王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
マキ・トバーユ…黄土 | |
ラミロア…藤 | |
ローメイン・レタス…青 | |
眉月 大庵…紫 | |
或真敷 バラン…薄橙 |
ラ: |
『たしかに‥‥あれを聞いたとき、 わたくしは天井の上におりました。』(証言1) 『そこに”小窓”があることを、 前もって聞いておりましたので。』(証言2) 『ステージの途中でしたので、事件を お知らせするヒマがなかったのです。』(証言3) 『なぜ、そんなところにいたのか‥‥ それは、申し上げられません。』(証言4) 『もうしわけありませんが、そういう ”契約”をしておりますので。』(証言5) |
裁: | け‥‥”契約”‥‥ですか‥‥? |
ラ: |
この世界の人間は、さまざまな しがらみにしばられるものなのです。 |
裁: |
しかも‥‥ステージの ”途中”だった、ということは‥‥ やはり。事件が起こったのは、 ”第2部”ということになります! |
ラ: |
‥‥わたくしは、 事件を目撃したわけではありません。 ただ”聞いた”コトを お話ししているだけです。 |
裁: |
しかし! 正確な事情を 話していただかないと‥‥ |
牙: |
そのための<<尋問>>だよ。 ‥‥そうだろう? おデコくん。 |
王: | ‥‥! |
牙: |
この法廷で、 ぼくたちは真実を探り出す。 どんな”契約”も、 それをジャマすることはできないさ。 |
裁: |
ふむう‥‥わかりました。 それでは、弁護人。 尋問をおねがいします。 |
み: | ど。どうですか、オドロキさん! |
王: |
ポイントは、ひとつだよ。 (‥‥なぜ、ステージの真っ最中に、 天井裏なんかにいたのか‥‥?) |
王: |
ラミロアさん‥‥ コタエはアキラカです。 あの晩、あなたの”ステージ”‥‥ そこで起こったコトを考えれば、ね。 |
ラ: | ”起こったコト”‥‥? |
王: |
そのコタエは‥‥ このビデオに記録されています。 |
この身をつつみ 今、 放たれた Uh... uh... 胸を焦がす Fire... 恋人も 燃える 愛の弾丸よ Fire... いのちまで 奪って Guitar, Guitar... ふたりは 空へ | |
ラ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
‥‥そう。モンダイは、 このイリュージョンです! |
裁: | あ‥‥ |
王: |
ユメのないハナシでは ありますが‥‥ まさか、ラミロアさんがホントに 消えるハズはありません。 つまり。どこかで彼女は 姿をかくし、その間に‥‥ ステージの逆側に 移動したことになります。 |
み: | オドロキさんッ! |
王: | な。なに。みぬきちゃん。 |
み: |
タネ明かしは、魔術師にとって ルール違反ですよ! |
王: | い。いや、オレ、弁護士だし。 |
裁: |
し。しかし‥‥このとおり。 ラミロアさんが消えてから、 会場の反対側に現れるまで‥‥ ものの20秒もありませんぞ! そんなに早く、移動できるわけが ありません! |
牙: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
ど。どうしたのですか。 牙琉検事‥‥ |
王: |
‥‥彼は、コンサートの主役です。 ラミロアさんが消えた”シカケ”を、 知らないわけがない。 |
裁: | あ‥‥ |
王: |
だから‥‥気づいたのでしょう。 自分の”見落とし”にね! |
王: |
いいですか。 会場の断面図を見てください。 この、天井裏のルートは‥‥ ステージから、楽屋エリアを抜けて 会場の裏側に直結しているのです。 |
裁: | あ‥‥ああああ‥‥ |
王: |
‥‥ここで、きのうの証言を 思い出してください。 |
ラ: |
『あれは、ステージから楽屋エリアの 出口へ向かう途中でした。 小さなマドのようなものから‥‥ そう。”見た”のです。』 |
裁: |
ステージから‥‥ 楽屋エリアの出口へ‥‥ まさに、この、 天井裏のルートではないですか! |
王: |
そうです。そして、 このルートを知っていたのは‥‥ ラミロアさんだけでは ありませんでした。 |
牙: | え‥‥ |
王: |
さきほど休憩室で、 マキさんはこう言っていました。 |
マ: |
『知ってた‥‥ 天井のパネル、開ければ‥‥ ステージと、楽屋エリア、 逃げられる‥‥』 |
牙: | な。なんだって‥‥ |
