王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
マキ・トバーユ…黄土 | |
ラミロア…藤 | |
ローメイン・レタス…青 | |
眉月 大庵…紫 | |
或真敷 バラン…薄橙 |
王: |
”協力者”の条件を満たす人物‥‥ それは‥‥ 被告人、マキ・トバーユ! 彼しかあり得ません! |
裁: |
そ。それは‥‥ あなたの依頼人ではないですかッ! |
大: |
ハッ! 依頼人を告発する弁護士、 とはね! 初めて聞いたよ! |
王: |
依頼人が犯罪に協力しているのは、 オレとしてもザンネンです。 でも‥‥オレが弁護しているのは、 ”レタスさんの殺害”についてです。 それに対する、主張は変わりません。 彼は、殺人は犯していない! |
裁: |
たしかに‥‥被告人は ボルジニアの人間です。 協力者としての条件を満たしている、 というのはわかりますが‥‥ ラミロアさんだった、というコトも、 考えられるのでは‥‥? |
王: | それはあり得ません。 |
裁: |
‥‥ヨウシャなく 切り捨てられました。 |
王: | 理由は‥‥”電波”です。 |
裁: | でんぱ‥‥ |
王: |
いいですか。このリモコンの 電波の届く範囲は‥‥ 10メートルていど、 ということでしたね。 |
裁: | はあ‥‥たしかに。 |
王: |
思い出してください‥‥ ‥‥犯人が通信をしたとき、 ラミロアさんは通気口にいました。 ちょうど、ラミロアさんの楽屋の 真上で犯人の声を聞いていた‥‥ 会場の位置関係を 見てみましょう。 通気口からリモコンの電波が 届くのは‥‥このエリアです。 |
裁: |
やはり、これを見るかぎり‥‥ ラミロアさんも考えられると 思われますが‥‥ |
王: |
いえ。 犯人による通信が行われたとき‥‥ ステージの状況は、 この断面図とは、ちがっていました。 <<恋するギターのセレナード>>の 演奏中‥‥ ステージの一部がせり上がって‥‥ 牙琉検事とニセラミロアさんは 空中にいたのです。 この”タワー”の高さは‥‥ 約5メートルでした。 つまり! 通気口のラミロアさんからでは、 リモコンの電波は届かなかった! |
裁: | あ‥‥ |
大: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
さあ、いかがですか? 眉月刑事。 今度こそ‥‥ |
大: | ‥‥裁判長。 |
裁: | な。なんですかな‥‥? |
大: |
ガリュウのギターが 燃えた瞬間のビデオ‥‥ もう一度、見せてもらえないかな? |
裁: |
は。はあ‥‥まあ。 いいでしょう。 |
王: |
(な。なんだ‥‥まだ何か、 反論するつもりなのか‥‥?) |
...Pleasure... いとしの メロディー この身をつつみ 今、 放たれた | |
大: |
‥‥ハッハッハッ‥‥ ザンネンだったなあ‥‥コゾウ。 |
王: | こ。こぞう‥‥ |
み: |
”腕まくりクン”から始まって、 ”ワカゾウ””コゾウ”‥‥ どんどん格が下がっていきますね。 |
裁: |
な。なんですか? 今の映像に、 何か不自然なところでも‥‥ |
牙: |
‥‥モンダイは”映像”じゃない。 そうだな? ダイアン。 |
大: |
そう‥‥”音”だよ。オレたちは、 ”音楽”をやってるんでね。 |
王: | ‥‥どういうことですか? |
大: |
いいか、コゾウ。 キサマのデタラメなスイリでは‥‥ あのピアニストが、命令を受けて 発火装置を作動させた‥‥ そういうことだな? |
王: | そ。そうですけど‥‥ |
大: |
その発火装置を作動させるには、 スイッチを押さなければならない。 マチガイないな? |
王: | ‥‥はい。 |
大: |
よく聞いてみるんだな。 モンダイのシーンの、ピアノの音を。 |
