第4話『逆転を継ぐ者』七年前の法廷(その1)

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王泥喜 法介…紺
成歩堂 龍一…黒
成歩堂 みぬき…赤
裁判長…緑
牙琉検事…茶
宝月 茜…桃
絵瀬 まこと…黄緑
絵瀬 土武六…灰
或真敷 バラン…薄橙
葉見垣 正太郎…橙
或真敷 ザック…青
糸鋸 圭介…黄土
原灰…黄
ラミロア…藤
牙琉 霧人…紫
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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‥‥‥ショーダウンだ‥‥‥
負けた‥‥か。この私が。

たかが、ポーカーですよ。

長い間このゲームをしているが‥‥
私が負けたのは、これで2人目だ。

‥‥1人目は?

‥‥私が”殺した”男だよ。
もちろん、ね‥‥

‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥どうやら。
私が、本当に必要としている
パートナーを見つけたようだ。

‥‥こんなゲームで、ですか?

そうだ。こんなゲームで、だ。

成: あれが‥‥
彼との”出会い”だった。
‥‥今から7年前の話だ。


〜7年前〜
成歩堂龍一・最後の法廷


4月19日 午前9時27分
地方裁判所 被告人第2控え室

成: (やれやれ‥‥ひさしぶりに、
新人みたいな気分だ。
やけにキンチョーするな)
あ。おはようございます。
奈々伏(ななふし)さん。
ザ: 今回は‥‥
急な話でモウシワケなかった。
成: 前任の弁護士さんから資料を
受け取ったのが、きのうです。
正直なところ、じゅうぶんな
ジュンビができたかどうか‥‥
ザ: ‥‥ムリを言ってるのは
じゅうぶん承知の上だ。
成: しかも。事件のお話も、
ほとんど聞いていません。
やったのは‥‥ポーカーだけです。
ザ: ‥‥いや。それでいいんだ。
成: (ゼンゼン、よくない)
?: あ、パパ! おはよう!
ザ: おお。よく来てくれたな。
?: パパ‥‥大丈夫?
いじめられてない?
ザ: はっはっはっはっはっはっ。
モチロン、大丈夫さ。
今日はね。このオジちゃんが、
パパを助けてくれるからね。
成: (”おニイちゃん”だけどね)
おはよう。今日は、
カワイイ服を着てるね。
?: うん! だってね。
今日は、初舞台だから。
成: ふうん。そうなんだねえ。
(ナニ言ってるんだ、この子)
?: あ。そうだ! ‥‥オジちゃん!
成: ん? なんだい。
(だから”おニイちゃん”ね)
?: あの。あの‥‥コレ。
成: これは‥‥?
?: わかんない。
今、そこの廊下で、もらったの。
<<アタマのトガった、青い服の
オジちゃんに渡してくれ>>って。
すごーくダイジなものなんだって。
ザ: ‥‥なんだ?
キミ宛てのメモか何かかね?
成: どうも‥‥ちがうみたいですね。
(なんだろう‥‥
日記の一部、みたいだけど‥‥)
あとで読んでおきます。

<<ノートのページ>>のデータを
法廷記録にファイルした。
ザ: それで‥‥どうかね?
今日の法廷は。
成: なんとか、やってみますよ。
そういえば‥‥新人らしいです。
今日の検事は。
ザ: ほお‥‥
それなら”楽勝”というヤツかな。
成: ”検事局、始まって以来の
サラブレッド”と聞いてます。
‥‥まあ。毎年、そんなのが
1人は出てくるんですけどね。
ザ: ‥‥開廷直前の、弁護士交代。
キミにとって不利なのは、
よく承知している。
だが‥‥これだけは言っておこう、
成歩堂くん。
成: ‥‥なんですか?
ザ: 今日。彼らは、この私に
有罪判決を下すことはできない。
だから、安心して弁護をたのむよ。
成: (‥‥被告人からチカラづけ
られるのは初めてだな‥‥)
ええ。全力を尽くします。
ザ: はっはっはっはっはっはっ。
わかっていないようだね。
私に判決を下すのは、
”不可能”なのだよ。
成: ふ。ふかのう‥‥?
ザ: な。そうだろう? ‥‥みぬき。
み: うん! そうだよね、パパ!
成: (資料を受け取ったのが、きのう。
情報もじゅうぶんとは
言えないけど‥‥
やってみるしかないな。
この親子のために‥‥)
ザ: さあ‥‥そろそろ、
ステージの幕が開くようだ。
よろしく、たのむよ!