王: |
どうやら‥‥牙琉検事。あなたは 知らされていなかったようですね! |
牙: |
‥‥‥‥‥‥‥‥たしかに。 ”消失”のトリックは聞いていた。 ‥‥でも。 そんなルートを使うなんてことは、 聞いていなかったね。 あの、魔術師‥‥ そんな、ダイジなコトを! |
み: |
まあ‥‥魔術師は、関係者にも、 最小限のタネしか教えませんからね。 なにせ、タネは”イノチ”だし。 |
王: |
(だから‥‥”契約”でしばって、 証言させないようにしたのか) ‥‥いかがですか、ラミロアさん。 |
ラ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ さすが、ですわね。弁護士さん‥‥ マキが見こんだだけのコトは あります。 |
裁: |
‥‥! そ。それでは‥‥やはり! あなたは、弁護人の主張どおり‥‥ このルートで、移動したのですか? |
ラ: | ‥‥‥‥‥‥そのとおり‥‥です。 |
裁: |
ふむう‥‥しかし。 やはり、気になりますな。 |
王: | な。なにがですか? |
裁: |
いや。先ほども言いましたが‥‥ 消えたラミロアさんが、 ふたたび現れるまでのあいだは‥‥ 20秒ほどしかありません。 こんなハヤワザでは‥‥ ハンニンの声を”聞いている” 時間などないではないですか! |
王: | た‥‥たしかに‥‥そうですね。 |
裁: | いかがですか、証人! |
ラ: |
それは‥‥その。 わたくしのクチからは‥‥ |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ どうやら、弁護人。 |
王: | はい。 |
裁: |
やはり。あなたにお任せした方が いいようですな。 |
王: | あの。何をですか‥‥? |
裁: |
ラミロアさんの”瞬間移動”‥‥ そのシカケが解明できないかぎり、 あなたの主張は蹴りますので、 そのつもりで。 |
王: |
うううう‥‥ (話してくれないラミロアさんが ワルいと思うんだけど‥‥) |
ラ: |
先ほども申し上げたとおり‥‥ わたくしのクチから、そのシカケを 暴くことはできないのです。 |
裁: |
それでは、もう一度、 証言をおねがいします。 あなたの行った、 ”大魔術”について! 弁護人は、よく聞いて見破るように。 |
ラ: |
わたくしからも、 おねがいいたしますね。 |
王: |
‥‥はあ。 (なんか、テストを受ける 小学生の気分だぞ‥‥) |
み: |
がんばってくださいね! オドロキさん! |
ラ: |
『わたくしは、教えられたルートを 移動しただけです。』(証言1) 『楽屋エリアの出口に非常口があり、 そこにスタッフの方がいて。』(証言2) 『そのまま、ステージの反対側に 入ることができるのです。』(証言3) 『段取りでは、そこまで2分で 移動することになっていました。』(証言4) 『その途中で、 あの”声”を聞いたのです。』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥2分‥‥ですか。 ナゾは深まるばかり、ですな。 |
王: |
(裁判長‥‥まるで考える気は なさそうだな) |
裁: |
私の興味も、深まるばかりです! 弁護人。 よろしくおねがいしますぞ。 |
王: |
‥‥わかりました。 (ラミロアさんの証言と このビデオの映像から‥‥ ムジュンを暴けばいいんだな) |
み: |
みぬき。もうわかっちゃいました! 魔術師だし。 |
王: | だったら、教えてくれよ。 |
み: |
ダメですよー。 タネ明かし、できませんから。 魔術師としては。 |
王: |
(やれやれ‥‥ みんなイジワルだな‥‥) |
王: | 2分‥‥ですか。 |
ラ: |
ええ。 走れば1分ほどでつきますわね。 |
王: |
走る‥‥って。天井裏じゃあ、 セマくて暗いんじゃあ‥‥? |
ラ: |
ふふ‥‥お忘れかしら? わたくしにとっては、 明るさは関係ないのですよ。 |
王: | あ‥‥す。すみません。 |
裁: |
それでは‥‥事件当夜も、 やはり2分で‥‥? |
ラ: |
ええ‥‥でも、少し あぶなかったですわね。 途中で足を 止めましたものですから‥‥ |
王: |
(ラミロアさんが映像に写ってない 時間は、ものの20秒だ‥‥ この”時間差”を 解くカギは‥‥) |
み: |
やっぱり。そのビデオの中に あると思いますよ。魔術師としては。 |
裁: |
