥ |
牙: |
『だから‥‥なんなのかな、 このキモチわるいシロモノは、さ。』 |
王: |
『‥‥あれ。 牙琉検事、電話中みたいだな。』 |
牙: |
『”サンプル”だって‥‥? だからさ。なんでレタス氏は、 そんなモノを追っていたんだい?』 |
王: |
牙琉検事。コイツだけど‥‥ レタスさんと、なんの関係が‥‥? |
牙: |
‥‥! もしかして。 キミたち、聞いてたのかい? さっきの電話。 |
み: |
あ。いえ! みぬきはやめようって言ったのに、 このヒトが勝手にですね! |
王: |
いやいや! スキャンダルを ニギるとか言ってたじゃないか! |
牙: |
‥‥やれやれ。正直なトコロ、 ぼくにもわかってないんだけどね。 ”潜入捜査官・レタス氏が 追っていたモノ”らしいんだが。 |
み: | このカタマリですか? |
王: |
あの。よかったら‥‥ オレにも聞かせてもらえませんか? |
牙: |
‥‥いい音だったよ。大切に 弾きこまれてきたんだろうね。 さすが、ラミロアさんのギターだ。 |
み: | そのギターが、どうしてここに? |
牙: |
もらったのさ。彼女から。 ”気に入った”って言ったらね。 『プレゼントしたい』って。 |
み: |
へえ! いいなあ。じゃあ‥‥ このギターは、ボルジニアから? |
牙: |
ああ。その通り。 飛行機で木製の楽器を運ぶとね。 気圧や湿度の変化でダメになるんだ。 だから、ラミロアさんのスタジオで 真空パックして‥‥ 証拠品の輸送に使う、検事局の トクベツルートを使って‥‥ 直接ぼくのオフィスまで、 届けさせたんだ。 ‥‥ダレの手も触れさせずにね。 |
み: |
やっぱり”検事さん”、 ものすごい権力があるんですねー。 |
王: |
だから、トクベツなんだと思うぞ。 このヒトは。 |
み: |
そんな大事なギター‥‥ 燃えちゃって、カワイソウだな。 |
データを法廷記録にファイルした。 | |
王: |
‥‥それで。 さっき、言ってましたよね? 鑑識課から、 ”気になる結果”が届いた、って。 |
み: |
あ、そうだ、それ! なんだったんですか? |
牙: |
いやね。ギターには、まるい穴が あいてるだろう? ”サウンドホール”というんだけど。 |
王: | ああ。ありますね。 |
牙: |
あそこのウラにね。なんか‥‥ コワれたキカイのようなものが、 貼りついていたんだそうだ。 |
み: | コワれた‥‥キカイ‥‥? |
牙: |
そう。‥‥コイツなんだけどね。 鑑識も、今は事件に関係した 証拠の検分で忙しくて。 このキカイを調べるのは後回し、 だね。 |
み: | ふうん。 |
王: |
(このキカイ‥‥ どこかで見たことが‥‥) |
牙: |
そいつは、レタス氏のカバンから 発見されたんだよ。 何かの<<サンプル>>らしいけどね。 |
王: |
さんぷる‥‥ (直径3センチほどの、 小さなカタマリだけど) |
牙: |
分析してみたが、ただの プラスチックのカタマリだからね。 ”見本”みたいなモノなんだろう。 |
王: |
レタスさんが、追っていた‥‥ コイツを、ですか? |
牙: |
どうも、そういうことらしいんだ。 いろんな情報を総合するとね。 |
み: |
それで? それで? なんなんですか? コレ。 |
牙: | 知らないよ。 |
み: |
え! またまた。教えたくないなら、 そう言ってくださいよー。 |
牙: |
ボルジニアを通じて、国際警察に 問い合わせをしているんだけど‥‥ どうも、どこかで情報が 制限されているみたいなんだ。 |
み: | へええ‥‥ |
牙: |
国際警察か、 ボルジニアにとって‥‥ あまり語りたくないモノらしいね。 このちっぽけなプラスチックは。 |
王: |
(レタスさんは、 コイツを調べるために‥‥ ラミロアさんのマネージャーに なってこの国に来たのか。 そして、イノチを落とした。 いちおう、おぼえておくか‥‥) |
法廷記録にファイルした。 | |
牙: |
今、会場のラミロアさんを 呼びにやっている。 ボルジニアの人間なら、何か 知ってるかもしれないからね。 |
王: |
(やっぱり‥‥ どう見てもコイツ、だよな‥‥) |
み: | どうしたんですか? オドロキさん。 |
王: |
牙琉検事。この、ギターについてた ”キカイ”ですけど‥‥ コイツを、見てください。 |
牙: |
‥‥! コイツは‥‥たしかに。 同じモノに見えるね。これは‥‥ |
王: | これは‥‥発火装置です。 |
み: | は‥‥はっか‥‥あッ! |
王: |
