王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
絵瀬 まこと…黄緑 | |
絵瀬 土武六…灰 | |
或真敷 バラン…薄橙 | |
葉見垣 正太郎…橙 | |
或真敷 ザック…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
原灰…黄 | |
ラミロア…藤 | |
牙琉 霧人…紫 |
糸: |
『ジツは‥‥ある種、被告人は、 被害者に命令されたとも言えるッス。』(証言1) 『事件の数日前、被害者本人から、 殺害を”命じる”手紙が届いたッス。』(証言2) 『その指示にしたがって、被告人は 被害者のヒタイを撃ったッス!』(証言3) 『弾丸は、現場のピストルから 撃たれたものにマチガイないッス。』(証言4) 『ピストルが彼のものであるコトは、 ダレが見てもハッキリしてるッス!』(証言5) |
裁: |
な‥‥なんですって! 被害者に”命令されて” ピストルを撃った‥‥? |
牙: |
ジジツ、そのとおりだからね。 これが、その手紙なんだけど。 |
法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
‥‥なんとも”異常”な 内容ですな‥‥ こんなカンタンな手紙で、ヒトは 引き金を引くものでしょうか。 |
牙: |
そのコタエは‥‥手紙の 最後の部分に書かれているね。 |
裁: |
『お前には、決して断れない理由が ある』‥‥という部分ですな。 証人。コレはいったい‥‥? |
糸: |
はあ。それについては、 被告人もクチを閉ざしたままッス。 |
成: |
ひとつ、気になることが あるんですけど‥‥ なぜ<<11時>>じゃ ないのでしょうか‥‥? わざわざ<<11時5分>>を 指定してあるのは、何か理由が‥‥ |
牙: |
さすがに細かいね。 弁護士さんは‥‥ |
裁: |
‥‥と、いうと。 やはり、何か理由が‥‥? |
牙: |
被害者・或真敷 天斎は、毎晩 11時から30分のあいだ‥‥ 点滴を受けることに なっていたのさ。 |
成: | てんてき‥‥ |
裁: |
‥‥たしかに、 この写真にも写っていますな。 |
牙: |
11時に回診に来た医師が、 点滴をセットする。 そして、30分後。 カラになった袋を回収する‥‥ これが、毎晩決まった スケジュールだったワケさ。 |
成: |
”点滴の最中ならば、 誰にもジャマされずに会える” ‥‥そういうワケですね。 |
裁: |
‥‥それでは。 そろそろ、始めましょうか。 ‥‥弁護人。 尋問をおねがいします! |
成: |
(”決して断れない理由”‥‥ せめて、ぼくには 話しておいてほしかったな) |
成: |
‥‥なぜ、 そう断言できるのですか! |
糸: |
あいかわらず、ヒトに たよりっきりッスなー、アンタは。 たまには、自分で ガツンと考えてみるッス! |
成: |
(そういうコトじゃないと 思うけど) |
糸: |
まず、この手紙があるッス。 ”ヒタイを撃て”と ハッキリ書いてあるッス。 |
成: |
書いてあっても、 ぼくは撃ちませんけど。 |
糸: |
そりゃ、アンタは ”いくじなし”ッスからな。 |
成: |
(そういうコトじゃないと 思うけど) |
糸: |
そして、現場には被告人の ピストルもあったッス。 |
牙: |
火薬の痕跡から、つい最近 使用されたこともわかってるよ。 |
裁: |
‥‥いかがですか? 弁護人。 この写真を見るかぎり‥‥ 検察側の”推論”に、 モンダイはないようですが‥‥ |
成: |
(この写真。どこかに 反証のカギはないのか‥‥? ”被告人が、被害者の ヒタイを撃った”‥‥ 検察側の主張に<<風穴>>を あけるんだ! 被告人は‥‥) |
成: |
この写真を見るかぎり‥‥ ある”可能性”が考えられます。 |
