王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
絵瀬 まこと…黄緑 | |
絵瀬 土武六…灰 | |
或真敷 バラン…薄橙 | |
葉見垣 正太郎…橙 | |
或真敷 ザック…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
原灰…黄 | |
ラミロア…藤 | |
牙琉 霧人…紫 |
地方裁判所 被告人第6控え室 | |
王: | おはようございます! |
ま: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
み: |
あ。まことさん、って いうんですよね! あたし、成歩堂 みぬきです! よろしくおねがいしますね! |
ま: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
み: |
あの! みぬきたち、 ミカタですから! なんでも、話してくださいね! |
ま: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥おはようございます‥‥ |
王: |
‥‥! (しゃ‥‥しゃべった!) |
み: |
うーん‥‥そうですねー。 できれば、もっとニッコリして しゃべった方がいいと思います。 ホラ。まことさん、キレイだから。 ツカミがカンジンですよ! |
王: |
いやいや。さすがにそれは ムリな注文だよ。みぬきちゃん。 |
ま: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥よろしくおねがいします‥‥ |
み: | ‥‥‥‥‥! |
王: | (‥‥そうきたか) |
ま: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
王: |
(やれやれ‥‥また、 マニキュアを塗ってるぞ‥‥) |
み: |
いいなあ! なんか、アレ。 ”オトナのオンナ”って感じです! |
ま: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥塗ってみますか?‥‥ |
み: | きゃああっ! いいんですかッ! |
王: |
やれやれ‥‥ (被害者の絵瀬 土武六さんは、 ”贋作師”だった。 そして、アトリエからは、 盗まれた絵が発見された。 ”犯罪”のニオイのする 生活が‥‥ 事件を引き起こしたのかも しれないな) |
地方裁判所 第3法廷 | |
裁: |
こッ。これより‥‥コホン。 絵瀬 まことの法廷を、その。 かッ! かッ! かッ! ‥‥開廷いたしますぞッ! |
み: |
どうしちゃったのかな、 裁判長さん。 声はウラ返ってるし、 目は泳いでるし。 |
裁: |
ええと‥‥その。 本日の審理は、おそらく。 この国の法廷の歴史に、 長く、その名を 記すコトになるでしょうッ! |
牙: |
”裁判員”の試験的採用‥‥ 新制度を採り入れるにあたっての、 貴重な第一段階、というワケだね。 |
み: |
あ! パパが言ってた ”ゴクヒ任務”‥‥ |
牙: |
裁判員‥‥一般的に”陪審員” として知られている。 判決に”民意”を反映させるため、 この国でも導入が検討されている。 |
王: |
でも‥‥法廷内に、ソレっぽいヒト、 いないみたいですけど‥‥ |
牙: |
この法廷は、3台の テレビカメラが常時、とらえている。 すべての情報が、裁判員の手元に 届くようになっているのさ。 ショクン! サイコーにクールな 審理をおねがいするよ! |
裁: |
こ、コラッ、牙琉検事! それは、その。 私が言いたかったですぞッ! |
牙: | これはこれは、失礼‥‥ |
裁: |
それでは、ショクン! 今日は、その。 今日は、”くうる”な審理に しようではありませんかッ! |
王: |
(裁判員‥‥ 彼らは”法律”に縛られない。 人々の”ココロ”が 反映される法廷‥‥ 審理のゆくえに、どんな影響を およぼすことになるんだろう) |
裁: |
それでは、牙琉検事。 事件の説明をおねがいします。 |
牙: |