いかがですかな? 弁護人。 ラミロアさんの証言と、 このビデオの映像‥‥ そのムジュンを解く証拠品でも、 ありますかな? |
王: |
そ。それは‥‥ (証言とビデオのムジュン‥‥ それを解く証拠品があるか?) |
王: |
証言とビデオのムジュンを解く 証拠品‥‥それは、これです! |
王: |
‥‥ラミロアさん。 このブローチ‥‥おぼえてますね? |
裁: |
それは‥‥たしか。きのうも モンダイになりましたな。 |
王: | 現場‥‥あの楽屋で拾ったものです。 |
牙: |
それが、どうかしたかい? そいつを”いつ”落としたか‥‥ それはもう、 解決したはずだと思っていたけどね。 |
王: |
オレもそう思っていました。 だけど‥‥そうじゃなかった。 |
牙: | ‥‥‥! |
王: |
このビデオ‥‥もう一度、 よく見てください。 この時点では‥‥ムネに、 <<ブローチ>>がついていますね。 |
裁: | ふむう‥‥たしかに。 |
王: | それでは、少し先を見てみましょう。 |
裁: |
あ‥‥ぶ。ブローチが‥‥ ブローチが、ありません! |
牙: | な。なんだって‥‥! |
王: |
そう‥‥たった20秒のあいだに、 ブローチが消えてしまった‥‥ ステージから、楽屋エリアまで‥‥ 走っても1分かかる。 それならば‥‥ケツロンは、 ただ1つです。 この、消える前のラミロアさんと、 ふたたび現れたラミロアさんは‥‥ ”ベツジン”だったのです! |
裁: |
え‥‥ えええええええええええッ! |
王: |
ブローチは、 現場の床から発見されました。 どこに落ちていたか‥‥? ‥‥そう。ちょうど 通気口の下の辺りに落ちていました。 ラミロアさん。あなたが ブローチを落としたのは‥‥ ステージから楽屋エリアへ 移動する途中‥‥ そう。事件に”出くわした”‥‥ あのときだったのではないですか? |
ラ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そう、だったのかもしれません。 |
裁: | 静粛にッ! が‥‥牙琉検事! |
牙: |
‥‥ああ。 そんなカオしなくてもいいさ。 そのとおり。ぼくは知っていた。 |
裁: | な。なんですって‥‥ |
牙: |
かくしていたわけじゃないよ。 ‥‥思いもしなかったんだ。 まさか‥‥あの入れ替わりのときに 事件が起きていた、なんてね‥‥ |
王: | じゃあ、やっぱり‥‥ |
牙: |
そうだね。 ステージがせり上がる直前に‥‥ ラミロアさんは入れ替わっていた。 |
裁: |
ちなみに‥‥この。 ニセラミロアさんは、ダレが‥‥? |
牙: |
このトリックを考えた本人だよ。 ”或真敷 バラン”だったかな。 |
王: |
(バランさん‥‥か‥‥) でも‥‥ ちょっと気になるんですけど。 |
ラ: | なんでしょうか‥‥ |
王: |
‥‥つまり、このとき。 ラミロアさんは”いなかった” ワケですよね? |
ラ: | そうですわね。 |
王: |
でも‥‥このニセラミロアさん‥‥ 歌ってますよね。 キモチよさそうに。 |
裁: | あ。たしかに‥‥ |
み: |
オドロキさん。そんなの、 考えるまでもありませんよ。 あらかじめ録音した声を流してたに 決まってるじゃないですか! |
牙: |
ふっふっふっ‥‥ ナメられたもんだね。 ぼくのガリューウエーブも。 |
み: | あれ。ち。ちがうんですか? |
牙: |
ぼくたちは、”ライブ”‥‥ ナマ演奏にこだわるバンドだ。 ‥‥ラミロアさん。 教えてやってもらえますか? |
ラ: | わかりましたわ‥‥ |
裁: |
それでは、証人。 証言を追加していただきましょう。 |
ラ: |
『わたくし‥‥移動中もキチンと 歌っておりましたのよ。』(証言6) |
王: |
な。なんですって‥‥ ”歌っていた”‥‥? |
ラ: |
ええ。 ミスタ・ガリュウが、録音はイヤだ、 とおっしゃったので‥‥ これを使って。 |
王: |
じゃあ‥‥ラミロアさん。 ‥‥まさか。 天井裏を伝って、楽屋エリアを 移動しながら歌っていたんですか! |
ラ: |
わたくしは常に闇の中にいます。 どこで歌おうと、同じことですわね。 |
裁: |
し。しかし‥‥歌いながら 歩いていたとなると‥‥ |
み: |
そうですよ! ハンニンと、 被害者にもラミロアさんの声が‥‥ 聞こえたはずじゃないですか! |
王: | あ‥‥た。たしかに‥‥ |
牙: | ‥‥そうだろうか。 |
王: |
いやいや。天井裏で歌ってるヒトが いたら、ダレだって‥‥ |