現場‥‥ラミロアさんの楽屋に あったものです。 アカネさんが 見つけたんですけど‥‥ |
牙: |
‥‥! 同じモノが、現場にも‥‥ どういうことだろう? どうやら‥‥キミと話せるのは、 このへんまで、みたいだね。 |
王: | はあ‥‥ |
牙: |
来てくれてありがとう。 ‥‥おデコくん。 |
王: | え‥‥! |
牙: |
キミは、ぼくに情報をくれたろう? ‥‥この、発火装置のコト‥‥ |
王: | あ。ああ‥‥ |
牙: |
初めてだよ。そんな弁護士は。 ‥‥ただ、ミジュクなだけ、 かもしれないけどね。 |
王: |
(‥‥たしかに。見せなくても よかったのかな? でも‥‥) そいつは‥‥ おたがいさま、でしょう。 |
牙: | ‥‥? |
王: |
オレだって、情報をもらった。 この‥‥なんだかわからない プラスチックを‥‥ レタスさんが捜査していた、 って‥‥ |
み: | ‥‥あ。そういえば‥‥ |
牙: |
おデコくん。ぼくは思うんだけどね。 人生で出くわす事件は、とても フクザツだ。どいつもこいつもね。 |
王: |
まあ‥‥たしかに。 歌詞に合わせた殺人なんて、特に。 |
牙: |
だからこそ、自分のキモチぐらいは、 シンプルに持っていたい。 ぼくが検事になろうと思ったのは、 <<真実>>を追求するためだ。 |
王: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
牙: |
だから。ムリして弁護士と 張り合うつもりはない。 ‥‥それだけだよ。 |
王: | ‥‥わかりました。 |
み: | あの‥‥検事さん? |
牙: | なんだい? |
み: |
ちなみに、バンドで歌を うたってるのは、どうしてですか? |
牙: |
ああ。‥‥女の子に 振り向いてもらいたいから、だよ。 |
王: | たしかに。シンプルですね。 |
牙: |
それじゃ、シツレイさせてもらうよ。 シゴトがあるからね。 |
県立国際ひのまるコロシアム | |
茜: |
‥‥ああ、アンタ。 いいところに来たね。 |
王: | あ。アカネさん‥‥ |
茜: |
アンタたち、ラミロアさん、 知らない? |
王: |
え‥‥さ。さあ‥‥さっき、 楽屋の前のろうかで見ましたけど。 |
茜: | そう‥‥おかしいなあ。 |
み: | どうしたんですか? |
茜: |
見あたらないのよ。検事局に お連れするように言われたんだけど。 |
王: | (ラミロアさんが‥‥消えた‥‥) |
茜: |
彼女の”目”のコトを考えても‥‥ ひとりでどこかへ行ってしまうとは 考えにくいのよね‥‥ |
王: |
わかりました。 オレたちも、探してみますよ。 |
茜: | うん。おねがいね! |
楽屋前ろうか | |
王: | ‥‥誰もいないな。 |
み: |
ラミロアさん、どこへ 行っちゃったんでしょうね? |
王: |
まあ。彼女なら、 ヒトリでも大丈夫だと思うけど。 |
み: |
そりゃ、そうですケド‥‥ ちょっと、気になるなあ。 |
ステージ前 | |
み: |
あ‥‥あれ! 真っ暗ですよ! ステージ‥‥ |
王: |
メイン電源が落とされている みたいだ。まいったな‥‥ |
み: |
みぬき。ちょっと、 係のヒト、呼んできますね! |
み: |
やれやれ。ホント、まっ暗じゃ、 どうにもならないですねー。 |
王: |
でも‥‥ラミロアさんは、 こんな世界に生きてるんだよな。 (暗闇は‥‥彼女の世界、か‥‥) |
み: | ‥‥あの。オドロキさん。 |
王: | ん? どうしたの? |
み: |
‥‥なんか、このステージ。 引っかかるんですけど‥‥ さっきと、何かが”変わった” 気がしません? |
王: | ”変わった”‥‥? |
み: |
ううん‥‥なんだろ。 気になるなあ‥‥ |
王: | (オレも気になる) |
み: |
‥‥あれ。あのケース‥‥ さっきまで、開いてましたよね。 たしか‥‥ |
王: |
ふうん‥‥ 誰かが、楽器をしまったのかな。 |
み: | ‥‥あ。あの、ケースのフチ‥‥ |
王: |
何か、のぞいてるな。 楽器‥‥には見えないぞ。 もしかして‥‥ |
み: |
オドロキさん! 開けてみましょう! |
み: |
きゃあああッ! ラミロアさん! ラミロアさああああん! |
王: |
アカネさんだ! アカネさんを呼んでこよう! |
王: |
(‥‥ラミロアさんは、 すぐに病院に運ばれた。 アカネさんはドナり散らして 指示を飛ばし散らし‥‥ みぬきちゃんは、オレの横で 泣き叫ぶばかり。 それはそれは、 オソロシイ光景だった‥‥) |