被害者は、画家の絵瀬 土武六氏。 仕事場のアトリエで‥‥ コーヒーに盛られた 猛毒によって死亡した。 ‥‥言うまでもなく、被告人。 絵瀬 まことクンがいれたものだ。 |
王: |
コーヒー自体には、 毒は入っていなかったハズです! |
牙: |
ふうん‥‥少しは ベンキョウしてきているみたいだね。 たしかに。毒が検出されたのは‥‥ この、コーヒーカップだったのさ。 |
裁: |
カップ‥‥ですか。フチに、 クチをつけた跡が残っていますな。 |
牙: |
死因についてだけど。 ここに、解剖記録がある。 |
裁: | 証拠品として、受理しましょう。 |
データを法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
この記録によると、 被害者の死因は‥‥ ”アトロキニーネ”による 中毒死、とありますが。 |
牙: |
自然界には存在しない化合物で、 致死量は0.002ミリグラム。 少しでも体内に入ったら‥‥ もう、死神の手から 逃れることはできない。 |
裁: |
それでは、牙琉検事。 証人をおねがいしましょう。 |
牙: |
今回の、シンプルな事件に ふさわしい、シンプルな人物‥‥ ‥‥犯行の一部始終を 目撃したオトコさ。 |
王: | (あの記者、というワケか‥‥) |
牙: |
じゃあ、証人。 名前と職業をたのむよ。 |
葉: |
あッ! はい! なんというか葉見垣 正太郎です! 職業は、オトコいっぴき。 |
王: |
つまり、ジャーナリスト、 というわけですね? |
葉: |
あ! ちょっと。いいですか、 ちょっとワタシ、なんですけども! |
裁: | はい。なんですか? |
葉: |
決めつけはよくないと思う ワケですよ、ワタシとしましては。 ”先入観は、無限のサバクを 公園の砂場にする”ってゆう。 |
王: |
でも。ジャーナリスト なんですよね? きのう、そう言ってましたよ。 |
葉: |
‥‥まあ、そうなんですケド。 いや、あのワタシ。ユメと野望を 抱いて、ここにいるワケです。 証言するかわりに、スクープを! この事件の、独占記事を! このハミガキがッ! ”あのハミガキ”にッ! |
裁: |
‥‥それでは、 さっそく証言していただきましょう。 |
王: |
(”最高にシンプルな事件”‥‥か。 そいつはどうかな‥‥?) |
葉: |
『あの晩、9時ごろにスタジオを 訪ねて、取材をしました。』(証言1) 『ダレも入ったことのないアトリエ。 まさに報道史上に残る瞬間でした!』(証言2) 『取材を始めてすぐ、 ムスメさんがワレワレにコーヒーを。』(証言3) 『あとはみなさん、ご存じのとおり。 ‥‥”巨星、落つ!”ってゆう。』(証言4) 『取材中、彼女以外に部屋に 入ってきた者はいませんでしたッ!』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥なるほど。 たしかに、シンプルな事件ですな。 そう‥‥あなた自身が 毒を入れたのでなければッ! |
葉: |
な。な。な。ナニを 言い出すんですか、あなたは! |
裁: |
いやいや。なにしろ、 カメラが入っていますから。 私もこう、”キレモノ”っぽい ところを見せておきませんとね。 |
牙: |
ホントにやってないんだろうね? キミ。 |
葉: |
こ。こ。こ。これは、ワタシ! アレじゃないですか! <<言論のマッチポンプ>>ってゆう。 <<コンテンポラリーな魔女狩り>> ってゆう! コレは1本、特ダネになりますぞ! ズバリ! <<コトバの暴力法廷>>! |
牙: |
はっはっはっはっ。 たしかにねえ。 |
み: | 牙琉検事。とても楽しそうです。 |
王: | ううん‥‥ヒドいな。 |
裁: |
それでは、弁護人。 尋問をおねがいします。 |
王: |
なんですか? ”キョセイ、オツ”って。 |
み: |
なんか、アレ。 ムカシの電報みたいですよね。 ”カネオクレ タノム” みたいな。 |
葉: |
かー。知らないんですか! 新聞のキマリモンクですよ。 大人物が亡くなるコトです。 おっきな星が落ちるワケです。 |
み: |
でも。ウチューって、 重力がないハズですよね? 落ちないと思うけどなあ、星は。 みぬきとしては。 |
王: | ‥‥どうでもいいよ。 |