裁: | かのうせい‥‥? |
成: |
‥‥あくまでも、 この手紙によれば。被告人には‥‥ <<断ることのできない理由>>が あったようです。 |
糸: |
そのとおりッス! だから被告人は、被害者の ヒタイを撃つしかなかったッス! |
成: |
それはどうでしょうか。 弁護側の主張は、ちがいます。 被告人には、他にもうひとつ。 選べる”道”があった‥‥ |
牙: |
そいつを”立証”できると いうのかい? この写真で! |
成: |
‥‥少なくとも、 その”道”を示すことはできるよ。 |
裁: |
<<被告人は、命令によって 発砲したかもしれない。しかし。 被害者のヒタイは撃っていない>> ‥‥あなたの考えを うかがいましょう。 被害者のヒタイでないとしたら、 被告人は、何を撃ったのか‥‥? |
裁: | ピエロの人形‥‥ですか。 |
成: |
‥‥よく見てください。 彼もまた”射殺”されています。 |
裁: |
あ‥‥ ひ。ヒタイの、この”穴”‥‥ |
成: |
その弾痕が、検察側の主張に ”風穴”を開けてしまうのです! |
牙: |
バカげてる! なぜ、 人形を撃つ必要があるんだい? |
成: |
撃たれたのは”人形”じゃない。 人形の”ヒタイ”なのです。 |
牙: | ”ヒタイ”‥‥ああ‥‥ッ! |
成: |
手紙に書かれた”命令”を もう一度、読んでみましょう。 <<銃でヒタイの真ん中を 撃ち抜くように>>‥‥ ‥‥だから、撃ったんでしょうね。 この哀れなピエロの、 ヒタイの真ん中を! |
裁: |
弁護側の主張には、ハッキリ ”可能性”以上のものがあります。 これは‥‥ たしかに、弾痕にしか見えない! 係官! 至急、 カクニンをするようにッ! |
牙: |
なるほど‥‥ さすがに、やってくれるね。 しかし! それだけでは”被害者を 撃ってない”コトにはならない! |
成: |
”ヒタイを撃て”という命令は ゼッタイだったのかもしれません。 しかし。”誰の”ヒタイであるか? その指定はない‥‥ これは、被害者を撃たずに、命令を 守る、ただひとつの方法なのです! |
裁: |
ふむう‥‥たしかに、人形の ヒタイが撃たれたとなると。 それは大きな手がかりです。 しかし。その一方で‥‥ たしかに。それだけでは ”立証”したことにはなりません。 <<被告人が、被害者の ヒタイを撃たなかった>>‥‥ |
牙: |
‥‥残念だったねえ、 ベテラン弁護士さん‥‥ |
成: |
(‥‥新米検事クンには わからないみたいだな‥‥ 1つあいた、小さな”風穴”が、 どれほどのコトになるのか‥‥) |
裁: |
‥‥それでは、証人。 アキラカになったジジツを 踏まえて、証言をつづけるように。 |
糸: |
『ピエロを撃っても、そのあと被害者 も撃ったと考えれば問題ないッス!』(証言6) |
成: |
写真にも写っている、 このピストルですか? |
糸: |
‥‥そッス! ミョーに特徴のあるカタチッスから、 アンタでも安心ッス。 |
牙: |
被害者の頭部から発見された弾丸と、 このピストルの弾丸‥‥ 2つの弾丸の線条痕は、 ピッタリ一致しているのさ。 |
成: |
つまり‥‥凶器は 特定されているワケですね。 |
糸: | そのとおりッス! |
成: | ‥‥どうしてですか? |
糸: |
はああ。あいかわらず、なーんにも 知らないッスね。アンタは。 <<ザックとバランの早撃ち>> ッスよ! |
成: | なんですか? それ。 |
糸: |
被告人の得意芸ッス。 真ん中に、女の子をはさんで ザックとバランが撃ち合うッス! すると、フシギッ! 魔法の弾丸は、 女の子をスルリと通りぬけて‥‥ ステージの上のあらゆるモノを 撃ちぬくッス! そのとき、ステージで使われて いたのが、このピストルッス。 トクベツなデザインで、 チビっ子に大人気だったッス。 |