王: | ピアノ‥‥? |
...Pleasure... いとしの メロディー この身をつつみ 今、 放たれた | |
裁: |
これが、どうかしましたかな? ピアノの音は、ごくフツウに 聞こえているようですが‥‥ |
大: |
まだ、わからないのかい? ‥‥それこそがモンダイなのさ。 |
王: | あ‥‥ |
大: |
そうなんだよ。楽器を弾きながら、 スイッチを押すことはできない。 歌姫と、ギター、ベース、ピアノ、 そしてドラム‥‥ あのタイミングで手があいてたのは、 歌姫さんだけだ。 |
み: | ラミロアさん‥‥ |
大: |
しかし! さっき、 アンタはハッキリ言った。 歌姫さんは”協力者”ではない、 とな。 |
王: | ぐ‥‥ッ! |
大: |
さあ、どうする? アンタの言う”共犯者”は‥‥ スイッチを押すコトが できなかったみたいだぜ! |
王: | う‥‥うおおおおおおおおおッ! |
王: |
(たしかに‥‥ピアノの音が 聞こえている‥‥ これじゃ、スイッチを押すことは できない‥‥ッ!) |
裁: |
いかがですかな? 弁護人。 たしかに、ギターが燃えるまで、 ピアノの音は聞こえているようです。 |
王: | そ。それは‥‥ |
大: |
まあ‥‥ダレにでもあることさ。 ”見落とし”はね。 |
み: |
お‥‥オドロキさん! まちがってたんですか? |
王: |
そんなハズはない! 今までのスイリには、 スジがとおっている! それが‥‥こんなコトで‥‥ |
牙: | ‥‥妙‥‥だな‥‥ |
王: | な。なんですか‥‥? |
牙: |
いや。なんとなく‥‥ ”違和感”があったんでね。 今の演奏に‥‥ |
王: | ”いわかん”‥‥ |
裁: |
弁護人。 被告人‥‥マキ・トバーユさんが スイッチを押せなかったのであれば、 当然。あなたの主張する ”協力者”ではあり得ません。 |
王: |
し。しかし! 他のジジツは、すべて! 彼が”協力者”であることを 示しています! |
大: | ‥‥それじゃ、意味がないんだよ。 |
王: | ! |
大: |
現実に、ガリュウのギターは 燃えているんだ。 スイッチを押したのは、 ピアニストくんじゃない。 つまり。アンタのスイリは 崩れ去った、ってワケさ。 |
裁: |
それでは。弁護人に、 最終的なケツロンをうかがいます。 被告人、マキ・トバーユは、 密輸の”協力者”であったのか? ‥‥このコタエは、あなたの主張 すべてに影響しますので‥‥ よく考えて、答えるように。 |
み: |
マキさんが ”協力者”じゃなかったら‥‥ 今までのスイリ、 ゼンブひっくり返っちゃいますよ! |
王: |
わかってるよ! マチガイはないはずだ。 マキさんは、”密輸”に 協力した‥‥ だから、あのスイッチも 押しているハズだ! |
み: | それを、立証しないと‥‥ |
王: |
クソッ! どうすればいい‥‥ どうすればいいんだ! |
み: |
ううう‥‥何かひとつでも、 手がかり、ないんですか? 気になること、とか! |
王: |
気になること‥‥ そういえば‥‥ひとつだけ‥‥ |
み: | な。なんですか! |
王: |
(さっきの、 牙琉検事のコトバ‥‥) |
牙: | 『‥‥妙‥‥だな‥‥』 |
王: | 『な。なんですか‥‥?』 |
牙: |
『いや。なんとなく‥‥ ”違和感”があったんでね。 今の演奏に‥‥』 |
王: |
(‥‥たったひとつのヒントだ。 牙琉検事の感じた ”違和感”の正体‥‥か) |
裁: |
いかがですか。弁護人。 すべては‥‥ ”マキ・トバーユが スイッチを押した”‥‥ それを立証できるか否かに かかっています。 最終的なコタエを 聞かせていただきましょう! マキ・トバーユがスイッチを 押したことを、立証できますか? |
王: |
‥‥立証‥‥ と言えるかどうかわかりません。 しかし‥‥その”可能性”を 証明することはできます。 |