葉: |
いや、それ、ワタシ。たしかにッ! 一理ありますね、それは。 それなら<<巨星、割れる>>‥‥ いや、これじゃ伝わりにくい。 いっそストレートに<<巨星、死ぬ>> ‥‥いや、これじゃ意味がない。 ワザワザたとえ話にしなくても、 <<ドブロク、死ぬ>>でいいし‥‥ |
王: |
(もう少し、実になるコトを 聞いてみるか‥‥) |
王: |
土武六さんのコーヒーですけど。 実際に”飲んだ”ところは 見たんですか? |
葉: |
モチロンですとも! ”見たモン勝ち、言ったモンは もっと勝ち”‥‥ってゆう。 それが、ワレワレの世界ですから。 ‥‥ただ。 |
王: | ”ただ”‥‥なんですか? |
葉: |
”見た”というほども ないですね、ワタシ。 ”飲んだか飲まないか”‥‥ ある種、そんな感じでした。 ほんのヒトクチ、 クチをつけただけ、ってゆう。 |
裁: |
ふむう‥‥トンでもない 猛毒だったようですからな。 |
葉: |
ワタシの胃も、ある種、 すっぱくなりましたね。 出されたコーヒー、ワタシ。 ”ゴク飲み”してましたので。 もしかして! そこに何か! 何か”トリック”があったとか! どーなんですかその辺! ヒトコト、おねがいしますッ! |
王: | (うっとうしいなあ‥‥) |
裁: |
いかがですか? 今の証言は、重要ですかな? |
王: |
被害者はコーヒーを飲んで、 すぐに倒れたワケですね? |
葉: |
ええ。そのとおりと断言しても さしつかえないと断言できましょう。 |
王: |
裁判長! 今の発言は、 たいへん重要と考えます。 ただちに証言に加えてください。 |
裁: |
それでは、ただ今の発言を、 証言に加えていただきましょう。 |
葉: |
重要! 承知しました! 『ヒトクチ、飲んだか飲まないか‥‥ その瞬間、彼は倒れたのです!』(証言6) |
王: |
問題は‥‥<<アトロキニーネ>> という毒の”特性”です。 |
裁: |
とくせい‥‥ですか? しかし。牙琉検事によりますと。 致死量は0.002ミリグラム、 中枢神経をマヒさせる‥‥ コレを飲んだとしたら、いくら あなたでも、ヒトタマリも‥‥ |
王: |
(なんでオレなんだよ) ‥‥残念ながら、 牙琉検事の情報には‥‥ 決定的に”欠けている” 部分があったのです。 |
牙: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: | かけている‥‥? |
王: |
‥‥たしかに、 アトロキニーネは猛毒です。 しかし。クチに入れたからと言って、 すぐに死が訪れるワケではない。 アトロキニーネの毒性は ”遅効性”ですからね! |
裁: | ちこうせい‥‥ッ! |
葉: | なんですかそれ‥‥ッ! |
王: |
あるカガク捜査官によると、 アトロキニーネは‥‥ |
茜: |
『毒性は、超・モーレツなんだけど、 体内への吸収は、意外にゆっくり! 呼吸器への影響が現れるのは、 服毒から最低15分はかかるわ。』 |
王: |
コーヒーを飲んだとき、被害者の 死は決定されました。しかし! 最後の一杯を楽しむ時間は 残されていたはずだったのです! |
裁: |
静粛に! 静粛にィィッ! どういうコトですかッ! 弁護人の主張が 正しいのであれば‥‥ ただ今の証言は、 アキラカにムジュンしていますッ! |
王: |
さあ‥‥いかがですか、 証人! |
葉: |
ちこうせい‥‥ああ、ちこうせい。 その、モードクは‥‥ 本記者のカラダを、今になって むしばみ始めたのだったッ! |
み: |
‥‥特ダネを 書き始めちゃいましたね。 |
王: | (やれやれ‥‥) |
牙: |
‥‥ハミガキくん、だっけ? もう一度‥‥よおく 思い出してくれないかなあ。 |
葉: | は、はい? |
牙: |
ホントに、”ヒトクチ飲んだ瞬間” 被害者は死んだのかなあ? 重要なコトだから、 よーく考えて欲しいんだけど。 |
葉: |
あ、ワタシ。 こう思うんですけどもワタシ。 いわゆるそれは‥‥ ”パブリックなホノめかし” ‥‥ってゆう。 |
牙: |
まあ、たしかに。 カレが即死ということになれば。 この事件は”シンプル”なものでは なくなってくるね。 その場合‥‥キミは当然、 記事を書けなくなるわけだ。 |
