王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
絵瀬 まこと…黄緑 | |
絵瀬 土武六…灰 | |
或真敷 バラン…薄橙 | |
葉見垣 正太郎…橙 | |
或真敷 ザック…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
原灰…黄 | |
ラミロア…藤 | |
牙琉 霧人…紫 |
成: |
(‥‥イヤな予感はしていた‥‥ 手記の”破り取られた跡”‥‥ ‥‥あの検事が、 気づかなかったハズがない‥‥ ‥‥イヤな予感は していたんだ‥‥) |
裁: |
ふむう‥‥この私も、はじめてです。 ”傍聴人のいない法廷”‥‥ |
牙: |
‥‥ムリを言ってしまって モウシワケない。 この証人とは、”司法取引”を しているんだよ。 |
成: | しほうとりひき‥‥ |
牙: |
なにぶん、証言の内容が ビミョーなんでね。 こうして”人払い”を おねがいしたわけさ。 |
裁: |
ふむう‥‥それで。 あなたが、その証人‥‥ですか。 |
?: | あ‥‥は。はい。 |
牙: |
‥‥それじゃあ。 職業と名前を教えてもらおうか。 |
土: |
ええ‥‥絵瀬 土武六と申します。 職業は‥‥絵を描いております。 |
裁: |
画家‥‥ですか。 事件の関係者なのですかな? |
土: |
いや‥‥その。 そういうワケでは‥‥ |
牙: |
‥‥この証人に対する質問は、 とってもシンプルなものだよ。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
牙: |
‥‥土武六さん、だっけ? あんた、これを知ってるかい? |
土: |
ああ‥‥はい。 モチロン、よく知っておりますよ。 |
成: |
‥‥なぜ、ですか? この”手記”を、 見たことがあるのですか‥‥? |
土: |
ああ、はい。何しろ‥‥ 私が作ったモノですから。 |
成: |
な‥‥なんと言いました? ”アナタが、作った”‥‥? |
土: |
‥‥そうです。 それは、私の”作品”ですね。 |
牙: |
‥‥きのう。地方検事局に、 ある”情報”が入った。 <<魔術師・或真敷 ザックの法廷で、 不正な証拠が用意されている>> |
裁: | 不正な‥‥”証拠”‥‥ |
牙: |
ワレワレの独自の捜査で、 この証人に行きついた。 絵瀬 土武六氏は、ある ”ウラのカオ”を持っているのさ。 ある”もの”を、カンゼンに ”再現”する‥‥ いわゆる”贋作”を 手がけている、と。 |
成: | が‥‥がんさく‥‥ |
裁: |
で‥‥では。つまり、コレは‥‥ この、手記のページは‥‥ |
牙: |
ニセモノさ。 どこかの弁護士が用意した‥‥ね。 |
成: |
待ってください! この証拠は、ぼくが 用意したものじゃないッ! |
牙: |
‥‥今さら、何を言ってるんだい? この証拠を、法廷に持ち出したのは、 他のダレでもない‥‥ 成歩堂 龍一弁護士! あんた自身じゃないのかな! |
裁: |
‥‥証人ッ! 土武六さん‥‥でしたか? あなたに<<偽造>>を依頼したのは ‥‥ダレだったのですかッ! |
土: |
さあ‥‥ わかりかねますな。 |
成: | なんですって‥‥! |
土: |
キホン的に、依頼人のみなさまは カオは見せたがりません。 私としては、”作品”を作り、 それで”代金”をいただく‥‥ それだけのコトですから。 |
成: |
し。しかしッ‥‥! これが、ニセモノである証拠は‥‥ |
土: | ニセモノです。 |
成: | え‥‥‥ |
土: |
こういうモンダイを避けるため‥‥ ”作品”には、特殊なマークが 入っております。 まちがいなくこれは。 私の”作品”です。 |
裁: |
弁護人‥‥‥成歩堂くん。 あなたが‥‥この法廷に、 不正な証拠を持ちこんだ‥‥ |
成: |
(‥‥うかつだった‥‥ ‥‥そう言うしか ないかもしれない‥‥) |
み: |
『あ。そうだ! ‥‥オジちゃん! あの。あの‥‥コレ。』 |
成: | 『これは‥‥?』 |
み: |