牙: | 現場の状況を思い出してみようよ。 |
王: | 現場の状況‥‥? |
み: |
あ‥‥思い出した! ホラ‥‥あのスピーカーですよ! |
王: | すぴーかー‥‥ |
王: |
『そういえば‥‥事件が起こったとき、 うるさく鳴っていたなあ‥‥』 |
茜: |
『こういう楽屋はね。ステージの音を モニターしているものなの。』 |
み: | 『もにたー?』 |
茜: |
『ステージ上の音を、リアルタイムで そのまま流しているワケ。 自分の出番とか、 チェックするためじゃないかな。』 |
牙: |
‥‥そう。 あの部屋は、大音量でステージの 演奏がモニターされていたんだ。 ‥‥まあ、ぼくの注文なんだけどさ。 |
王: |
そうか、だから‥‥ ラミロアさんの歌は‥‥ 彼らの耳に、 ”そのまま”聞こえていたんだ! |
裁: | なんという‥‥コトでしょう‥‥ |
ラ: | あの‥‥ |
王: | なんですか? ラミロアさん。 |
ラ: |
そういえば‥‥ 思い出したことがあるのですが‥‥ |
裁: | なんでしょうかな。 |
ラ: |
わたくし、例の大きな音‥‥ 銃声ですか? あれを聞いたとき。思わず‥‥ |
王: | 思わず‥‥? |
ラ: | 歌が止まってしまったんです。 |
裁: | え‥‥ |
ラ: |
おどろいて‥‥ 歌詞を忘れてしまって。 |
王: | (歌が‥‥止まった‥‥!) |
ラ: |
ぐうぜん、2番の歌い出しの タイミングだったので、 それほど不自然では なかったようですが‥‥ |
牙: |
おデコくん! きみにわたした ミキサーを貸してくれ! |
王: | みきさー‥‥ですか? |
み: |
アレですよ! 音楽を分析するキカイ! |
王: |
ああ‥‥アレか。忘れてたよ。 よし! 聞いてみよう! |
Sugar, Sugar... 腕に 抱かれて こころのカギは 今、 盗まれた ...Pleasure... いとしの メロディー | |
王: |
たしかに! 声が途切れている! |
裁: |
そうですか? わたしには、 イマイチ分からなかったのですが。 |
王: |
歌詞カードを見てください。 2番のアタマ‥‥ ”Pleasure, Pleasure...”の部分。 もう一度聞いてみましょう! |
こころのカギは 今、 盗まれた ...Pleasure... いとしの メロディー | |
裁: |
‥‥どうやら。 これでハッキリしたようです。 ワレワレは、大きなカンちがいを していた可能性が出てきました。 |
王: |
事件が起こったのは‥‥ 第2部。ラミロアさんの、 バラードタイムだった‥‥ |
裁: |
もし、それがジジツならば‥‥ 第2部にステージにいた被告人 には、犯行は不可能だった‥‥ |
王: |
そして、そのときステージを 下りていた眉月刑事には‥‥ 犯行のチャンスが あったことになる! |
牙: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: | どうですか! 牙琉検事ッ! |
牙: | ‥‥おもしろいね。 |
王: | ! |
牙: |
ここまでミゴトに、事件の見え方が ひっくり返ったのは、初めてさ。 ‥‥しかし。たったひとつ。 モンダイが残っている。 |
裁: | なんですかな? |
牙: |
おデコくんの提示した”仮説”‥‥ そのすべてのコンキョが、 ラミロアさんの証言だけに たよっていることさ。 |
裁: | なんですって‥‥ |
牙: |
カンタンなコトだよ。 こんなコトは言いたくないが‥‥ もし、彼女が被告人をかばうために ウソをついていたとしたら‥‥? |
王: | そんな証拠は、どこにも‥‥ |
牙: |
わかってる。ただ‥‥真実は まだわからない、と言いたいのさ。 ‥‥‥あのオトコの証言を 聞くまでは、ね。 |
裁: | ”あのオトコ”‥‥まさか。 |
牙: |
‥‥そう。 ここまで来たら、身内といっても、 証言させないわけには行かない。 眉月 大庵刑事にね。 |
裁: |
‥‥この事件の‥‥ 重要な参考人として、ですか‥‥ |
牙: |
ひらたく言えば‥‥ 容疑者として、ね。 |
王: |
(‥‥ついに、 引きずりだしてやったぞ‥‥ 眉月 大庵! 今日こそ‥‥決着をつける!) |
裁: |
ここで一度、 休憩をとりたいと思います。 牙琉検事。‥‥眉月刑事を 証人として喚問します。 手続きをすませておくように。 |
牙: | ‥‥ワザワザどうも。 |
裁: |
それでは。これより、 15分間の休憩に入ります! |