葉: | え‥‥ |
牙: |
だって、そうだよね? スイソクで記事は書けない。 他の記者たちも、やがては このネタをかぎつけるだろうし。 ちょっと残念だけど、独占記事は あきらめるしかない、か。 |
葉: |
すくーぷ‥‥すくうぷ‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あ。あの。ちょっとワタシ。あの。 ちょっと、ワタシなんですけれども。 |
裁: |
な。なんですか。 ちゃんと聞いてますからッ! |
葉: |
お。お。思い出したんですよ! ある種、その。 <<記憶のリバイバル>>ってゆう! <<思い出のサバイバル>>ってゆう! |
王: | ‥‥イミがわかりません。 |
葉: |
そういえば‥‥取材の中で、ワタシ。 気がついたコトがあったのですよ! ”なかなか効かない毒”のコトは 聞いていたものですからね! |
牙: |
‥‥きみ自身も、ヒトの話を なかなか聞かないみたいだけどね。 |
裁: |
証人! それは、このナゾの ヒントになるコト、なのですか? |
葉: |
えー、モチロンですとも! ”猛毒のムジュン”という”猛毒” を解毒する”解毒剤”‥‥ってゆう。 |
王: |
‥‥だから、 イミがわかりません。 |
葉: |
メンミツな取材の結果、 ワタシには見えたのですよ。 ダレが、あのコーヒーに 毒を入れたか‥‥ |
裁: | 静粛に! 静粛に! 静粛にッ! |
牙: |
どうやら‥‥変えるつもりは ないみたいだね。 ”コーヒーを飲んだ、次の瞬間に 死んだ”という証言を。 |
葉: |
モチロン! 変えるつもりは ありませんよ! この事件の独占記事を書く という、ワタシのユメもね! |
牙: |
‥‥‥‥‥やれやれ。 そりゃあそう、だろうな‥‥ |
王: | ‥‥‥? |
牙: |
あのオトコが”シンプルな事件” なんか、選ぶはずがない。 |
裁: | ”あの、おとこ”‥‥? |
牙: | 成歩堂 龍一だよ。 |
王: | ‥‥‥! |
牙: |
オーケイ、ハミガキくん。 話を聞かせてもらおうじゃないか。 何か、気づいたことが あるんだって? |
葉: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
本法廷は、裁判員という新制度を 検討するべき、重要な場です。 ギモンの余地は、 残すべきではありません。 ”気になったこと”について、 証言していただきましょう! |
葉: |
『ワタシがアトリエを訪ねたとき‥‥ 土武六氏、机に向かっておりました。』(証言1) 『手紙を書いていたようですが‥‥ あわてて封筒に封をしました。』(証言2) 『そのときは何とも 思わなかったのですが‥‥』(証言3) 『もしかして。アレこそは”遺書” というヤツだったのではッ!』(証言4) |
裁: | ふむう‥‥”遺書”ですか‥‥ |
葉: |
何やら、ムズカシイ カオをしてましたからな。 いわゆる”4次方程式ヅラ” ってゆう。割り切れない感じの。 |
み: |
なるほどー‥‥”自殺”かあ。 ドブロクさん、キノドクだけど。 それなら、まことさん。 やっぱり、ムジツです! |
王: |
いくらなんでも、取材中に 自殺はしないと思うけどなあ。 |
み: | ううう‥‥ |
裁: | それでは、尋問をおねがいします。 |
王: | 手紙を‥‥? |
葉: |
”取材は不意ウチ、だましウチ” ‥‥ってゆう。 ‥‥これが、何よりも有効なのです。 |
王: | ‥‥どういうことですか? |
葉: |
あの晩、ワタシ。ヤクソクの 15分前に、スタジオに到着。 いきなりガチャとこう、ドアを 開けて侵入してやったワケですよ! |
王: |
‥‥それは、ちょっと マズかったのでは。 |
葉: |
ドブロク氏、みっともないほど 大あわてでしたな。 書き終えたらしい手紙を、 黄色の封筒にしまいこみましたよ。 ピンと来ましたね。 アレにヒミツがある、って。 |
裁: |
ふむう‥‥たしかに、 イミありげですな。 いかがですか? 弁護人。 |
王: |
(どうだろう‥‥? 何か、大事なコトを 言ったような気もするような) |