『わかんない。 今、そこの廊下で、もらったの。 <<アタマのトガった、青い服の オジちゃんに渡してくれ>>って。 すごーくダイジなものなんだって。』 |
成: |
(ワナだった‥‥すべて。 それも、致命的な‥‥) |
裁: | ‥‥弁護人。 |
成: | はい。 |
裁: | 何か、弁明はありますか? |
成: |
弁明したとして‥‥ 受け入れられるのでしょうか? |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ムズカシイでしょうな。 証拠品の”ねつ造”は、 重罪です。 ‥‥そもそも、法廷に 提出してしまった時点で‥‥ すでに弁護士として、 致命的なミスと言えます。 |
牙: |
そして‥‥それは、アンタの 依頼人にも言えるコトだよね。 |
成: | ‥‥! |
牙: |
”偽造”された証拠品を 必要とする、被告人‥‥ ‥‥それが意味するところは、 あまりにも明白だね。 そう! ‥‥<<有罪>>さ! |
成: |
‥‥待ってください! 偽造された証拠を持ちこんだのは ”重罪”にあたるかもしれません。 しかし! それは、 ぼく個人がやったことであって‥‥ |
裁: |
‥‥非常に、残念です。 成歩堂くん。 |
成: | ‥‥裁判長‥‥ |
牙: |
アブナイところだったよ。 ‥‥ジッサイ。 もし、検事局に”情報”が 入ってこなかったら‥‥ 弁護士さんの思惑どおりになった かもしれないワケだからね。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
牙: |
‥‥だから、言ったのに。 ハジをかく前に、もう一度。 よく考えてみろ‥‥ってね。 |
裁: |
これ以上の審理は認めません。 特別証人の尋問を終了します! |
土: | ‥‥弁護士さん。 |
成: | なんですか。 |
土: |
あなたの名前を 教えていただけませんか。 |
成: |
‥‥‥‥? 成歩堂 龍一、ですけど。 |
土: |
成歩堂さん‥‥ あなたは、印象的なヒトでした。 よく、おぼえておきます。 |
裁: |
‥‥このようなカタチの判決に なるのは、ザンネンですが‥‥ 本法廷は、これ以上の審理を 認めるワケにはいきません。 |
ザ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
あなたには、弁護士を替えて、 上告するケンリがあります。 しかし。この法廷では‥‥ |
ザ: | ああ‥‥裁判長さん。 |
裁: | ? な。なんですかな? |
ザ: |
ヒトツだけ、 ハッキリさせておこうか。 今日。この場で‥‥ キミたちは、この私に <<有罪判決>>を下すコトはできない。 ‥‥そいつは、不可能なんだ。 |
裁: |
‥‥どうも、ご自分の立場が わかっていないようです。 その権限は、私にあるのですよ。 |
ザ: |
しかし‥‥ あなたにも、不可能だと思うよ。 ”存在しない”被告人に 判決を言いわたす、なんてね。 |
裁: |
”存在しない”‥‥? ど。どういうことですかな? |
ザ: |
そいつは‥‥‥‥‥‥ こういうことさ! |
成: | な‥‥奈々伏さんッ! |
牙: |
被告人が逃げたッ! 追うんだ! 早くッ! |
裁: |
係官! すべての出入り口を 封鎖するのですッ! |
裁: |
大至急! ゼッタイに 逃がしてはなりませんッ! |
‥‥この日、 裁判所に奇跡が起こった。 法廷から逃亡した 被告人・奈々伏 影郎は‥‥ 信じられないことに、裁判所内から 文字通り”消失”した‥‥ 彼を追跡した係官の目の前で、 その姿はコツゼンと消え‥‥ そして、それ以降。 彼の姿を見たものはなかった。 | |
ザ: |
‥‥これが、或真敷の奇跡さ。 はっはっはっはっはっはっ‥‥ |
判決が下されることはなかった‥‥ ‥‥当然だ。被告人が ”存在しない”のだから。 こうして‥‥ 魔術師・或真敷 ザックの審理は、 彼の消失とともに、永久に失われた。 ‥‥そして。 その謎が解けるまでには‥‥ じつに、7年の歳月が 必要だったのである。 |