牙: |
検察側としては‥‥証拠の提示を 求めなければならないが‥‥ 大丈夫なのかい? おデコくん。 |
大: |
バカな! そんな証拠、あるワケがない! |
裁: |
それでは、証拠品を 提示していただきましょう。 被告人がスイッチを押したという、 そのコンキョは! |
王: |
コンキョは‥‥ ”音楽”そのものです。 |
裁: | どういうことですか? |
王: |
いいですか。 ギターが燃え上がる、直前‥‥ スイッチが押されたときの ピアノだけを聞いてみましょう。 |
...Pleasure... いとしの メロディー この身をつつみ | |
裁: |
ふむう‥‥やはり、しっかり ピアノの音が聞こえるようですな。 |
王: |
しかし‥‥ ”シンプル”だと思いませんか? |
裁: | シンプル‥‥? |
牙: |
‥‥もしかして。 これなら‥‥ 片手で弾けるかもしれない‥‥ そういうコトかな? |
裁: | 片手で‥‥ |
王: |
スイッチを押すのは、 片手でじゅうぶんです! ピアノを片手で弾いて、 もう片方の手で‥‥ |
大: |
ハッ! アンタ、ピアノを弾けるのかい? |
王: | い。いえ‥‥ |
大: |
そんなアンタに、 何がわかるんだい? あんなフレーズ、 片手で弾けるワケ、ないだろ? |
王: |
ぐ‥‥ッ! (たしかに‥‥弾けないオレが 何を言ってもムダだ‥‥) そうだ! みぬきちゃん! |
み: | な。なんですか‥‥ |
王: |
成歩堂さん‥‥パパ、 ピアニストだろう? 彼なら‥‥ |
み: |
ああ。パパならきっと。 あんなムズカシイフレーズ、手が 3つあっても弾けないと思いますよ。 |
大: |
どうやら‥‥ ムダ、だったみたいだな。 |
王: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥いえ。 そうとはかぎりませんよ。 |
大: | な。なんだと‥‥ |
王: |
ラクな道がふさがれただけです。 それがないとすれば‥‥ 正面から突破するだけのハナシです。 |
大: |
しかし‥‥両手で弾いたか、 片手でひいたか、なんて‥‥ 立証できるわけがない! |
王: |
たしかに、 立証はムズカシイでしょう。 でも。片手で弾いた可能性は 極めて高いはずです。 |
大: | な。なぜ‥‥そんなコトが‥‥ |
王: |
ヒントは‥‥牙琉検事が感じた ”違和感”です。 |
大: | ‥‥! |
王: |
その違和感の正体‥‥ じつは、この曲のある部分を聞くと、 ハッキリわかるんですよ。 |
大: | ま。まさか‥‥ |
裁: |
どうやら‥‥ここからが 本番だったようですな。 それでは、うかがいましょう。 モンダイの部分を、被告人が 片手で弾いたと考えられる‥‥ そのコンキョを示す部分とは、 どこなのですかッ! |
王: |
(ギターが燃える直前のフレーズ、 マキさんが片手で弾いている! そのコンキョを示す”部分”の メロディを、つきつけるんだ!) |
王: |
‥‥牙琉検事。 あなたの感じた”違和感”‥‥ その正体に、もう 気づいているのではないですか? |
牙: |
どうやら‥‥キミも 気づいたみたいだね。おデコくん。 |
裁: | ど、どういうことなのですかッ! |
王: |
いいですか。もう一度。 モンダイの部分のピアノだけを 聞いてみましょう。 とくに”いとしの メロディー”の 部分を聞いてください。 |
...Pleasure... いとしの メロディー | |
大: |
だからさァ! 何度聞いたって、同じことだぜ! |
王: | そのとおり。 |
大: | ‥‥‥! |
王: |
だから‥‥ 別の場所を聞かないとね。 |
裁: | ベツの‥‥場所‥‥ |
王: |