牙: |
コイツにあこがれて、警察官を めざした少年少女も多かったとか。 |
成: | (なんだよ、”とか”って‥‥) |
糸: |
或真敷一座が、この芸を ステージでやらなくなった後は‥‥ ピストルは、被害者の老人が 保管していたそうッス。 |
裁: |
‥‥それでは。凶器の提出を おねがいしましょうかな。 |
糸: | 了解ッス! コレが、そうッス! |
裁: |
ほほお。 コレが‥‥なつかしいですなあ。 |
糸: |
ステージ用にデザインされた ピストルッス。 でも。実弾も撃てるように なっているッスけど。 |
裁: |
ふむう‥‥テレビで見る以上に、 ジツブツは大きいですな。 |
糸: |
実弾は、1発しか 入らないッスけどねー。 ‥‥ちなみに、 ピストルの弾倉はカラで‥‥ 最近、発砲された痕跡が 発見されているッス。 |
成: |
ところで‥‥指紋は? 発見されたんですか? |
牙: |
‥‥ザンネンながら。 まあ。被告人はいつも、 手袋をしていたからね。 ”指紋がない”のが、逆に ”指紋がある”とも言えるよね。 |
裁: |
なるほど! 言われてみれば‥‥ |
成: |
いやいやいや! そんなコトはありませんから! |
裁: |
とにかく。 証拠品として受理しましょう。 |
データを法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
‥‥マゴに見せたら よろこぶでしょうな。 ‥‥それでは、証言を つづけていただきましょう。 |
成: |
‥‥最もヤッカイなのは、 タンジュンに”見える”事件です。 牙琉検事。きみは、ピエロの ”ヒタイの弾痕”を見落とした。 それが見えていれば、ちがうコタエ を見つけていたかもしれない‥‥ ‥‥そういうことだよ。 |
糸: |
し。しかし! ただ今、証言したように‥‥ 人形のヒタイを撃ってから、 その後で被害者のヒタイを‥‥ |
成: |
撃つことは、不可能です。 ‥‥このピストルが立証している。 |
裁: | 凶器、ですか‥‥ |
成: |
‥‥カンタンな話です。 このピストルには、 弾丸は1発しか入らない。 |
糸: | あ。 |
成: |
‥‥ピエロのヒタイを 撃ってしまったら‥‥ もう、被害者のヒタイを 撃つことはできないッ! |
糸: | ぎゃははあああああああああッ! |
牙: |
そ。そんなの、 ムジュンでもなんでもないッ! あらかじめ、弾丸をもう1発、 自分で用意しておけば‥‥ |
成: |
ピストルの弾丸は、 カンタンには手に入らない。 被告人が”用意した”と 主張するのならば‥‥ その入手経路の 立証を要求します! |
牙: |
ぐっ‥‥! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ クッ‥‥クックックッ‥‥ さすがに、これで決まっちゃあ 盛り上がらないからね。 それに、ぼくにしてもね。 このまま終わったら‥‥ ただのチャラチャラした お調子者のニイちゃんだし。 |
成: | (自覚してたのか‥‥) |
裁: |
ふむう‥‥どうやら。 検察側には、次の証人の用意が あるようですね。 |
牙: |
この刑事クンは、あくまでも <<前座>>にすぎないさ。 |
糸: | ‥‥ぎゅう。 |
牙: |
事件の説明で、お客さんの肩の チカラを抜いてもらおうと思って。 |
成: | と、いうことは‥‥? |
牙: |
決定的な証人がいるのさ。 ‥‥モチロン。 <<被害者のヒタイを撃ったのは、 或真敷 ザックである>>‥‥ 被告人以外、あり得ないコトを 立証する証人がね! |
裁: |
‥‥いいでしょう。 ここで一度、15分間の 休憩をとりましょう。 |
成: |
(助かった‥‥かな。 この時間で、依頼人‥‥ ザックさんの話を聞こう) |
裁: |
‥‥それでは、 これより休憩に入ります! |