成: 依頼人の名前は、奈々伏 影郎
(ななふしかげろう)。
世間では<<或真敷 ザック>>
として知られている。
<<或真敷一座>>のほこる、
人気絶頂のマジシャンだ。
容疑は‥‥”殺人罪”。
彼の師匠‥‥劇場の舞台に、
奇跡の黄金時代を復活させた‥‥
稀代の大魔術師・或真敷 天斎
(あるまじきてんさい)射殺事件。


同日 午前10時
地方裁判所 第7法廷

裁: それでは、これより奈々伏 影郎の
法廷を開廷します。
成: 弁護側、準備完了しております。
?: ‥‥‥‥‥‥‥‥
裁: 検察側。どうかしましたかな?
?: ‥‥いやあ。
こんなものか、って思ってさ。
ちょっと、ガッカリしてたトコ。
裁: ”こんなもの”‥‥?
?: <<サイバン>>っていうから、
もっとこう‥‥
ハートにビリビリ
来るかと思ってたのにさ。
これなら、ガリューウエーブのギグ
のほうが、よっぽどスリリングだね。
裁: あの‥‥あなたは‥‥?
牙: 牙琉 響也(がりゅうきょうや)。
法廷をアツくするために
来たオトコだよ。
裁: あなたが、あの。
牙琉 霧人弁護士の‥‥?
牙: やれやれ‥‥こっちの世界じゃ、
アニキの方が有名、か。
成: (牙琉 響也‥‥か。
デビューと同時に大ブレイクを
果たした、超人気ロックバンド。
<<ガリューウエーブ>>のボーカル。
場ちがいなボウヤだな‥‥)
牙: ”場ちがいなボウヤ”‥‥おおかた、
そんなふうに思ってるんだろ?
成: ‥‥‥‥‥‥‥‥
牙: デビュー曲<<恋の禁固刑・13年>>
が、いきなりミリオンセラー‥‥
そっちが遊びなんだ。
ぼくにとっては。
成: ‥‥よくしゃべる検事さんだ。
牙: いずれ、わかるよ。
‥‥成歩堂弁護士さん。
裁: それでは。まず、事件の説明を
おねがいしましょう。
牙: ‥‥オーケイ。
じゃあ、前座を呼んでみようか。
‥‥なんだ、この名前。ええと‥‥
イトノコギリ刑事をたのむよ!

牙: ‥‥で。ダレ? きみ。
糸: ‥‥そういう聞き方をされたのは
初めてッス。
自分は、糸鋸 圭介
(いとのこぎりけいすけ)ッス。
所轄署の、殺人事件の
捜査を担当する刑事ッス。
成: (イトノコ刑事‥‥か。
ひさしぶりだな)
糸: アンタッ!
成: は、はい。ぼくですか?
糸: 今日という今日は、自分。
アンタに”勝つ”ッス!
今日の証言。
ある種”自信アリ”ッス!
成: (ふだんの証言は
”自信ナシ”なのか‥‥?)
牙: ‥‥あのさ。ぼくのステージで、
そういうの、やめてくれるかな。
糸:え‥‥?
牙: そういうアツ苦しいの、
キライなんだ。
キミタチの因縁なんて、
知ったコトじゃないし。
糸:むぐ。
裁: ‥‥それでは、イトノコギリ刑事。
今回の事件について、
説明をおねがいしましょう。
糸: 事件は、6日ほど前。
総合病院の病室で起こったッス!
事実関係は、いたってシンプルッス。
こちらが、現場のようすッスが‥‥
病室に、入院中の
被害者が寝ていたッス。
そこへ、ハンニンがやってきて、
ピストルでヒタイの真ん中を1発。
‥‥それだけッス。
裁: ふむう‥‥
被害者の或真敷 天斎といえば
‥‥ひとムカシ前。
‥‥まさに、日本中を
夢中にさせてくれたものです。
牙: 大魔術師だったそうだね。
とっくに引退しちまったから‥‥
ぼくたちの世代には、
あまりピンと来ない名前だけど。
裁: 今の若いヒトたちには、
或真敷 天斎よりも‥‥
その弟子たち<<或真敷一座>>の
ほうが、ピンと来るのでしょうな。
糸: とにかく。引退した天斎は、
ここ1年、入院していたッス。
なんというか、ええと。
か‥‥”カンゾーにテンイ”した
‥‥その。
あ。”アクセーシュヨー”に‥‥
ええと。”ナントカ”まれて。
裁: ”むしばまれて”でしょう。
牙: ”悪性腫瘍”‥‥つまり、
ガン、だね。わかりやすくいえば。
どうやら、余命3ヶ月‥‥
といったところだったらしいけど。

<<天斎のカルテ>>のデータを
法廷記録にファイルした。
裁: ふむう‥‥
たしかに、事実関係は
シンプルかもしれませんが‥‥
なんとなく、スッキリしませんな。
牙: ‥‥ほんの3ヶ月ほど待っていれば、
被害者は、天に召される運命だった。
‥‥なぜ、それを待たず、
”射殺”したのか?
成: (そうなんだよな‥‥こういう
言い方も、アレだけど。
わざわざ撃つ必要は
なかったのでは‥‥)
糸: ちなみに被害者は、重度の
糖尿病でもあったらしいッス。
成: とうにょうびょう‥‥
牙: 被害者が、自分でインシュリンの
注射を打とうとしていたとき‥‥
ピストルで、撃たれたようだ。
現場に、注射器が残されていた。
‥‥重度の糖尿病。
そして、ガン‥‥
被害者はザンネンながら‥‥
人生のサイゴを迎えていたことは
マチガイないみたいだね。

<<小型の注射器>>のデータを
法廷記録にファイルした。
裁: ふむう‥‥
すると、モンダイは‥‥やはり。
なぜ、そんな老人を
”撃たなければならなかったのか”
‥‥その、理由ですな。
牙: ‥‥では、刑事クン。
そのへんの”事情”‥‥
証言をたのむよ。
糸: ‥‥はッ!


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