ギターが燃えたのは、歌の <<2番>>の最後の部分でした。 それでは‥‥<<1番>>の 同じ部分を聞いてみましょう。 今度は、”腕に 抱かれて”の 部分に注目してください! |
Sugar, Sugar... 腕に 抱かれて | |
裁: |
あ‥‥も、もう一度! 今度は<<2番>>をおねがいします! |
...Pleasure... いとしの メロディー | |
王: | あ。ここです! わかりましたか? |
裁: |
こ。これは‥‥ ”感じ”は似ていますが‥‥ アキラカに、 ちがうではないですかッ! |
大: | な。なんだと‥‥! |
王: |
そのとおりです! <<2番>>のフレーズは シンプルなのに対して‥‥ <<1番>>のフレーズは、 低い音と高い音が入り組んでいる。 こっちはアキラカに、 両手を使わなければ弾けません! |
裁: | あ‥‥ッ! |
大: |
ば。バカなッ! そ。それがなんだって言うんだ! |
王: |
”なんだって言うのか”‥‥ 言わなくてもわかるはずですが? |
大: |
し‥‥シロートは、 これだから困る! <<1番>>と<<2番>>‥‥アレンジが ちがうなんてよくあるハナシで‥‥ |
牙: | それはとおらないよ、ダイアン。 |
大: | ‥‥! |
牙: |
アレンジを変えるならば、 ハッキリわからなければ意味がない。 しかし‥‥このピアノは。 ”なるべく聞こえ方が変わらない” ように弾いている。 |
大: | う‥‥うううッ! |
牙: |
ぼくが感じた違和感も、 それだったのさ。 ”同じはずのフレーズなのに、 微妙にちがって聞こえた”‥‥ |
王: |
なぜ、そんな弾き方をしたか‥‥? コタエは、たったひとつ! ”スイッチを押す片手を 空けるため”だったのです! |
大: | ぐ‥‥ぐおおおおおおおおおおッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛にィィッ! ‥‥どうやら。ここにすべて、 つながったようですね。 いかがですかな? 牙琉検事。 |
牙: |
そう、だね。 個人的には”非常に残念だ”‥‥ そう言わなければならないようだ。 |
大: | ‥‥クッ‥‥ |
王: |
(やった‥‥ついに‥‥ ついに、アイツを ダマらせてやったぞ‥‥) |
裁: |
それでは。 検察側から反論がないようでしたら、 本法廷の見解を 述べなければなりませんが‥‥ |
大: |
クッ‥‥クックックッ‥‥ あーっはっはっはっはっはっ‥‥ いやあ、ミゴトだねえ。 ウデまくりクン。 |
王: |
ど‥‥どういうことですか。 (な。なんだ‥‥この、 ホガラカすぎる笑顔は‥‥) |
大: |
ガリュウ。言ってやれよ。 何が”非常に残念”なのかを、さ。 |
牙: |
個人的に、”非常に残念だ”‥‥ そう言わざるを得ないよ。 ‥‥おデコくん。 |
王: | え‥‥お。オレ? |
牙: |
そう‥‥ たしかに、ツジツマは合っている。 その点は、ミゴトだ。 しかし。この時点に至っても‥‥ キミはまだ、決定的な<<証拠>>を 提示しきれていないのだよ。 |
王: |
でも! ダレが聞いたって、アキラカ‥‥ |
裁: |
不幸なコトですが‥‥ ”誰が聞いても、アキラカ”‥‥ 法律では、そのコトバには なんの効力もないのです‥‥ |
王: | そんな、バカな‥‥ |
裁: |
100の事実が、ある1点を 指し示していても‥‥ 決定的な証拠がないかぎり、 ”立証”にはならない。 それが、現在の、この法廷の 絶対的なルールなのです。 |
王: | そ。そんな‥‥ |
裁: |
どうやら、これ以上の”証拠”を 提示するのはムリなようですな。 |
大: |
まあ‥‥そんなモノがあれば、 とっくに提出しているだろうからね。 |
裁: |
残念ながら‥‥ 今の時点では、あなたの告発を 受け入れるコトはできないのです。 |
王: | な‥‥なんですってぇぇぇぇぇっ! |